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彼方で綴る英雄戦記  作者: セイラム
終焉へ向けて
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僅かな希望を求めて

 崩落を開始する“巣”を見据え、エクレールは小さく息を吐く。

 

 各地に点在する小規模の“巣”の駆除を繰り返して、しばらく経った。

 その成果は微弱だが、確実に蓄積される。


 一つ潰せば、数人の被害が消える。

 二つ潰せば、数十人の被害が消える。


 そう信じて、そう確信して繰り返されるゲリラ戦。

 驚くべきことに、こちらの被害は皆無に等しい。


 敵戦力の弱い部分を狙って襲撃しているというのも理由の一つだ。

 戦闘部隊が精鋭揃いだというのも大きな理由だろう。


 だが最も大きな理由は、信念。

 このままでは終われないという、ただの意地が異常なまでの成果を生み出していた。



「“巣”の崩壊を確認。事前指定地点へ退却開始」

 周囲に通達し、エクレール自身も素早く踵を返す。

 憂いを含んでいた瞳は、すでに決意に染まっている。


「近辺の星喰獣は奇妙なまでに統率されていた。恐らく、近くに奴がいる」

 脳裏に浮かぶのは、かつて敵対した“軍服の男”だ。

 人の上に立つ者として絶対的な力を誇っていた存在に、エクレールは小さく震える。


 今はまだ、早い。

 そう脳内で結論付け、周囲の仲間へと指示を飛ばす。


 

 

「負傷者、死亡者共に無し。今回の作戦も成功ですね」

 小さく笑いながら、そうエクレールに声をかける男。

 直属の部下として活動している時崎刹那は、一段落とばかりに大きくため息をついた。


「ああ。順調に戦線は縮小されている。あとは奴らさえ見つければ……」

「奴らって、あの二人ですか?」

「そうだ。唯一無二にして必要不可欠な戦力。勝利への最後の道標だよ」

 二人の脳内に、同様の姿が思い浮かぶ。

 なにを考えているのかもわからない、自意識の塊とも言うべき最高戦力。


 聖辺輪廻。

 クリミア。

 

 現在行方不明となっている、最優先捜索対象。

 そして人類の希望となる両名でもある。



「……生きているんですかね、本当に」

「当然だ」

 刹那の疑問に、エクレールはなにを馬鹿なといった表情で答える。

 その目には一切の淀みが無く、両者の生存を微塵も疑ってはいない。


 客観的に見れば、死亡している可能性のほうがずっと高いはずだ。


 いつ命を落としていてもおかしくない重病人の輪廻。

 直接的な戦闘能力は皆無と言っていいクリミア。


 嫌でも目立つはずの両者がこの苛酷な環境に晒されて、一切の情報が入ってこない。

 ならば最も簡単に思い浮かぶ予測は、既に死亡しているという結論だろう。


「あの馬鹿共が野垂れ死に? 笑えない冗談だ」

 しかし、エクレールは彼女たちの生存を疑わない。

 それは感情論でもなく、エクレール自身による経験予測。


「あの手の馬鹿はな、絶対に静かには死なないのさ」

 それは一種の信頼なのだろう。

 だがその感情は愛憎入り混じった複雑怪奇なものだ。


 はは、と刹那は苦笑いを浮かべた。


 苦労してたんですね、と。

 そんな言葉を上司へ向けながら。

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