贖罪への階段 第2話
グロ耐性がない方は注意してください。
部屋の空気が淀んでいる。それは住人の紫煙のせいだけではない。
魔術を行使すると空気は、その作用により影響を受け変化する。
フローリングの床には、脱ぎ捨てられた血痕付きのシャツが投げ捨てられ
紅い点は転々と部屋の中心まで続いていた。
部屋の中心には、男が上半身裸で立っていた。
右鎖骨から左肋骨辺りまで裂傷が走っている。傷に手を当てながら小さく呟く。
一呼吸置き、違う言葉を呟く男の手が靄に包まれた。
男はその現象を確認しながら傷に沿って手を移動させる。
先程までの出血は徐々に弱くなり、二往復する頃には激しい裂傷も
引っかき傷程度に復元されていた。
男は大きく息を吐き術式を終える。
男は傷の治りを確認し、テーブルに置いてある冷めたコーヒーを口に運んだ。
呑みながらTVを付け部屋のカーテンを開ける。
薄型の大型テレビからは、かわいらしい笑顔のキャスターが笑顔で天気を伝えていた。
床に落ちている白いシャツで、床に落ちている自分の血痕を足で拭いていく。
拭き終わると『燃えるゴミ』とテープが張られたゴミ箱へ放り込んだ。
二杯目のコーヒーを作りにキッチンへ向かった時、男の耳に気になるニュースが
聞こえてきた。
アナウンサーは深刻な表情で事件の詳細を告げる。
事件の内容は、本日早朝未明にオフィス街の一角で男性の変死体が発見されたと
の事だった。コーヒーを作り終え、ソファに腰を降ろす。
変死した男性は紅いペンキのような物で書かれた円の中に張り付けられていたらしい。
事件の詳細はその程度の事だった。
既にニュースは、次の項目へ行っておりスポーツ選手の活躍が報じられている。
男はチャンネルを変えて情報を集めたが、どれも似たり寄ったりの情報だった。
TV消し、情報を整理する。
男性が殺されそれは円のなかに張り付けにされたという事。
人が殺害されるのは珍しい事ではない。四六時中なんらかの事情で命を失っている。
男が気にかけているのは殺害の目的と犯人が一般人か否かである。
犯人が一般人の場合、例外を除き司法関係の管轄である。
しかし犯人が魔術協会関係や正教会関係者又は仏教協会であれば、その組織の担当者の管轄に変わる。
異形の者が犯人の場合は、3組織が担当者を出し共同で処分もしくは捕縛という事になる。
だが異能能力者だった場合は、司法機関ではなく軍内部の組織の出番になる。
これは異能能力者を開発、管理しているのは軍部だからである。
これら組織は表向き友好関係ではあるが、裏ではお互いの潰し合いは日常である。
軍部に関しては他の3組織とはノータッチでお互いの抗争も黙認している。
男は自分の出番が早々に回ってこないように祈るだけだった。
先日もよる異形の狩りに駆り出され、同行者12人中8名殉職、残り4名重症という
散々な結果である。本人も背中に重症受けこの有様だ。
亡くなった仲間には知り合いもいたが相手が悪かったというしかない。
異形というのは人ではなくこの世界の生物ではない。
他の世界からの侵入者である。無論エイリアンの類でもない。
次元の狭間に侵入抗を開けこっちの世界へやってくる生物である。
現世界と地獄と呼んでいる世界には次元の壁が存在し、通常は侵入不可能である。
さらに『神』と呼ばれる者がその間に、結界を張り巡らしてある。
それは網の様な構造をしており、魔力が大きい者ほどその網目に拘束され
こちらには侵入できない。
だが結界は遠い過去に作られたものである為、時折綻びができる。
地獄の上位種には、この網に干渉し網目を大きく広げる者もいる。
広げたところで本人はその程度で侵入出来ないのだが、その網目に小物が侵入するのである。
他の次元に幽閉されている程の生物である。人間が魔術や神秘さらに異能を駆使しても
多大な被害が出る。
その力に魅せられ、魔術士の中には禁忌を犯し異形の者との交流を持つ者もいる。
男は取りあえず眠ろうとベッドへ倒れ込んだ。
昨夜の闘いで魔力は皆無だったし、男の戦闘スタイルは終了後
筋肉や骨が悲鳴をあげる。その為休息は必要だった。
体からの苦情を極力聞き流しなら、つかの間の睡眠を楽しもうとする。
肉体の苦情が脳の睡眠に敗北しようとしてる時、ドアが激しくノックされる。
男は枕を被り、寝ようと試みるが一向にノックは止まず激しさを増すばかりである。
このままでは近所からさらなる苦情が出てしまう為、返事をし男はドアへと向かう。
ドアの向こうにはシスターが仁王立ちしていた。その表情は怒りを表す表情だ。
鍵を開け朝日の眩しさに手をかざす。
太陽の光を受けたシスターは男の挨拶を一蹴し部屋へと上がり込んでいった。
男は寝る事を諦め小言を言われる前にシャツを着て紅茶を出そうと心に決めた。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
1作目の息抜きで書き始めたこの作品なのですが
いつのまにかメインそっちのけで書いておりました。
仏教協会(寺社仏閣関係)ですがよく読むと
フランス教会とも読みとれそう・・・・・・