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彼方で綴る英雄戦記  作者: セイラム
終焉へ向けて
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激戦は未だ序章に過ぎず

 決戦の開幕は、かつて見た光景を焼き直したようだった。

 

【――アァァァ!】

 絶叫と共に放たれる、無数の爆発。

 一切の予備動作なく周囲に振り撒かれる暴威は、回避も防御も困難を極める。


 正体不明の連続爆撃。

 これこそが奴の固有魔法なのかという推論を、しかし全ての英雄が切り捨てている。


「指示を待つな、全力で気配を察知しろ!」

 エクレールの声に応じて、全員が素早く散開する。

 

 瞬間、彼らの集まっていた場所に爆発が発生した。

 あと数瞬遅れていれば、まとめて爆発に巻き込まれていただろうという紙一重。


 

「――これは」

「ああ、以前とは違う」

 縦横無尽に動き回りながら、エクレールと彼方は簡易型通信魔道器でお互いの推論をすり合わせる。


「以前の暴走とは違い、今回の爆発は我々を狙っている」

 “影の少女”は、今回は理性を保って英雄を襲っていた。

 無差別ではない、殺意に塗れた爆発の連続。


「厄介ですね……」

「いや、これならば――」

 やりやすい。

 玻璃はそう呟き、急激な接近を試みる。


「――シッ!」

 断ち切る呼吸を一息に、稲妻のような軌跡を描いて玻璃と“影の少女”の距離は急速に縮まりだす。

 眼前や背中で起きる爆発を気にも留めずに、玻璃の動きは一点を目指す。


 そう、それは意志を持つ攻撃だからこそ成立する回避法。

 “影の少女”の力は圧倒的だが、その殺意は素直の一言に尽きる。

 ただ一直線にこちらを狙い続けている以上、玻璃の先読みで回避できない道理など存在しない。


 以前は決して踏み込めなかった、近接距離。

 加速度的に爆発の頻度は上昇するものの、一撃たりとも玻璃を害することはない。

 まるで予知でもしているかのように、紙一重の回避を続けその距離を縮めていく。


「はぁッ!」

 そして一閃。

 気圧差を利用した限界を越える速度の斬撃が、“影の少女”の喉元を襲う。

 

 狙うは一撃必殺。

 首を両断するために放たれた一撃はしかし。


「――な、にっ?!」

 刃が“影の少女”の喉へと届く瞬間。

 “影の少女”は姿を消した。


 刃は空を切り、一瞬の静寂が戦場を包み込む。


「上だ!」

 背後から響く声に、玻璃の顔が上方へと跳ね上がる。

 そこには空に浮かぶ“影の少女”が、無傷で存在していた。


「空中浮遊……やはりあの爆発は固有魔法ではないのか……?」

 新たな力を繰り出し、“影の少女”は大きく離れた後方へと着地する。

 ふわりという擬音が似合いそうなほど優しく優雅に、“影の少女”は大地を踏みしめた。


 それは、“影の少女”がその力を十全に使いこなしているという証であった。

 

 常識を超えた力を複数所持する、“影の少女”。

 この光景がこの最後の戦いに相応しい圧倒的な力の一端であることを知るのは、もう少し先の話。

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