掃き溜めにて。
※リハビリ作です。ハマったゲームや小説や漫画の影響を強く強く受けております。
これアレのパクリじゃん、というのが苦手な方にはオススメできません。
「****……?」
よぉ、お前さん、新入りだよな?
あぁ、そんな鳩が豆鉄砲食らったような顔してりゃすぐ分かる。
「****、****!」
まぁまぁ落ち着けって、ここが何処かって?
ここは転生者の掃き溜めさ、落人の街、という奴もいるが、俺は掃き溜めの方が好きだね。真を突いているじゃないか。
「****」
なに? こんな所にはいられない。俺は勇者だから世界を救いに行かないといけないって?
そりゃいい、実は俺も勇者なんだよ。おいおい怒るなって、どうせほら、『鑑定』とか『看破』とかいうスキルがあるんだろ? 確認してみろよ。
驚いた顔すんな、ここじゃ普通さ。
勇者の称号だって掃き溜めの住人全員が持ってりゃそこらの農民やただの戦士とかと変わんねぇよな。
あぁ、勿論ほかの職業のヤツもいるぜ。
『魔道王』とか『大賢者』とか、『救世の英雄』とかも居たな、まぁ、勇者と何が違うのかよく分からんが。たぶん、あまり変わらないんだろう。
「****、****?」
うん? しつこいな、何だよ?
あぁ、ここが何処だかまだ聞いてないって?
つまり、どういう場所かってことか?
見て、聞いて、分かんねぇか?
つまりここは転生者の墓場さ。本当に死んだって意味じゃないぜ? なんと言うか、転生させやがった神様がいただろ?
アイツが扱いに困った転生者をぶち込む監獄がここさ。
「****……」
あんた、何かやらかしたんだろ?
あぁ、言わなくていい。
どいつもこいつも同じだからな。大体一緒だ。
神様に逆らったとか、ちょっと無茶な犯罪やらかしたとか、そんなもんだろ? 要は嫌われちまったってこった。
そんで、もう出られねぇ。ここは飽きられた玩具を閉まった物置みてぇなもんだ、
俺らはこのクソみてぇな場所に閉じ込められているのさ。お前もそこに加わったんだ。ようこそパーティへ。
「****!」
必ず出てやるって? 待っている人がいる? あぁ、アンタ、お姫様と婚約してたのか。そりゃすげぇ、アンタの世界はきっと平和になってたんだろうな。
まるで主人公だよな、悪いやつがいてよ、そいつを倒しゃあ全てが丸く収まって大大円。あとはもう幸せな後日談だけが続いていくのさ。働き抜いたあとの素敵な日曜日ってやつだな。
「****、****」
気分を害したかい? そりゃ悪かったな。いやいや本当だぜ、嫌な気持ちにさせたことは謝るよ。それでいいだろ?
あぁ、俺の言い方がまるで異世界をゲームみたいに捉えてるって言いたいのかい。
まぁ、そうだろうな、そう思ってるんだろうな。だからここで此処にいるんだろうぜ。
「****」
でもアンタもここにいるだろ?
さっき言った事だけどな、罪を犯したとか、神様に喧嘩売ったとか、そしたら此処に送られるってヤツさ。実はな、あれは理由の全てじゃない。
まぁ、それが明確な理由かどうかも分からないんだけどな。俺がこうやってぶち込まれたヤツから聞いているうちに、なんとなく思ったって話でしかないんだが、それでもまぁまぁ信憑性の有りそうな話ではあるんだ。
「****?」
つまり、あー……、此処は異世界がゲームだって思っちまってるヤツが行き着く場所ってことさ。
それがどういうことか分かるか?
異世界に落ちるくらい現実と向き合えないヤツが、異世界でさえ直視出来なかったってことだぜ。
生きることそのものを感じることが出来ない……違うな、それが怖いと思ってる連中の居場所なんだよ、ここは。
だからさ、ほら、安心して暮らせるだろ?
此処には何でも揃ってるんだからよ。
家、食事、娯楽だって色々さ。お前さんも楽しんでみちゃどうだい?
「****」
あぁ、もう行くのか。
詰まらない話で引き止めて悪かったな、此処いらじゃ、新入りくらいしかマトモな話は出来ないんでよ、ついつい話し込んじまった。
じゃ、もう行けよ。この世界の壁を壊すために精々頑張ってくれ。
勇者の剣とか失われた魔法とかチートスキルとか、そういうのを気持ちよくぶっぱなしてくるといい。他の連中の迷惑にならないようにな。
こんな所に落ちるだけあって、ヤツらは自分の邪魔に感じることが大嫌いなんだ。堪え性が無いのさ。この前だって……、あぁ、そうだな、また喋り過ぎちまった。
それじゃ俺は行くぜ、仕事があるんでな。
「****?」
そうだよ、お前みたいな新入りに、ここがどういうもんで、どんな場所か教えるのが仕事さ。
勝手にやってるだけだがな。
あぁ、なんだ、もう行っちまってたのか。
「****」
なんだ、また来たのか。
へっへ、そうだろうな、此処じゃあ俺以外にまともな話が出来るやつがいねぇだろ。仕方がねぇからおしゃべり好きの落伍者の暇潰しに付き合ってくれや。
「****……?」
あぁ、そういうことな、そうだろうな、効果がなかっただろう?
勇者の剣、古代の魔法、チートスキル、何の結果も生まなかっただろう?
そりゃそうだ、此処に来たら誰もが最初は試すんだよ。誰もがそのどれか、もしくはどれも持ってるんだからな。
アンタは何だったんだ?
「……****」
へぇ、時空をも斬れる魔剣、ねぇ、そりゃ自信もあったろうな。だが無理だったろ? 無理もねぇさ、今のお前さんは主人公じゃ無いんだからな。
主人公が起こせる奇跡みたいなもんは、此処に来た時点で全部外れてるんだよ。サービス期間は終了、またの開催は未定ってな。
その魔剣とやらだって、能力なんて残ってないのさ。それでも形が残ってるのは、あれだ、着慣れたパジャマ代わりのスウェットみてぇに、脱ぎ難かっただけだな。スゥイートなパジャマってことだよ。
「?」
分かり難かったか……。ちょっと自信あったんだがな。
まぁいいや、で、結局何しに来たんだ? まさかこんな寂しい場所で俺とお喋りしてくれる為に来たって訳じゃないだろ?
「****」
んん……あぁ、言いたいことは分かった。
唯一理性的で話の分かるおれが、この世界から出る鍵だと思った訳か。
やれやれ、モテるって辛いよな。
「****」
いやいや、少し待ってくれよ、ネタバレをしてやるから。
それでな、すまんが、そう考えるやつも多いんだ。というか、1回失敗したヤツは大体こっちに来るぜ。アイツが鍵だろうってな。
へへへ、ゲーム脳だよな? 必ずヒントと現状を打破する道があるって思ってるんだ。しかも、分かりやすく他と色合いまで変えて、な。そんで、自分の持てる力や知恵や剣や魔法や隠密やなんちゃらほにゃららやら駆使すれば絶対に乗り越えられるって信じてるんだ。そういうもんだってな。
だが残念ながらミスリードってヤツだぜ。お前さんはしっかり迷走しているよ。
俺だって俺の前任者に掴みかかったさ。お前が俺たちをここに閉じ込めているんだろ!ってな。
結果はどうだい?
俺はいつの間にか前任者みてぇに新入りに毎回胸倉を掴まれているのさ。
下らねぇジョークを言わねぇ分、前任者の方がマシかもだけどな。
「****?」
ん? 前任者がどうなったかって? 変なことを気にする奴だな。
さぁな、俺も知らん。
多分、お前さんが俺の代わりに新入りをおちょくるようになる頃には分かるだろうよ。
「****」
へへ、そうはならないって顔してるぜ、まだ希望に燃えて決意に満ちてるって面だ。
いや、これはおちょくってる訳じゃねぇんだ。
ただまぁ、まだ希望に満ちてるってのは、ここじゃ財産みたいなもんだからよ。
残念ながら収入のアテは無くなっちまってるから、貯蓄を食い潰していくしかねぇんだがな。
「****」
お、もう行くのかい。
そりゃそうだな、俺との会話で得るものは無かったからな。
悪い悪い。だが、どうにも出来ねぇこともあるってさっさと気づいた方がお前さんの為なんだがな。
言っちまえば、諦めろってこった。俺はそうしたさ。
「****!!」
そう怒るなって、一応これもな、善意のつもりなんだがな。
まぁ、まだ難しいよな。やれること全部やってないって思っているもんな。諦めきれないだろうよ。
いいぜ、また話したくなったら此処に来な。
俺はいつでも此処にいるからよ。
「****」
よぉ、随分久しぶりだな。
あー……実際どれくらい振りかは数えてないんだが、まぁ久しぶりだろ、きっと。時間も日付も意味がないと気にしなくなっちまうんだ。
しかしお前さん、随分薄汚れたな、ヒゲも伸びっぱなし、髪の毛はボサボサ、おまけに油ぎっているときたもんだ。
目だけはギラギラしてるけどな。ちょいとおかしい目をしてるぜ。
「****」
そうだろうな、きっと色々試して来たんだろ。
自慢の剣も汚れてるじゃないか。ここの奴らを何人か殺しでもしたかい?
「****」
……まぁ、そうだろうな。
咎めやしないさ、ここにいるヤツらは大体皆同じことやってるんだ。お前さんが初めてって訳でもない。
そもそも此処に来る前の異世界でもたらふく殺してレベルを上げていたんだろ? 俺たちだって同じだよ。今更殺したり殺されたりすることに興味もないね。
それで、今日はどうして此処まで来たんだ?
「****」
へへ、そうだな、お前さんの言う通りだ。察してるよ。
思いついたんだろ? それじゃあ試さずにはいられないもんな。
だけどなぁ、俺もほら、此処でこんなことして結構長いんだ。
ってことは、お前さんのように思い付いちまったヤツの相手だってしてるのさ。
俺も俺で思い付いて試したいことはあったしな。
「****……?」
俺のやってることかい?
あー……、大したことじゃないさ。殺しにかかってくる勇者共を100人ばかり返り討ちにしたら元の世界に帰れたりしねぇかな、と思ったことがあったのさ。ほら、コレクション要素って燃えるだろ?
まぁ、まだ10人ちょっとなんだがな。そうぽんぽんと異世界転生者が来る訳でもないしな。
それに、神サンは飽きた玩具のネジを集めてもトロフィーとは思っちゃくれねぇだろうよ。
「****」
……あー、別に時間稼ぎってつもりで喋ってたつもりじゃないんだ。
そもそも稼いでどうするって話だしな。それに、こっちの準備はお前さんが来る前から出来てるんだよ。
ほら、俺も慣れてるんでね。次あたりはこうなるだろうって予想できちまうのさ。
それで、やっぱり退かないかい?
……。
…………そうかい。お互いにとって最悪の時にならないといいな。
「****」
へへ……。
まぁ、こうなるだろうってのは分かってたさ。
俺だって前任者をぶっ殺してこうなったんだからな、そうなった時からこの結末は決まってたんだろうよ、きっと。
だけど、俺を殺したところで結局出られやしない。この監獄は開かない。俺を見てみろよ、この通りさ。
へっ、何て顔してんだ? もう思い付くことはやり尽くしちまったのかい? あぁ、そうだろうな。
だから諦めろって言ったのによ。試さない内なら成功を夢見られていたのにな。
「****!」
くれてやれるトロフィーなんか無いぜ。祝ってくれる友達もいねぇ。みんなお前さんが殺しちまっただろ?
やれることなんか一つしか残ってねぇ、誰かが落ちてくるのを待つだけさ。
「……****……」
いや、俺は一足先に夢から覚めさせてもらうぜ。悪いな。
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「****……?」
やぁ、君は新入りだよね?
驚いた顔をしているからすぐに分かるよ。ひどく混乱してるんだね
「****、****!」
まぁまぁ落ち着こう、ここが何処かって?
そうだね…………、ここは転生者の掃き溜めさ。
はは。
前任者もそう言っていたんだ。