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LAST WITCH  作者: 海森 真珠
蒼炎の残り香
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Episode3.2


 600年前の魔女狩りと呼ばれる、魔法使い一掃作戦により魔法使いの数が激減した現代で、戦闘に慣れている魔法使いは珍しい。さらにサンクチュアリによって“特級危険種”と“特級希少種”に認定されたことで、魔法使いはサンクチュアリの“保護対象”となっている。


 つまり、見つけ次第拘束される危険種。故に彼らは人間に見つからないように隠れて生きているはず。派手な魔法を使っての魔法訓練など行えるわけがない。しかも、ここは大陸一平和と称される西の国テルーナ王国だ。


「つまり、西()()()()()と?」


 フェナンドの安易な憶測に、プラトンは眉を寄せその意見を一蹴した。


「そうすぐに北と結び付けるな」

「……申し訳ありません。軽率でした」


 はっとしたフェナンドはすぐに頭を下げた。


 “北”とは、北の帝国オルセインのことだ。かつて魔法大国と呼ばれたオルセインには、今もまだ魔法使いが多く潜んでいると言われており、魔法に関する宝庫でもある。世界動植物保護協会サンクチュアリの前進である反魔法使い組織が発足した地でもあり、サンクチュアリの本部がある重要な国となっている。


「現状、重要なのはあの魔法使いがどこから来たのかではなく、どこにいるかです」


 逸れた話を軌道修正すべく、トスが口を挟んだ。

 サンクチュアリの優秀な研究班の分析技術をもってしても、証拠となる微かな魔力を頼りに街中を探すのは不可能だ。だから魔法使いを保護するために次の一手を投じる必要がある。


「あのぉ、私ぃ、アリサー隊員との戦闘を見ていて気づいたんですけどぉ。彼女、あんまり魔法を使っていないようでしたよぅ~」


 先ほどから腕組みをして宙を眺めていたネルが、唐突にそんなことを言い出した。集中力が切れたものだとばかり思っていたプラトンは意外な顔でネルを見る。


「根拠は」

「えぇ~、そうですねぇ。最後の冷えっ冷えの氷柱はよくわかりませんでしたけどぉ、少なくともアリサー隊員と衝突した二回は全てただの魔力塊だったと思いますぅ。ねっ、アリサー隊員~」

「……」


 その問いかけに、アリサーがコクリと首を縦に振った。ネルの見解に同意をしているようだ。普段は脳内お花畑のネルだが、伊達に特殊部隊員ではないなと内心プラトンは感心した。……ネルにとっては失礼な話だが。


「つまりなんだ? あの魔法使いは魔法使いのくせして魔法が苦手なのか。それとも別の理由でもあるのか?」

「そこまでは分かんないですぅ~。でもぉ、戦闘が得意そうな様子だったのでアリサー隊員がいれば次こそ確実に保護できますよぉ! ということでっ、絶対にアリサー隊員を外さないで下さいね」


 魔法使いの相手はアリサーに任せようという魂胆が丸見えのネルの言い分に、プラトンの眉がひくひくと動く。しかし、プラトンとしてもアリサーがいれば任務の成功率が上がるのはよくわかっている。だから仕方なく、手を軽く振ってネルに「わかった」と合図を送った。これは断じてネルの願いを聞き入れたのではない。任務全体を見ての判断だ。


 話がひと段落ついたと判断したトスが、申し訳なさそうにプラトンの肩をたたいた。嫌な予感にプラトンは返事をするのを渋る。


「……んだよ。これで会議は終わりにすんだよ」

「そうですね、会議は終わりにしましょう。……次の任務の説明をしてから」


 そう言いながら、トスは一枚の紙をプラトンの前に差し出した。プラトンは視線だけを動かす。そこには『トロック植樹祭の警護』という文字が書かれていた。


「……おい。何ですでに別任務についてる俺らにコレが回ってくんだよ」

「だからこそです」

「あ?」


 目を瞑って首を横に振るトスから「諦めろ」という念が伝わってくる。プラトンがまさかと、ある人物の顔を思い浮かべた。そしてその予想は見事あたる。


「“マルチタスクの訓練”だそうです。……イリ」

「――あんのクソアマァァァァァァァァアアアアアッッッッ!」


 トスの言葉を遮って、恨みの絶叫が会議室内を飛び越え支部内に響き渡った。


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