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彼方で綴る英雄戦記  作者: セイラム
終焉へ向けて
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理解と拒絶

 状況を整理しよう。

 

 純粋な人数差は、現在六対一。

 ただし英雄たち四名は戦闘行為が不可能な傷を負っており、さらに一名はその四名の治療中。


 よって現在、戦闘行為が可能な人数だけを参照するのならば一対一。

 数の差は存在しない、純然たる実力勝負である。

 

 致命傷を負い、意志と決意の力だけで活動を継続する“影の少女”。

 不治の病を抱えたまま、か細い糸を手繰るように生を掴み続ける聖辺輪廻。


 両名共に、いつ急死してもおかしくない。

 だが二人はこの決戦に相応しい、“強さ”を持っていた。



 飛び交う岩石の弾丸は、ある種実弾よりも厄介なものだ。

 紙一重の回避を繰り返しながら、輪廻は心中でそう毒づいた。


 速度こそ鉛の弾丸とは比べものにならないが、その悪辣さはそれ以上。

 軌道を複雑怪奇に変化させながら襲い掛かる無数の弾丸。

 その一発一発が骨身を砕く威力を備えているともなれば愚痴の一つも零れるというもの。


 現状は皮膚を裂くのみに終わっているのも、輪廻が回避に専念しているため。

 被害の軽減に努めているというそれだけの理由であり、つまりは千日手だ。


 このまま後手に回っていれば、先に力尽きるのはどう見ても明らか。

 ならば隙を突いて攻勢に打って出るのが当然なのだが。


「ああ、もう、まったく!」

 ここで輪廻の特化した戦力が仇となる。

 この戦いにおいて輪廻が勝利するには、“影の少女”へと直接触れることが絶対条件だ。

 

 “概念転移”によって病を押し付ける。

 それだけが輪廻の打ち込める有効打であり必殺技。


 いつもの戦いならば、あらゆる直接的な戦力以外を駆使して状況を引き寄せるのだが。

 今回ばかりは例外だ。


 味方はいない、一対一。

 目の前の相手はこちらの言葉などにはもはや耳を貸さない。

 

 そして何よりも厄介なのが、“影の少女”が意思を持つ存在であるということだ。

 こちらの弱点を見極め、決して接近せずに遠方からの削り殺しを選択したのがその証拠。


 怨恨や殺意に溢れながらも、最善手を取るその思考。

 ただ力任せに叩き潰すのではない、理性の殺意。


 その冷たい論理回路こそが、輪廻の天敵なのだ。

 言葉巧みに相手を翻弄しようにも、“影の少女”の意思はすでに固定されている。


 目の前の相手を、いかに効率的に殺害するか。

 それだけを目指し突き進むその姿に、輪廻は既視感を覚えた。


 その姿を否定することはできない。

 それは己の人生を否定するも同然だからだ。


 他者にどれだけ理解されなくても。

 その先は破滅や虚無程度の物しか残っていないと知っていても。


 己の生と、世界の破滅。

 全てを犠牲にただ一つを求めるという、その一点のみは輪廻も同類なのだから。


「――だからといって」

 そう、理解はできるし共感もできる。

 だが、共存や同情などはありえない。


 目の前の相手を己のために叩き潰すため、輪廻は打開策を模索し続ける。

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