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隣の席のイケメンお姫様  作者: 井邑ハイリ
1/5

思わぬ展開

、、、、、、え、なんで?


私は隣の席に座る人物を見た瞬間、心の中で思わず叫んだ。

女子高を卒業し、男子への免疫がほとんど0のまま、しがない共学の私立大学で新生活をスタートさせ、早1年。なんとかグループワークなどで男子とも喋れるくらいになった私は、大学2回生の春、とある授業でイケメン君の隣の席になってしまいました。


先週まで隣の席は藤原さんやったのに、、、なんで入れ替わってんの?


学籍番号で席が決められ、隣同士で喋ることも多い講義で最初、隣に座るのが大人しい女子でほっとしたというのに。

しかも隣に座るのが、専攻内で割と派手なグループに属し、男女問わず人気な、地味な私とは全く接点すらもないような彼(名前は残念ながら知らない)と講義内とは言えども、どう話せと?!

もはやパニック状態の私の頭を置いて、講義はあっけなく進んでいく。

向こうは何してるんだろう、ふと顔を向けてみると、何やらルーズリーフを取り出し、ペンを走らせ始めた。どうやら、落書きを始めたらしい。


こんな派手な人でも絵とか書くんや、、、てか、上手っ!


思わずじっと見つめてしまっている自分に気付き、慌てて、前に映し出されたスライドに目を戻す。が、それでも気になってしまい、ついまた目を向けてしまう。

彼は絵に集中している様子で、一心不乱に細くて繊細な手を動かしている。


なんか、意外やなぁ、、、、、、


人は見かけによらないということを何となく、実感した瞬間だった。




「なぁ、あのメガネかけていつも帽子被ってる男の子って名前なんて言うか知ってる?」


講義が終わり、昼休みに食堂でお弁当を食べながら、友達に聞いてみる。


「あー、あの軽音部かなんかの人やろ?」


「確か、久野ひさの いつき君? だったと思うよ」


高校からの付き合いになる江藤えとう 円香まどかと、岡山の方から来た新海しんかい 美嘉みかが順番に教えてくれる。


「久野君って言うんや、、、。なんか、今日、さっきの講義で急に隣になったから気になってん」


私の言葉に真っ先に反応したのはミーハーな円香だ。


「何? そっから恋が始まっていく気するなぁ。イケメンと凡人との恋愛ストーリー。恋愛ものの王道や!」


「何でやねん! そんなことないわ。漫画の見過ぎちゃうか?」


「まぁ、優貴ゆうきはその男勝りな性格と、コミュ力の無さをなんとかしてからやな」


「はぁ? 余計なお世話や!」


私達のやりとりに楽しそうに笑う美嘉。彼女はちなみにこの中で唯一の彼氏持ちで、二人で大阪に出て来たらしい。


「美嘉をちょっとは見習いや。ほら、この美味しそうな弁当!」


「そんなことないよ、円香。全部出来合いものだから」


そう笑う美嘉の弁当箱を覗き込むと、おかずにはハンバーグに卵焼き、れんこんのきんぴらにプチトマト、ご飯には小さな俵型のおにぎりが綺麗に並んでいる。これが出来合いなら、私の冷凍食品だらけのお弁当や、円香のコンビニ惣菜パンはどうなるのだろうか。


「美嘉はほんまいい嫁になるよなぁ。あー、健人たけと君が羨ましいわぁ」


1回生の時の学園祭で一度だけ会った爽やかな青年を思い出し、しみじみとする。マジで、美嘉を泣かせたら私が横取りするからな、このヤロー。

こういう考えが、女子力を下げる原因なのは気づいてもスルーだ。


「優貴は女の子にはモテるのにな。高校時代とかすごかったもん」


「そんなん男役の人は、基本みんなモテてたやんか。なっち先輩なんかほぼ毎日校舎裏やぞ」


「まぁ、なっち先輩、彼氏おったけどな」


高校時代、円香も私もそこそこ強い演劇部に入っていて、私は三年間、ほとんど男役で円香と夫婦や恋人をすることも多かったのだ。

ちなみに今は、3人で大学の映画製作サークルに入っている


「そうなんだ。二人の高校の時の芝居、観たいなぁ」


演劇を観るのが好きな美嘉はよくこういうが、私達は正直、ほとんどが黒歴史だと思っているので、DVDもあるものの、断固拒否している。


「まぁ、とにかく恋するためには女子力をもっとつけなさい!」


「いや、だから恋ちゃうて」


円香の決め台詞にため息を吐きながら、静かに食べ終わった弁当箱に蓋をした。

てか、円香、お前も彼氏おらんやんけ。




その後も退屈な授業を終え、三人で喋りながらのんびり階段を降りていると、後ろから5、6人のグループになっている男子達が駆け足で降りていく。

その最後尾にいた大柄な男子が、去った後、ふと足元をみると学生証が落ちていた。


石塚いしづか、学生証落としてんで!」


私の言葉に振り返った石塚は、慌てて戻って来たので、私はすっと差し出す。


「おー、ありがとう、咲間さくま


笑顔で受け取ると、仲間達と忙しなく帰って行った。


「あー、やっぱあいつってなんか無理やわー」


石塚達が完全に去って行った後、円香がぼそりと呟いた。


「んー、そうかなぁ」


石塚は一応、私が唯一サシで喋れるようになった男子なのだ。しかし、円香はソリが合わないと、あまり関わりたくないらしい。


「だって、石塚って誰に対してもなんか偉そうじゃない?」


人を小馬鹿にしてるのがなんか伝わってくるもん。という円香に美嘉も頷く。


「円香はそういう人嫌いやもんなぁ」


そんな2人に苦笑していると、円香が真面目な顔をしてずい、と詰め寄ってくる。


「優貴は何やかんやお人好しやから心配やわ」


円香の言葉にちょっとだけむっとして、負けじと言い返す。


「いや、告白してきた他校の男子に同情してずるずるいって、ストーカー産み出した円香に言われたくないわ!」


「あれは確かに恐かった、、、」


美嘉と2人で言うと、円香もさすがに思うところがあったのか、うっ、と渋い顔をする。


「ま、まぁ、でも美嘉も頷いてたし、気をつけたほうがええよ、優貴」


慌てて話をそらす円香に、内心、逃げたと、思いつつも、確かに美嘉が言うならとも考える。

この中で一番人を見る目があるのは美嘉だ。彼女は将来、探偵にでもなれるんじゃないかと思うくらい、人の性格を鋭く見抜く。


「まぁ、美嘉が言うなら気をつける」


「それ、私は信用出来へんってこと?!」


「まぁまぁ、とりあえず何事もないことを祈るよ」


その後も賑やかに会話を交わしながら、帰路についた。


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