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好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します  作者: 皇 翼


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29.

部外者を立ち入らせないためだろう。施された結界や呪い、四方八方から飛んでくる攻撃魔法を其々退け、洞窟の奥へ奥へと進んでいく。

リオンを先頭に、シトリー、エルヴィヒと続き、ジェレミーが殿(しんがり)を務める。エルヴィヒは基本的にリオンの陰に隠れてキャーキャー言いながら進み、それを背後からの攻撃を全て弾いているシトリーとジェレミーが冷ややかな目で見つめていた。

そうして幾重の魔法を掻い潜り、どれくらい歩いただろうか。鍛えている面々ですらも足腰に疲労感を覚え始める程に歩き続けて、洞窟の最深部に辿り着いた。

そこはまさに『最新の魔法技術』に包まれた場所だった。

なんのために使うのか分からないような大小様々な装置が視界いっぱいに立ち並び、複数の研究員たちが警戒心を剥き出しにして、リオン達に武器を向けていた。


「俺達は今から神の封印を解く。さて、逃げたいやつは逃げていいよ。でも向かってきたやつは……皆殺しだ」


その言葉に気圧されたのか、研究員のほぼ全員が蜘蛛の子を散らすように出て行った。

そうして残った数人は体力のあり余ったエルヴィヒが抵抗する暇も与えず無慈悲に命を刈り取る。他の面々はただ、無表情でその光景を見ているだけだった。


***


封印された神は管がたくさん繋がれた円柱型の装置の中にいた。まるで生きているかのような姿で、装置の中にただ浮かぶ。

褐色の肌に漆黒の髪。一見普通の人間。しかし近づけば異様なまでの強い魔力を感じる。


「これが、神と言われるものですか」

「ん?リオンは怖気づいちゃったの??」

「そんなわけがないでしょう。これから魔法を使う対象を分析していただけです」

「ふーん。怯えてるかと思ったのに、おもしろくないなー」


嘘だ。実のところ、リオンはその魔力のあまりの強大さに、少しの不安を感じていた。

いくら搾り取られ続けていたとしても、やはり人ならざる大いなる存在。一人間の力とは比べ物にならない程に膨大な魔力を感じる。これを自分の魔力で包み込み、飲み込むことで、『融合』する。不安を感じようがなんだろうが、やらないといけない……否、必ずやり遂げるのだ。


リオンは目を閉じ、意識を集中させる。そして自分の天賦魔法を使った――。


魔法を使うとほぼ同時。強大な魔力とリオンの身体が融合していくと同時に、膨大な量の情報も流れ込んで来た。

女神と過ごしていた時の男神・ゼノスの幸福な気持ち、記憶。そして親友であった初代国王が築いた国の王族や民をまるで自分達の子供のように慈しみ、時には国や土地が更に栄えるように手助けをしていた様子。

けれど段々と人々は自分達の力なしでも国を護れるようになっていく。だからこそもう役目がなくなったのだと静かにひっそりと暮らし始めようとした時の事だ。急にゼノスは国の争いごとに巻き込まれることになる。

流行り病だ。その原因として、ゼノスが責められた。確かに彼は『破壊』を司る神。しかし彼にはそんなことをするような理由がない。人々は、人間が神を必要としなくなったからだやら、何かを『破壊』したいという衝動を抑えきれなくなったからだだのとゼノスを責め立てた。

全く身に覚えのないことだったが、それでもゼノスはかつての親友の愛した国や民を信じたかった。だからこそ、受け入れてしまったのだ。当時の王族の言葉を。大きくなりすぎてしまった民の怒りの火種を鎮めるために、犠牲になってくれという言葉を。計画に乗ってくれれば、貴方の大切な存在である女神だけは助け出すというその言葉を信じてしまった――。


神の魔力、精神、そして記憶。全てと融合したリオンは自身の中で湧きあがり続ける怒りに頭を抱える。

これは神の感情ではない。ソレの感情は今は心の奥底に沈んでいる。だからこそリオンは自身の意識を保てたともいえるのだが。それ故に、この感情はリオン自身のものだった。なんて醜悪なのだろう、女神の怒りも尤もだと思ってしまった。なにせ人間は二柱を騙し、どちらの力も利用したのだ。そして御しきれなくなった女神を封印した。


「リオン……なのか?」

「ええ、僕は取り込まれてなどいませんよ」

「うんうん、上手く融合している。流石だね。俺の見込み通り!」


ジェレミーは怒りに震えるリオンに戦々恐々と本人の意識があるのかを尋ねたが、一番の元凶であろうエルヴィヒはケロっとした顔で、リオンが神に意志を乗っ取られていないことを見抜いていた。

それに静かにイラっと来ながらも、第一段階の難問を突破したことにエルヴィヒ以外が安心していた。

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