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彼方で綴る英雄戦記  作者: セイラム
異世界への招待状
17/91

英雄の帰還

 未だ死等の続く戦場。

 一秒ごとに、英雄の不利へと戦局は傾いている。


 だが、それでも決着は付いていない。

 彼方とリーリエという大きな戦力を失いながらも、この戦いは未だ続いている。


「くッ!」

 その最大の要因は、聖辺輪廻だ。

 負傷者の回収を中断し、輪廻が一人で星喰獣を食い止めている。

 決して戦闘向きではないはずの輪廻の魔法。

 だが平均以上には高い魔力と立ち回りで、限界近くとはいえ時間稼ぎを成立させていた。


 それは輪廻も彼方たちと同じ、一種のはぐれ者であることの証明だ。

 常識を超えた存在であることを示しながら、ただ一人少女は怪物へと立ち向かう。


 だが、何事にも限界は存在する。

 数度ならば誤魔化せた。

 十度で幸運に助けられる。

 二十を超えた段階で、輪廻の限界が訪れた。


「――が、あぁ!」

 回避したはずの攻撃が、輪廻の頬を掠める。

 吹き飛びそうになる体を強引に支え、接近。

 

 だが、そこが彼女の限界だ。

 ふらついた体では満足な加速を得ることもできず、星喰獣の眼前で隙を晒すことになってしまう。


「しまッ……!」

 浮かび上がる走馬灯。

 星喰獣の前足が輪廻の命を奪おうと迫り来る。



 咄嗟に顔を覆う輪廻。

 だが、そこで異変に気づく。

 眼前では星喰獣が動きを止めていた。


「これ、は」

 星喰獣の前足が、突如消失している。

 輪廻も、星喰獣自身もその現実を受け止めることができずにただ呆然と目を開けるだけ。


「g、aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!」

 数瞬の後、現実を認識した星喰獣が悲鳴を上げる。

 鋭利な刃物で切断されたような前足からは鮮血が吹き出し、暴れ狂ったことで周囲に撒き散らされた。

 

「――風?」

 どこからか、冷たい風が吹く。

 それは周囲の空気を一点に集めているような、どこか不自然な吹き方だ。


「待たせたな」

 無音で吹く風の中心に、一人の男が立っていた。

 その男は、一振りの剣を手に佇んでいる。


「すまん、帰ってくるのが遅れてしまった」

「……彼方」

 男――今宮彼方は、風の剣を手に戦場へと舞い戻る。

 魔力を込めた剣を中心に、風がより強く吹き荒れた。


「あんた、その剣」

「説明は後だ、まずは奴を潰す!」

 その言葉と共に、彼方は星喰獣へと突貫する。


「gaaaaaaaaaaa!」

 風の刃は、傷一つ付けることの叶わなかった星喰獣の体を切り刻む。

 足を、顔を、胴体を。

 初めて受ける肉体の損傷に、星喰獣は悲鳴を上げて暴れだした。


 こちらの攻撃が、通用している。

 その事実は輪廻の脳内を簡略化させた。

 すなわち、ここで星喰獣を叩き潰す方策を。

 事情も理由も後回し。今はただ決着のみを望むと、思考が一方向へ道筋を決める。


「指示を!」

 気づけば輪廻は叫んでいた。

 己の力では奴を殺せない。

 だから、自分の役目は支援であると決意した。


「時間を稼いでくれ、火力が足りない!」

 彼方は距離を取ると、剣に魔力を込めていく。

 周囲の大気が荒れ狂い、彼方の肌を切り裂き始めた。


 その光景は、まるでかつての焼き直し。

 彼方が持つは、真空の剣。

 過去に戦った玻璃から預かった、獣殺しの英雄剣だった。

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