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スノー・シャンテ  作者: ごま塩
14/17

不死鳥のプレリュード2

外が明るくなって見渡せる時間。

 揃って広間で朝食を終えると、今日はアーウェルサが勉強を見てくれると申し出た。

 ユエリアは定位置である壇上のソファーに腰かけてこちらを面白そうに眺めている。

 ネージュは孤児院で一通り読み書きを覚えているから、神話や歴史を中心に教わっている。

「今日は不死鳥について話そうか」

「不死鳥って、ヴァールハイトの?」

 テーブルから身を乗り出してアーウェルサを見上げると落ちつけと頭を撫でられる。

「そうだ。とりあえず、伝承として伝わっているフェニックスから始めるぞ?」

「うん」

 姿勢を正したネージュに笑い、青年は書物を適当に捲って片手に語りだす。

「古来より、不死鳥とは幻の鳥として知られる。世界の支柱を担う天極の本性の生き映しだから、崇める対象になる」

 最も伝説として有名なのはその生まれより。

「派生としては天極が流した血の涙より生じる、とある。だが、誰もその生まれた瞬間を見た者はいない」

「どうして?」

「いたって簡単だ。天極が住まう、天球という上空よりこの世界を支え見降ろすための隔絶された異空間で不死鳥は生まれ落ちるからだ。アレに言わせれば、あそこは楽園たる箱庭らしい」

 淡い目を細めている彼女を一瞥する。

アーウェルサは遠い昔、まだ覇王を冠していた時に招かれあの空間を目の当たりにした。

だがネージュには想像もつかないだろう。

 あそこは楽園というにはあまりに無機質で、天極を囲うためにあるこの上なく幻想的で美しい至高の聖櫃なのだから。

「天極が住まう聖域にてフェニクスは生まれる。だが、実に興味深い話がある」

 不死鳥はそもそも、どうして生まれたか。

 音を立てて手にしていた書を閉じ、秘められた真実を、にやりと口角を上げて青年は語る。

「天極には心がない。面白いことに共に生まれた水天には心があったという」

 心を知らぬ無情な天極に、自分の持つ心を教えようと水天は幾度も試みた。

 天極の許を訪れては、自らの心でもある水に触れさせ心をわけ与えた。

 けれども、天極はなにも得ず赤い涙を流した。それが血の始まりであり、そこから孵った不死鳥が天球にて産声をあげた。

「不死鳥は天極から生まれ落ち、同時に、水天も起源にしている。心というものに触れて、血となった涙から生まれる。二柱が接触し互いの違いを知るたびにフェニックスは誕生する」

 天極と水天の双方より生じたからこそ、世界に囚われない。

 それは二対の原初の存在に触れ誕生する、赤い血の連鎖を司る幻の鳥。

「天極が水という心に触れるたびに、苦痛によって流れる血の涙。フェニックスがその本性を生き映すだけの理由があったというわけだ」

「……そんなに、苦しいの?」

「だろうな。天極は俺を通して心を得て、やがて壊れて世界に災厄を(もたら)し終焉を招いた。そして――俺がこの手で殺した」

 感情を殺すように瞳を閉じるアーウェルサだが、その声はよどみない。

「そんな経緯があったからか、水天は不死鳥の存在を悲しんだ。天極を苦しめた末に生まれる赤い鳥だからだ。自分が与えた苦痛が不死鳥として現れ、果てに心を得た天極は消滅した。だから、水天は嘆き世界から消え去った」

 ……けれど、と思案するように腕を組んで。

「一千年後に再び、新たな天極が世界に降り立ったが、フェニックスは誕生し続けていた。新たな天極もまた、受け継いだ前天極の苦痛より血の涙を流したからだ」

一千年前にアーウェルサがその消滅と共に刻んだ理を、後に覇王の生まれ変わりとして地位を受け継ぎ天極の主となった神が瓦解させた。

 そうして、この世界に本当の平和が訪れた。

「未だに水天は世界に姿を現さない。これがどういった意味合いかはわからんが、今でも彼女は存在しているだろうな」

「それと、ヴァールハイトが関係あるの?」

「大ありだな。なにせ、ヴァールハイトの母であるエリセは、東の水天が姿を消した東の島国よりこの地を訪れ、不死鳥の末裔であるガイルと結ばれヴァールハイトを生んだ」

 まったく関係性がわからないネージュに、だがアーウェルサは続ける。

「……エリセもまた、不死鳥の末裔だった。偶然にも、フェニックスの血と血が重なった。だからか、極めて純度の高い不死鳥が生まれ落ちた。それがヴァールハイトだ」

 だからこそあの子のことは特に気にかけていた。この世界に生まれた時からずっと。

「不死鳥の生きざまは限りなく稀有だ。フェニックスは生来より平和を好み、自らが認めた人間のためにしか生きない。そして、その性状と誕生に起因するのか、一心に抱く願いを世界は聞き届ける。……そのたびに、世界になんらかの変化が訪れる可能性がある」

 不死鳥はとても稀有な存在でありながら、時に世界の転機や瑞兆と見做(みな)されている。

各国の不死鳥の末裔たちに世界を揺さぶる強大な本能は受け継がれていないが、近年稀にみる血を濃く受け継いだヴァールハイトにはその力が発現していた。

「ヴァールハイトはそれを知ったからこそ……悩んでいる。随分と、重いものを課してしまった」

 苦しげに言うアーウェルサに、ネージュはふと瞼によぎった光景を見とめて立ち上がる。

「ネージュ?」

「ヴァールハイトの家に行ってはだめ?」

 驚いたアーウェルサだったがネージュの表情に勘づいたのか、微笑んだユエリアと一緒に快く送り出してくれる。

「きちんとコートは着込んで行くように。じゃないと凍死するからな」

「ありがとう」

行ってきますと二人に伝えてからネージュは走って広間を後にする。

 脳裏に浮かんだその光景に、ヴァールハイトの力になれるようなものがあると思ったから。今も無力だけどそれだけは、自分が彼女にしてあげられる、たったひとつのことだから。

 ネージュは与えられた部屋に慌てて戻り、慣れた手つきでクローゼットに納められていた防寒着を身につけて。少女の住む屋敷へと真っ直ぐに走りだした。




 そろそろ、前をむいて歩かないといけない。

 そうわかっていても。

「……どう、したらいいのかな」

 リビングでひとり、うずくまるように膝に顔を寄せる。

ヴァールハイトは不死鳥の伝説を知らないわけではない。

 小さな頃から、父と母がよく一族のことを教えてくれていたから。

最初は二人が自分に聞かせてくれる御伽噺だと思っていた。

 年を重ねて書物を読むようになるとそれが本当のことだと知った。

 不死鳥は世界の機転と瑞兆を担う、と。

 不死鳥による伝承は各地にあり、それらをまとめた書物にどれも似通った共通点がある。

 フェニックスが一心に抱く願いは叶えられ、世界すらも巻きこむ――と。

 ……じゃあ、どういたらいいのだろうか。

 そんな重要な存在だと皇帝から直々に明かされてやるせない気持ちがこみ上げる。

 普通の女の子として……ありきたりな願いや夢を抱くことすらも許されないのだろうか?

 強く願えば願うほど、それを世界が叶えようとして動くというのだ。

 冗談じゃなかった。

将来は教師になろうと知識を得て勉強をしていた。でもそれは自分の努力もなしにいつかは叶えられて当然の願いになってしまう。

そして亡くなった母の歌を聴いたことすらも、そんなことで叶えられたのだろうかと思ってしまえば虚しいとしか思えなかった。

 父の苦しみも、私の悲しみもいったいなんだったというのだろう?

 それすらも、偽物だったというの?

特別な存在になんてなりたくもない。

 なにかを願うことはいけないといわれたような気がした。望むことも手を伸ばすことすらも。

 それほどに不死鳥だと告げられたことが重くのしかかって胸を塞ぐ。

呼吸をするのも苦しいだなんて錯覚を覚えるほどに、ヴァールハイトの心は痛みを抱える。

 もうなにをしたらいいのだろうと思うことすらできそうになかった。

 ヴァールハイトと名前をつけられたありふれた女の子として、これからもずっと生きるのだと思っていた。

 迷子の子供のようにただ不安になって泣いて立ち尽くすことしかできない。

 無力でしかなかった。ひとりで立ち上がることもできない。孤独に生きる強さなんて、持ってない。

 苦しい中で思い出すのは、悲しみに暮れていたヴァールハイトを救ってくれたあの少年の姿。

 泣き続けた自分を、なにも言わずに抱きしめて傍にいてくれた。あの時にくれた小さなぬくもりとやさしさがとても嬉しかった。

ただ傍にいてくれただけで、それだけで嬉しかった。

 彼はどうしているだろうか。アウィスから一緒にノヴノールに連れられてきたのに、一週間も会っていない。

 アーウェルサはネージュが自分を心配していると話してくれた。

 また心配をさせてしまったから自分の頼りなさを自覚する。

 でもそれでも会いたいと思った。あの幼い少年に。

 ひとりで立ち上がって生きていける強さが、欲しい。あの少年のような、生きるためのひたむきさが。

 そう、思っていた時だった。

 玄関のドアをしきりに叩く音が聞こえた。なんだろうと思って惹かれるように立ち上がって家のドアをそっと開けると、そこには――

「ヴァールハイト!」

「……ネージュ?」

 雪の中を、息を切らして駆けつけたのか。

マフラーに顔を埋め、頬を赤くして呼吸を乱して自分を見上げる少年の姿があった。

 信じられないと息を呑んだヴァールハイトにネージュは嬉しそうに声を弾ませて笑った。

「お久しぶり。もう大丈夫なの?」

「あ……、…………ネージュ」

 その笑顔に息をするのも忘れて見入る。

 彼がこんな風に感情を見せてくれたのが、笑顔を向けてくれたのが初めてだったから。

 言葉を失ったヴァールハイトをネージュは見上げて言う。

「伝えたいことがあって、来たんだ。入ってもいい?」

「え、ええ……」

 まさか、彼から会いにきてくれるなんて。

 どれだけ自分がくよくよとしてしまっていたのかを思い知る。

 ……けれども今は、こうしてまた会えたことがとても嬉しかった。




 ヴァールハイトに招かれて、ネージュは少女の生まれ育った屋敷に入った。

 周囲の屋敷と比べたら小さいけれど、どの家よりあたたかく感じる。

 リビングに通されて、木製のテーブルを囲う肘掛け椅子に二人は向かいあって座っている。

 ヴァールハイトは膝に手を置いてぼうっとしているだけ。

気落ちしている少女をネージュは心配になって声をかける。

「なにか、悲しいことがあるの?」

「……いいえ。ただ、自分のあまりの弱さに……ほんとうに参ってるの」

 俯き加減にこぼしたヴァールハイトの瞳は翳りを帯びていた。

 アウィスで一緒にいたときにはきれいに見えた赤い瞳が、今はとても悲しさを湛えている。

 それは最初に出会った時の悲しさに囚われたもの。

 そんな少女の力になりたくてここに来た。不死鳥の伝承をアーウェルサから教わって、ネージュは脳裏によぎった記憶をどうしても伝えたいと。

 ヴァールハイトがまた笑えるように。

 きっと不死鳥として生まれた誰もが、ヴァールハイトとおなじような苦しみを抱えたのだろう。

 だからこそ伝えられているものもあるだろう――歌として。

「ヴァールハイト。迷ったり悩んだりすることは、そんなにいけないこと?」

 虚を突かれたように目を見張って、でも少女は力なく首を振る。

「ううん。でも、私もうずっと泣いてばかりだし、何もできなくて……前に踏み出せないでいるの。私は、とても臆病で弱いのよ」

 弱々しく呟くけれども、ネージュはそうだとは思わない。

「違うよ。それは弱いんじゃなくて、そうしないといけないから……そうやって悩まないといけないから、悩んでるんだよ」

「……ネージュは、やさしいね」

 ふっと諦めきったように笑うヴァールハイト。

でも違う。その悲しさが大切なもので必要だから。

「ううん。だって僕が生きるために、手伝いをして生きていたのと、おんなじことだよ」

 真っ直ぐな眼差しでネージュは言い切る。

「だって、生きるために必要なことだもの」

 ひゅっと息を呑んで違うと首を振るヴァールハイトにネージュは言い募る。

「僕も、悩んだよ。孤児院にいても、記憶も戻らないし、自分の歌も思い出せない。いつも、みんなにどうして歌わないんだって……怒られるみたいに言われた」

 責めるように、ネージュを否定するように孤児院のみんなも、教会のシスターたちも顔を合わせるたびにそう告げる。

 孤児院にいた時はネージュを気味悪がって悪意を向けてくる子供もいた。

 段々とひどくなっていく行為と差し向けられる悪意に、とても苦しくて我慢したけれども耐えられなくて。

ネージュはアウィスで孤独にすごしていた。そうしなければ苦しくて、辛かった。

記憶がなくても、自分が持つべき歌がなくても生きているのに、まるで恐れるようにしてネージュを睨むひとたちを見たくなかった。

みんなにあんな表情をさせてしまうくらいならいっそ自分が出て行って、その内にどこかで命を落とすまで生きればいいとすら思ったから。

 そんなネージュを心配していつも抱きしめてくれたのがマザーであるリニスだった。

 家族に手を引かれる子供を見るといっそ切なかった。

 どうして自分はこの世界に生きているのだろうと思うと、とても不安だった。

 だからネージュはノヴノールに来るまでずっと、生きるために必要なことだけをして生きてきた。

「たくさん迷ったよ、悩んだよ。でもね、シスターリニスが言ったんだ。あなたはまだ、知らないだけだって。本当の幸せも、生きている意味も」

 その言葉がいまなら少しだけわかるような気がする。

 泣きそうに顔を歪めている、目の前の少女が教えてくれたぬくもりや、やさしさ。

ネージュにもあったと今なら信じられる。

 思い出した、あのやさしげに自分を見つめる面差し。

 どうしてもヴァールハイトに伝えたかった。

不死鳥に伝わる、その歌を。

「それに、ヴァールハイトみたいに悩むのは、不死鳥として生まれたひとたちも同じだったみたい」

「え……?」

 驚いた少女に笑って、ネージュはそっと瞳を閉じて歌う。

 アーウェルサから教えて貰った不死鳥の神話から伝わったもの。

 ネージュはこれを伝えたくて、ヴァールハイトに笑って欲しくて、だから歌うのだから。


――血を刻む私たちに抱ける願いを教えてください

滴る雫より生まれる者、血に染まる赤い鳥

それが私たちであり、定めなきもの

生きることを教えて下さい

この世界に生まれた理由すらない私たちに、生きる意味を下さい

この身を血に染めてまで生きる理由はなんでしょうか

囚われることの出来ない理由が知りたい

抱くべき理由すらなくて どこへもこの翼は羽ばたけない

私たちが生きる意味はどこにある

それをくれる者はおらず 私たちはさまよい歩くだけ

確かなものを下さい

私たちが守るべき者の為の翼を下さい

誓いなき私達に 生きる意味を与えて

羽ばたくための理由を 守るための意味を

この赤に染まる私達の翼をいとおしんでくれる誰かを

どうか還るべき、いとおしむべき場所を与えて

誰かと共に生きられる証をください

血から生まれ、血を繋ぐ意味すら知らず

抱くべき願いはどこにあるでしょう

この羽で包むべき理由も、望むべき意味も知らず

この世に降り立つ意味を私達たちは知りたい

願い、望み、理由、意味を私達にも与えて

いつか生まれた意味を知ることを、私達は願っている

いつまでもそれだけを抱いて、羽ばたき続ける

(かえ)るべき、その場所を求めて――


最後まで歌い上げて、ネージュはヴァールハイトを見つめる。

 言葉に詰まっている少女にただ伝えたくて。

「不死鳥には、この世界に生まれた理由がないんだって。だから、生きる意味を探してこの世界をずっと生きてきた。……そう、見えたから」

 そんな彼らの気持ちが、記憶もなくて自分の歌も思い出せないネージュはわかるから。

「でもね、昔と違ってもう、世界に隔たりはないのでしょう? フェニックスとか人だとか、関係ない。だって、ヴァールハイトはたったひとりの存在だもの」

「……ネー、ジュ」

 真っ直ぐにその赤い瞳を見つめて逸らさずにいう。どうか、伝わりますように。

「聖獣のフェニックスとか、そんなのはもうないはずでしょう? ヴァールハイトは、ヴァールハイトだよ。だって、僕が知ってるヴァールハイトは、大切だったお母さんを想って泣いた、やさしい女の人だよ」

 最初に出会った時に見た、大切だった母を亡くして悲しみに泣きじゃくった少女の涙。

 覚えている。自分にぬくもりをくれたことを。

寂しいということを教えてくれた。孤独だということを、抱きしめてくれたことを。

 ヴァールハイトは孤独に毎日を生きていたネージュに、生きることがそれだけじゃないと教えてくれた人だから。

「僕はヴァールハイトから、たくさんいろんなものを、教えてもらったよ」

 とても大切なことを教えてくれたヴァールハイトが、ネージュはとても好きだから。

 だから言いたかった。どうしても。

「だから、悩むのも迷うのも弱いんじゃない。ヴァールハイトに、必要なことなんだから。だから、いまは悩もうよ」

 大丈夫。そういいたくて、ネージュはありったけのありがとうを込めて笑う。

「ね? 大丈夫。ヴァールハイトならきっと見つけられる。お母さんが言っていた通りに、ぜったいに幸せになれるよ」

 だって、ヴァールハイトは強いひとだから。

 そういうなり、やがて涙ぐんで一筋の雫をこぼした少女はそのままでネージュをぎゅっと抱きしめる。

「ヴァールハイトっ?」

「……っ……あり、がとう……」

 いきなり強く抱きしめられてうろたえてしまったけれど、肩にかかるヴァールハイトの髪を、ネージュはアーウェルサのようにおずおずと触れて撫でてみる。

 前に触れたぬくもりにとても心が安らいだ。

 震える背中にぎこちなくそっと手を回して、抱擁する。

 そんなネージュの肩に顔をうずめたヴァールハイトは泣きながらも笑っている。

「ネージュに、私は助けられてばかりね」

「そう?」

「うん、そう。……ねえ、いつかネージュのことを思い出したら、一番に教えてね」

 約束だよ。

 今まで見た中で一番きれいに泣きながらも笑ったヴァールハイトに、ネージュもまた笑顔を浮かべて頷く。

「うん、約束する」

「楽しみね、あなたのことを話してくれる日が」

 こつんと、二人は仲良く額を合わせて笑いあう。

 また少女の瞳から流れた一粒の透明な雫は、新たな色を映し出して落ちる。

 それは、とても幸せな色を湛えたきれいな涙だった。

 そうして、冬は終わりを迎えようとしていた。

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