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贖罪への階段 第6話

グロテスクな表現を使用する

場合がありますのでご注意ください。


 桐原の部屋には魔術協会からの使者が来訪していた。

使者は至って普通の会社員にしか見えない。

はたから見れば保険の営業か車のディーラーといった所である。

二人は初対面ではない。幾度となく命令を伝え、そして報告をしてきた。

使者の名前はない。名前を伝える必要性がないため知ることは無い。

桐原もその点を理解しており、携帯には番号しか登録されていなかった。


「今朝の事件だけでどうして魔術士だと判断したんだ?」

「しかももう処理対象は特定しているんだろ そうでなければ君はこないものな」

桐原は本部の対応の速さに疑問を感じていた。


「ええ既に対象は特定されています。信憑性のある条件も揃っています。」

使者は正座まま背筋を伸ばし話を続ける。


「今回の対象者は日本人。元魔術士であり、ゲルフ・アクレス魔導士の弟子です。」

正確に話す。顔は笑顔だが目は笑っていない。


「アクレス爺さんの弟子か・・・・厄介だな」

桐原はアクレスという老練な手腕と多彩な術式を所有した老人の顔を思い出した。

性格は温和だが特化して術式を覚える者が多い中、様々な系統の魔術に知識を

持つ魔術士だ。戦闘では多彩な術式とそれによって低下した火力を経験で補い

魔導士の地位を得たと聞く。


「日本人といったが担当者の経験はないのか?」

担当者であれば桐原と顔を合わせているはずであり、同じ日本人であれば

接点があると思ったからである。

だが桐原には一つの疑問があった。協会に追われる魔術士の中には

日本人はいないはずである。いればリストに名前がのる。

桐原はリストに日本人の名前がない事は知っていた。


「ええ担当者としての経験はありません。桐原さんも疑問に思っている事でしょう」

「何故、リストにない日本人の魔術士を追うのか、しかも本部が直接です」

使者は桐原の疑問を感じていた。だがこれ以上話すべきか考えているようだった。


「言えないなら無理はしなくていい。」

「術式の系統や戦闘スタイル、本部が追うのだから処理だけではないだろう?」

桐原は素状より、実際戦闘になった場合に重要な情報がまずは必要だった。

協会が処理しろという事に異議を唱えることは自分も追われる事を意味する。

対象がどのような信念や理由をもって逃亡者となったのか詮索はしたくない。

それは桐原自身が生き残る為に、迷いは命取りになるからである。



「いえ、桐原さんは処理だけで結構。これから話す内容は私の業務外です。」

「そして内容は私の作ったおとぎ話だとお考えください。」

使者は桐原が本来知りえない事、そしてあり得ないことを話すということだ。



「名前は森川武 年齢は42歳 身長は170程度でしょう」

「系統は火・大気が基本です。ですがあの師ですから油断はできません」

使者はここまでは本来伝えられるべき内容であるといい加えた。


「さて問題は魔術以外に彼は神秘の術式、術具を使用します」

一呼吸おいて話を続ける。


「正教会の人間なのか?よくもまぁ・・・・・」

桐原は飽きれた。もし素状がばれれば即処理される。

殺害されるだでならいいが下手をしたら生きたまま神秘研究用の実験台だ。



「その戦闘能力ですが、本部地下禁忌保管書庫に単独で侵入」

「侵入の際、禁忌警備の魔術士を合計23人殺害」

「その後、多重結界が施されている防壁を破壊し逃亡しました」

使者は先ほどまで正座していた足をあぐらに崩した。


「まぁざっとこんなもんです。十分におとぎ話でしょう?」


「そうそうアクレス魔導士も殺害されています。あっというまにです」

使者は忘れていたと言わんばかりに付けたした。



 桐原は唖然とした。森川という名前は聞いた事がある。

入門は遅かったが、天性の素質と努力で兄弟子達をあっという間に抜きさった。

たしかアクレス爺さんの秘蔵っ子だったはずだ。


 さらに驚くべきは魔術士を禁忌へ侵入する僅かな時間で殺害している点だ。

戦闘特性と術式の使い分け、さらに神秘や術具となると人間であっても異形種に

感じるほどだ。桐原も術具を使うが魔術士23人となると短時間では無理だろう。


「アクレス爺さんは行方不明って発表だったな」

「まぁ禁忌侵入され、逃げられたのが教会関係者だったなんて言えないよな」

桐原はすでに戦闘のシュミレーションを開始していた。

そんな男が禁忌へ侵入し何かを持ちだした。その禁忌に対しても思慮しなければ

ならない。


「私がお話できるのはこれだけです。あと増援は近日中に到着するでしょう」

「この内容は二人の秘密ですよ? 桐原さん」

使者は笑顔で忠告をする。


「わかった。それと禁忌から持ち出された物はなんだ?」

桐原は禁忌に侵入したとしか言わない使者に対しストレートに聞く。


「さぁそれは存じません。私だってこの秘密をお話しただけで危ういのですよ」

使者はそんな危機感を感じさせず答えた。


「俺の仕事は森川を処理するだけでいいという事だな」

桐原はそういって話を切り上げた。


最後にと使者が靴べらを使いながら話す。

「被害者は元軍部それも異能者関係だという事です。それと」

「森川と特定できたのは軍情報部から提供された資料と防犯カメラに」

「映っていた人物と一致したからです。だから早くこれたのですよ」


使者はドアを開け姿を消した。次に会うのは桐原が生きて任務を達成した時だ。


 桐原は使者の言葉にあった軍とい単語について考える。

軍が情報提供するのには裏がある。当たり前の事だ。だれもただで物を提供する

奴はいない。しかもそれが組織や国家となれば尚の事である。

国家機関は起きた状況を最大限に利用する。

それを考えればこの事態を利用しないわけはない。それには何処かのタイミングで

介入してくる可能性は大きかった。 


 

 森川武は禁忌から何かを持ちだしている。

応援が来ると言っていたがそれは桐原が森川武を処理してからの為の部隊だろう。

禁忌は多種に及ぶ、桐原は本部にいた時間は1年もない。

それは桐原自身の卓越した戦闘能力と術式は学ぶのではなく編み出す物だとい

信念からであった。


 協会本部にいれば過去から現代まで培われた術式を学べるがそれは

あくまで探求用にしかならない。桐原はそれが嫌で本部を出て担当者になった。

それからというもの時には人を殺め、そして人を守ってきた。

桐原にとって正義とは普遍のものではない。色をかえ形を変える。

魔術協会に在籍しているのは半ば惰性である。

どの組織でもどんな思想でも桐原にはあくまで枠組みでしかないのである。


 桐原はコートを羽織り、テーブルに置いてあった資料から顔写真を取り出す。

その決意に溢れた表情と鋭い眼差しを脳裏に焼き付け内ポケットへしまう。

ドアの方に体をひるがえすとコートからは金属がぶつかりあう音が聞こえた。



 どんな相手でも負ける訳にはいかない。そう決意し陽が沈む街へを向かう。





ここまで読んで頂きありがとうございます。


連載2本しておりますが

1本目の息抜きで書き始めた

贖罪への階段。名前から設定まで

その場の勢い・・・・


よろしければ励ましてください。



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