第一章 〜リアルにリンクのゲーム2〜
第一章 〜リアルにリンクのゲーム2〜
あれ? 僕って、死んだよな?
そう思う、そう思えることは、一体どういう事なのだろう。死んだら考える事もできないとか、そんな風に思っていたのに。
「ええっと、死んでないからだな。助けてやったぜ、青少年!」
………………、空耳が聞こえたのだろう。
僕は、死んだ。
飲酒運転の常習犯を見つけ、僕はなかば自分から轢かれた。最も、そんな証拠は残らなかっただろうが。賠償金と生命保険のために、僕は死ぬ事を決意したのだ。生きるためには、仕方の無い事だった。
僕の家は貧乏だった。
そもそも祖父の年金が唯一の収入だったのだから、それは当然だった。両親の貯金は高校までの養育費で消滅する。だから、祖父の持ち金で暮らしていたようなものだった。その祖父が死んで、相続税とか言うので祖父の遺産は減る。さらに馬鹿みたいな葬式代。結局、残ったのはわずかばかりのお金だった。それでは、僕か妹のどちらかしか生き残れない程度のお金。
だが、それも今日までだろう。
生命保険やら賠償金やらが妹の財産になって、貧乏だった生活も一変。いつも言ってたよな、妹。
『兄ちゃんはさ、頭も悪いし運動も出来ないんだから、内蔵やら心臓を売ってお金を作ってよ。頭脳明晰、才色兼備の私を灰被りのままで終わらせるつもりなの!?』
これでいいんだろ?
内蔵やら心臓は売れなかったけど、お金は稼げたぞ? 僕の内蔵や心臓も無駄にするつもりはなかった。ちゃんとドナーカードに署名をしておいたから。必要な人にあげられたら良いんだけどさ、僕の死体でも臓器提供できるかどうかは知らないが。健康面なら問題なかったと思うけど。
と。
「死んで喜ばれるぜ、みたいな展開の途中悪いんだけど、お前死んでないから」
そいつはペシペシと僕の頭を叩いた。
痛くも痒くもない。ただ、感触はある。というか、どう考えてみても固いコンクリートの感触が背中にある。
あ〜、え〜、まじか〜。
「……何? 僕、死んでないの?」
「はい、俺が助けました」
なんてことしやがるぶん殴ってその内臓売り払ってやる、という意気込みと共に意外な程に自然に僕は起き上がれた。あれ、すごいぞ。これがつい先ほど轢かれた人間の体か?
しかしどうやら、轢かれたという事は本当らしく、僕の寝ていた場所には夥しい程の血が水溜まりを作っていた。
そして、僕を助けたというソイツは。
「生命保険? 損害賠償? 臓器提供? 笑わせるなよ。俺が世界にもっと良い物を与えてやるよ。
最低最悪のゲームだがな」
悪魔だった。