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ノブリスオブリージュ  作者: RFSGN
3/6

彼女の目的

模擬戦


「では、対戦カードはくじ引きで決めますので、こちらに集まって下さいね~」

俺が引くと不吉だと訳のわからん難癖をつけられ、アリシアが引き、一回戦はダキア、ライルペアとなった。ちなみにノヴェルとキャナルはシードポジションを引き当てていた。

「へッヘッヘ、いきなり粛清のチャンスが来るとは、ラッキーだぜ、」

「ベルリネッタさんには悪いが、雨宮は許しちゃおけねー」

「あなた友人からも狙われてるじゃない、さすがだわ、私が直接手を下す必要ないみたいね、ゴミ同士潰し合ってちょうだい」

「うるせえな、てかお前俺以外もおんなじ扱いするんだな、そこは安心した。勝手に勘違いして乗せられてる奴らにお灸を据えてやる。憂さ晴らしにもなるしな」

「ではでは~時間無制限、2人とも脱落したら負け、武器も魔術もありで行きますよ~スタート~」

先生の間の抜けた声と共に一回戦が始まった。

「じゃあ、精々潰しあってきなさい、私は高みの見物をさせてもらうわ、それと私1人でも十分勝てるから、安心して散ってきなさい」

「ったくどこまでもムカつくやつだな、まあいい誤射の心配をしなくていいのは楽だし、それにさっき学んだことも試してみたいし」

そう言って俺は婆ちゃんから譲り受けた、(古式銃オラシオン)を取り出し、魔力を充填しはじめ魔術行使の体制にはいる。

それを見たライルとダキアの対応は早かった。

「さっきは油断したが、先生ほど雨宮の魔術は強くないだろ、止まってる間に串刺しにしてやるぜ!」

そう言って2人も魔術行使の体制に入る。だがそれは俺の予測どうりだ、俺が起動している魔術は、近くで使えば自滅する危険もあるため、遠くなければ意味がない。相手の2人はさっきの授業で無闇に突っ込んで脱落させられたため、警戒することは予測出来た。そしてその場合、俺が魔術を起動したら妨害を選ぶとまで読み切れる。

「光よ、穿て!フォトン レーザー」

ダキア達の術が先に完成してしまうが、これも折り込み済み。

俺は先ほど先生がやっていた、防衛魔術を使いながらの完成魔術の構築をする、を実践してみる。

フォトンレーザーはCランク魔術、威力はさほど高くはないが貫通力と速度に優れ、何よりこの魔術、一回詠唱してしまえば集中を途切れさせないかぎり、魔力を再充填すると連射できる便利な術だ。対する俺は、用意していた防衛魔術、ペンタプロテクトを発現する。

この魔術は傘を前に広げたような形で五角形の魔力障壁を構築するもので、防殻と違い全方位をカバーできないが正面からの攻撃であれば、防殻よりも優れた耐久性と魔力消費効率が利点だ。

まあ防ぐというよりいなすが正しい表現なので、いくら貫通力があるフォトン レーザーといえど、これはそうそう簡単には抜けしないし、抜かれる気もしない、そしてこちらも詠唱を開始する。

「水よ、波となりて、押し流し、搦め捕り、固定し球体と化せ!ウェーブ スフィア!」

反撃の激流がダキアとライルへと向かう。

「クソ!なんで防衛魔術をフォトンレーザーで抜けないんだよ!防殻なら簡単に抜けるはずなのに‼︎」

「お、おいそれよりあれどうするんだよライル!俺達まだ空飛べないんだぞ‼︎」

「落ち着け!防殻を全力展開すればあの程度の魔術じゃダメージはない!」

妨害に失敗した2人は、そう言って防殻を全力展開するが、

(それは失策だな、、、)

まあ、空が飛べない俺らが広範囲魔術は回避不可、その場合アリシアのように、空中に足場を魔力で作るしか逃げ道がない。だがダキア達は焦りで正常な判断は出来ないだろう。そして回避不可なら出来ることは、防衛魔術の使用だけだ。

それだけでなくウェーブ スフィアは全方位型魔術であり、防殻しか取れる手段が今の俺達にはない事まで織り込み済みだ。

「アーちゃん、考えてるねーそれに先生の真似をもうしてるよ、防衛魔術と完成魔術のデュアルキャスト、Aランク魔導師のスキルのはずなんだけどなー私、結構苦労したのに、、、」

「うむ、アデルの奴随分と強くなっているな、あんなにあっさりやりやがって、私達の苦労がバカみたいだ」

「アデル君、やっぱり感がいいんですね~初見で出来ちゃうなんてすごいです~」

そんな外野の3人の声は聞こえていおらず、俺は術の制御に集中していた。

俺が使ったウェーブ スフィアの対処法は、捕まらないのが定石で、捕まると脱出は出来なくはないが、時間がかかり何より彼らが知ってるとは思えない、ゆえに俺は試合開始30秒で勝利を確信した。

「さて、悪いなお前ら、俺の勝ちだ、珍しい砲撃魔術を見せてやるよ」

そう言って魔力を充填し終えた古式銃オラシオンを構え詠唱を行う。

「契約よ、我が魔力を喰らい、応えよ、閃光となりて、軌跡を焼き尽くせ!」

詠唱と共に銃口の前に大きな魔方陣が構築され始め、一節唱えるごとに魔方陣に線が足されていき、中心に魔力球が現われ大きくなっていく、最終節を終えると魔力球が一気に膨張する。

「プラズマブラスト‼︎ー」

俺の叫びと同時に、魔力球が元の大きさに戻り圧縮音が聞こえ、魔方陣が一際輝きを増した。

(カチン!)

トリガーを引く音の後に、極太の光線がダキアとライルを纏めて捉え、光が訓練場を埋め尽くす、おさまった時には2人は床に倒れていた。

「そこまで‼︎ー」

先生の号令で周囲がやけに静かであるのことに気がついたが、もう遅かった。

「やっベー やりすぎたかな?」

「あなた、実力は正直見直したけど、明らかにオーバーキルじゃない、、、友人相手にここまでやるなんて、人としての心はないのかしら?」

アリシアの言うとうり、さすがに今回は俺がやりすぎだった。

ダキアとライルにやりすぎたことへの謝罪をしようと近ずくと、2人がいきなり飛び起き、興奮気味に騒ぎ出した。

「うお!なんだ今の!」

「スゲ!ー俺もあんな術使ってみてー!」

「雨宮!お前結構凄いやつだったんだな!俺にもあの氷魔術、使えるよう教えてくれよ!」

「俺は、さっきの俺らの攻撃防いでた魔術、なんかめっちゃ硬くて抜ける気しなかったやつを!」

「あーあれは硬かったよなー」

もうちょっと気絶してると思ってた俺は、案外ダメージが少なかった2人に驚いていたが、怪我をしていなか確認する。

「お、お前ら、その大丈夫か?ちょっとやりすぎたからさ?悪いな、痛むとことかないか?」

そう言って謝罪の旨を伝えると

「ああ、大丈夫大丈夫俺ら頑丈だし」

「それに先生のを防殻も距離もない状態でくらったやつの方が痛かったしw」

「そ、そうかそれは良かった、でもてっきりお前らに罵られるかと思ったんだが俺は」

「んな事しねーよ、卑怯な手でも使ってたんなら許せねーが、今回は俺らの惨敗だしな」

「負けて恨み言言う奴はクズだって、父さんに教わったしよ、勝負の結果にごちゃごちゃ文句なんかつけねー、それにお前は最初に謝ってくれたし実力もある、悪い奴じゃない事くらい分かるぜ」

「お前ら案外まともだったんだな、てっきり裏道のチンピラくらいに思ってて悪かった。!」

ようやく俺の誤解が解けたようでなによりだ。で、その試合を見ていたキャナルとノヴェルは

「アーちゃん思ってた以上に強くなってたね!でもなんで男の子って喧嘩して、仲良くなれるのかは不思議だよね~」

「婆様方の稽古の成果だろうが、それはよくも悪くも実力主義のこの国だ、アデルは基本真面目でいい奴だからな、伝わったんだろうさ」

「そうね、だけどキャナル私達何か忘れてない?私妙に何か引っかかるんだけど」

「奇遇だな私もだ、だがなんだ?今日何かあったか?」

ここでようやく2人は、アデルとの朝の会話を思い出した。

「「あ、」」

(俺だって入学そうそうはぶられたくないんだよ!)

(もう私達がいるのに心配いらないよ~)

確かにこう言っていた、だが今の今まですっかり忘れており、アデルを孤立させるのを逆に手伝っていた気すらする。そんな2人の所へ試合を終えたアデルとアリシアがやっくる。

「お前ら、何が心配要らないだ。思いっきり1人になったぞ?でも良かったダキアとライルがまともな奴らで、もう俺絶対ハブられたと思ったよ」

朝の会話が2人の頭をよぎり、額に汗がにじむ、

「だ、だから言ったじゃない、心配いらないって、アーちゃんなら自分で解決できるって信じてたもの」

「そ、そうだ。お前を信じて正解だったという事だ」

アデルに言われとっさに嘘をついてしまった2人だったが、ここで真実を言うわけにはいかない、なんとしてもアデルを騙し切ろうと嘘に嘘を重ねて行く。

「まさか二人とも俺のためにワザとしてたのか?」

「あ、当たり前だ、お前のためを思っての事に決まっているだろう」

「そ、そうよ、アーちゃんが男の子の友達を作れるようにって思ってね」

(スイーツバイキングにつられて朝の会話を忘れてたなんて口が裂けても言えない、、、)

「そうだったのか、てっきり俺は二人とも朝の会話を忘れてたのかと思ってたよ。お前らがそんなふうに考えてくれてたなんて思いもしなかった。助かるよ。さすがはノヴェルとキャナルだな」

アデルはとても嬉しそうに二人を見ていたが、二人は逆にその笑顔から顔を背けている。

「ま、まあ当然よ、アーちゃんの事を放って置くわけないじゃない、ね?キャナル」

「も、勿論だとも、これからも頼りにしてくれていいぞ?」

「おう、ありがとな2人とも‼︎これからもよろしく頼む!」

そう言うとアデルは一層嬉しそうな顔をし二人を置いて2回戦に行ってしまった。

「ねーキャナル、私自分が恥ずかしいよ」

「ああ、ノヴェル私もあの笑顔を直視できなかった」

「ごめんなさいアーちゃん、反省します」

「ごめんなさいアデル、反省します」

この時二人は、大きな罪悪感で自分の心に針を刺されているような感覚に襲われていた。

そんな視線を背中に受けている事を知らない俺は、ふとアリシアも皆が気絶している間の先生との会話を聞いていた事を思い出し、一回戦で一切手を出さなかった事について考えていた。

(あいつも秘密がなんなのか知っていたが、何も言わず俺を1人でダキアやライルと戦わせていた、なぜだ?まさか!あの2人同様俺の事を思って?イヤイヤそんなまさか、あのアリシアさんが?人に罵声しか言わないアリシアが?いやでもしかしあの2人はそうだったわけだし、もしそうだったらなんかアリシアに悪いよな、、、よし確認しよう)

「おいアリシア、お前も俺の事を思って1人でダキア達と戦わせたのか?」

「なんの事かしら?1人でやらせたのは、もちろんゴミの処理をあなたにやらせて、あわよくばゴミ同士潰し合って脱落してくれればと思ってよ?でもあなただけ生き延びるなんてなんて厄介なゴミなのかしらね、有毒なのだから早く処理されてくれる?私のためという一点であなたは処理されるべきだったから、あなたのためを思って1人で行かせたのに期待ハズレね」

「もういい、お前を一時でも信じてしまった俺がバカだった」

ちょっと油断するとすぐこれだ、本当にムカつく奴である。

(こいつだけは敵だと思おう、次からはもう間違わない!)

そう硬く心に誓い前に向き直り次の相手と対峙するとアリシアが前に出た。

「でも、あなただけにいいカッコさせてゴミが調子に乗るのは尺ね。次の試合は王族相手みたいだから華やかなステージに、汚いゴミは立ち入り禁止よ」

「撃ち抜いてやろうか?」

「言っておくけれど、妙な動きを見せればあなたから剣の錆にすわよ?」

またこいつと言い争って、体力を使うのは無駄なのでもう諦めて任せる事にした。

「ああ~分かった分かった見せ場をとらんよう見てますよ。だからそのなんだか知らんが妙に怖い剣を俺に向けるな、下ろせ」

こんな暴力的で高圧的で息をするように人を罵倒していくアリシアだが、こいつが美少女なのが恨めしい、なぜこんな奴がこんなにも美少女なのだろうか?罵倒されたいとは、神の趣味はマゾなのか?

そんなどうでもいい事を考えていたら2回戦クレア、ルシャヤ、ペアとの対戦がはじめられていた。

俺も当人なのだがアリシアが1人でやると言って聞かないし、あの一目でわかる業物の怖い剣の錆にはされたくないので、大人しく後方で大人しくしておく。

「アリシアさん私は紅魔術が得意ですの、なのでその綺麗なお顔が台無しにならぬよう気をつけて下さいませ。もっともそんな剣一本で、しかもお一人で私達を相手になさるような無謀な事を考える時点で、私の術をかわせるとは思っていないのおりませんがね。忠告はしましたわよ」

「ご忠告どうもクレア王女、ですが私はあなたの術を全て避けて貴女を切る絶対の自信がありますので、ご心配は無用です」

この2人、言葉は丁寧なのになんだがどちらも棘があり、バラには棘があるというがまさにそんな感じだ。

赤髪ロングで赤目のクレアに白金ロングで青目のアリシア、色からしても対象的な感じしかしない、そんな2人を俺と向こう相方のルシャヤは苦い顔をしており、

(絶対、相性悪いなこの2人)

そう心で思いつつ、この時見事に俺とルシャヤの思考はシンクロしていた。

「それでは2回戦はじめください~」

ユリアーノ先生の合図で全員が構え、先に仕掛けたのはアリシアだ。右手に剣を携え迷う事なく突っ込んでいく、だが相手は二人とも遠距離を得意とするタイプ。

このままでは蜂の巣にさせるとわかっているだろうに、それでもアリシアは前に進んでいく。

「ふん、魔術戦が主流のこの時代、肉弾戦では叶わないと知らないんですの?わからないのなら私が、その身をもって教えて差し上げますわ、ルシャヤさん私に合わせて下さる?」

「はい頑張ります!」

クレアは余裕の表情で、ルシャヤは少し緊張した様子で二人ほぼ同時に魔術行使を始める。

唱えているのは先ほど使っていたファイアボール、唱え始めて約4秒で完成した。クレアもそうだがルシャヤの方も魔術の技能は高いようだ。

放たれた2つの紅球がアリシアの少し手前に着弾するよう迫っていく、今度は当てるのではなく範囲攻撃にしたようだ。

これは、さっき先生が言っていた定石の運用法で、あれに当たると即脱落なんだが、

(うーん、アリシアの奴が無策で突っ込むとは思えんし何する気だ?)

念のために俺は自分の周りに防殼を張る。

アリシアは依然として突込んでいくが、口元が僅かに動いており、なんらかの魔術を使う気なのだろうが、あの速度で間に合うとすれば防衛魔術の方だ。

(防殼で防ぐ気か?あの威力だろ下手をすれば防殼も抜かれそうな感じがするが?)

アリシアは俺だけでなくその場全員の予想の上をいった。

「私がその程度の魔術で止まると思っているのならその認識を改めなさい」

紅球が床に着弾する少し前、アリシアが喋りながら走る速度を上げ、紅球の着弾地点に入る。

これではクリンヒットだ。だがアリシアと紅球が衝突する寸前に青い光が紅球を横一線、真っ二つに切りその間をアリシアは、すり抜けていた。

「そうしなければ次に切られるのは貴女達のどちらかになるわ」

遅れて切られた紅球だった4つの塊が床に着弾に爆発する。切られた事で爆風も威力もずっと落ちており、ここまで余波が来ることはなかった。

今見た光景は、剣に属性を纏わせ切るという技術でかなりの高等技術が必要なもので、なぜ俺がわかったかというと、これによく似たものを爺ちゃんがやっていたのを思い出したからだった。

「スペルブレイク‼︎」

「アリシアの奴、剣に水をまとって紅球を切りやがった‼︎」

防衛魔術といってもいろいろあり、強化魔術もそのうちの一つだ。そして今アリシアが唱えたのはおそらく、強化魔術のエレメントエンチェントなのだろう。

自分の武器に属性を付与する魔術だ。

属性には有利不利があり、紅魔術は氷魔術に相性が悪いためあんなにたやすく切れてしまう。

魔術を打ち消す方法は二つあり、一つ目が同じ魔術をぶつけて相殺するか、有利な属性の魔術で敵の魔術ごと押しつぶすか。だがどちらも難点があり、まず同じ魔術をぶつけるとなると相手と同じかそれ以上の威力でないとならない、クレアは紅魔術においては負けることはまずないだろうし、しかもアリシアは1人向こうは2人、この時点で力負けするので、この方法はなしだ。

ならもう一つの有利な属性をぶつけるのは方法だが、1人で2人分の威力を越えるためには、相手のより確実に詠唱に時間がかかる魔術を使う必要がある。

本来なら相手のファイヤボールの詠唱を聞いた時点で、後衛の俺がカウンタースペルを詠唱すべきなんだろうが、手出し無用と言われやる気はなかったしアリシアも俺が援護するとは思っていないだろう。そしてこれらのことから判断し、アリシアは強化魔術を選択した。

あれは武器に属性を付与し有利属性である水で剣を覆うことで紅球へのダメージを増加させたもので、何もしないまま剣で切ろうとしても、実態が明瞭でない紅球は切れなかっただろう、だから水を剣に付与して属性有利で切れるようにしたのだ。

「あいつすげーな俺も練習してたが、やっと刃に付与できた程度なのに剣全体を覆うなんて、どんだけやったんだよ」

これは爺ちゃんが言っていたことだが、魔術戦で近接戦闘を得意とする者にはエレメントエンチェントは必須スペルだと教わった。だがこの魔術なんとAランク相当の難易度なので、それをああも自在に使いこなしているアリシアは、俺より近接戦闘は遥かに上だと分かる。それどころかキャナルと同格以上の可能性もある。

これを初めて目の当たりにしたらそれは驚いて当然だろう、クラスの見学者の皆は盛り上がっていたが、やられる方はたまった者ではない。

「な、なんでですの!剣で魔術を切る?そんなことできるなんて聞いてませんわ!」

「わわわ、、ど。どうしようクレアさん私達もあれみたいに真っ二つに切られちゃいますよー!」

それでもさすがは王女、慌てるのも最小限の時間で冷静さを取り戻し、

「落ち着きましょう、いくら魔術を切れてもそれはああいった単発だったからですわ、広範囲型の魔術であれば切っても意味はありません。私が詠唱している間、時間を稼いで下さる?」

「わかりました、!」

そう役割を決めルシャヤが妨害を始め、クレアは魔術の詠唱を始めた。

「風よ、いく手を阻め!ウインドカーテン‼︎」

ウインドカーテンは、Cランク魔術で威力はなくただ暴風によって行動を阻害することを目的としたものだ。だがアリシアが付与した氷属性は属性的には不利だ。

(いいチョイスだ、あの風の壁はアリシアを足止めするには、現状役にたっている。そしてこのままではクレアの魔術が完成する時間を与えてしまう、さあどうするアリシア?)

「その術選択はお見事です。ですが私にスペルが使えないとでもお思いですか?」

アリシアはこれでもまだ余裕があるようで、いたって平静、慌てるそぶりすら見せず詠唱を開始、

「闇よ 切り裂き 吸い込め スラッシュ ホール」

風の壁に一筋の闇色の亀裂が走り、そこに壁を形成していた空気が全て吸い込まれていく、一瞬でアリシアの行く手をはばんでいた壁が消失した。

Bランク魔術、スラッシュ ホール 、あれもなかなか便利な魔術で、俺が使ったウェーブ スフィアなど妨害、拘束魔術を無効化するのによく使われる。

それでもあの一瞬でウインド カーテンを吸い込むほどの威力なのは、アリシアの術者としての技量が高いからなせるもである。

あいつ剣術と魔術両方できるのか、俺のペアは随分と高スペックなようだ。

「く、アリシアさん強いですね、でも私だって負けません!」

アリシアは壁がなくなると同時にまた突撃していく、一方ルシャヤもまだクレアを信じ妨害を続けている。

(いいペアだな、お互いを信じ自分のやるべきことが何かよくわかっている。それに比べてこっちはチームプレーなんて知らないとしか思えないな、、、)

ルシャヤが今度は、詠唱に時間がいらないフォトンレーザーで連射して妨害に移る。だがアリシアも止まらない、飛んでくるフォトンレーザーを避け、はじき、防ぎながら進んでいく、そしてついにアリシアの剣の間合いにルシャヤを捉え、剣がルシャヤに当たる寸前で双方が硬直した。

「そこまでです!」

クレアの術がギリギリで完成していたのだ。

「貴女が少しでも動けば撃ちます降参なさい」

「撃てばいいじゃない?貴女のその魔術、紅魔術のボルカニックバーストでしょう。この至近距離で使えば3人とも脱落のはずよ。相手を道ずれに仲間と自分も脱落だなんて結末でいいのかしら?」

「それでも何もしないよりはマシのはずですわ」

「そう、では止めないけれど一つ提案があるわ。聞いてみる気はない?」

その時俺は、遠く離れた場所から3人の様子を見ていた。

アリシアがルシャヤを切る寸前に、クレアの術が完成したのはわかったが、なぜ3人とも止まっているのかわからない。ついでに言えば会話も全く聞こえず1人放置されている状態だ。

そんな中、アリシアとクレアとの交渉は進んでおり、

「なるほど、それであれば私達は痛い思いをしなくて済むと」

「ええ、私としてもその魔術にあたりたくはないのよね、利害は一致してると思うのだけれど?」

「い、いいんですかそんな事して、雨宮さんが可哀想とは思わないんですか?」

「思うわけないわ、私だけ疲れてあのゴミだけ何もしてないだなんて気にくわないも」

「自分で手出しするなと言っておきながら勝手な方ですのね、、、」

「それとこれとは別よ、避雷針があるのに使わない手はないと思うのだけれど、それにあのゴミかなり厄介みたいだから、焼却処分しなければならないし、丁度いいと思うわ。遠慮なくやってちょうだい」

「ひ、ひどい」

「分かりましたわ、私も自分の魔術がどれだけのものかはよくわかってますし、バンガート家の御子息には悪いですが、必要な犠牲と思い貴女の案に乗りますわ」

「決まりね、クレアさん貴女は正しい選択をしたわ」

そう言って悪魔のような微笑みを浮かべるアリシアに、クレアとルシャヤは従ってしまった。

その時、俺はというと

(あれ?あいつら何かあったのかな?ずっと止まってると思ったらクレアがこっちを見てるぞ?なんだろう今さら俺がいるのを確認してるか?)

そう思った時、アリシアがこちらを振り向き何か放ってきた、見た所攻撃魔術ではないようだ。

「なんだ?援護の要請か?今頃?」

浮遊する黒いそれは俺に向かって低速で近ずいてくる。

なんのつもりだろう?

と思うがとりあえず目の前まで来たので触ってみると、

(するとあらビックリ中身は罠でした、、、と)

「え?どう言う事?」

触ろうとした右手をバインドが固定してきて、ご丁寧に魔術封じの刻印付きだった。だがそれだけでは済むきがせず、もうのすごーく嫌な予感がしクレア達の方に向き直ると、予感が的中していた。

(ゴーーーー)

目の前に火の玉が迫って来ていた。

(回避不可、魔術封じで防御不可、さあどうしろと?)

アリシアにそんな目を向けると、桜色の綺麗な唇が、こう言っているような気がした。

(大人しく死になさい)

「ちょっと待て!!!!!ーーーー」

俺は絶叫とともに灼熱地獄に葬られ、大小多数の火の玉に焼かれながら脱落となった。


次に目が覚めたら見知らぬ天井があり、俺はベットに横たわっていた。

「ん、ここはーどこだ?」

「あら起きてしまったのね」

「うわ!?」

いきなり声がしたもので驚いたが、声の主は、窓際のイスに腰掛けて剣の手入れをしているアリシアだった。だが第一声がこれである。

まるで俺が死んでいた方が良かったかのいいような物言いだ。

ここでようやく俺は、なぜこんな事になったのか思い出し、元凶であるこいつに、怒りが湧いて来た。

「アリシア、ってお前よくもやってくれたな!何が、起きてしまったのね、っだ‼︎起きなかったらどうするつもりだったんだ‼︎」

「それだけ騒げるのに起きないわけないわね、残念だわ。それにしてもあなたしぶといわねボルカニックバーストをまともにくらっておきながら、20分足らずで目がさめるなんて」

「え、俺そんなに寝てたの?」

予想していたより結構ダメージが酷かったようで、少し驚くがアリシアがまだ話し続けているので後に回す。

「そうよ、あなたが寝てしまって、決勝は欠場になってしまったわ、全く私の足を引っ張る事しか出来ないゴミと組んでしまったなんて、覚悟はしていたけれど、後ろに下がらせてもダメだなんてどうすればいいのかしら、、、」

何だろう、すごい使えない奴みたいなことを言われてしまう。本日2度目だが、元凶はこいつのはずである。

「おい、お前被害者ずらしてんじゃねーよ!全部お前が悪いんだろうが!まあペア決めは俺にも責任があるかもしれんが」

「それよりあなたもう大丈夫なようね、私は起きるまで見ておくよう言われただけだから、剣の手入れが終わったら行くけれど?」

さらっと俺の言うことを脇に置かれ、話を進められるが、どうやら俺が寝ている間、横で観てて貰っていたようなので、

「ああ~見ててくれたのか、そりゃ迷惑かけたな、それに決勝も欠場か」

感謝の気持ちと欠場の罪悪感が少しわき、アリシアへの怒りが収まってしまっていた。

(それに俺もこいつついて何も知らないのに批判ばかりではいけないのではないだろうか?こいつは案外根はいい奴なのでないだろうか?)

そんな事までよぎってしまい、少々気になったことを聞いてしまっていた。

「なあ、お前なんでこんな試合を真面目にしてたんだ?」

少し気になった事というのはこれだ。

こいつもノヴェルとキャナルみたくスイーツバイキングに惹かれる事もなくなはないだろうが、それより別の事があるんじゃないだろうか?

そうでなければ、練習試合であそこまで勝ちにこだわる必要もないだろう、その理由を知りたくなったのだ。

「そうねペアになってしまったのだし言う必要があるわね、私がこの学校に入った理由とも関係があるからそこから話すわ」

好奇心から聞いてみたが、案外すんなりと教えてくれるようだ。

「この学校には軍で対処するには小さい事や未解決事件、その他色々な情報があるの、そしてそれらを2年時から任務として調べ解決する事で実戦単位とするシステムなのは知ってるわね?」

「ああ、それがあるから他より厳しく戦闘訓練をして研究なんかを後回しにしてるんだろ。王族や貴族の子供だから危険な目にあっても自衛できる様にって名目でもあるがな」

「そう、私は強くなりたいし、自分で調べたい事があるの」

「でもそれが試合と何か関係あるのか?」

「人の話は最後まで聞きなさい」

そう言われ俺は素直に聞く体勢にうつる。

「この学校は1年はその任務を受ける事が出来ないの実力不足で危険て事でね。でも1年でも任務を受けれる方法が存在するわ。それは担任講師のユリアーノ先生がクラスから4人選抜してユニットを組ませるの、これは毎年必ず行われているわ。そして選抜の4人だけは任務を1年からでも受ける事が出来るのよ」

「なるほどつまりはそれに選抜されるためにはユリアーノ先生へのアピールと実績が必要と」

「ええ、だから一回戦はあなた一人に戦わせて先生へのアピールをさせたのよ。そして2回戦は私1人で勝つことでペアを組んだ個々人の力量を見せる事にした。結果は上々だと思うわ」

ここで一つ得心がいくことがあった。

「もしかしてお前、俺が先生の攻撃を耐えたから俺とペア組んだのか?」

「あら、察しがいいのね、そうよ出来れば双子さんの何方かと組みたかったのだけれど、先に2人でペアを組んでしまったから」

「へ~でもそれならちょっとまずいと思うぞ?」

俺は、アリシアの説明にあまり考えるでもなく思いついた懸案事項があった。

「どこがどう悪いと思うのかハッキリ言いなさい」

アリシアは自分の分析が間違っていると言われ、見るからに機嫌が悪くなっていた。

主に口調と目付きと全身から放つ殺気が、いやこいつは元からこんな感じで悪いな、そう自己解決し思い切って言ってみる。

「4人選抜なんだろ?普通チームワークを見ないか?個々人の強さはランク試験があるだろ?」

「一理あるけど、貴方やっぱりバカね、、、今回に限ってはそれは関係ないわ。今日あった人と普通連携が取れるとおもう?」

凄まじい呆れ顔で言われてしまった。

「なるほど、どのペアも大差ないなら個々人の実戦的技能や判断力などを見せた方がいいか」

今のは俺がバカだったと反省しつつ、アリシアを再評価する。

(こいつ戦闘だけじゃなく頭も回るか。美人で頭も切れ、戦闘もできる。これだけ持っていながら人とのコミュニケーション能力に難がありすぎるとは、なんと残念な、、、)

「じゃあ、お前に一つ助言だ、これから先ペア組む奴には優しくしてやれ、意思疎通が出来ないのにチームワークなんて発揮できんだろうからな」

「貴方本当に何も知らないのね、説明会に行かなかったの?」

ふとそんな言葉を聞いた記憶があったが、

「そういや行ってないな」

「はあ~一度組んだペアは年間を通して変わることはないのよ」

衝撃の言葉だった。

「え、じゃあ俺、お前と1年間ペアなわけ?こんな傍若無人で人をゴミと言い切って燃やす奴と1年?ははは、じょ、冗談だよね?」

俺は、かなり動揺してしまったようで、アリシアに対してここ数分で思った評価をペラペラと喋ってしまう。

「その言いよう今すぐに死にたいようね」

俺の評価を聞き、ご立腹なされた様で、手入れを終えたばかりの剣を首筋に突きつけられてしまうが、俺のペースはそれでも乱れる事はなかった。

「ほらこれだよ、俺の思う美少女はもっとおしとやかなはずなんだが、なんでこんな物騒なんだ?ノヴェルもキャナルも怒るとすぐ刃物を持ち出して首筋に向けてくるし、ろくな奴がいないな俺の周りの美少女は」

こう言って、呆れている俺を見てアリシアが怪訝そうな顔を向けてきていた。

「貴方なぜ脅迫に慣れているの?」

「ああ~ウチにもそう言う事やるの2人いるから」

悲しい事実だった。

自分が刃物による脅迫に慣れてしまう日が来るなんて思ってもいなかったが、認めるしかないようだ。

「ではその2人とは気が合いそうね、ユニットになっても安心出来そうだわ」

「お前自分が選抜されるの前提かよ、、、すごい自信だな」

「まあ、このクラスに限って言えば、一対一なら負けることはないでしょうね」

確かにアリシアの言って事に間違いはない、それは俺も同意し話を先に進めていく。

「それで、選抜されるためにはどうすればいいんだ?」

「さっきも言ったけど、基本的にユリアーノ先生にアピールする他ないわ。でももう一つ問題があって、クラス選抜に選ばれてもクラス対抗戦で他クラスの選抜ユニットに勝たないと任務は受けられないわ。これが一番の難題ね、向こうも選抜されてる生徒だから手強いはずよ。そこであなたがさっきも言っていたチームワークが試されるの」

「へーじゃあ気の合う4人がベストなわけだ。当然だな、命の危険がある任務に行くのに自分勝手な奴がいたら困るし」

そう言ってアリシアをしれ~っと見つめると

「何か?言いたい事があるならハッキリ言いなさい」

「いいえ、何にも御座いませんよ」

アリシアの疑う視線を受けつつも、ここで俺も選抜になった時の事を考えてみる。

出来る事なら今のうちから実戦経験は積んでおきたい、それに4人ならおそらくうちのクラスでは、先生の訓練を受けたノヴェルとキャナルはまず間違いなく選ばれるだろう。

そうなると俺がなっても連携は出来そうだ。そしておそらくアリシアも選抜になるだろう、個人としての能力が彼女は、他より頭一つは出ている。だがもし選抜になるとこいつと任務はかなり疲れるだろうが、それでも不利益は特になさそうだ。との結論になったので、

「よし、話はわかった。なんでお前がその事件を調べたいのかは、置いとくとして俺も選抜になるのは特に反対はないから手伝うよ」

そう言った俺に、アリシアはなぜか驚いていた。

「なんでそんな顔なんだよ、。俺に向上心があっちゃ不思議か?」

「ええ、全くその通りよ。あなたみたいな高級貴族は危険な任務には行きたがらないと思っていたものだから」

まあ貴族は確かにそういう所には行きたがらないが、俺の場合は違った。

「そりゃ違いないが、俺は別に家の階級とか気にしないからな、今の自分にとって有益な事に時間をさきたいし、もし選抜になるならノヴェルとキャナルもなるだろうから、特にいつもと変わらないしな」

「そう言ってもらえて少し安心出来たわ、あなたをこき使ってもいいってことよね」

「おい、なんでそうなるんだよ」

「なぜってあなたの出来ることなんてそれくらいじゃない、双子さんの協力も得られるなら十分よ」

「なるほど俺はあいつらを動かすためのエサってわけか」

「そうなるわね、でも私だってあなたの防衛魔術は評価しているわ。それにその古式銃の砲撃魔術もね、他にもまだ懐に何か隠しているみたいだし、それも次の機会では使って見せて、ペアの戦力把握は重要だと分かっているでしょ?」

見せてもいないのに言い当てられたので俺もチラッと見えた物の事を言い返す。

「分かったよ、じゃあお前も足につけてる銃は使えるんだよな?」

「この男一体どこに目を向けているのかしら?私のスカートの中を見たいなら床に頭を擦り付けなさい、足で踏んで剣で首を切ってあげるから、でもちゃんと気づいたようね。私のはこれは牽制ようだからあまり威力はないわ、その代わり魔力消費が安くすむの、あとは煙幕とマーク弾を撃てるくらいかしらね」

俺もちょっとスカートの中には興味があったが、首を切られるのと天秤にかけると、まだ重さが足りない。だがマニアックな連中なら喜んで床にすりつく事だろうな。悪いが俺はそこまで行ってないんだ。

そう思っていたが口には出さず、アリシアが教えてきたので、俺も自分の武器の性能を教える。

「俺のは魔力消費は大きいが、さっき見せた砲撃魔術と狙撃、その他にも散弾、爆裂魔術、通常砲撃魔術も出来る、それで懐の隠しているのはこれだ」

そう言って俺は隠していた小刀を取り出し説明する。

「こいつはちょっと特殊でな、使う事は出来るが今の状態だと抜けない、魔力ブレードを形成して戦うのが基本スタイルだな。だけど俺はこいつをあまり使いたくないから期待しないでくれ」

「今の状態だと?」

「まあそこはおいおい説明する事になるだろうさ」

この小刀には教えるわけにはいかない秘密があるので適当に流した。だがアリシアの質問は続く。

「だけど魔力ブレードは、展開が遅いはずよ。瞬時に対抗出来るか怪しいわね」

「一応格闘術もやってるから、そっちがメインだ、近接戦ではな」

「わかったわ。まあどちらにしても戦力にならないと思ってるから期待はしてないもの、そろそろ決勝も終わる頃でしょうし、起きれる?」

(なら聞かなくても良くないですかねアリシアさんや、、、)かなりのぞんざいな扱いだがもう気にせずに、

「わかった、もう大丈夫だ。」

そう言って俺はベットに腰掛け、体に異常がないかちょっと動かしてみるが、特に問題なさそうだ。

そう思いブレザーに武装をしまっていると、慌ただしい足音が聞こえ、ノックもせずにドアを乱暴に開け放ちその乱入者達は、保健室に入ってきた。

「アーちゃん!大丈夫‼︎」

「アデル無事か!何かされてないか!」

慌ただしい乱入者の正体は、現在決勝を行なっているはずのノヴェルとキャナルだった。

「おいおい、2人とも何をそんなに慌ててるんだ?」

「だってアーちゃんを気絶させた子が見てるって先生に聞いて、おかしな事をされてないか心配で!」

「アデルその女は、仲間のお前を生贄にしたんだぞ‼︎そんなのに任せておけるか‼︎」

まあ予想通りの反応だった。なのでいつものような自然さで2人に話しかける、

「あー、2人とも、もうその話はついたから気にしなくていいぞ、それよりお前達決勝はどうした?」

「またそんな事言って!アーちゃんには危機感が薄すぎます‼︎決勝なんて秒殺で勝ってきたわよ‼︎」

「よし、どこも何もされてないようだな、少し安心したぞ。だがお前一体なんのつもりか話して貰うぞ」

キャナルがアリシアを睨み意図を先程の意図を聞こうとしているが、明らかに険悪な雰囲気だ。

(うーんこの流れはまずいな、これからの事を考えるとこの2人とアリシアの対立は避けたい、)

そう思い助け舟を出すべきかアリシアに確認を取った。

「おい、アリシアお前さっきのクレアの一件でこの2人が来ること予測してたか?」

「ええもちろん、だからあなたは口を出さなくて結構よ」

今の一言でアリシアは俺の意図を汲み取ったようだ。それに何か考えがあるようだし言われたとうり、俺は様子見でいよう。やはり本人達で決着をつけた方が蟠りもなく終われるだろうし。

アリシアは腰掛けていた丸椅子から立ち上がり、2人を正面から見据え凛とした声で言い放った。

「ノヴェル バスクードさんに、キャナル バスクードさんですね。先程挨拶し忘れましたが、初めましてアリシア ディーン ベルリネッタです。先程の事について言い訳をするつもりはありませんし、謝るつもりもありません、それにあの場ではあれが最善手でした」

(ダメだった、、、うん、任せた俺がバカだった、、、)

こいつは人と合わせるのではなく、自分の正しさを相手に納得させて、解決する方法しかしないんだった。それではダメだ、今後の展開が手に取るようにわかってしまう。絶対にノヴェルとキャナルは、アリシアの言葉に激怒し関係が悪化していく。

「謝るつもりがない?ふざけてるの‼︎あなたは仲間の事をなんだと思っているの?‼︎」

「仲間を犠牲にしてあまつさえあれが最善手だと!そのアホな口を2度と聞けないようにしてやる‼︎」

凄まじい殺気が2人からアリシアに向けられたが、アリシアは全く動じず立ちはだかっている、それどころかアリシアも底冷えするよな目で2人を睨見返し受けて立つ気だ。

(やばい、一触即発の状態までもう少ししか余裕がない、止めるなら今しかない‼︎)

「お、おいお前ら、落ち着け、ノヴェルもキャナルも俺の話を聞け、アリシアも少し黙って聞いてろ、ここで問題を起こしてユリアーノ先生の心象を悪くする気か?」

選抜の事を持ち出すとアリシアは殺気を収めた、どうやらなだめる事が出来たようだ。

だが2人は、ダメだった。

「アーちゃん黙ってて、その女は許せないわ」

「アデル私達はお前の護衛だ、危険分子は取り除く必要がある」

(はあ~なんでこう面倒な展開になるんだ?)

これ以上話しても時間の無駄になると思いここは力技で一旦落ち着かせることにした。

「下がるのはお前達だ、主人である俺の話を無視する気か?」

俺が珍しく主人などという言葉を使ったのを聞き2人りも我に返った。でもまだ消化しきれはしなかったようで、2人から納得いなかいと抗議が返ってくる。

「アーちゃん、なんでそんな女を庇うの?」

「アデル気は確かか?」

「まあまあ、今から話すから、一旦座ってくれ」

とりあえず長話になるので、ベット脇に丸椅子を二つ並べ2人を座らせる。

それでもまだ熱が残っているのようだったので、穏便に済ませるため保健室に常備してあった、冷たい水を入れて2人に飲ませて頭を冷やさせてから説明した。

「さて2人ともまずはさっきのことについてアリシアからの話を聞いてもらいたい、俺の推測が正しければアリシアの言う最善手は間違っていないからな、アリシアも話してくれるな?」

「最初からそのつもりよ」

要らない一言を言いながらも説明が始まった。

「あの場ではレウルーラ王家のクレアさんにベリエル商会の会長の孫のルシャヤさんがいましたね、このクラスはなぜかそういった権力者の家の方がやけに多いようです」

「それは私達もわかっているわ、でもだから何?王家や商会がこの学校では関係がないことくらいわかっているわよね?」

「いいえ、関係があるんですよ、クレアさんが使った魔術ボルカニック バーストはたとえ訓練場といえどあの距離で使えば火傷や痣が出来てしまうほどの大威力です。そして相手のお二方、クレアさんにルシャヤさんは女生徒、ならこの意味がわかっていただけますね?」

そうなのだ、たとえこの学校内では社会階級など関係がなくとも将来では確実に関係がある。そしてあの場には王女のクレア、商会の会長の孫であるルシャヤがおり、顔や手に火傷や痣が残れば嫁入り前の娘には致命傷だ、それこそ家どうしの大問題に発展する恐れすらある。なのであいつは距離があり、男である俺に向かって撃たせたと思っていた通りであった。

まあそれにしたってバインドと魔術封じの刻印はやり過ぎだろとは思うのだが、ここは話をややこしくしたくないので黙っておいてやろう。(面倒になるのだけは避けたいし)

これを聞き2人も少し考えたようだ、明らかに保健室の中の空気が変わりつつある。

「でもだからってバインドと魔術封じなんて手が込んでませんか?」

(よく言ったノヴェル~そうだその通りだ~もっと言ってやってくれ~)

ここぞとばかりにノヴェルに心の中で声援を送っていたが、アリシアは尚も自分の正しさを主張する。

「ボルカニック バーストは広範囲魔術です、そしてその1番の恐ろしさは魔力を燃やすこと、防殻は魔力で出来ているので、ボルカニック バーストを耐えようとすると逆に燃やされるものなんです、だから魔術封じを使いクレアさんには、1番弾幕が薄い所を当てさせるため、バインドも使いました、これでもまだ納得できませんか?」

(クソ、そんな事まで考えてやがったのか、それは俺も知らなかった。でもちょっと待てよ、俺の記憶通りなら全弾俺に向かって飛んできてちっこいのだけ外れてた気がするんですけど?)俺は、今後のためと思ってこの事も飲み込んでやった。

「じゃあ、お前は初めから計算してやったと?」

「ええ、もちろんよ、私は意味のない事はしないよう心掛けていますから」

(はあ〜、、、よくもまあそんないい笑顔で嘘がつけるもんだ。ここまで美しくさ嘘を吐かれると怒る気すら湧いてこないとはいい勉強になった)

ようやくノヴェルとキャナルの2人も溜飲を下げたらしく、緊張が解けていたが、俺は寿命がさっきの一瞬で減った気がするほどストレスを感じていた。

「はあ、アリシア初めからその対応をしてくれないか?心臓と精神に悪い」

「無意味な事はしないと言ってるでしょう」

(俺の寿命はどうでもいいと思ってるのか、、、)

今更言い争いはしないが、とことん俺の事が嫌いなみたいですね、アリシアさんやい。

「そうですか、、、なら選抜の件は俺から話すが、いいな?」

そう言うとアリシアは頷き、俺に説明の場を譲ってくれた。

「さっき少し口にしたが、アリシアはクラス選抜の4人に選ばれて、調べたい案件があるんだと、それで選抜になるために、最初の先生の攻撃を防いだ俺とお前達3人の誰かと組みたかったらしい。でもお前ら2人が先に組んだから残った俺と組んだってこと。さっきの試合では、チームワークはどこのペアもさほど出来ないだろうと考えて、あえて個人の能力をアピールしたんだと、で4人を決めるのはユリアーノ先生だからお前達2人はまず確定だろ?実力と信用も含め、それに俺はこの話が悪い話じゃないと思うし何より、お前達がなるのに俺がならなかったら断るだろ?」

一通りを説明しノヴェルとキャナルの反応を確かめる。

「わかったわ、アーちゃんの言うことは信じる。だから選抜もアーちゃんがなるなら私達もなるわ」

「いいだろうアデルだが条件がある。お前の護衛は私達だ、そしてその事からこちらも確認したい、アリシア少なくとも仲間であるアデルだけは裏切らないと約束しろ、主人に危険が及ぶような事を看過するわけにはいかん。」

「そう、キャナルが言ったように、私達とユニットを組みたいのなら約束して、さっきの事は事情はわかったわ、でもこれからはああいう状況にならないようにして、つまり無茶に1人で突っ走るることはやめて、それが条件よ、どう?」

「いいでしょう、その条件を呑みましょう、よろしくノヴェルさんキャナルさん」

俺の説得は上手くいったようで、2人ともアリシアと握手を交わした。

( ようやく一件落着か、なんだか疲れた、でもこれで仲直りだ。)

ノヴェルもキャナルも緊張の糸が切れたようで、2人とも顔に微笑みが戻っている。

アリシアも2人には言葉も丁寧になっているし、俺に向けるような冷たい目ではなくなっていた。

(あれ?俺だけこいつ扱い酷くない?)

そんな疑問が頭をよぎったが今更なので口には出さず、内に留めた。

やっと3人が落ち着いた所で、もし本当にユニット組む事になった時の事を考えると、俺がこれ纏めなきゃいけない事に、数分前の事で気づかさる。

(いや、無理でしょ、、、)

こいつら3人は例えるならば、ライオンとトラとオオカミを同時に手懐けろと言われているようだものだ。

そんなお先真っ暗な未来に進んでいるようにしか、今の俺には思えなかった。

その後4人で訓練場を抜け教室に戻ると1-2はHRを行なっているところで、物音を立てないように出来るだけ静かに後ろ側から教室に入ると、

「あら、雨宮君、起きましたか、丁度連絡事項を言う所だったので、自分の席について下さい。後ろの3人も先生の代わりに見に行ってもらってすいませんでしたね。では全員揃った所で、明日以降の授業の内容と説明、それとランク試験についてを説明します。説明が終わったら個人課題を渡して、受け取った人から今日は解散です~」

「さて明日の授業は1.2限に防衛魔術の基礎を復習します、そして3.4限で実戦演習をして土曜日なので午前で終了です、ランク試験は来週の月曜日に行われ、1.2限が各種測定、3.4限でランク試験を行います、防衛魔術にまだ自身のない人は明日の授業でカバーしましょう~火曜日からは通常授業の形態になるので、お昼で帰らないで下さいね~通常授業は、1.2限に教室で学習し、3.4限で1.2限の実習をします。5.6限では実戦を想定した戦闘訓練や個人指導となり、火曜日と木曜日は7限まであって7限は選択授業です。それぞれの担当講師の先生がいらっしゃる教室に移動して下さい~ちなみに去年の1年生のランク試験の結果はBランクが2人で、Aランクが1人出て、それ以外は全員がDランクだったそうですよ~うちのクラスは先生方が期待している子が何人かいるので皆さんも頑張って下さいね~最後に皆さん1人1人に個人課題を渡しますので、取りに来て下さい~これを頑張ってくれれば、Cランクくらいにはなれると思いますよ~では受け取った人から解散です~自己紹介した順で貰って帰って下さい~」

これで今日の学校は、終わりだ。

あとは個人課題とやらを貰うだけ、今度も順番が最後の方になったので、待ち時間の間ノヴェルとキャナルに今日のこの後の予定を相談して暇を潰す。

「さてこの後どうする?そのまま帰るか、それとも外で昼飯を済ませて帰るか?」

「そうだねー私はお家で食べてもいいけど、せっかくだし外で食べるのもいいかもね!」

「よし!そうと決まれば行きたい所は何個か候補があるんだ、何処に行くか3人で決めよう」

そう言うとキャナルが、カバンからグルメ雑誌を取り出した。付箋も何個もつけられている、学校の物は全部ノヴェルが用意していたのに、なぜカメラやら雑誌が入っているのだろうか?なんとも用意周到である。

そうやって3人で盛り上がり出していると、ふと思いつき、普段の俺なら絶対にしない行為を勇気を出して、行なっていた。

何度もいうが普段であれば絶対にしない、が相手が相手なだけにこうでもしないと馴染める気がしなかった。仕方なくそう、仕方なくだ、極めて自然に、ノヴェルやキャナルに話しかけるように、意識して話しかけた。

「なあアリシア、お前この後用事とかあるか?」

そうだ、俺のペアになった奴であり、この先あらゆることで関わる事になる、アリシアを誘ってみたのだ。

「あなた、私に気があるの?」

そんな俺の気遣いを全く悟らず、アリシアは俺の誘いをあらぬ方向に勘違いしやがった。

どうしたら今のだけでそこまで想像出来るのだろう、しかもなんの疑いもなく言いやがるし、冗談などではなく本気でそう思って言ったらしい。だがアリシアと同じ事を思った奴が他にもいたらしく、

「アーちゃん、さっき保健室でまさかとは思ったけど、やっぱりそうなの?」

「アデルお前、アリシアに妙に肩入れしてると思ったら、そういう事だったのか」

とまあ盛大な勘違いをしてくれていやがった、やはり慣れないことはしないに限るようだ、、、

「おい、なんでそうなるんだよ!ただ昼飯に誘っただけだよ!勝手に勘違いするな!」

「なぜ?私を誘う必要があるのか理由を教えて貰えるかしら?」

「お前俺とペアになったし、それにこの2人とも仲良くなって貰いたいし、仲良く出来るように昼飯でも皆んなでどうかなって思っただけだよ!」

「あら、意外とまともな理由があったのね、初めてだわ私に下心以外の理由で話しかけて来た男子は」

今の言葉で思い出したが、そういえばこいつ喋らなければかなりの美少女だったな。そりゃ男に対して警戒心の一つや二つ持つかもしれん、俺が浅慮だったと諦め、キャナルとノヴェルのお説教受けた。

「アーちゃん私達で美少女耐性付いちゃってるのは、わかるけどこの学校には、貴族以上の階級の人しかいないから、その辺の男友達に話しかけるみたいな言い方は失礼よ。だからちゃんとした説明を混ぜながらにして頂戴、そうしないと誤解されちゃうわ」

「誤解したのお前達だよな?」

「ノヴェルさらっと自分のこと美少女って言ってるけど恥ずかしくないか?」

俺とキャナルのツッコミには聞こえてないようだった。

「まああなたにそんな大胆なことする度胸があるとは思ってはいないけれど、ノヴェルさんの言うとうり気をつけた方がいいと思うわよ」

「あー悪かったよ、だから誤解するなよ?俺は純粋にお互いを知るための場を設けたかっただけだ、でアリシアどうなんだ?」

「いいでしょう、そういうことなら問題ないわ」

昼飯一つ誘うのに酷く苦労したが、なんとか交流の場を持たせることには成功した。

「よし決まりだな、っとそろそろ俺らの番か、どこ行くかわ任せるよ女子3人に」

そう言って俺は個人課題とやらを受け取りに行くと、

「はい、アデル君これが君の課題です、君は伸びしろがありそうなので、先生頑張っちゃいました~」

手渡されたそれは、なんと1.2枚ではなく、ちょっとした教科書並みの厚みがあった。

「先生こんなのいつ作ったんですか?」

「今日の試合の最中に作ってましたよ~特にアリシアさんとアデル君は面白いですし〜いいペアを組みましたね〜」

ユリアーノ先生はそう言って俺に微笑んだ。

今の先生の反応から察するに試合は悪くなかったのであろう、アリシアの戦略通りに進んでいて安心した。

「アデル君ランク試験期待していますよ~ではまた明日ですね~」

「はい、また明日からお願いします、ユリアーノ先生お先に失礼します」

俺は先生との、帰りの挨拶を済ませ廊下に出て、後の3人を待つ。

「それにしたって俺のだけなんでこんな分厚いんだ?それに試合の最中って言ったって全員分作ったのか?」

もしそうならユリアーノ先生は、思った以上に高スペックな人のようだった。

俺が出てから少しして3人が出てきて、行き先はここから少し山に向かって歩くとある、帝都を見渡せる小高い所のオシャレなカフェに決定とのことだった。

入学初日とあり、広すぎる校舎に右往左往してしまい、その度にアリシアに罵倒されながら正門に出た。

昼飯を食いに店に行く途中

「アデルは意外とグイグイ攻めるタイプだったか」

「びっくりよね、でも確かにアリシアさん美人だしアーちゃんの好きそうなタイプの人じゃない?」

「だがあの性格だぞ?アデルの言うとうりペアとして仲間として接してるんじゃないか?」「それにしてわ信頼しすぎじゃない?今日あった人にアーちゃんやけに優しいし」

「だからかもしれないぞ?アデルは人に好意的に見てもらえるよう初対面では猫被ってるからな」

「それはないと思うわ、私達と話すときみたいに会話してるし、言葉を選んでないものアーちゃん」

「それもそうか、まあアデルは基本的にお人好しの優しい奴だからな」

「アーちゃんが誰にでも優しいのは知ってるけどそれにしたって警戒心薄過ぎよ」

「アリシアも目的と考えがあって行動してる、アデルはそれがわかっているし理解もしてるみたいだから信用してるんじゃないか?」

「だけど心配だわ」

「そうだな、仕方ないアリシアには悪いが少し様子を見させてもらうとしよう」

「わかったわそれでいきましょう、不審な点がなければ後で謝りましょう」

先頭の2人がこんな会話をしているとはつゆ知らず、俺は2人の少し後ろをアリシアと並んで歩いていた、だがどちらも無言でさっき誤解されたこともあり話しかけずらい。

(何か話すか?いやアリシアは話すのが得意なタイプじゃないだろう、あの会話を聞いていたらわかる。だけど誘ったのは俺だしつまらない奴だと思われて今後チームの会話がなくなったら情報共有に支障が出るしな、でも何話しゃいいんだ?それに口を開けば罵倒か皮肉で返してくるからなー話しするの怖いんだよなー、特にあの目、全身凍らされそうだしやっぱりやめようかな話しかけるの。触らぬ神に祟りなしとは昔の人はよく言ったものだ。)

そうやって1人思考しては行き詰まりをくり前し、時間だけが流れていた、がそこで

「あなた何も聞いてこないのね、さっきの選抜の話少しは疑ったりしないの?」

なんと驚くことに、アリシアから声をかけてきた。

「疑う?お前のどこを疑うって言うんだよ、俺は自分が信用されてない事くらいわかってるぞ?」

「ならなぜ私の話は信じるの?」

「うーん、感?それに俺に対してはともかくノヴェルとキャナルにはまともな対応をしていた、話も筋が通ってたし納得も出来たからそれだけで十分すぎると思うがな」

「甘いのね、警戒心が薄い人は利用されやすいから用心してちょうだい」

「人を見る目には自信があるんだけどな、、、」

「確かに、美人を見る目はありそうね」

「失礼な!人をケダモノみたいな目で見るな!それにお前さらっと自分も含んでるがどうかと思うぞ?」

「事実なのだし問題ないわ、それに否定はしないのね、やっぱり私に気があるの?」

「面倒くせ~、まあでもお前本人に多少興味はあるのは否定出来んのだが、昼飯に誘ったのは4人で話して仲良くなるためだ、妙な考えはないよ」

「本心はわからないけれど、どうしてそんなに仲間意識を持ちたいのよ」

(やはり触れたのは間違いだったか?)

こいつと話してると心が見透かされてる感じがして落ち着かない、俺の考えが読まれてる気すらする、下手に隠さない方が良さそうだ。

「お前って鋭いな、まあいってもいいか、もし本当に選抜ユニットになったら、お前と俺達3人で任務に行くことになるだろ、そしたら当然危険があるだろう、そういう時ノヴェルとキャナルは立場上、俺の安全を優先しかねない、そうなるとお前の危険が増すわけだが、それでもいいと言うだろうなお前なら」

「ええ、そうなることも分かっているわ 」

「だけど俺は仲間を捨てて自分だけ無事だなんて絶対に嫌だ、これはお前がなんと言おうと譲る気は無い俺の意思だ、2人にも話したことがある、まあ1番いいのはそう言う危ない状況にならない事だがこればかりは分からん、そしてその時あの2人が俺を理由にお前を捨てるのは俺には許可出来ん、だからノヴェルとキャナル2人とお前が仲良くなって貰いたいんだ、そうしたら躊躇してくれるだろ?友人を捨てるような奴らじゃないからな、だから俺は嫌ってくれてもいいが、あの2人とは仲良くしてくれ、そうじゃないとユニットが崩壊しかねん、ユニットの維持はお前の調べものをするにために絶対必要だしな、だけど意識してやられるとギクシャクするからこの話はしたくはなかった、そう思っていたが黙って流されてはくれないみたいだから話したんだ、分かってくれたか?」

俺は本心から心配していた、保健室での会話と印象は考えうる最悪の状態だった。

それを回避するために、何としても3人には友達になって貰わなければならない、そのために一手先手を打ったが、内心を言ってしまったが、果たして吉と出るか凶と出るか。

「妙な考えがあるじゃない、嘘は好きではないし、かと言って正直過ぎるのも困るから試したけれど、貴方相当な甘ちゃんだったのね。そんな考えが浮かぶ時点で臆病者の烙印を押してあげる。でも必要な事ではあるわね。分かったわ、最善を尽くしましょう」

そう言うとアリシアは冷たい目を向けなくなっていた、それどころか微笑みすら見受けられる、それだけでは彼女の心中は測れないが、どうやらこいつは思った以上にまともなようだ。

これは安心しても良さそうだな、ノヴェルとキャナルともいい友達になってくれるだろう。

「はあよかった、出たのは吉だったか」

「そうとも限らないわよ、貴方の評価は下がる一方だから」

「いいよ俺は、どうせ評価なんていつも落第ギリギリだからな」

「それなら他人の心配より自分の心配をしなさい、役立たずはユニットから外すわよ」

「分かってるよ、だがその前に選抜に入るために頑張んないとな」

「向上心があるのはいい事だわ、なら一つ助言をして上げましょう、あなた武器に頼りすぎよ。その銃を使わないで訓練しなさい」

「それを言うならお前だって魔剣持ちだろうが」

「私はこの剣の力は使ってないわ、あなたはそれに攻撃の要を頼ってる。それだといつまでたっても3流よ」

痛いところを突かれたな。

「分かったこれからはその助言に従うよ」

「欠点を理解していて放置していたのね、どこまで甘ったれでゴミなのかしら」

「悪かったな甘ったれで、でもお前に迷惑をかけないようこれから頑張るからペアとして1年よろしくな」

「ええよろしく、甘ちゃんなお荷物にならないよう私が鍛えて上げるから明日から覚悟しなさい」

「お前の指導はキツそうだな、でもやるよ、お前達の役に立てるようになりたいからな」

そうやって俺はアリシアに笑いかけていた、初めてかもしれないこいつに笑ったのは。

それを見てアリシアは驚いていたがすぐにいつもの鉄仮面に戻った。だけどその鉄仮面に冷たさはないような気がする。これきりアリシアも俺も話すことがなくなり黙って歩いていたが、不思議と今まで見たく気不味さは感じなかった。

先を行く2人について行って10分目的地のカフェに到着した。

昼時なのに人は少なく感じたが、ウェイトレスさんにテラス席へと案内される。そこからの景色は一言で言えば芸術だ。さすがわ誰もが一度は訪れたいと思う街帝都、帝都大を中心に完成された都市で、後ろは山に囲まれ前には海が広がり遠くに島国が見えている。

元々商業の中心地だった帝都、山を越えて真っ直ぐ先には王都があり、そのため昔から軍事的にも要所であるため要塞が建てられた歴史を持つ、守りでここ以上の場所は今の世界にはどこにもないだろう。だが戦争があるたびに周りは焼かれてしまい学園以外は比較的に新しい、そして島国との交易が盛んになったここ50年の間に急速に発展した比較的新しい都市だ。

4人ともオーダーを済ませ、メニューを見たがカフェにしては色々あって悩んでしまう、料理が運ばれてくるとどれも美味しそうで値段の割に多く感じるお得な気分だ。さて問題のお味のほうはと、

「なあ、なんでここ人少ないんだ?絶対当たりだろ」

「本当よねー!穴場なのかな?」

「ふん、やはり私の目に狂いわなかったな」

3人とも太鼓判を押していた。そうやって昼食を楽しんでいたが、アリシアだけ食があんまり進んでいな事に気がつき。

「アリシアどうした?嫌いなものでもあったか?」

「い、いえ何でもないわ、ただ大勢で食べるのは久しぶりで、あと私に嫌いな食べ物はないわ」

「ふーんじゃあ自分で料理とかしてるのか?」

「いいえ、料理は使用人の仕事だから奪うわけにいかないもの、私は最低限の栄養が取れればそれで構わないし」

「はあ~やっぱりその血色の悪さは食べてなかったからか、色白にしては肌に赤みが薄いと思ってたよ。しょうがない、お前好きな食い物はなんだ?」

「どこに注意を向けているのかしらこの変態は?それになんで好きな食べ物を聞くのかしら、私の好みを知ってどうする気?」

アリシアがとたんに俺から距離を取って、自分の身を抱いている。

「ああ、すまんな、そう警戒しないでやってくれアデルは料理に興味があるんだ」

「変な意味で聞いてないのよ、アーちゃん一緒にご飯皆に聞いて覚えてるの、それで次会う時に自分で作っちゃうの」

とっさに2人が誤解を解いてくれたから助けられてしまう。

「驚いた、あなたみたいな人に料理が出来たなんて想像すらしなかったわ」

「ねー意外でしょ、昔は私が作ってたし初めて見た時はビックリしたんだよ~」

「アデルは手先が器用だからな、自分で私達が作った料理に味足して研究するようなやつだったし、いずれはやるだろうとは思っていたがいつの間にか越されていた、しかもたったの2年でだ、一体何がそこまでさせたのか」

「まあ男が料理出来るのは女子は気持ち悪がるよな、気をつけよ」

これまでの会話の流れから、男が料理出来るのは女子からするとあまり良く思われないようだと学習し、疑がいを掛けられないよう今度からは隠しておこうと思った。

「別に気持ち悪いなんて言ってないわよ、ただ理由は気になるわね、料理を始めたきっかけを教えて貰えるかしら?」

(そうか理由次第では気持ち悪がるのか、、、)

やはり隠していこうと思うが、こいつらには言ってしまったので諦めて説明する事にした、誤解を解くためには早めに正直になる事が吉だ。

「まあいいか、俺は12の時に田舎の婆ちゃんの家で暮らしてたんだがそこが旅館をやってたんだ、そこで厨房の仕事をしてた夫婦と仲よくなったんだ、それでたまに教えて貰ってな将来1人で暮らす時役に立つからって、そうしたらなんか興味が湧いてやってるうちに少し作れるようになったのが13の時、でその夫婦に気に入られてな厨房に入れて貰えたんだ、そこでもう1年修行したんだよ、な?別に普通だろ?だからこれからどっか行く時作ってやるから好みを教えてくれよ」

「へ~そうだったんだ~てっきり好きな子とか出来ちゃって手作り弁当を作ってあげようと頑張ったのかと思ってたよ~良かったよアーちゃんが料理始めた理由が邪なことじゃなくて」

「アデルは興味が湧いたこととなると物凄い力を発揮するからな、2年で越されたのは癪だが」

「そ、まあ予想していた理由の中では最も普通なものだったわね、さっきの質問だけれど洋食よりは和食が好きかしらね」

(よしよしなかなかいい感じで、受け入れられたし、やはり正直になるのはいいことのようだな)

だがここで油断して余計な事まで口走ってしまった。

「分かった和食な、ランク試験の後にでもまた集まろうぜ、その時持って行くから楽しみにしてろよ」

そう言って次の予定を立てにいってしまっのだ。

俺は女子をまた食事に誘っていることに後から気がついたが、一度口に出してしまうともう遅い。

「すごいなアデルさらっと私達のフォローから一気に次の予定まできめにいくのか、相当に手慣れてるな」

「アーちゃん積極的!それでいて極めて自然体?!なんてことなのいつのまにそんな手を覚えちゃったの!」

「あなた結構プレイボーイなのね、やっぱり下心があるんじゃないの?」

(女子3人からこんな評価を頂いてしまった。なんと不名誉な、、、)

「ああ、悪かったまたやっちまったな、、、この2人も一緒だから安心してくれ下心なんてないから」

「どうだが、いまいち信用ならないわね」

「じゃあほかの男子でも呼ぶか?」

「いやよ、ゴミが増えると料理が不味くなるわ」

「私達は別にいいけどやっぱりまだ知り合ったばかりだし」

「そうだな私達3人に誘われたら来ない男はいないと思うが、着いて来るやつは大半が良からぬ事を考えてるからな」

「分かった、じゃあなしでいい、いずれユニット組んで任務に行けば飯作る機会はあるだろうしな」

「そうね、だけど次集まるのは賛成だわ、ランク付けされれば実力もだいたい底が知れるし、それで今後の連携や役割決めに役に立つでしょう、場所はここでいいでしょう、私もこの店の雰囲気や味は気に入ったから」

「そうか、じゃあ決まりだな次もこの店で」

アリシアなりに俺とさっき話した内容からちょっとは踏み込んでくれたみたいだ、後で礼の一つでも言うべきかもなと考えながら、その後の会話もなかなか上手くいき無事第一回ユニット交流会は幕を閉じた。

アリシアは家が山方面にあるようで店で別れ、俺達はまた来た道を戻りつつ、今日の事を振り返る。

「アーちゃん偉いね、ちゃんと私達がアリシアさんを理解出来るように誘ってお話しさせたんでしょ?」

「バレてたのか、、、なんだよ誤解されながら頑張った事がバカみたいじゃないか」

「まあお前の考えなんてすぐに分かったが、アリシアも好意的だったのは意外だった、それもお前が入れ知恵したのか?」

「いいやユニット組みたいなら仲良くしてくれって道中話したくらいだ、あいつも悪い奴じゃないしお前達とはいい関係でいたいんじゃないか?」

ここで俺は少しアレンジを混ぜつつアリシア個人の努力という形にし、ノヴェルとキャナルのアリシアに対する好感度を上げに行く。(さっきの礼をここで返しておこう)

「うん、いい人だって事はわかるよ、でもアーちゃんを危険に晒すような事をまたされると困るからちょっと警戒してたの。」

「今日の訓練みたいなことが今後起こらなければ私達もアリシアを信用出来る。もし本当に選抜になればアデルお前が私達ユニットのある意味要だ、その事をよく分かっておけ、私からはそれだけだ。」

「そうかありがとな心配してくれて、だけどアリシアは口は悪いし意地も悪いが間違った事は言わないから大丈夫だと思う」

そう言うとなぜかノヴェルとキャナルは互いに顔を見合い何か話して頷いていた。

「よしよく言った、アデルお前はいい目を持っているな、私達はお前を応援するよ、アリシアと仲良くな」

「アーちゃん、もし成功したら寂しいけど私達は陰ながら見守ってるから!」

なんだろう、、、どこかで会話がズレてしまったらしい、どこかに違和感を感じる。

「お、おいお前達なんか勘違いしてないか?俺はお前達がアリシアと仲良くして欲しくて言ってるんだが」

「大丈夫分かってるよアーちゃん、アリシアさんと私達が仲悪いと関わりづらいからだよね」

「ああ、私達はお前の従者だ立場は弁えている、一歩引いてやるから安心しろ」

うん?まただどこか違和感を感じるぞ、だが概ね合ってるからどこがどうおかしいのかわからない。なんだ?一体さっきこの2人は何も頷きあっていたんだ?いくら考えても答えがわからず家に着き、夕飯を作り、ふろを済ませ、学校初日の疲れもあり早くに寝てしまい、起きたらすっかり忘れていた。

そして俺が寝たあとノヴェルとキャナルはリビングで話していた。

「ノヴェル、アデルはどうやら本当にアリシアにお熱なようだ」

アデルが感じた違和感の正体はこれだった。

「ええそうね、まさか初日から食事に誘いをし、次の予定すら立て、おまけにあれだけ私達にアリシアさんをいいイメージで見せたいだなんて、疑いようがないわ」

「だがアデルは気がついているのか?あいつはずっと誤解するなと言っていたぞ?」

「アーちゃんだって年頃の男の子よ本心を知られるのは恥ずかしいからごまかしてるのよきっと」

「そうかそういうものか、アデルには16歳らしい青春を送って欲しいからな、必ずや成功させてみせる」

「そうねアーちゃん私達がずっとそばにいるし、そのせいでこれまで女の子に興味なんて持ってなかったし、周りも寄ってこなかったものね」

そう言って2人は、昔の事を思い出した。

3人は幼馴染で親同士も主人と護衛であったため、幼馴染というより、兄妹のように育った。いつも3人一緒にいるのが普通で離れている事など一度もなかった。

「ああ、私達はアデルの事が昔から好きだ。それはもうお前も私も今後も変わることはないだろう、恥ずかしくて面と向かって言えたことなどないがな」

初等科に行く頃には2人ともアデルに好意をこってしまっており、アデルに近ずく女子を見つけるとその子に見せつけるように、行動してしまった。そのためアデルに初等科の時から女の友達などいるはずもなく、それどころか話しかけてくる人すらいなくなった、アデル本人は大して気にしていなかったが、2人は自分達がアデルから普通の学校生活を奪ってしまったと、中等科に上がりアデルと離れる事でそれに気がつき、今も罪悪感が残っているのだ。

「うう~でもアーちゃんが他の女の子に夢中だなんて、悔しいよ~寂しいよ~見たくないよー」

「ノヴェルそれは私も同じ気持ちだ、だが幸いこの国の貴族制度は、一夫多妻を認めている、アデルの正妻には私達はなれないのは双子である時点で諦めたはずだ、だから側近か妾でもあいつの隣にずっといられるなら護衛だって出来なければと厳しい軍の訓練にも行ったんだ、分かっているだろう?だから泣くな酷い顔だぞ?髪を降ろしたら私と瓜二つなんだから頼むから人前で見せないでくれよ?」

「う、うん ぐすん 分かってる、分かってるけど、うう~」

「あーこらクッションに顔を埋めるな鼻水がつくぞ、全く私と2人だとお前は子供になるなー」

「いいじゃない!いつもお姉さんしてると疲れるの!ウチには何も手伝わない妹がいるからね!」

「はあ、分かった分かった悪かったな、何も手伝わなくて、謝ってやるから落ち着け」

「うん、わかった、すーはー、よし、落ち着いた、だから話の続きをしましょう」

「よし、じゃあ話すがアデルにその気があっても、アリシアにはあまり見受けられないだから私達でサポートしてやろうという事だ」

「でも具体的にはどうするの?」

「アデルとアリシアはペアになっているから今後1年の間が勝負だ。この間に成功しなければ可能性は低くなる、だからまずはアリシアの目標である選抜にアデルと私達もなるぞ、そうすればそばでサポート出来る」

「なるほど、そばに居てあげられたら私達も嬉しいし、そのためにはアリシアさんと仲良くなる必要があるわね」

「そうだ、だからしばらくは様子見に徹する方針は変えない、そしてアリシアの情報を集めるぞ」

「なんで?何かするんじゃないの?」

「アデルは思った以上に積極的だ、だから何もしなくてもアリシアとの距離を縮め行くはず。その時アリシアが喜びそうな事を私達が教えてやれれば、アリシアもアデルを気にいるだろう、本来ならアデルがやるべき事だがアリシアはガードが硬いタイプだからな、あいつより先に私達が仲良くなって聞き出して教えてやるくらいはセーフだろうさ」

「あえて普通に接してまずは信頼を得てからくっつけに行くと、そういうことね?」

「ああ、時間は1年ある、それだけあればあの要塞アリシアもなんとか出来るかもしれない」

「要塞ってそこまでいわなくても、ってそんな事ないか、確かに手強そうだわ」

「そうだろう、だがそどんな守りも穴ひとつで崩せるものだ、その穴を私達が見つけアデルが開けていけば陥落させるのも夢じゃない」

「決まりね、じゃあアリシアさんと仲良くなる事が目先の目標ってことで!」

「そうだこれならアデルの言ってた事とも外れないから怪しまれる事もないだろうさ」

こうしてアデルの知らぬウチに盛大な勘違いが起こっていたが、アデルの望みと同じ方向をいた。


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