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好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します  作者: 皇 翼


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18.

魔力の流れを完璧に読み取る。

接近戦型の魔物の右斜め上からの叩き潰すような斬撃を避け、続いて繰り出された右胴から左脇へ横に薙ぐような一閃を防ぐために、それを予め生成しておいた大剣で受け止めた。


(っ!重い!!!)


予想以上に重い攻撃が大剣を支える手にかかる。魔力を腕に送る事で腕力自体を強化しているはずなのに、ビリビリとした衝撃と痺れが両腕に走った。一瞬怯みそうになったが、ジェレミーの剣戟が割り込み、少し打ち合ったところで魔物が少し後ろに下がる。きっとこの接近戦型の魔物には、パワー特化のジェレミーの方が相性が良いのだろう。


ジェレミーの天賦魔法は『肉体超強化』である。読んでそのままの意味通り、魔力を全身に行き渡らせることで肉体を物凄く強化する。しかしその強化の度合いが半端ではないのだ。元々岩すらも砕けるゴリラなのに、この力を使うと人間の腕よりも太い鉄さえ折り曲げ、その肉体は銃弾すらも弾き返す。まさに一定時間無敵になれる魔法である。


しかし対する魔物達も引き下がる事はない。接近戦型の魔物が怯んだ後に対する追撃をさせないためだろう、ボウガンでの射出攻撃と氷で生成した刃を接近戦型の魔物の隙間から放ってくる。しかしそれらの攻撃は、ジェレミーに当たる前に一瞬にして、全てが弾き返された。

矢を叩き落としたのはクロエ、魔法攻撃を無力化したのはエルヴィヒである。彼の魔力を込めた銃弾によって、大体の魔法は無効化することが出来る。彼の天賦魔法をクロエは知らないが、この支援力の高さからしてきっと、こういうタイプの魔法なのだろうと勝手にクロエは考えていた。


この三人の中では何も言わずとも、既にこの魔物達との戦い方が確立されつつあった。魔物によって戦い方を変えるのは当然の事ではあるが、普段は別の場所に所属しているのに、ここまで合わせられるというのはある意味異常である。それこそ各々の『才能』としか言いようがなかった。


ジェレミーが接近戦を主に担当し接近戦型の魔物の相手。クロエが遠距離型の魔物の物理攻撃を弾き返すと同時に接近戦のジェレミーと共に魔物を攻める。そしてエルヴィヒが遠距離型の魔物の魔法を無力化しつつも、銃撃で相手をする。その戦いは30分以上続いていた。しかし――。


「ねえ、クロエちゃん、ジェレミー君、気づいてる?アイツらあんなに魔法バンバン使って、攻撃仕掛けてくるのに、全然魔力が削れてない」

「きっとどこかで魔力を供給し続けているんですよ。どうやっているのかは俺には分かりませんが」

「……この場所自体から、よ」

「は?」

「この空間は瘴気で溢れている。あの魔物達はその魔力の塊である瘴気を人間が酸素を取り込むのと同じ様に体内に取り込んで、魔力を供給している。それでも空間の瘴気が途切れる気配はない……きっと、無限にアレは復活し続けるわ」


二人共クロエ程魔法が得意ではなく、造詣も深くない。それに実は瘴気は人間にとっても魔物にとっても毒であるのだ。そんなものを吸収するなんてものは、今までクロエだって見たことがなかった。

だから分かっていなかったのだろう、その情報を二人に与える。絶望的なその情報を。なにせこの魔物達は、魔力を永遠に供給され続けている上に強い。交戦後からずっと、此方が逃げる隙など一度も与えてくれていないのだ。結界を使って閉じ込めようとしてもそれを一瞬で粉々にして攻撃が迫ってくる。ダメージを与えてもすぐに復活する。だからずっと逃げられていない。此方側がずっと削られ続けている。


きっと全員絶望的な表情をしているのだろう、と二人の方をチラリと見た。ジェレミーはいつも通りの無表情のままではあるが、普段と比べて微妙に眉の間に皺が寄っている。クロエ以外には非常に分かりづらいが、少しでも表情に出てしまっている時点で、精神的にかなり衝撃を受けている筈だ。

しかし、予想外だったのはエルヴィヒである。彼はなるほどね~などと言いながら、ニヤニヤとした表情を浮かべていた。


「要はこの空間の瘴気をなんとか出来さえすれば、アレを倒せないとしても、俺達は最低限逃げられるんだよね」

「そう、ですね。再生さえしなければ、致命傷を与えられると思うので。でもそんな方法は――」

「あるんだな!それが」


そう言って、エルヴィヒはクロエに何か棒のようなものを投げつけてくる。受け取ってみると、それはクロエの掌ほどの大きさの菱形の透明な結晶が先端についた白銀の杖だった。


「これは……?」

「良いから良いから!クロエちゃん、それで瘴気を杖の先端に集めるようにして魔力を使ってみて!!」


説明がなく、よく分からないと思いつつも、このまま普通に戦っていても消耗して、最終的には戦闘に負けるだけだ。負けたらジェレミー、そしてエルヴィヒも含め、ここで死ぬ。何も対処法がない、この状態でも、少しでも可能性があるのであれば、それに頼りたい。だから、この方法にクロエも賭けてみようと思った――。



杖の先端から魔力を流しながら薄く延ばして、空間を覆いつくすように覆いつくす。魔力によって瘴気の範囲を把握しながらも、瘴気をクロエの間に集まるように追い込んでいく。

クロエが魔力操作をしている間、ジェレミーとエルヴィヒのみで魔物に対抗していた。クロエが何かをしようとしていることがわかったのだろう、魔物達の攻撃が先程よりも激しくなっている。きっとそんなに長時間は保たないのは、遠目から見ていても察することが出来た。


より空間に放出する魔力を濃くして、杖の先端に集まるように意識を集中する。そこからの動きは、何故か何も言われなくても分かった。身体の内側から、今まで感じたことのない程に清らかな魔力が溢れ出してくる。気付いた時には言葉が勝手に口から出ていた。


『万象浄化』


これが、この力の名前。

杖の先端の結晶が前にある景色が透けないほど真っ黒に染まり、ヒビが入る。けれど、クロエはそのまま浄化し続けた。そうして、結晶がバラバラに割れた頃には、全ての瘴気が浄化しつくされていた。


「今なら、いける!ジェレミー、エルヴィヒ、このまま魔物を倒します!!」


既に浄化の力は、クロエの力に馴染み切っていた。それを一瞬で生成した長柄に注ぎ、まずはジェレミーが戦っていた接近戦型の魔物に投擲する。

声を掛け、動きを見ただけで、クロエが何をしようとしているのか分かっていたジェレミーは、ギリギリまで敵の動きを引きつけ、槍が自身に当たる寸前のところで避けた。その行動によって、魔物の頭部に槍が突き刺さる。ボロボロと瘴気に覆われていた身体が崩れていく。まずは一体目にトドメを刺した。そう確信したクロエだったが、その魔物の内側を見て、困惑した。


「え――?」


思わずあふれ出てしまった間抜けな声。

そこにいたのは……魔物の中身だったものは、見間違えるはずもない、クロエの親代わりであったリード=アールテイル、その人だった。

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