40話 〜戯れ事〜
私は、お姉ちゃんの耳についてたデバイスを……"彼女"を砕いた。
その時──
その時、お姉ちゃんから力が抜けていった……
「お姉ちゃん!」
私はアスピアを揺さぶる。
起きない……
脈は──
──あった。
よかった……生きてて……
仮に、アレになんか仕込まれてたら私──
私はお姉ちゃんを抱きしめる。
そして、しっかり手を握る。
その時、私の気のせいかわかんないけど、“お姉ちゃんが握り返してくれた“気がした──
「予想外の事態が発生した! 二人まとめて撃ってしまえ!」
「撃つって……何を用いてでありますか?」
「戦車に決まっているだろう!」
ギギギギという音を立てて、私たちの方に向け、主砲が回転する。
いや、回転していたという方が正しかった。
私はお姉ちゃんを抱えて翼を広げる。
そして、空に逃げた。
戦車で空なんて、撃てないはずだから。
……対空戦車とかいたら、その時はその時。
時々、轟音と共に飛んでくる砲弾は、私に確実に当たる軌道を描く。
でも、私が上昇する方が速い。
私を狙った攻撃は2m下を通過していく──
私は目の前の敵を許せない。
多分、これからも許せない。
人質とか、洗脳とか……
もしかしたらこれも、“未熟“な私の八つ当たりかもしれない。
本当は、今すぐ壊滅させたいぐらい。
それでも今は、戦うわけにはいかない。
お姉ちゃんを無事に連れかえらないと──
「あいつを撃ち落とせ! せめて向こうの戦力を減ら──」
「無理です。目標はすでに射角外に出てしまいました。」
「……仕方ない、撤退するぞ。」
そんな声が地上から聞こえてきた。
砲弾の雨は、降り止んだ。
気持ちいい風が私の“眠気“を吹っ飛ばす。
勝利の凱旋ってわけでもないけど、雲ひとつない空を飛んでいると不思議な気持ちになるような気がしてくる。
さて、街に向かって飛び始めて、ちょっと経ったところで──
「いつまで演技してるの、お姉ちゃん?」
私は、そこで気絶したフリをしているアスピアに声をかける。
「やっぱり気づいてたのね。流石我が妹〜。」
目を開けたかと思ったら、急に笑顔になってそう言われる。
ほら、やっぱり嘘だった。
割とわかってたよ。
だって、アスピアにしては力が弱いし、洗脳されてる割には躊躇いがあったように思えたし。
だから、そもそも洗脳されてなかったんだろうなって。
それにしても速かったけど!
最初、命の危機を感じたけど!
「にしても、ファーシアも演技上手いわね〜。私の無茶振りにも応えれてたし。」
無茶振りの自覚あったんだ……
「私は全然上手くないよ。お姉ちゃんが本当に洗脳されてるって思ってなきゃ、反撃できる気がしなかったもん。」
「役に没頭できるなら、それはもう役者よ。」
「お姉ちゃん、役者ですらないでしょ。
……あ〜あ。
お姉ちゃんに振り回されて、まるで“戯れ事“みたいな一日だった。」
「なんの説明もできなかったのは許してって。」
そんな会話をして笑い合う。
最後に話してから1日も経っていないのに、何故だか一週間も経っていたような気がしてくる。
"今回"のは完全に気のせいだけど。
太陽は落ちてきている。
いつも通りなら、そろそろマリアさんがご飯を作ってくれてる頃だと思う。
街を救った英雄が帰ってくるんだし、きっと豪華なもの用意してくれてると思う。
マリアさんのことだし……って、私は本来感謝しないといけない立場だけど。
まぁ、街までまだ距離はあるんだし──
街に着くまで──それまではもっと話そうと思う。
まだ未熟な私のことも。
私たちの在り方も。




