第二章 〜天使と悪魔と学園生活3〜
話は少し前、登校途中に戻る。
跳ね飛ばされた僕を、轢き殺しそうだった瀬川が気遣う構図が出来上がっていた。
「本当、ごめんなさい!」
「いや、いいって。怪我も無いし……」
「ほんとに怪我してない?」
「本当に大丈夫。ほんと、僕は大丈夫」
大丈夫じゃないのは、君の方なんじゃない?
食パンくわえて自転車通学とか、一体どれほど急げばそうなるんだよ。
思考回路が大丈夫じゃない、と思っている僕は悪い子。まあ、悪魔と契約しているしな。
「よかった……。でも、ごめんね?」
くどい。なにか裏でもあるのだろうか?
それなら、こちらから手を打ってみよう。
「いいって。それより、何か急ぐことでもあったの? 食パンくわえて登校なんて」
ひねりが無いよな。茶碗片手に登校すれば新時代でも築けるだろうけど。
「えっと、ちょっと、ね……」
その割に、自転車から降りて歩調を合わせて一緒にいるのはなぜだろう?
口調を濁らせるところを見ると、事情が有るようだ。
それが彼女の影を歪めている原因、だろうか。
困ったなぁ、全然見当がつかない。
とりあえず、天使とか出て来たら嫌だし、アレを聞いてみるか……。
「あなたは神を信じますか?」
「はいっ!?」
口をパクパクさせながら僕をまじまじ見る彼女。
まあそうなりますよね。何を言っているんだこいつは、と。
「えっ、あの、ええっと……」
「冗談だよ。真面目に捕えないでほしいな」
「あ、そうなんだ。……変わったジョークだね」
僕もそう思う。
閑話休題。
話を進めよう。
僕が今の状況に陥った原因へと。
たわいもない話を適当にしながら、僕らは学校へと向かった。
そして、いつもと変わらない校舎をみて彼女は『それじゃあ』と言って僕から離れた。
そして僕も生徒玄関へと向かう、はずだった。
だが、僕にはそれができなかった。
影が
学校の存在が
不幸の固まりだった。
知らずのうちに脚が崩れ、地面に片膝をついていた。
悪魔……お前が言っていた意味……………やっとわかった。
そこから僕が気を失い、保健室で起きるまで話は飛ぶ。
僕の目の前に、彼女、瀬川奈美は居た。
僕は保健室のベッドの上で寝ていた。若干頭がふらつくが、それは精神的ダメージの所為だろう。
それなのに。
「ごめんね、やっぱり大丈夫じゃなかったんでしょ?」
彼女は俯き頭を下げてくる。
ちがう違う、間違っている、誤解している!
「……ねえ、人見君」
「…………………なんですか?」
ここになってやっと僕の名前が出た事は気にする事ではない。
少女が制服のボタンを外した。
そして。
「体で、お詫びをするわ」
ハラリ、と彼女の制服が保険室の床に落ちた。
○ ○ ○
というわけなのだ。
どういう意味なのか僕にもさっぱり解らないけどね。
ただ一つ言える事は。
このゲーム、展開が急展開しか無い。