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彼方で綴る英雄戦記  作者: セイラム
終焉へ向けて
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彼方より現れるは希望

 精神論という言葉がある。

 

 諦めなければいつか必ず夢は叶う。

 努力を重ねれば実現不可能な事など存在しない。


 その言葉は世の中の弱者に勇気と絶望を同時に与える。

 たとえ夢に届かなくても、いつかきっと。

 そんな思いを抱き続けるのは、輝かしくもあり残酷でもある。


 なぜなら、叶わない夢もこの世には存在するのだから。


 辛く苦しい努力を重ねても、その全てが無為に帰す。

 それは絶望と呼ぶに相応しい。


 

 そう、そのはずなのだ。

 努力や根性では越えられない壁が、この世界には絶対に存在する。


 だというのに、“影の少女”はその法則に縛られていない。

 肉体を焼かれ、病に侵され。

 人であるのなら、いいや生物であるのならば生きていてはいけない。

 そんな状況でありながらも、目的のために生を繋ぐその姿。

 

 それが勝敗を分けたのだろう。

 あくまでも人であった輪廻と、人を逸脱した“影の少女”。


 先に倒れたのは輪廻だった。


 理由ならば山のようにある。

 体力、及び精神力の限界。

 皮膚と内臓の大部分を焼かれたことによる酸欠症状。

 クリミアから長時間離れたことによる持病の悪化。

 エトセトラ、エトセトラ。


 同条件で今も活動を続けている“影の少女”が異常なだけで、死んでいて当然の状況である。

 その精神は未だ諦めてはいないが、肉体の限界だけは人である限りどうしようもない。


「あっ……」

 輪廻は糸の切れた人形のように、膝から崩れ落ちる。

 ゆっくりとその体は大地へと吸い込まれ、小さな土煙を上げて輪廻は動かなくなった。


 ここに決着はついた。

 人は人であるが故に、怪物よりも脆い。

 それがこの光景の真理である。




「――良くやった」

 そう、聖辺輪廻は敗北した。

 意識こそあるものの、もはやその体は動かない。


「おかげで、こちらも回復だ」

 だが、英雄は輪廻一人ではない。

 数の優位こそが、彼らの唯一のアドバンテージなのだから。


「……ずいぶん、回復の早い体ね」

「俺一人に治癒術式を集中させて、表面だけ回復させたんだ」

 全員を治療していては間に合わないとの判断。

 最低限の機能だけを回復させ、彼方は戦地へと舞い戻る。 


「だから、まあ、あれだ」

 彼方は輪廻と“影の少女”の間へ割り込むように、その歩を進める。

 

「あとは任せろ」

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