37話 〜シスターだから〜
今回は自信ある。
「アスピ──」
「アスピア様を追いかけないのですか。」
マリアさんが冷たく言った。
あの兵士さんよりも、敵に怒っている時のアスピアよりも。
「私に…そんな資格……」
「私は、アスピア様がファーシア様を待っていると思います。」
冷たく吹いていた風が強くなっていき、私をより一層冷やそうとする。
まるで、私を消してしまうかのように。
「アスピア様が去る時、なんとおっしゃってましたか?」
「私に…任せる、もしもの時は…助けにって……」
「今がそのもしもの時です。」
「でも……」
「でも、なんですか?
何が貴方を曇らせているのですか?
アスピア様の太陽を。」
ブーツが地面を蹴る音と共に彼女が近づいてくる。
気がつくと、私は2、3歩下がっていた。
──私自身にも理由はわからないけど、恐怖のようなものを感じていた。
「私は──」
声が枯れてきた。
まるで喉に錘がくっついたかのような苦しみを伴って。
「アスピアに…責任を……押し付けて。いつも、迷惑ばかり…かけて…。
私が…妹でいいのか……わからなくて……」
言葉を発する間も彼女は近づいてくる。
私が逃げようとした時、彼女に両手を掴まれ、逃げ場を失った。
でも、その手は──マリアさんの手は、震えていた。
「ファーシア様は、いつ迷惑をかけていたんですか。」
今度は言葉が枯れる。
なんて答えればいいのかわからない。
でも……
「私は──」
「私は、お二人は一緒にいて幸せそうだと思っていました。」
マリアさんの言葉に、私は黙ってしまう。
だって、そんなこと……
「アスピア様のミスをファーシア様が拾って、それを一緒に笑って……
正直、受け入れてもらった身で、烏滸がましいかもしれませんが、お二人の関係が羨ましかったです。
ここにきてからまだ数日ですけれど。」
そうだったの?
思わず顔を下げてしまう。
「それでも私はお二人が好きでした。
だから……だから、そんなお二人の関係を否定しないでください……」
私が顔を上げ直した時、マリアさんの目尻には涙が浮かんでいた。
うん…そうだった。
どちらかって言ったら、私が迷惑かけられてる側だった。
それに、私のことを妹だっていい始めたの、アスピアの方からだったね。
……本当は、まだ私を信じられない。
自分が何をして、どんな影響を与えたのかまだわからない。
でも、私たちのこの数ヶ月間は嘘じゃなかったと思う。
言葉にすると、短いけれど……
「ごめんな…さい、マリア…さん。私、ちょっと…おかしくなってた……」
涙で声が出ない。
それでも捻り出した。
「はい。」
彼女は静かに一言答えた。
でも、その声は優しかった。
私が何か言えることはないのだろうか?
大切なことを──私たちの在り方を、思い出させてくれた恩人に。
でも、浮かんだ言葉は一つ……いや、二つだった。
「ありがとう、マリアさん…。マリアさんは、強いんですね。」
彼女だって泣きたいはず。
それでもそれを我慢して、私に勇気を教えてくれた。
私が妹である勇気を。
「私は、シスターなので!」
彼女は涙を拭って、笑顔で言った。
私には、その笑顔が眩しく見えた。
次回、アスピア奪還作戦(予定)




