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彼方で綴る英雄戦記  作者: セイラム
終焉へ向けて
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微かな光明

 響いた音は、まさしく轟音と呼ぶに相応しい。

 大量の火薬に火種を投げ込んだような音が、戦場全域に轟いた。


 その光景を直に見ていなければ、音の発生源が一つの拳であるとは誰も信じないだろう。

 そう思うほどに、その一撃は鮮烈だった。


 発生する衝撃波は大地を揺らし、大気を裂く。

 数瞬の後、ベキバキという骨の折れ砕ける音が響いた。


 それは、誰がどう見ても必殺の一撃だ。

 胴体が繋がっているだけ、まだ運がいいと思えるほどに。


 小柄な体格の“影の少女”は、遥か彼方へと吹き飛んだ。

 地面を数度跳ね回り、転がり回ってようやく止まる。

 投げ捨てられた人形のような動きは、もはや生の息吹を欠片も感じない。


 死。

 なによりもその一文字を連想させる、そんな光景。



【――まだ、だ】

 だが、この場の全員が理解している。

 この程度で“影の少女”は止まらないことを。


 口端から零れる血を意にも介さず、“影の少女”はゆらりと立ち上がった。

 ひゅうひゅうという鳴き声のような呼吸からは、内臓への致命的な後遺症が見て取れる。 

 体内で折れた骨が内臓を傷つけ、臓腑をかき回しているのだろう。

 痛みで気を失わないだけでも奇跡と呼べる、冒涜的な光景がそこには広がっている。


 手に持った杖を大地に刺し、ふらつく体を支えながら。

 しかし闘志は微塵も萎えず、英雄たちを睨みつける。


【終わらない、止まらない。この程度、皆の最後に比べれば――!】

 決意の宣誓と共に、再び沸き起こる破壊の嵐。

 致命傷を受けてなお止まらぬそれは、“影の少女”の強大で強靭な意志力を十全に伝えている。


 だが、その破壊には確かな変化が生じていた。

 多種多様な暴威は鳴りを潜め、今は単一の爆発のみ。

 数刻の後に爆発は氷結に、そして暴風に。


 混ざり合っていた超常現象が、今は一色のみに落ち着いていた。


「これ、は……」

 一瞬の戸惑い。

 しかし、玻璃はこれを罠ではなく好機と見る。


 その証拠に、多少強引な接近を行おうとも破壊の色が増える事はない。

 演技や罠ではなく、“影の少女”は複数の力の行使が不可能となっているのだ。


 初めて明確に現れた、明確な弱体化。

 この隙を突くことこそが、英雄たちに与えられた光明。

 発生した好機を前に、英雄たちは再び奮い立つ。

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