魔女裁判
血反吐を吐きながら立つ少女に相対するは、四人の英雄たち。
合計十の眼は等しく血走り、決意の光に燃えている。
客観的に見て、最も負傷が大きいのは“影の少女”だろう。
鮮烈な一撃は、ただそれだけで全てを刈り取る。
強靭な意志で無理矢理立ってはいるが、放置すればいずれ死に至るのは目に見えていた。
英雄たちも疲弊しているとはいえ、その身に受けた直接的な負傷は極めて軽微。
加えて数的優位もあるとなれば、英雄たちの勝利は近いとも取れるはずだ。
なのに、どうしてだろうか。
“影の少女”と英雄たち。
より追い込まれた表情をしているのは後者だった。
英雄たちは本能で理解していた。
ここを逃せば、勝機は消えると。
生まれた希望は極めてか細く、頼りないものなのだと。
【――もうすぐ、終わるんだ。だからお願い、皆……!】
虚空に消えた呟きは、誰の耳にも届かない。
無意識に零れたそれは己を奮い立たせるためのもの。
“影の少女”を中心として巻き起こる竜巻が、英雄たちの行く手を阻む。
両足に集中させた魔力が僅かでも薄れれば、途端に遥か後方へと吹き飛ばされるだろう。
大地へと根を張るかのように、吹き飛ばされそうになる四肢を押さえ込む。
風という透明の質量が圧倒的な暴力となって、英雄たちを襲った。
「しまっ……」
そこに、一瞬の隙が生まれ出る。
急遽消失した台風への動揺と、一極集中させていた魔力による両足の固定化。
刹那、英雄たちの動きは止まる。
【ありがとう。グリム、シルヴィ……!】
それは、かつての友の名。
もういない戦友に感謝を告げて、“影の少女”はその杖を振るう。
無数の鎖が、“影の少女”から放たれた。
英雄たちは誰一人として、その縛鎖を振りほどけない。
瞬間の硬直が、永遠の拘束を生み出す。
四肢を鎖に絡め取られ、ギリギリという締め上げる音だけが彼らの末路を暗示している。
【――終わりだァ!】
一人一人の頭上に生まれるは巨大な断頭の刃。
ただ首を刈るためだけに生まれた道具が、英雄の命を奪うべく落下を開始する。
「お、おおおおおおおおおぉ!」
四肢を動かすも、ガチャガチャという金属音だけが無慈悲に響くのみ。
ただ無慈悲に、鋭利な刃は首へと迫る。
音が響く。
血潮が舞う。
土煙が上がる。
今ここに、罪人の断頭は執行された。




