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贖罪への階段 第15話

下手ですが読んで頂ければうれしいです。


 唐津は研究所を意気揚々と車に乗車し出発する。

今日は、表の顔である脳外科医としての学会発表会だった。

田中少佐が森川に殺害されたと聞いた時は学会出席さえ辞退しようと思った

程であったが、軍に要請した警護の増強が通り、今では首相以上の陣容である。


 この一週間、森川の襲撃を恐れ研究所から外出しなかったが

これだけの警備であれば森川など恐れる必要はないと唐津は思っていた。

それ以上に脳外科として今回の発表はおいそれと逃す訳にはいかない。

異能者の研究では成果は芳しくないが、その被験者を使いまわした脳外科の

成果は表の世界での地位を上げるはずであった。


「出してくれ。くれぐれも時間に遅れないようにな」


唐津は上機嫌に運転手へ指示をだす。


護衛の4WD車を2台先頭にして車列は研究所を後にする。


 唐津は知らなかった。この警護の増強は安雲の指示であり、会場の警備も全て

安雲直属ではないが息のかかった部隊だった。



 安雲はその頃、街の中心部にいた。

そこは中心部でありながらビルの立て直し為、更地になっていた場所である。

大型の装甲車を改造した指揮車両に乗り込み唐津が研究所を出たことを無線で聞いていた。

 

唐津が出席する学会はナクスールホテルで行われる。


 車内のディスプレイに映し出される車列を確認し、ホテル内のカメラを確認する。

すでにホテルには多くの学会参加者が来訪しており警備を完璧にするのは困難を極めるはずだ。

安雲には完璧にする気はなかった。せいぜい唐津が逃げ出さない程度に見せるだけだった。


「第一班から第二班までは会場周辺で待機、第4師団からの増援は全て包囲網へ回せ」


 第4師団は本日行われる政治家の資金集めパーティーの警備用に回された部隊である。

指揮命令系統は安雲にはない。だが安雲は独自のコネクションを使い有力政治家を力を使用していた。

安雲の計画には支障はそれほどないが、数が多いと時間の浪費及び真実が漏えいする可能性があった。

その為、安雲はパーティー会場の警備を薄くしたのだった。


 大臣のパーティーが行われるホテルはナスクールホテルではなく500メートル程離れた

ベイラウンドホテルである。ホテルの警備は安雲の担当ではなく、権力に媚を売るしか脳のない

連中であった。異形種が出現しても出動しないただのお飾りである。

人数も先日、異形種が出現したにも関わらず、1個中隊規模であった。

これは安雲の計画には好都合であった。第4師団が配備されたら厄介だったが今はそれもない。


 安雲は指揮車両から外に出る。

12月の弱い日差しが心地よかった。小型無線を取り出す。


「行動は予定どうり、状況が開始されたらベイラウンドホテルへ急行し実力行使せよ

尚、当初指示した政治家はホテル内にいる協力者が避難をする。それ以外は全て排除しろ」


安雲は手早く指示をだし、無線を切る。


空を見上げ呟いた。


「いい天気じゃないか……森川武……」





 携帯が鳴っていた。

時刻は午前9時を回っている。桐原は携帯を取り受話ボタンを押した。


「桐原さんですね。安雲准将からの伝言です。森川武が動きました。ナスクールホテルまで

至急お越しください」


電話は安雲の部下からであった。


 桐原はミランダへ連絡し急ぎ準備をする。森川が動いたのあれば一刻を争う。

ナスクールホテルは街の中心だ。そこで異形種を召喚されれば被害は大きくなる。

安雲は被害を抑えるつもりはないのだろう。改めて嫌悪感が沸く。

街の中心で事が起これば安雲自身も軍での立場はないはずだ。しかし安雲が軍さえも

手玉にとっているのであればありえる話しだと感じた。


ミランダとはナスクールの前で待ち合わせをしている。


 桐原はコートを羽織り、マンションを飛び出した。

マンション出口を出たところで思いがけない人物に出会った。


それはシスターであった。


 シスターはバスケットをもっていた。

桐原の姿を見て笑顔を見せたがすぐに状況を察知したらしく

凛とした顔に戻る。


「桐原様、行かれるのですね? 森川の所へ」


真っすぐな瞳で桐原を見る。


「……シスター何故その名前を?」


シスターはその名前を知らないはずであった。


「正教会の情報網も侮れませんよ。桐原様……家の鍵をお貸しください」


そういってシスターは右手を差し出す。


桐原は無言で鍵を渡した。


「部屋の中、漁らない下さいよ……シスター」


「ご無事をお祈りしております。お部屋でお待ちしてます」


「わかりました。生きていたらお会いしましょう」


桐原は駐車場へと走って行った。


 



鍵を握りしめシスターは祈る。桐原の無事と森川武の罪が許されるように……






 森川武はビルの屋上にいた。

頭髪を綺麗に整え、高級オーダースーツを着込んでいた。

ナクスールホテルは目と鼻の先だ。

そしてこのビルは妹の最後の場所でもあった。


腕時計に目をやる。


ホテルの正面ロビーには学会に参加する人間の車がひっきりなしに到着していた。


 目を凝らし目的の人物を探す、普通なら双眼鏡を使用しなければ判別など無理だろう

だが今の森川にはそれが必要ない。異形の力を手に入れた森川には造作もないことだ。

12月の寒さも感じない。目の前に広がる街を破壊したい衝動が込み上がってくる。

それを必死に抑え、注意力を持続させる。


 唐津の行動予定はほとんどが研究所詰めで外出するのはこの日だけだった。

軍関係ではない為、警備は薄くなると読んだのである。

事実ホテル周辺は思いのほか薄く、森川はここまですんなり来れたのだった。

軍の動向を気にする余裕はない。何かをしかけているならそれごと踏みつぶすだけだ。


 時刻が10時に差しかかろうとした時、ホテルの正面へ多数の車列が流れ込んできた。

それは大国のVIPを思わせる警備であった。

森川は目を凝らす。

警備車両から降りた完全武装の兵士が辺りを警戒している。

周辺の安全を確認した後、一人の男が車を降りてきた。

眼鏡をかけ、脅えながら足早にホテルへと消える。


「……奴だ……」


 瞳を閉じ遠距離から近距離へと視力を変える。

先程まで至近距離までズームしていた映像は無く、米粒のように動く警備の兵士だけが見えた。

車列はホテルを出てどこかにいくようだった。


 森川は手に持っていた花束を屋上に一角に置きその場を去る。

階段を降りながら異形を召喚する術式を詠唱する。森川の後には10体を超える異形種が現れていた。




「これで最後だ……なにもかも……」



街は普段と変わりなく動いてるように見えた。














ここまで読んでくださってありがとうございます。


これからもよろしくお願いします。


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