魔法習得
第2章
翌日、朝食を済ませた裕は早速、修練場で魔法の練習をやろうとしていた。
「樹の床に、壁に飾ってある武器、道場みたいな内装だな。よし、武器は後にして魔法を試してみるか。確か手を突き出して、呪文を唱えるんだよな」
突き出した右手を左手で支えると、裕はレオンの詠唱を頑張って思い出した。
「我が手に集いし魔の力! 赤き炎となり、敵を追え! ドラグ・レア!」
裕の詠唱で手の先が一瞬白く輝いた。
だが、実際に飛び出たのは炎ではなく、黒い煙だった。
「ゲホゲホッ! すげー煙が出てきた……」
煙を吸い込んだ裕が思わず咳き込み、その場に座り込む。
「あー……ビックリした……呪文間違えたか?」
呼吸を落ち着けた裕は立ち上がると、もう一度手を前に突きだして、気合いを込めて呪文を叫んだ。
「我が手に集いし魔の力! 赤き炎となり、敵を追え! うぉっ!? やっぱダメだ!? ゲホッゲホッ!」
気合いが入った分だけ、煙の量が増えていた。
そのせいで修練場の中が煙だらけになって、前もろくに見えなくなった。
「おーい、ミヤ坊いるか? って、うおっ!? なんだこりゃ!? 換気をせい! 換気を!」
視界が消えて裕が慌てていると、ベム爺の声がした。彼が窓と扉をあけてくれたおかげか、裕の視界も次第に晴れた。
「ベム爺さん助かったぜ……」
「なにやってんだミヤ坊」
「いや、魔法の練習をしてみようと思ったんだけど、失敗して。ハハハ」
「とりあえず、外でやれ外で」
ベム爺の言うことも一理あると考え、裕は修練場の外に出て大きく息を吸った。
そして、自分の手を見つめながらベム爺に思ったことを質問する。
「なぁ、ベム爺も魔法を使えるのか?」
「そりゃ、炉に火を入れたりするからな」
「魔法ってどう使うんだ? 見よう見まねでやってみたけど、あんなんになっちまったし」
「ふむ。魔法を使うには二段階の工程があるんだが、それは知ってるのか?」
「ん? 詠唱すりゃ良いんじゃないのか?」
意味が分からずに裕が尋ねると、ベム爺はため息をつきながら頭をポリポリかいた。
「お前さん、よくそんなのでレオンの剣にヒビを入れられたな……」
「魔法と剣は別だろ?」
「そんなわけないだろう。剣帝となったレオンの坊主は魔法と剣を一体化させておる。魔法と剣を別々に分けて考えておるのなら、坊主には万が一にも勝ち目はないさ。あいつは孤独になるほどの天才だ」
ベム爺の言葉に裕は妙な違和感を覚えていた。
レオンが剣と魔法を一体化させた姿は見ていない。逆に言えば、剣と魔法を別々に使っていたレオンは、まだまだ隠された力を持っていると言うことだ。
それが面白くて仕方無かった。今すぐにでも魔法を習得して、レオンの本気を引き出せるようにしたい。
「で、爺さん魔法の二段階工程ってなんだ!?」
「人の話を最後まで聞かんか。まぁ、いいわ。魔法の工程だがな。魔法の源となる魔力とは水のような物だ。己の身体からにじみ出した水を形作るのが第一段階。例えば、今の俺っちの手の中には火球の形になるように魔力を練っている」
ベム爺の説明で裕がベム爺の手を見ると、確かに空間が球状に歪んでいる箇所がある。
歪んでいるところに魔力が溜められていると言うことだろう。
「この手に集いし魔の力。赤き炎となり、闇を照らせ。ファイアボール!」
ベム爺が呪文をつぶやくと、球状の歪みが炎をまとい、音を立てながら燃え始めた。
「これが第二段階の詠唱による属性付与だ。この世界の者なら誰でも扱えるんだけどな」
ベム爺は火球を握りつぶして消すと、裕に鞘に入った刀を押しつけた。
「レオ坊からお前さんに鍛錬用の刀を貸せと言われてな。今日はそれを持ってきただけだ。俺っちは帰るぞ」
刀を受け取った裕はベム爺の説明を反芻しながら、魔力の塊をつくるイメージをした。
「待ってくれベム爺。一回だけで良い。これで合っているか見て欲しい」
「仕方ねぇな。一回きりだぞ。一回!」
「ありがとう」
裕は頭を下げて礼をすると、長く息を吐いてから刀を構えた。
(魔力は自分の中から生み出す力。つまり気みたいなものだ。気をまとわせた一撃。そこにかけ声でさらに力を加える)
ベム爺の説明を自分なりに解釈し、裕はゆっくりと刀を振りかぶった。
(力を刀の先まで届けて、刀を自分の気で作り出すイメージ……)
「お、おい。坊主、てめえ何をする気だ!?」
裕の気が力に変わっていっているのか、裕の全身に風がふきつけ、足下の砂が舞い上がり始めた。
「でえええい!」
裕がかけ声をかけながら剣を振り下ろすと、見えない風の刃が轟音とともに地面を数メートルに渡って抉り取った。
「こんな感じか? ベム爺」
「バ……馬鹿野郎! お前さん何をした?」
「いや、普通に気を剣に纏わせて、振ってみただけなんだけど……」
「属性を付与してないのか!?」
「あっ、気を溜めるのに集中し過ぎて忘れてた……」
ベム爺に言われて二段階目を忘れていた裕は、しまったという顔をして地面に頭を抱えて座り込んだ。
せっかく教えて貰ったのに、いつもの癖で剣を振ってしまった。
剣があった方が気を溜めやすいと思ったが、そもそも魔法は手で撃っていたということも失念している。
「ベム爺! すまん! もう一回だけ! 次はちゃんと手で撃つから!」
「いや、その必要はない……。だが、もう一度今の剣を見せてくれ」
「え? 属性付与に失敗してるから魔法じゃないんだろ?」
「いいから頼む! 後で魔法はみてやるから!」
「え? あぁ、うん。分かった」
必死の形相で頼み込んでくるベム爺に折れて、裕はもう一度刀を構えると先ほどと同じ要領で気を刀に纏わせ、振り下ろした。
すると、先ほどと同じように地面を削る見えない刃が走っていった。
「間違い無い。形態変化だけでこの威力を放っている……」
「え? これってすごいのか?」
「この威力を出すことが出来る坊主の知り合いは、お前さんを含めて二人しかいない……」
「何か良く分からんけど、次は魔法を見てくれるんだよな?」
「一回だけは見よう。だが、それ以上は魔法の専門家を呼んだ方が良い。俺っちが呼んできてやるよ」
「ベム爺。あんた良い奴だな」
「うるせいっ! さっさと手を構えろい!」
男のツンデレはやっぱり嬉しくないものだなと、裕はため息をつきながら右腕を突き出した。
それでも、すぐに気持ちを切り替えて、指先まで意識を集中させる。
(手の平に集めた意識を、五本の指で押さえ込むイメージ。次に左腕を導火線に見立てて、火を左手から右手に送っていくイメージをして……、打ち上げ花火みたいに炎を飛ばすイメージだ)
剣の時と同じように、裕の周りに衝撃波が生まれ、足下の草が揺れ動いた。
「なんて魔力密度だ……」
「我が手に集いし魔の力。赤き炎となり、闇を照らせ。ファイアボール!」
裕の詠唱が終わると、左腕から火花が走り、右手の手の平の前に真っ赤な球体が生まれた。
だが、それはすぐに黒い煙へと姿を変えた。
「俺にも出来た! って、うおっ!? さっきより煙が酷いことに!? うわっ!? 前が見えねえ!?」
煙が収まった頃には、裕はススで真っ黒になっていて、ベム爺から専門家が来るまでは魔法を使うなと釘を刺された。
裕も朝から汚れた上に、煙の吸い過ぎで体調を崩して一時的な休憩を取るのであった。
○
裕はベム爺の派遣してきた専門家を見て、きょとんとした。
「君が魔法の専門家?」
てっきり執事さんを越す老獪な爺さんや婆さんが来ると思っていたのに、やってきたのは赤髪の少女だった。
耳が尖っているせいで種族はエルフだとすぐに予想がついた。
服装の方は、宝石の埋め込まれた杖を片手に持ち、動きやすそうなノースリーブと短パンの服装は魔法使いというよりかは、どこか狩人を思わせる見た目だ。
「ベム爺がすごいのがいるって聞いて来てみれば、何というか普通の人にしか見えないけど。なんでレオンがこんなの拾ってくるかなぁ」
いきなりの攻撃に裕は少しムッとした。
初対面でいきなり見下されて、売られた喧嘩を裕はあっさり買ってしまった。
「そっちこそ魔法の専門家と聞いたけど、俺と大して変わらないお子様じゃねぇか」
「誰がお子様ですってぇ!? こっちはね。魔法学校を飛び級で卒業して、論文も書いてるのよ! 人間であるあんたと一緒にしないでくれる!? エルフはね。人間に比べても魔力量が遙かに多いのよ? 最低でも五倍。私ぐらいになると十倍ぐらいは差があるの。分かる?」
「だったら、どんな魔法が出来るのか見せて証明してみろよ?」
「良いわ。魔法博士ルイスの実力あんたのその身体に刻み込んでやるわ」
お互いに売り言葉に買い言葉ではりあった結果、いきなり対戦することになってしまった。
修練場には賭博闘技場の時と同じように、闘技結界を張り、肉体を霊体へと変化させ、結界内に移す霊体転写台があった。
「吠え面かかせてやるわ」
「言ってろ。どんな魔法も叩き斬ってやる」
お互いに宣戦布告を済ませ、得物を霊体転写台に突き刺す。
すると、裕達の周りの景色が一瞬で見渡す限りの大草原へと変わった。
「戦闘フィールドは大草原ね。フフフ。隠れる場所もなければ、逃げ場もないわ。覚悟しなさい。痛みの還元は最大値よ! 私の魔法で悶え苦しむと良いわ」
「全く同じ言葉を返してやるぜ。隠れる場所がないのなら、俺の方が早い」
「ふんっ、片腹痛いわっ!」
ルイスが杖を裕に向けた瞬間、巨大な氷の槍がルイスの前に現れた。
「詠唱無しで魔法が出た!?」
「ふふん。魔力制御の極意を掴めれば、詠唱破棄などまだ序の口よ。格の違いを思い知りなさい!」
裕も負けていられない。魔法の使い方は先ほど習った。
剣に意識を集中させ、気で作った刃で魔法を斬るイメージを浮かべて、裕は剣を振り抜いた。
「しゃらくせえ!」
裕から放たれた剣気は、巨大な氷の槍を二つに切断し、キラキラと輝く氷の欠片が宙を舞う。
「私の魔法を斬った!?」
「そう言えば、レオンも同じような理由で驚いてたっけ? そんなに驚くようなことなのか?」
「そんな馬鹿な。ただのまぐれよ! この場に集った魔力よ。創造主たる我が命を以て、偽りの魂を氷の器に与えん! 現れよ! 氷の巨人!」
裕の疑問に答えずにルイスが大きく杖を振るうと、何もない空間にぴきぴきと氷が生成され、巨大な氷人形を形作った。
「へー。召喚魔法なんてのもあるのか。でけーなー。学校の高さぐらいか」
「ふふふ。私の創造魔法よ。全力をお見舞いしてやるわ! あんまりちょこまか動かないでよ? 逃げる奴を追いかけるのは面倒だからさ!」
「巨人の拳か。元の世界じゃ絶対に見られない攻撃だな」
「今更降参したって遅いんだからね! やっちゃえ!」
「この世界は最高だ! 正面から受け止めてやる!」
ルイスのかけ声で氷の巨人が腕を振り上げ、裕も刀を振りかぶる。
裕に迫る氷の腕に向かって、彼は避ける所か真っ直ぐ飛び込んだ。
裕が構える刃のまわりの景色がユラユラと揺れている。
慣れれば動きながらでも気は溜められるようになっていた。
「吹き飛べぇえええ!」
自分の身長の二倍くらいはありそうな拳に向かって、裕が刀を振り下ろす。
すると、氷塊が砕け散り、雪崩が起きたような轟音が鳴り響いた。
ゴーレムの腕から吹きだした魔力が草原を白く凍らせ、裕のいた場所一帯が雪原のように変わっている。
「あーはっはっは! ただのパンチだと思って油断したようね! 拳を打ち付けたところにさらに別の魔法を発動させる。これが私の多重魔法よ!」
ルイスの高笑いが雪原にこだまする。
「へぇー。そうか。そういう魔法も出来るのか」
そう言って、雪煙が晴れた中から現れた裕は無傷だった。
傷一つついていない裕の姿に、勝利を確信していたルイスは大慌てしている。それだけ本気で攻撃したのだろう。
「なっ!? なんで無傷なのよ!?」
「ん? 別に特別なことは何もしてないぜ」
「直撃させたはずよ!」
「あぁ、そのゴーレムの拳なら斬ったぞ?」
「そんな馬鹿な!? って、あぁぁっ!?」
裕が刀を構え直すと、氷のゴーレムの腕に亀裂が入り、拳から肩の付け根までが砕け散った。
「嘘でしょ!?」
「レオンもベム爺もお前も、何でみんなしてそんな驚くんだよ?」
「驚くわよ! こんな一方的にかきけされるなんて、本来あり得ないもの!」
「なんで?」
裕は純粋な好奇心で首を傾げた。
だが、ゴーレムの肩から降りたルイスは未だに信じられない物を見るような目付きで、裕を見つめた。
さすがにジッと見つめられると、けんか腰で応対していた相手でも恥ずかしくなる。
なんだかんだでルイスは顔が可愛かったし、普通に仲良くなれれば見とれることもあっただろうと思えるほどだ。
「な、なんだよ?」
「さっきの腕を切った一撃。もう一度見せてくれないかしら?」
「ん? まぁ、別に構わないけど」
「なら、あのゴーレムを斬って貰えるかしら?」
「良いのか?」
「良いわ」
ルイスの意図が分からぬまま、裕は剣を構えてゴーレムの前に立った。
意識を剣に集中させて振り下ろすと、巨体はあっけなく真っ二つに切断され、崩れ落ちた。
「なるほどね。理解出来たわ……」
ルイスは随分うんざりとした様子で呟いた。何が理解出来たのか裕にはパッと思いつかず、困惑気味にルイスに尋ねる。
「いや、だから、説明してくれよ」
「魔力というのは水のようなもので、その形態を変化させ、色をつけることによって魔法にするという基本は知っているわね?」
「あぁ、ベム爺に聞いた」
「君はその魔力を固形化。えっと、つまり水じゃなくて氷状態にしているの。水と水をぶつけ合っても混ざり合うか、勢いの強い方が押し勝つけど、水と氷をぶつけた時、水は弾かれて分けられるわ。川に転がっている大きな石に水がぶつかると、石を砕かずに二手に流れが分かれるのと同じ。そのせいで、どんな魔法も繋がりを断たれてしまうの」
「なるほど。そうやって魔法を斬っていたのか。理屈は分かったけど、なんでみんな驚いてたの?」
「驚くわよ! その技を編み出して使えたのは、初代剣聖くらいだもの! 闘技大会参加者にしてみれば、お伽噺みたいな話よ!」
「初代剣聖ねぇ?」
裕にとっては今一ピンと来なかったが、何となく響きが格好良くて、その呼び名を気に入ってしまった。
そんな緩い裕の考えが見抜かれたのか、ルイスはムッとしながら説明を続けていく。
「魔力の形態変化を極めた剣の達人よ? 何でそんなに知らないの!?」
「んなこと言われてもなぁ。俺、違う世界から来た訳だし……」
「本当なの?」
「うん」
「……ベム爺さんがぼけた訳じゃないんだ」
ルイスは呆れたようにため息をついて裕から離れると、顎に手を当てて何かを考える素振りを見せた。
彼女が何を考えているかは分からない裕は、これ以上変なお願いをされる前に、自分の用件を先に言うことにした。
「異世界から来たおかげで、魔法はさっぱりなんだ。お前のさっきのゴーレムを見れば実力はすごいって分かったし、魔法の原理もおかげで分かった。だから、魔法を教えてくれ」
「なんでそんなに魔法を覚えたいの?」
「レオンに勝つためだ」
「へぇ……あんたもか。良いよ。それじゃ、試しに魔法を使ってみてよ」
ルイスに魔法の指導をしてもらうことが決定し、裕はいつものように腕を前に構えた。
そして、いつものようにもくもくと煙を手から発生させてしまう。
「何故かこうなる」
「簡単な理由よ。さっきも言ったように魔力と魔法は水と色水の関係。でも、あなたは氷を作ってしまっている。氷にインクを入れても、色は中まで染まらない。魔力を固めないで。もっと柔らかく扱うの」
「なるほど。やってみる」
ルイスが魔法の専門家というのは嘘ではなかったらしい。裕のミスを瞬時に見抜き、的確なアドバイスを与えてくれる。
「柔らかく。固めない。水にインクを入れるイメージで……我が手に集いし魔の力。赤き炎となり、闇を照らせ。ファイアボール!」
そして、言われた通りやってみると、初めてまともな形の炎が裕の手の中に現れた。
「おぉ! 出来た!」
「あっ! バカ! 魔力供給を止めなさい!」
「へっ? うおぉぉ!?」
火の玉が現れたことに喜んでいた裕だったが、次の瞬間には目を見開いて驚いていた。
最初は拳大だった火の玉がいつのまにか頭と同じくらいのサイズになり、自分をも飲み込めそうな炎に成長していたのだ。
大きく成長した火球は、裕の手の中で炸裂し、裕の身体を一瞬で飲み込んだ。
自分自身が火の玉になってしまった裕を見て、ルイスが手を掲げる。
「あぁっ、もうっ。敵を取り込み、飲み込め! 水牢!」
「ごぼぼっ!?」
火の玉の次は巨大な水玉に包まれた裕は、水の中で盛大に泡をふいてから解放された。
「いてて……火傷したみたいに熱いな」
「まぁ、霊体で火傷してるからねぇ。生身では感じられない痛みだわ」
「回復魔法ってないのか?」
「あるわよ。でも、普通の攻撃魔法よりもっと難しいわ。特に全身の場合はね。傷ついた場所に魔力を溜めて、何重にも薬と包帯を巻くイメージかしら」
「ふむ。やってみるか」
「あっ、ちょっ!? 失敗したら余計に酷い怪我になるよ!? 私がやってあげるからあなたは大人しく――」
ルイスが止めるのも聞かず、裕は神経を全身に張り巡らせた。
下腹部から全身に向けて、気を流し込んでいく。
そこで流し込んだ気を、薬を塗るように優しく身体の表面に合わせていく。
「うそ……」
「ふぅ。回復魔法の方が意外と簡単だな」
「嘘でしょ!? なんで初級魔法がダメで高等回復魔法の方が出来るのよ!?」
「へ? いや、気をめぐらせて、身体を休めるだけだろ?」
「それが出来て、なんで初級魔法がダメなのよ!? 信じられない!?」
「えぇー!? なんで怒られてるんだ俺!?」
「いいわ。回復魔法が自分で使えるのなら、自爆覚悟で徹底的に教えて上げる。覚悟してね!」
こうして、闘技結界の中で裕は魔法の痛みと便利さを学びながら、魔法のコントロールの仕方を覚えるのであった。
そして、その一連の様子を外から眺める人影がいた。
「やはり僕の目に狂いはなかった。ミヤナガ=ユウ。君は僕の心を奪った。その対価として、必ずや僕の刃を受けて貰います」
そう呟いてレオンはその場を立ち去った。