白華裏 門番
何となく投稿してみる。見に来てくれた人ありがとう。
門番の仕事というのは、実際にやってみるととても疲れるものだ。
交代の時間までずっと門の前で立っていなければならず、通行人もそのまま素通りというわけでなないからである。呼び止めてこの街に来た理由を聞き、通行料を貰って通行証を渡す。
そして、その間に顔を確認して犯罪者のリストと照らし合わせる。犯罪者なら拘束し、危険だと判断すれば通行証に印をつける。
特に注意しなければならないのは、その間に通行人の機嫌を損ねないようにすること。これは、人と接する仕事全てに言えることだろう。
「なぁテム、早く終わんねぇかなぁ」
「後もう少しだろ? 我慢するしかない」
こうして同僚からも愚痴が出る。俺だってそう思う。
「だけどよ? さっきのおっさんみたいなのが来たらもう我慢できねぇよ」
「それはわかるが……。あれも滅多に無いだろ?」
つい先程通った男は、犯罪者のリストに乗っていた顔に似ていた。リストには顔も載っているので、確認したいと椅子に座らせて待たせたのだが、僅か数分待たせたことに腹を立て文句を言ってきた。
彼の事情を聞いたが、特に急いでいるわけでも無かったし怒る理由などないはずだ。
犯罪者の顔に似ていると言われたら確かに嫌かもしれないが、こちらも仕事でやっているわけであってやりたくてやっているわけではない。
それ故に、何故「もっと早く出来ねぇのか! チンタラ仕事しやがって!」と怒鳴り散らされなければならないのか理解できない。
「こっちの事情を考えてくれない理不尽な奴ってのは……、本当に何処にでもいるんだなぁ」
「そうだな。だが、上がまともなだけ俺らはマシな方さ。上もクズばかりの所で働いてる奴はもっと酷い目にあってる。この前の広場で死んだやつ覚えてるだろ?」
「あぁ、確か全身に浴びるほど酒を飲んで暴れてそれが広場に置いてあった篝火に突っ込んだんだっけか?」
「実はそいつ、自殺らしいぞ。真面目に働いていたんだが、上の圧力と客からの理不尽な要求で逃げ場が無かったらしい」
「まじかよ……。つれぇな……真面目に働いてる奴が苦しんで死んでいくなんて……」
「あぁ……そうだな」
二人で落ち込んでいると、門が開いた。門からは交代する予定の二人が出てくる。
「うわっ、二人共どうした?」
「うむ。テムもアースも死にそうな顔をしている」
かなり酷かったのか、二人は水を飲めと水筒を渡してくれた。有り難く一気に飲み干すと、落ち着くことが出来た。
「さっき来た奴がクズ野郎でな。それと、広場で死んだやつが自殺だっていう話を聞いてたんだよ」
「あぁ、職場がブラックで逃げ場もなかったんだっけ?やばいよなー」
「その点二人は問題無さそうだな」
「そりゃそうだな。俺もマックスも面倒くせぇ奴の相手は慣れてるしな。そうだろ?」
「うむ。筋肉を見せれば相手は黙る。カーターももっと鍛えたほうがいい」
「あー……。俺は辞めとくよ。俺はフィアンセを探すという使命があるんでな! さっき通った綺麗な子の行方を聞かねば!」
カーターは朝に会った時からずっとこの話をしている。
どうやら早朝に白銀の綺麗な髪の少女が通ったという話を聞いてから本気で探す気でいるらしい。
「探すのはいいが、押しすぎて嫌われないようにしろよ? いつもそれで顔叩かれてんだから」
「わ、わかってるよ。でもな? あの話を聞いたら誰だって……」
またカーターの妄想が始まった。こういうのは無視するに限る。
「俺もその少女の事は気になるな。血塗れだったっていうし、何かから逃げてきたのかもしれんぞ?」
「他国ではウチでは禁止しているようなこともするって聞くし、気をつけないとな」
「何かの前触れじゃなきゃぁいいんだけどなぁ」
そんな話をしている間に、カーター以外は帰る支度が整う。
「さて、仕事も終わりだし。飲みに行くか!」
「そうだな」
「うむ」
少女の事を妄想して動かないカーターを放って歩き出す。
「ま、待てよー!」
カーターが鎧姿のまま追いかけてくる。それを三人で笑いながら四人で酒場に向かう。
(この楽しい時間が少しでも長く続けばいいんだが……)
こうしてテム達の日常が過ぎていった。
読んでくれてありがとう。
書き続けるってこんなに難しくて疲れて辛いんだって実感した。
ずっと前に書いていた裏話的な奴。