第一章 〜リアルにリンクのゲーム4〜
第一章 〜リアルにリンクのゲーム4〜
四月一日、日曜日。
僕は悪魔と契約をした。そして、この日から僕の人生は変わった。
魂の残量を示す文字の無い銀時計、それが契約の証。
望みを叶えるべく、僕の影へと消えた悪魔。頭の中で会話が出来る、孤独じゃない、寂しくない、相手は悪魔だけど。
悪魔と契約したとは思わせないように静かに帰宅。玄関を開け、ただいまを言う前に妹が言った。
「お兄ちゃん、お金無いんだから明日から十時以降消灯だよ」
僕が死んでいたら、一体妹はなんと言っただろう?
悪いな妹、僕が死んでたらこんなことにはならなかった……かな?
「……ごめんな」
僕がこれから巻き込まれるゲームのことを考え、先に謝っておく。
途端、キッと睨まれた。
「兄ちゃんは悪くないのに、なんで謝るのよ? 私のために色々してくれてるじゃん。それに誇りを持て!」
「……ありがとな」
妹よ。なんだかすごく、報われた。
「ほらほら、明日からはもう消灯時間なんだから、さっさと寝た寝た」
妹に押されるまま自室に入り、そのままベッドに倒れ込んだ。
疲れた、お休み。
……って、おい悪魔、お前お金くれるんじゃなかったのかよ?
「ギブアンドテイクな。お前が魂をくれれば、渡してやるよ」
……魂、ねえ。それっておいしいのか? というか、文字盤の無い時計ってことは、魂の量は目分量?
「当たり前だろ? 魂の量なんて、測れる物じゃないんだから」
そうですね。
「で、どうする? 魂を売るってお金を得るか?」
……………………いや、遠慮しておこう。魂なんてそう簡単に売り渡していい物じゃない気がして来た。
それに、このゲームを続けるためには必要不可欠の物だろう。こんなところで使うのはもったいない。
「ふ〜ん、まあいいぜ。魂を持つ限り一年間は絶対に生きていられるからな。怪我をしたら俺が治すし、死んだら生き返らせる」
さらっととんでもない事言ってますよ、この悪魔。
なあ悪魔。さっきの話からすると、この神様と魔王の人生ゲーム、最近始まったってことか?
「う〜ん、最近って言えば最近。一ヶ月前からかな」
その一ヶ月、お前は一体何をしてたんだ?
「俺? 別の奴と契約してたんだよ。……そいつとは契約途中破棄されたんだ」
契約って、途中で破棄できるのか?
「できるさ。死ぬより恐ろしい代価があるけどな」
……なんか、僕はお前と会った気がするんだけど、気のせいかな?
「さあね。今の俺の人格は、前の契約者に近いからな。お前とそいつが会った事があるのかもしれないな」
ふ〜ん。
ところで、『人助け』って具体的には何をするんだ?
「さあて、知らねえ。お前が考える人助けをしろよ。俺は悪魔だぞ?」
それはもっともな話ですね。
「まあ、別に人を助けなかったからと言って、お前が死ぬ訳じゃないんだけどな。もっとも、果たしてそんなことが言えるかどうか……」
……僕は人を助けるぞ。人の痛みは、知ってるつもりだから。
「重畳。だから俺はお前と契約したんだ」
喰えない悪魔だ。
話は戻るけど、僕はこれまで生きていて、天使だの悪魔が人間の命を弄んでいるなんて気がつかなかったけどさ。
「……明日になれば嫌でも気付くさ。この世界、お前が思っているより、かなりやばいぜ」
そんな不吉な言葉を最後に、僕は眠りに落ちた。