34話 〜崩壊〜
今回もアスピア視点。
私はファーシアに指導をしている……のだけど……ねぇ……
「昨日、何があったの?」
「昨日って?」
そう言いながら彼女は矢を放つ。
その矢は的に命中する。
的には複数本、矢が刺さっていた。
「いや、これよこれ! なんでこんな急に当たるようになったの!?」
「いや、私でもびっくりしてるというか……昨日全然当たらなかったのに……」
嫌……待って!?
これじゃ、本当に私必要なくない!?
こんなに成長が早いの?
羽根の時もそうだけど……
「──ピア? アスピア!」
「ファーシアが怖くなってきたわ……」
「アスピア!? 何言ってるの!?」
あっ、いけない……ぼーっとしてた。
「ごめん、ファーシア。そろそろお昼にしよう?」
「う、うん…わかった。」
私は教会の中に入る……はずだった。
「緊急避難体制、緊急避難体制。
西方よりテフラ軍が侵入しています。
市民の皆様は直ちに東区画へ避難してください。
繰り返します。」
「アスピア! これって何!?」
あ……そう言えば、前回鳴る前にファーシアは大怪我負ったから……
「聞いてわかるだろうけど、敵襲よ!
いいから逃げ……るわけにはいかないわね! 避難誘導するわよ! マリアちゃん連れてくから、先行ってて!」
私はそう言って教会の中に急ぐ。
天使の私たちはともかく、人間は銃弾一つで死ねるし。
「マリアちゃん! 避難するわよ! 荷物とかはいいから!」
「はい、アスピア様。最低限だけ、ですよね。」
「えっ……いやっ、え…?」
目の前には準備万端と言ったように荷物を用意し終わったマリアちゃんがいた。
というか、スーツケースを用意してる……
「行きましょう、アスピア様。」
そう言って、彼女は教会を出て行こうとする。
「ちょっ、いつの間に!?」
「シスターなので。」
私の問いに彼女は笑顔で答えた。
マリアちゃんが自分で行けるというので、私はファーシアと合流することにした。
「東に逃げてください! 軍が攻めてきています!」
「ファーシア! どんな感じ?」
「あっ、アスピア。こっちの区画はもう少しで終わりそうだけど、今戦闘が行われてる区画の避難がまだ。」
彼女は手を離せなさそう。
「わかったわ。とりあえず、そっち行ってくる。」
「うん。」
さて、どうしようかな。
そのまま行っても"民間人は来るな!"ってされる気しかしない。
うん? あの戦車は……
「ベイリーさん!」
「なんだ? 民間人は下がれ!」
彼の名前はアレク・ベイリー。
私の街の兵士をまとめる指揮官さんで、ANーAと書かれた戦車に乗ってるから一目でわかった。
「状況は?」
「だから……まぁ、いい。A区画にまだ市民がいる。それに、一部人質をとられている。前線は拮抗してるから、向こうも今から人質を捕らえる余裕などないと思うが。」
なるほど……時間はあんまりなさそうね。
「それじゃ、私たちは避難誘導の方してくるから、捕虜の方はよろしくね〜」
「おい! 勝手に行くなアスピア! 天使だか知ら──」
私は振り返らず走る。
敵さんに鉢合わせしないルートで。
……こんな時に翼があったならもっと早く着けるのに。
あともう少しなのになぁ……翼。
数分もせず、A区画にたどり着く。
街は破壊こそされているけど、崩れてはいない。
多分、脇道とかに隠れてるだろうから、屋根の上から探してみようかな。
そうして創作開始から数分。
2人分の影を家の中に見つけた。
「あっ、そこのお姉さん、助けてください! お父さんが!」
「ダメだ。父さんはもう動けない。お願いします! この子だけでも避難させてください!」
父親の脚は崩れた天井に挟まれている。
大丈夫、脚自体は潰れていなさそうだ。
「わかったわ。今どかすからね。」
私は瓦礫を持ち上げる。
「なんで……? なんで持ち上げら──」
「天使だからよ! 早く!」
2人が範囲から外れたことを確認してから瓦礫を下ろす。
「私がいなくても大丈夫? 一応、南の道を通れば安全のはずよ。」
さっき上から見下ろした限りは。
そう付け足す。
「そうですか! ありがとうございます! 娘と2人なら歩いて行けます。他にも困っている方がいるでしょうから、そっちに力を入れてください!」
そう言って歩き出す2人を見送って、また探しに行こうとした時。
「こちらテフラ帝国軍のヴゲノム3級士官。今から要求するものを用意しなければ人質を10分につき3人ずつ殺していく。いいか? 人質を──」
そんな声が街中に響く。
「何それ……
今までそんな強行手段使ってきてなかったでしょ!?」
いや…もしかして……
急いでいる?
何を?
「そちらの国の技術を今すぐに差し出せ。差し出さないというなら人質は皆殺しにする。早い決断を望む。」
この放送を聞いた時、まだ私は想像もしていなかった。
自分の決断も、妹の成長も。
それで、崩れていくものも──
テフラ(tephra)はギリシャ語で火山の意味。
主人公の街が王国(仮)の端っこにあるのでしょっちゅう狙われてる感じ。




