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プロローグ “×××××”
閉じた瞳に浮かぶ記憶は、決して色あせることのない惨劇の光景。
忘れられないし、忘れたいとも思わない。
彼の怒りが、彼女の涙が、あの人の慟哭が、奴の嘆きが。
何度も何度も脳内で繰り返される。
針の飛んだレコードのように、重なり合った音声が何度も耳元で響き続ける。
何重にも積み重なった悲鳴や叫びが、眠ることも許さない。
許さない。
許せない。
許されない。
誰に向けたのかも曖昧な感情の濁流。
一瞬に凝縮された爆発的な想いが、永遠に渦巻く。
永劫に苦しめという怨嗟が響く。
どうしてという後悔が駆け巡る。
ふざけるなという憤怒が湧き上がる。
殺してやるという殺意が満ちる。
それらに整合性は欠片もない。
矛盾に矛盾を重ねたような、歪な想いの集合体。
だが、仮に無理やりその想いを一言に纏めるのなら。
きっと、×××××はこう言ったに違いない。
【英雄共よ、無残に無慈悲に死に絶えろ】




