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贖罪への階段 第12話

今回は特にありません。

 桐原は携帯をガラステーブルに置いた。

煙草に火をつけ森川武による一連の事件を整理してみる。


 事の発端はオフィス街での殺人事件であった。その事件の被害者は

軍の人間であり、早々に森川武という人物の名前が浮上する。

森川は、過去に正教会に属していたが姿をくらましその後、身分を

偽り魔術士協会で魔術の術式を会得する。


 14年もの時間を費やし魔術を学んだ森川は、師を殺害し協会地下

に存在する禁忌書庫へと侵入する。その際、警備の魔術士を23名殺害し

防壁を破壊して逃亡。


それから2年後、この街で森川は何をしようとしているのか。


 それに安雲の行動には不審な点が多い。森川の所在をすでに把握して

いるにもかかわらず、魔術協会への建前として処理は魔術士である桐原に

一任すると言っている。


 森川がそれまでの生活を全て捨てる理由があるはずである。

それには軍部が関わっており、それを安雲は知っているはずだと思った。


 安雲は何かを待っている。それが人なのかタイミングなのか森川を使い

別の事を成そうとしているように桐原は感じた。

行動を決定するに当たってはまだ情報が少ない。

自分がどう動き何を敵とするのか判断するには至らない。


煙草の灰が灰皿を逸れテーブルに落ちる。


 現段階では安雲の提案を協会は受諾しており、安雲のプランどうりに動かなければ

ならない。森川と相対する事を考えると正直、胸が躍った。


 桐原は闘いが好きなわけではない。だが、老練な魔導士と23名の魔術士を倒した

男と戦闘は男として興味があったのだ。この矛盾する考えは桐原を悩まていた。

自分自身の正義と信念は常に矛盾を抱えており、それは善悪の判断基準さえ狂わせる。


 桐原は煙草がフィルター近くまで灰になっている事に気がついた。

灰皿に押しつけ火を消す、自分がこれから行う事が善なのか悪なのかわからなかった。


チャイムが部屋に鳴り響く、思考の世界から桐原を呼び戻した。


桐原はソファを立ちあがりインターホンを取る。


「……私はミランダ・ケストルと申します。魔術士協会から来ました」

「森川武についてお伺いしたい事があります」


真が通った女性の声がインターホンから聞こえた。


桐原はその旨を了解し、部屋へと招き入れる。


 ミランダと名乗る女性は丁寧な挨拶をし、部屋へと上がる。

そしてソファに腰を降ろし急ぐ様に話題を切り出した。


「桐原さんもご存じだと思いますが、森川武の処理の為日本に来ました」

「すでにそちらの方で森川武の所在等の情報がありましたら私へお知らせ願いたい」


ミランダは桐原の目を真っすぐ見据え訴える様に言った。


「ミランダさん……協会は増援を出さないはずですが?」

「それとも協会は軍に内密で貴女を遣したのですか?」


桐原はミランダに情報を伝えるつもりはなかった。


 そもそも増援は軍と協会の協議で中止になったはずだ。仮に内密でミランダを

派遣したとしても桐原に接触しては内密の意味をなさない。

協会が軍に内密で行動するとすれば桐原には接触せず行動するはずだからだ。


「……時間がないのです……彼を止めるには……」


ミランダは桐原の質問には答えなかった。ただ何かにすがる様に言葉を続ける。


「私は協会の命令に背いてここに来ました。理由は貴方が知る必要はないはずです」

「森川武は私の手で処理します。これは譲れません……」


 桐原は森川とミランダには何か因縁のような物があるような気がした。

それが憎しみなのかそれ以外なのかはわからない。

相反する感情がミランダを動かしているのではないかと感じ取れた。


「私は協会及び軍部から処理を一任されています。ですが……」

「貴女がどこで何をしようと私は関知しません。」


桐原は最大限の譲歩をする。これが精一杯である。


「ミランダさん、私は森川の情報を現在持っておりません」

「事情はご説明できませんが近々森川と接触する事にはなるでしょう」


桐原はミランダを説得するように話す。


「その時、私は貴女に連絡をします。その後、貴女が自分自身の考えで行動なさればいいでしょう」

「私が森川と戦う事は避けられません。貴女自身でその時どうするか判断して下さい」


 桐原はミランダが森川武と話す機会を作ろうと思ったのである。

このマンションに来た時点で情報部からマークされるだろう。入国した

時点からされていてもおかしくはない。ミランダが下手な探りをいれれば

軍から障害として処理される可能性も否定はできなかった。


ミランダは必死に桐原の目を見つめていたが、やがて目を伏せた。


「連絡は頂けるのですね?」


短くそしてか弱い言葉だった。


「お約束します。連絡後、貴女がその場に来れるかはあなた次第です」

「軍が警備をしているでしょうから……」


桐原は軍の警備までの面倒はみれないと伝える。


「……わかりました……連絡をお待ちします……桐原さん」


ミランダはそう告げるとソファを立つ。


「ミランダさん……くれぐれも不用意な行動は慎んで下さい」


桐原はミランダに念を押しておく。迂闊に動かれれば彼女の身も危険だ。


 ミランダは頷くとそのまま玄関へと向かった。

桐原もコートを羽織り後に続く。そろそろ安雲からの出迎えが来る時間であった。

二人でマンションをでてミランダを見送る。


 マンションの前には黒塗りの乗用車がすでに止まっており、桐原の姿を見た

軍服姿の運転手が後部ドアを開ける。

ミランダはそのまま他人のふりをして車の横を抜けていった。

桐原は座席に座り、マンションを去るミランダの背中を見つめた。




その背中は女性のものであり、小さく触れば壊れそうなほど細かった。






















ここまで読んで下さってありがとうございます。


誤字脱字や小説の書き方自体がなってないので

皆さまにはご迷惑をおかしてるでしょう。

許して下さい。


この物語を読んで下さっている方、よろしければ

「読んだよー」などコメントをいただければ嬉しいです。お願いします。

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