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ノブリスオブリージュ  作者: RFSGN
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王族の少年、ニシル ゴルドー

登校二日目の朝、昨日と変わらず、慌ただしく準備を済ませ走ってギリギリ間に合うくらいの時間にようやく3人家を出た。昨日よりは重くなっている鞄を手にいつもどうり話しながら登校する。

「今日から授業が始まるのか、あーやる気でね〜」

「そういうなアデル、今日の授業はお前が得意な防衛魔術だそうだからまだマシじゃないか」

「そうよ、アーちゃん防衛魔術の基礎なんてAランク魔術を理解する10分の1くらいで出来ちゃうんだから頑張ろうよ」

「はあ、Aランク魔術は10倍頑張らないといけないのか、、、」

「あれ?励ましたつもりなのに逆になんかやる気落ちてない?」

「ノヴェルは勉強出来るからな、出来ない奴の苦しみは分からんだろうさ」

「うーそういうものかなーまあいいや、そういえばアーちゃんこれちゃんと読んだ?」

ノヴェルが昨日ユリアーノ先生から渡された個人課題を取り出して見せてきていた。

「あ、忘れてた」

「昨日早くに寝たからそうだろうと思ってたが、今読んどけなかなかためになるからな」

「へーそうなんだ、でも俺のなんでかメチャクチャ分厚かったからな~」

鞄を開きちょっとした教科書並みの厚さがあるそれを取り出して開いてみる。

「本当に分厚いな、なんでアデルだけ?」

「私達はプリント数枚だったのに」

「分からないけど、渡される時期待してるみたいなこと言われたなぁそういえば、あとアリシアも俺と同じくらい分厚かったぞ」

「へー2人とも先生に目を付けられたんだ~よかったね選抜になるのに有利じゃない!」

「お前達のペアは他より断然能力的には上だからな、あとは連携と欠点を潰す事を意識すれば選抜はそう難しくないはずだぞ」

「じゃあ読んでみるか」

だが書いてあるのは衝撃の内容だった。

(雨宮君~あなたとアリシアさんのペアをクラス代表として登録しましたので、明日から色々な雑用と配布物、あと先生のお手伝いをお願いしたいので、放課後残ってて下さい~で、クラス代表としてのお仕事を書いておいたのでランク試験前までにこれ全部読んでおいて下さいね~ああそうそう、やりたくないは受け付けませんし、真面目にやらなかったら選抜外しちゃうかもしれないのでそのつもりで~ちなみに提案者はアリシアさんです。名簿のプリントも書いて職員室に提出されてますので、変更はできませんよ~最後に個人課題も書いてあるので読んでおくように、以上ユリアーノ先生からのラブレターでした~」

(え?聞いてないんですけど?何それ、クラス代表?)

様々な疑問が頭をよぎったが、朝一にしては冴えた頭によって一つに集約されて行った。

(あの王族が2人もいてさらに権力者の子供が多いクラスで、代表?絶対碌なことにならない、、、)

そう予測がつき、これからの苦労を思い憂鬱な表情になるが、気になる点が一つあった。

(なんでユリアーノ先生、俺達が選抜狙ってるの知ってるんだ?話をした記憶はない、ならアリシアが喋ったのか?それ以外ありえんが、なら俺にもクラス代表の話をしてくるはず、でも昨日は昼飯を一緒に食べた時には言っていなかった。そうなると忘れていたって事はないだろうし、隠していた?俺が反対する気がしていたのか?信用はされていない事は理解できる。あの場で黙っていた理由としては、勝手な行動をノヴェル達に知られて揉め事になるのを避けたかったくらいか?もしこの推測が正しかったら、あいつも俺の言った事を意識してくれてるって事になるな)

1人思考にふけっていると両隣からの怪しげな視線に気がつき、

「で、アデルなんて書いてあったんだ?」

「アーちゃん驚いた顔してそのあと考える顔になって最後には何か納得して嬉しそうになってたけど、いったいどうしたの?」

「ああ、なんか俺とアリシアをクラス代表に決めたんだってだからその説明でこんだけ分厚かったみたいだ」

「クラス代表ってまた面倒なもの押し付けられたなアデル」

「先生に気に入られてるからなんとも言えないわね。やるのはたぶん大変よ、だってあのクラスだし」

「まあなでも今読んだ感じそこまでじゃなさそうだ。悪いが今日放課後残ってくれって書いてあるから、先に帰ってくれていいぞ」

「もう水臭いなーそれに護衛の私達が付いてくるってあの先生なら織り込み済みでしょうし、一緒に手伝うわよ」

「そうだな、あの悪女は利用出来るものは使い潰すやつだから、アデルとアリシアだけじゃ心配だ」

「ありがとな2人とも、じゃ、今日も1日頑張るか!」

「おう、やる気が出たようでなりよりだ。では急ごう、話込んだせいで遅れそうだ」

「いやお前が起きないからだよ、、、」

「いやあなたが起きなかったからよ」

本当にいつもどうりの朝であった。

教室に着いて席に座ったらちょうど朝の鐘が聞こえてきた。そのすぐ後にユリアーノ先生が入ってきて、連絡事項を話し始める。

「はーい、皆さんおはようございます~今日から授業が始まりますが、その前にこのクラスの代表が決まったので、お知らせしときますね~クラス代表のペアはアリシア、雨宮ペアです~パチパチ~昨日お二人にも承諾して貰ったので皆さん何か困ったら相談に行って下さいね~これで連絡終わりです~では1時間目を始めますね~」

すご~く軽い感じで紹介され終わってしまった。

(やっぱ、クラス代表なんて呼び名だけでその程度の重要度なのだろう)

俺はそう思ったのだが、抗議の声が上がってきた。

「ちょ、ちょっと待って下さい先生、私達はクラス代表なんて聞いていませんし、納得もできません‼︎そもそもなんで勝手に決まっているんですの!」

「そうですよ先生、王族である僕達を差し置いてこのクラスの代表なんて納得出来ませんよ」

(はあ〜、お前らは、黙ってないか〜まあ代表とかいう言葉好きそう出しな〜)

それでも若干予想はしていたクレアはまだいいとして、まさかニシルまで反対してくるとは、思っていなかった。それに理由が、俺がイメージしてた人物像とずれているのが気になる。

そうしてクラスが少し騒めいている中、2人の抗議の声に高圧的な声が上から被さった。

喧騒の中でもよく通る透んだ声音、その声を皮切りに全員が黙り静寂が支配する。

声だけでこんな事が出来るのはアリシアだけだ。

「そんなこと言っても無駄よ、もう書類は正式に受理されたわ、大人しく諦めなさい」

だがそれは火に油を注ぐような言い方で、それを聞いた王族の御二方は、

(本当にこいつ人とまともに会話する気ないよな~)

そんなどうでもいい事を思いながら俺は今後の展開予想をして見ると、

「なんですのその言い方!クラス代表ともなればこの1-2の中でトップと公言することを意味しますわ!それをはいそうですと認めれるものですか!」

「僕も同意見です、ベルリネッタさんには文句はありませんが、雨宮君には負けるていると思われるのはいい気分ではいられません」

何やら面倒な事に俺に矛先が向くだけでなく、クラス代表の持つ意味も知ってしまった。

(え、クラストップ?ただ先生の雑用を手伝うだけなのに?)

ゴルドーのセリフは無視して再び思考に移ろうとしたが、俺の両隣から殺気が一気に上がってしまう。

「あのクソ豚殺るか?」

「バレたら面倒よ、闇に紛れて取りましょう。アーちゃんを侮辱する事は王族であっても万死に値するわ」

何やら物騒な相談をしていたが、聞かなかった事にして無視した。そうすると今度は後ろからも声をかけられた。

「あらゴミの大将さん、手下に噛みつかれるなんて、カリスマ性の無さが露呈したわね。ほらご指名よ、あなたはどうするの?」

元凶はこいつのはずなのだが、その言葉を聞いてようやく火に油を注いだ事がわざとだと分かった。

「アリシア、お前これも全部わかってやってやがるな?」

ここ2日だけでもそれがわかってしまうあたり、俺もだいぶあいつの思考に追いつけてきてるらしい。

いやまた嵌められてるから追いついてることはないか、でもこの後の展開は読めてきた。

アリシアと先生は、この件を先に話し合っていたはずなので、

「先生この場合どうするか考えてるんですよね?」

「もちろん考えてますよ~でもそれは3.4限の訓練でやりますので、今からは授業を始めるので静かにしてて下さいね~」

先生はあっさり認めたが、今は授業をすると言って、黒板に何やら書きはじめ、防衛魔術の基礎を話し出した。

防衛魔術は、魔力を空中で固めるイメージが強いほど強固に出来、イメージが不均一だとそこから瓦解すると、まあ一般的な説明をしてくれる。ここにいる連中ならこれくらいは中等科で習っている。

その後も、肉体強化系と武器強化系のやり方を説明していく。こっちは実戦的で興味を惹かれた。

「肉体強化系は自分の魔力を体全体に行き渡らせる必要があります、ですがずっと続けていると、消費量が大きいためすぐに魔力切れを起こしてしまうんですよね~なので、局所的に魔力を込めて使う事が出来ない、と実戦では役に立ちませんよ~具体的説明すると、足に魔力を込めて瞬発力を上げて、その後、相手の攻撃を手に移動させた魔力で弾いてそのままぶん殴る、っと言ったところですね~ああでも、殴る際に敵も肉体強化してくるので、肩から強化しないと脱臼や腕の骨が折れちゃうので気をつけて下さい?」

さすが元軍人というべきか、かなり説明にリアリティーがあり知識からだけでなく、経験から話をしているのがよくわかる授業だ。

さっきまで不満顔でいた王族の2人だけでなくこの場にいる生徒全員が、ユリアーノ先生の授業に引き込まれている。

「次に武器強化系ですが、武器を持っている子は、ちゃんと聞いて今日から練習して下さいね?武器強化も基本は肉体強化と同じで〜魔力を行き渡らせるんですが、自分の体のようには簡単にはいかず、慣れてる武器でないと難しいです。もし武器に慣れても十分に魔力を行き渡らせる事が出来ても、やっとスタートラインなのが、面倒な所なんですよ~肉体強化と同じで、強度は上がりますがそれだけなんですし、相手を切るときは薄く鋭く魔力を変化させたりや、相手の魔術を反属性で消すたりしなきゃなので難易度はかなり高めです。この技術をマスターしていたら、Aランクくらいの実力があることは間違いないですね~武器強化は、普通の魔術攻撃より消費魔力を抑えられて威力も十分なので~ここがメリットです。ですが、最近の軍では時間稼ぎか諜報や暗殺といったものが主体なので、防衛魔術の練習を真面目にやらないと生き残れませんよね~以上のことから接近戦が得意な人は今日から1ヶ月防衛魔術の特訓をしてもらいます~残った後衛タイプの人も肉体強化と防殼の派生系を練習してもらいますよ〜そして自分の身が守れるようになったらやっと完成系魔術を教えて行きますので、そのつもりで〜その間授業は個人レッスンみたいな形を取るので、自分だけ遅れるかも、なんて心配はいりませんよ~」

今の説明でわかった事が二つ、まず俺の相方はAランク以上の実力があること、そして俺の課題は武器強化の練習が必要だということ。

(アリシアのやつ分かっちゃいたが、凄い奴だな1年でAランク以上確実なんて、そんなのとペアって事は嬉しくもあり面倒でもある。なぜアリシアがこの歳であれだけ強いのかは、たぶん聞いちゃいけない事なんだろう、あれだけの力は並大抵の代償では手に入れれないことくらい誰でもわかる。俺は直感的にそう思ってしまい聞く気が起きない)

思考がずれて、妙な事を考えてしまった頭を振り、先生の授業に集中しなした。

「では、これで防衛魔術の基礎は教えましたので、あとは練習あるのみですね~ランク試験までに肉体強化が出来たらCランクなんて余裕ですので頑張って下さい〜では2限目から実践授業に移りますよ、訓練場に集まっておいて下さい~ではこれで一限を終了とします〜」

そう言い終わると同時に1限終了の鐘がなった。

その後は1限で使った教材の片ずけをしながら3人でユリアーノ先生の授業が話題になった。

「ユリアーノ先生前ちゃんとしてるじゃないか、かなり実戦的だし」

俺は結構先生の授業が気に入っていた。なんと言うか理屈が少なくよく噛み砕かれて教えてくれるのだ。理論的な説明もしてくれているのだが、そういうのは耳を素通りしていくタイプの俺としては、リアリティーのある具体例などの情報はかなりわかりやすく感じるからだ。

「まあ、あの人は元軍人だからな。どうしても普通の教師みたいな教え方とは異なる、これから1ヶ月防衛魔術の訓練だけだなんてたぶんうちのクラスだけだろうさ」

「そうね、ユリアーノ先生は経験則から教科書とは違う話をしたいじゃないかしら?訓練生時代も教本通りに行くことなんてほとんど無いし、ならそういう状況を考えて出来るようにしましょうって。本当に最悪の想定ばかりして訓練してたから、相当きつかったわ。でもそれが戦闘での判断力向上に繋がるんだから凄いのよ」

「その通りだ。私はあれで作戦立案や戦況分析力が高いことが分かって、参謀士官に誘われたほどだ。一階の士官候補生、しかもまだ訓練生が誘われたから少し騒ぎになったんだぞ、だから私は、正直実技指導力であの人に叶う教師はこの学園にはいないと思っている」

「そうね、あの個人課題をこれから更新して行くらしいから真面目にそれをやれば来年にはAランクは硬いと思うわ」

「そりゃ〜すげーな、この学園で実技指導力が他の教師より上だとか本物の化け物だな。お前達が始め先生を見たときからおかしかったのは、その訓練のせいだったか、、、」

「そうよ本物の化け物でついでに悪女よ!あんな地獄みたいな訓練笑ってやらせるんだから!それに寝てたら夢を覗かれるのよ!?その後覗き見た人の弱みに付け込んで虐めてくるんだから!」

「ノヴェルの言うとおりだ、あれは間違いなく悪女だ」

(うん、この2人が言うんだそれもまた事実なのだろう。人にはいい面も悪い面もあるという事でプラマイゼロくらいにしておこう)

これ以上聞くとよくない事しか出てきそうになかったので、とりあえず話題を変えて気をそらす事にし、

「まあまあ先生の話はそれくらいで、2限目に遅れないように早く行こうぜ」

3人で移動しようと準備をしていると、横からアリシアに声をかけられた。

「雨宮君少しいいかしら?」

まあなんともベストタイミングで現れてくれる奴だ、クラス代表の件もしっかり説明して貰わなければ心の底では少々恨んでいるし丁度いい。

「おういいぜ、ちょうど俺もお前に聞きたいことがあったからな。悪いが2人とも先に行っててくれ」

そう言って振り返ると、にやけ顏の顔2人がいて不信感にかられた。

「むふふ、分かったわアーちゃんファイト!」

「アデル私達がいなくてもしっかりやれよ」

そう言うと2人は上機嫌に廊下を歩いていく。

「お、おう分かった、一体何をだ?」

なぜかただ話すだけなのに応援されてしまった。

「なんなんだ?まあいいか、でアリシア話ってなんだ?」

「先に言っておくけどペアとしてクラス代表の件は、ああする方が良かったのは確実よ、選抜への努力として感謝されるべきで、謝るつもりはないから。だけどそれであなたにゴルドー家が絡んで来たのは予想外だったからその件について話したいの」

(出ましたよ、、、アリシアの私が正義宣言)

いやまあ正しいんだろうが、もうちょっとこう事前に教えてくれるとか、了解を得るとか、必要なステップがいくつか抜けていた気がするが、そこら辺の事はこいつにとっては些末な問題みたいなので話を先に進めるとにした。

「まあ前半は予想してたからいいとしても、勝手にやってもいいわけではないと思うぞ?でもあの2人には先生の独断ってかたちで伝えてあるから問題はない。で、1番問題なのはお前も読み違えた、ニシル ゴルドーの乱入か」

「ええ、クレアさんはああ言うと思っていたけれど、彼も反対だとは思っていなかったのは事実よ。それに理由が差別主義によるものだったのも驚いたし、どう手を打とうかしら。あと、恐らくユリアーノ先生は昨日と同じで2オン2で決着させる気なんだと思うわ、だから負けた場合あなたの家に迷惑をかけるかもしれないと思って、ごめんなさい私が浅慮だったわ」

驚く事にアリシアは、そう言って目を伏せて謝罪のため頭を少し下げてきた。

(意外だ、こいつが人に罪悪感を覚えるなんてビックリだが、負けた場合の事を言ってくるとは、ほとほと信用がない事は心外だな、、、)

「それはお前が気にする事じゃないな。俺が負けなければその心配は意味をなさないし、だからお前が罪悪感を覚える必要はないぞ?」

ここは少しカッコいいことでも言ってアリシアの気分を上げよう思ってフォローしたのだが、、、

「何を言っているの?私はあなたではなくあなたの家と言ってるのよ。それにノヴェルさんにキャナルさんにも迷惑をかけるかもしれないでしょ?あなたが負けて恥をかいても自己責任じゃない、そんなの当たり前よ、私はそこまで甘ちゃんではないわ」

こいつは、やっぱり人の心配なぞするような奴ではなかったようだ。

(だが事実だから反論出来ん!)

そう思いながら眉をヒクつかせながらもなんとか笑顔を保ちつつ、アリシアが次に口を開くのを待った。

「まあいいでしょう、2オン2なら負けることはないでしょうから、あなたとのママごとに付き合ってあげるわ」

「はあ、それはどうも、でゴルドーはどうする気だ?」

「彼については少し警戒しておいて、嫌な話を耳にしたから」

「俺もそう思う、なんか直感であいつは、好きになれない」

「あなた男にも好意を持っているの?私に近寄らないでくれる?」

「そう言う意味で言ってないわ!それに嫌いって言ってるんだよ!なんかこう匂うんだよ、あの小太り王子からは嫌な予感がな」

「あなたゴミではなく犬だったのね、その予感はあたりよ。あのニシル ゴルドーは自分が王族である事を利用してこれまでかなりの数の問題を起こしているようよ。そしてついに高等科は、この訓練や規則が厳しいここに入れらたらしいわ」

「ふーんでも、あの温厚そうな奴がそんな問題になるようなこと起こすのは正直信じられないんだがな」

「あなたが思っていることは私も考えたわ、だから今回の事で化けの皮を剥ぎ取りに行こうと思って相談しに来たの」

「王族相手でも全く躊躇しないとか、お前って本当に恐ろしい奴だな。しかもそんな情報いつのまに手に入れたんだよ、怪しと思ったのはさっきだろうに」

「はあ〜、やっぱりあなたバカね。王族が2人も一緒のクラスなんて揉めない方がおかしいのにあえてそうなってるのよ?昨日の時点で怪しいと思わなかったの?」

「お前は探偵か何かか?だが確かに言われてみればそうか、で?もしそうだとしてもそんなすぐに情報集まるのか?」

「私の家には諜報専門の元軍人の執事がいてね、半日あれば十分だったわ」

(なんて都合がいいんだ、、、)

「でも王族の情報なんて並の奴じゃ集められんだろうに?」

「そうねフランツは高齢だけど、あなたの何倍も強いし役に立つ事だけは確かね」

「フランツさんね覚えとこ、絶対お前に無茶な命令されて振り回されてるだろうし、俺にも共感してくれそうだ」

「あなたのせいでさっきから話が進まないのだけれど?」

「そうだな悪いもう無駄口叩かないから歩きながら続けてくれ、2限に遅れる」

そう言うとアリシアは、俺なんて居ないかのようにサッサと1人歩き出して、いってしまう。

俺も後に続いて3歩ほど後ろをついていくと、そのまま振り返ることはせずとも背中越しに会話は続けられる。

「ゴルドーは問題で飛ばされたって言ったわよね?でもその問題を話す前に、もう1人のクレアさんは特に裏はなさそうなの。だから彼女については、女王様気質という事で納得してもらうしかないわ」

「まあクレアについてはその通りだろうよ、あいつからは嫌な感じはして来ないからな、性格はキツそうだけど」

誰かさんと同じでとはまた脱線しそうなので黙っておく。

「あなたのその感覚は何なのかしら?確信は付かずとも外れてもいない、どこまで野生的なの?」

(俺に余計な事を言うなと言った割にこいつは遠慮なく余計な事を言ってくるな~)

「おい、話を脱線させるなよ。それに俺の直感は野生じゃなくて経験からくるものだ。で、クレアは、いいとしてゴルドーの起こした問題ってのは何なんだ?王族が庇いきれないってかなり怖いんだが、、、」

「そこまでは分からなかったわ、でも被害者に共通しているのは、女性という事よ。まあこれだけでも十分なのだけれどね」

「はあ~王族のボンボンは女遊びが好きですか、、、」

聞いただけで疲れが押し寄せてくる情報だが程度によってはまだ救えるかもしれない。

一握りの希望を持って話の続きを聞くが、

「遊びですめばよかったのだけれど、王族の権力を乱用して無理やり女を連れて行く輩がする事なんて一つでしょうね」

「で、それが数が庇いきれなくなって従者に責任を押し付けたと?」

「ええ、全て従者が勝手にやった事ってなっているわ」

(マジですか、、、そこまでですか、、、 )

この世界では秘書が勝手にや、従者が勝手に、と言った感じで権力者がトカゲの尻尾切りをすることはよくあることといえ、王族でしかも俺と同い年という条件が付いてくると、完全にアウト判定である。

「ダメだ、救いようがないな。でも何でそれが今回のクラス代表反対に繋がるんだ?考えられる要素としては、クレア同様自分が1番でなくちゃ気が済まないとかか?」

「今度の感はハズレね、やっぱり宛に出来そうにないわ」

「あなたの従者は女性で、しかも男子生徒にとても人気があるようよ?」

「な!ノヴェルとキャナルを狙ってるのか!」

「声が大きいわよ」

「、、、すまん、つい、、、」

「まあ心配なのは分かるけれど、自分の事も心配なさい。あなた、他の男子生徒から初日でどう思われたと思う?断言してあげるわ、絶対に疎まれているわよ?」

ノヴェルとキャナルが狙われていると聞かされて動揺してしまったが、その後アリシアが言ったことも気になる。こいつがこれだけ力強く言うんだ、間違いなく面倒な事になる、原因を知らなければ解決出来ないので素直に聞いてみる。

「何で俺が疎まれるんだよ?」

「美少女姉妹の幼馴染がいるのに、担任の美人教師の秘密を握り脅迫し、それでも飽き足らず学校1の美少女とペアを組み挙句食事にまで誘ったって、有名になっているわよ」

「………」

(、、、最悪だ、なまじ全部が全部嘘じゃないところが最悪だ、弁解の糸口が見えない)

アリシアの言葉を軽い気持ちで聞いてしまった俺は、その場で崩れそうになるが、なんとか壁に手をつき持ち堪えた。そんなギリギリの俺にアリシアは問答無用で追撃してきた。

「よかったじゃない登校二日目にして有名人だなんてなかなか慣れるものではないわ、だけどこれだとゴルドーと同様ね、救いようがないわ」

さっき俺がゴルドーについて思った感想をそのまま返され、ついに膝から崩れ落ち、廊下の床に手を付いてしまう。だが俺は何もそんなつもりで行動したわけではないので、ゴルドーと同じ扱いを受けるとなると納得いかない。なけなしの気力を振り絞り、立ち上がってアリシアに言い返すことは出来た。

「おい、ゴルドーと一緒にするな。それとお前も推理で見落としている事を今自分で口にしたぞ。ゴルドーに狙われてるのはお前かもだぞ?自分で言った通り見てくれはこの学校でも指折りなんだからな」

「あなたに褒め言葉を言われても背筋が凍るだけね、何故かしら?でもその指摘は確かにあり得るわ」

普通褒められたら喜ばないだろうか?なぜ俺は褒めたのに貶されるのだろうか?どうしてそういう感覚になるのか、俺が聞きたいくらいである。

「まあお前も人の心配ばかりじゃなく自分の事も気をつけろよ」

会話はここで終わった、訓練場についたからだ。

俺たちは、だいぶ遅い方だったようでノヴェルもキャナルもすでに列に並んでいた。まだ休憩時間は残っているのに訓練生時代の影響だろうか?

そんな良い子な2人に、さっきアリシアから聞いた事を言う必要があったため、俺から話しかける。

「ノヴェル、キャナル2限終わったら話がある。お前達2人とアリシアに関係があって人に聞かれたくないことだ」

声を2人だけに聞こえるよう小さく語りかけると、2人は何処か悟り顔で真剣な目俺の目を見ると、すぐにどこか寂しそうでな顔になったが、またいつもの表情に戻り頷いてくれた。

(何だ?今の俺の心中を測るような目は?まさかもうゴルドーが何かしたのか?明らかにいつもの2人とは違うアクションを起こしたぞ。だが警戒してくれているなら一安心か?)

「よし、じゃあ後で」

とりあえず用事は済ませたので俺も列に入った。

それから2限目がすぐに始まり、ユリアーノ先生のフォトンレーザーを1発ずつ受けて何発耐えられるかとなどと、自分の防殼の強度を知るところから始まった。ちなみに俺は7発で防殼が融解し、ノヴェルは6発キャナルは8発、アリシアは10発だった。前衛と後衛は防殼の強度で変えた方が良いらしいが、綺麗に分かれていて変える必要はなかく、警戒対象のゴルドーは後衛らしく5発と、防殼の強度はこのクラスでは平均より少し上な程度だ。

次に行われたのは、俺が昨日使った貫通耐性の高いペンタプロテクト、局所防衛に使うピンポイントブロック、全体防御と液体防御などに使う体の表面に防殼を貼り付ける、ディフェンスアーマーなど防衛魔術の派生系の特訓を行なった、帝国軍では、この3つの防衛魔術を組み合わせて戦うのだが、俺は、ピンポイントブロックまでしかマスターしていない、ディフェンスアーマーは肉体強化と合わせて使うものなので早めに修得しなければならないだろう。

相方のアリシアは当然のようにどれもマスターしており、ノヴェルもキャナルも訓練生の頃にマスターしていたようで3人は模擬格闘戦をして、この3つを自在に使いこなす訓練に移っていた。

3人とも男子生徒から人気が高いとあって、その模擬戦の光景は人目を集めている。そんな例に漏れず俺も遠目から眺めていたら、横から声を掛けられた。

「いいですね~目々麗しい女性が汗を流している姿は、僕も仲間に入れてもらいものです」

声の主は、警戒対象、ニシル ゴルドーそいつだった。

この時点で俺は、ゴルドーが王族であろうと言葉を選ぶつもりはなくなっていた。

「おい、あんまジロジロ見てると変態と勘違いされるぞ?」

やはりこいつはあいつらを狙っているのは間違いない、今の発言が証拠だ。

「そう言う君も見ていたではないですか、学校初日で2人も女性を籠絡した手腕、僕にも教えてくれませんかね?」

どうやらアリシアの情報に間違いはないようだ、ゴルドーの話も俺の評判についても聞いた通りのものだった。

(さて相手から接触してきたがどうする?警戒している事を感じさせれば、手を引く可能性もあるか?だがそれが逆に拍車をかける危険もあるかーなら現状維持で情報を引き出すとするか)

俺はそこまで考え方針を決定すると、会話を続ける事を選択する。

「俺は別に何もしちゃいない、単に噂が一人歩きしてるだけだ。勘違いしないでくれるか?」

「ははは、これは失敬、ではあの御三方とは何もないんですね?」

「ああ、単に幼馴染2人とペアの1人ってだけだ」

「そうですか、まあどちらでも構いません」

「で、なんか用があるんじゃないのか?」

「ああそうでした、花園に似つかわしくない猿が居たもので退治しなければならないのですよ、今日の朝のあれは餌撒きです」

さっきまでの温厚な姿勢とは違い、ゴルドーが本性を現し出した。

「はっ、やっぱりお前はダメだ」

「気を悪くされましたか?僕は花が好きでしてね。汚染される前に手元に保管したいのですよ、だから素直に退場して頂きたい。そうすれば面倒事にならずに済みますので、僕も土弄りは慣れて居ますが好きではありませんから」

(こいつ暗に俺に手を引けと言ってきてやがる。何だ俺は花を縛っている土に例えられたのか?クソが何が保管だ!絶対にこいつはダメだ)

それがこの会話だけで身に染みてわかる。

「何でクラス代表になるのが俺への忠告になるのか分からんが、俺からも一つ忠告してやるよ。お前絶対花を枯れさせるだけのタイプだろ?お前にだけは渡さん」

そう俺が言い切ると小太りのボンボンは、さっきまでのニコニコ顔をやめていた。

「ただの上級貴族風情が僕に刃向かうのか?お前みたいな生意気な奴が僕より上だと思う奴がいると困るんだよ。だからあんな面倒な事をしたんだ。そうすればどっちが上か分からせれるだろ?僕は寛容だと思うよ?お前みたいなカスにチャンスを与えてやってるんだから、もっと感謝して欲しいくらいだ。まあいい、どうせ王族である僕が望んだ時点で結果は決まっているんだから」

言いたい放題言い放つと、従者の男を連れて離れていった。

(はあ~面倒くせ~アリシアのせいかと思っていたが、俺自身が妬みを買っていたようだ。だけど決闘なんて正直面倒なのでやりたくはない。まあアリシアは大丈夫だろう、あいつもゴルドーは狙っているみたいだが、どうせ返り討ちに合うのが落ちだ。ノヴェルもキャナルも無理に連れて行くことは出来ないだろうし、当分の間心配ないか。じゃあ俺がどうするか次第だが、クラス代表なんてどうでもいいが、先生から貰った課題に書いてあった言葉を思うと、自主的に止めるなどと言えば選抜に影響してくる可能性を無視出来ない)

(はあやはり決闘するしかないか、、、)

結果はいつも初めから決まっている。そう言ったのは誰だったろうか?俺はその言葉を思い出し、諦めてゴルドー戦について考えなら後の時間を費やしていた。

2限が終わり言っておいた通り、2人にゴルドーの事を話すが、返ってきたのは。

「「期待して損した‼︎」」

と2人揃ってご機嫌斜めになるという状況。

(何故?俺何か悪い事した?)

だがゴルドーの視線は感じていたようで、警戒はしているらしいので一安心出来た。

ついでにもう一つ2限でのゴルドーとの接触をアリシアにも報告すると、

「自業自得ね」

と一言いわれそこで会話が終わった。

(なんか、俺昨日と今日だけでここ3年分くらいのの面倒事に巻き込まれた気がしてならない。平和だった日常は何処へやらだ)

そう1人廊下を歩きながら不幸を嘆いていると、ユリアーノ先生にで出くわして捕まってしまった。

何でも次の授業で使う道具を訓練場まで運んで欲しいそうで、

「すいませんね~アデル君1人にお願いしちゃって~でも助かりました~」

「いえ、気にしないで下さい。仮登録ですが、クラス代表みたいですし?」

嫌味半分で言ってみたものの、全く効いていないようで、

「アデル君は、その優しさを持ったまま大人になって下さいね〜先生はあなたの親切が眩しいです〜」

どこか遠い目をしながら訳の分からない事を言ってはぐらかされてしまった。仕方ないので別の事に話題を変える。

「先生、前から気になっていたんですが、何で皆の前だと雨宮で、ノヴェルやキャナル、アリシアしかいない時はアデルって呼ぶんですか?」

今もそうだったが、ユリアーノ先生はどうしてか俺の名前を、その場にいる人間によって使い分けているようで、気になったついでに聞いてみた。

「ああそのことですか~アデル君ってお姉さんいますよね?私、お姉さんと同期なんですよ~だから雨宮さんって、アデル君のお姉さんを呼んでいますので混ざって変な感じがするんです。だから出来れば許して欲しいんですが~嫌ですか?」

先生の話が今話した俺の姉とは、雨宮 暁代 バンガード、基本的に怠け者で、家事全般が苦手で、一緒の住んでいた時は、俺を使用人の様にこき使うしくせに、一歩外に出れば猫を被り外面だけは良いという、なんとも困った姉だ。外面を良く見せるというのは姉さんだけでなく俺もなので、

「ああ、なるほどそういう事でしたら気にしませんのでお好きに呼んで下さい。姉さんと同期とは初めて知りました。今後とも仲良くしてやって下さい」

と言って手に荷物を抱えているためお辞儀とまではいかないが、頭だけ動かし丁寧に会釈をした。

「その言い回し〜やっぱり姉弟ですね~雨宮さんにアデル君の担任になったって連絡したら同じ事を言ってますたよ~」

ユリアーノ先生は思い出し笑いなのか、時折俺の顔を見て笑っていた。

それにしても姉さんが、友人にまで猫を被っているとは思わなかった。ユリアーノ先生は姉さんにあまり好かれてないのかもしれない。あの人はかなり選り好みが激しいタイプで自分が苦手人間などは、ずっとよそよそしいままでいる事が多い。まあ姉さんの気持ちもわからんではない、確かにユリアーノ先生の様なタイプは俺も苦手だ。なので前に習えで俺も猫を被ることにした。

「あはは、姉さんは年が離れてて親みたいなものでしたので、気をつけてはいるんですが、どうしても所々似てしまうのは仕方ないかと、すいません」

「何言ってるんですか~雨宮さんは良い人ですよ?~全然気にしにせずアデル君も自然体でいいんですよ~」

「わかりました、ではなるべく自然体でいきますね」

「そういう妙に硬い所もそっくりです~」

自分でも今の口調や言葉仕草など似ている自覚はあるが、あの姉さんがこの行動を取っていると思うと思わず笑いそうになってしまった。

必死にユリアーノ先生にバレないよう我慢して数秒、落ち着きを取り戻し、話題に出たついでにふと思い出し聞いてみる。

「そういえば姉さんいまどこにいるか知ってますか?俺聞いてないんですよ」

一応ここ帝都にある我が家には、姉さんの部屋もあるのだが、軍の任務で1年の大半を外で過ごしているため、連絡など取れないし、気がついたら家にいるとかそんな感じなのだ。

「いまは任務で島国に行ってるみたいですね〜最後に話した時は、長期滞在になりそうだって言ってましたしよ~」

「そうですか、まあ元気でやってるなら問題ないですね、教えてくださってどうもです」

(姉さん、今度は島国に飛ばされたか〜先生が言った、最後にあったってのはクラスのメンバーを決めた後のようだし、まだ1ヶ月は立ってないだろう。だいたいいつも3ヶ月ほどで1つの任務が終わる事を考慮すると、次帰ってくるとしたらまだ2ヶ月は先のことか)

とりあえず姉さんが家に戻ってくると高確率で俺が酷い目にあうので、出来るだけ備えはしておこうと覚えておきつつ、流石わ軍時代の同期、あの放浪姉と現状唯一連絡がつく先生は、俺の中で警報機の役割に決定した。

「いえいえ~アデル君もお姉さんに負けないよう頑張って下さいね~そういえばまだクラス代表の決め方教えて上げていませんでしたね~」

俺の考えなど全く気にする事なく、ユリアーノ先生はさらりと重要な事をいった。

「はい、出来れば教えていしいですね」

「いいですよ~クラス代表はアリシアさんとアデル君ペア対クレアさんとニシル君に臨時でペアを組んで貰って、2オン2で決めて貰います」

見事にアリシアの予想が的中した。ついでに俺もこうなる予想出来ていたため、驚きはない。

そんなやっぱりかみたいな表情が顔に出てしまったようで、ユリアーノ先生は実に楽しそうな顔で追加情報をくれる。

「で、今運んでいるのがその決闘に使う武器なんですよ~」

「自分の武器でやらないんですか?」

「はいアデル君の銃は強力すぎですし、アリシアさんの剣も普通とは言えませんからね~」

そこで脳裏に銃に頼るなと言ってきたアリシアの顔が浮かんだ。

(あいつ本当は預言者か何かなんじゃないか?)

「だから今からやる決闘では、皆同じ条件でやって貰います。それで勝った方がクラス代表って事にすれば文句を言う人も出ないでしょ?」

確かに俺の古式銃オラシオンは、悪魔戦争よりずっと前に起こった戦争の遺産で、代々婆ちゃんの家系であるバンガード家が使ってきた、家の象徴にまでなっているものだ。

この世界では、魔導師だけでなく使う武器にも等級が5段階存在し、下からC、B、A、S、SSとなっている。俺のオラシオンは上から2個目のS級魔導器具、(別名魔装具)扱いのものだ。だがオラシオンは古いため、整備が手間だし、消費する魔力もバカ高く、強力な魔法を使おうとすればするほど制御が難しいと色々大変なのだが、それを補って余りある程には性能はかなり高い。何よりこの銃の魔法のほぼ全てが、ロストマジック(現代では失われ使用出来ない魔法)として登録されているほどのものだ。

A級以上の武器は、本来学生などが使っていいものではないのだが、この学園に限っては通う生徒のほとんどが貴族であり、皆んな自分の家に伝わる魔導器具を持っているため政府から許可が降りている。まあそんな中でも、このオラシオンは頭1つ出ているので気にはしていた。

「やっぱりですか、まあ正直あの銃は強すぎる事は気はしてましたし、その方法が1番ですよね〜」

「納得して貰えたようでなによりです~大丈夫ですよ、アデル君武器なんてなくても十分強いですから、アリシアさんを守って上げて下さいね~」

「アリシアが俺よりずっと強いの分かってますよね?」

「それでも女の子を守るのが男の子の仕事ですよ〜」

先生にそう言われ返す言葉を探していたら目的地についてしまった。その後少し想像してみたが、アリシアは守ろうとしたら邪魔をするなって怒りそうだな~とそれくらいしか浮かんでこなかいのでやめた。

そうやって休み時間を過ごしついに3限、決闘の時間が来てしまう。

「あんまり乗り気じゃないんだけどな~」

ユリアーノ先生から支給された木刀と訓練用の銃を手に持って、いつもと違う武器の感触に落ち着かず、訓練場の隅で順番待ちをしていると、気がつかない内にアリシアがやってきていて、どうやら今の呟きを聞かれたらしい。やる気がないなら辞めろとかそんな感じで怒られると思ったが、

「あら?いいじゃない。か弱い女生徒を魔の手から守る。勇者様の気分を体験しているんじゃない、もう少し楽しんだらどうなの?」

アリシアはどこかソワソワした様子で、上機嫌に見える。

(アリシアはもしかしなくても決闘やら勝負やら燃える、負けず嫌いさんか?)

少々冗談にならない例えがあったので、一応お前も含まれてるぞ?と警告も兼ねて協力を要請する。

「では協力して下さいますか?か弱いお姫様?」

「嫌よ、自分で蒔いた種なのだから自分で刈り取りなさい、でも敵を1人に減らすくらいの事はして上げましょう。それに外道をのさばらしておくのも気がひけるから、私が手を下すわ。あら偶然ね?同じ敵なら私の邪魔をしないようにしてちょうだい」

「お前、回りくどいな~素直に一緒にやろうって言えないのか?」

苦笑しながら言い返すと、

「あなたが私をか弱い姫様呼ばわりするからよ。私は守られるのは、性に合わないから」

そう言ってそっぽを向かれてしまった。

「そうだろうな〜お前は絶対自分で何とかするやつだ、だから大人しく後ろで相手の邪魔をしとく事にするよ」

「まあ、それでよしとしましょう」

口では色々言いつつも、アリシアもゴルドーの事は気にくわないようで、協力してくれるようだ。ならまあこの武器でも何とかなるだろう、アリシアも手に持っているのは木剣だが、その立っている姿は相方としては、頼もしい。俺も立ち上がり、さっきはなかったやる気が出始め、頭が回り出す。そのお陰で先程のアリシアの言葉の意味に気がつけた。

「で、1人はどうにか出来るって言うが、クレアは外せるのか?大方、昨日やりあったからいいだろって事で済ますんだろうが」

「覚えているようで何よりよ。あなたの言った通り、クレアさんとは戦う気はないわ、すでにユリアーノ先生から言って貰ったわ」

「それでどうなったんだ?」

「まあ納得はしてなかったけれど、ゴルドーと一緒に戦うだなんてもっと嫌。だそうよ」

「ははは、さすが王族、ちゃんと知ってるんだな、あいつがどういう奴か」

「ええ、だからゴルドーの従者が代わりに出るらしいからそっちの方を注意しておいて」

「わかった、警戒しとくよ」

話はここまで、あとはあの小太り王子を叩きのめすだけとなったわけだ。

その後少しして、3限最後の2オン2戦が俺達の決闘の場だ。

「皆さんには言っていませんでしたが、朝のクラス代表での一件をこの試合で勝った方がクラス代表って事にしますので、そのつもりで見守って上げて下さいね~」

軽〜い感じでそう先生が言うと、外野からの声援が上がる。

「ニシル!雨宮に負けるなー俺達アリシア派の無念を晴らしてくれー!」

ダキアとその他数名こ男子が叫び、それに同調するように膨れ上がっていく。

「ニシル!ノヴェルさんとキャナルさんを魔の手から救ってくれー‼︎」

今度はライルを中心とした男子生徒の集団だ。

あいつらはまだどっちが悪なのか分かっておらず、その声援はゴルドーを応援していた。

「俺が魔王かよ、、、」

さっきまでの勇者気分は何処へやら、一気にアウェー戦になってしまう。そんな中でも理解している奴もいるのはせめてもの救いだろう。

「アーちゃん、しっかりねー絶対負けないから大丈夫!」

「アデルお前の修行の成果見させてもらうぞ、私達はお前を信じているから安心しろ」

ノヴェルとキャナルは、事情を知っているから当然と言えば当然だが、今ので少しは気が引き締まる。だが意外な事にクレアやルシャヤまでが、俺達を応援してくれていた。

「アリシアさん、私達に勝ったのですからそこの者に負ける事は許しませんよ?」

「アリシアさん勝って下さいね、私も応援してますので」

俺達にと言うよりアリシアへの応援のようだ。

(仲間が4人だけとは少々気にくわないが、勇者のパーティーは少数精鋭と決まってるしな。気にするほどの事ではないか)

そしてクラス代表決定戦が幕を開けた。

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