32話 〜原点回帰〜
悲愴第三楽章むずい……(関係無)
私はアスピアを追って家を出る。
"私も修行する!"ってことは、平原に出てるのかもしれない。
「アスピアがここら辺通りませんでしたか?」
近くの商店街で聞き込みをしてみる。
どっちの方角に向かったか、全然わからないし。
「アスピアちゃん? 見かけてないよ。」
「嬢ちゃんが? いや、見かけてないが?」
……誰も見てないみたい。
少なくとも、こっちの方向にはきてなさそう。
私は商店街とは反対方向の平原にきてみた。
こっちは確か、キマイラと遭遇した方だったはず。
……流石に、卵のリベンジに行ってるわけじゃないよね?
私はあの日と同じ道を辿ってみる。
時刻はそろそろ1時になるかってぐらい。
「アスピア〜、いないの〜!」
割と森の奥の方まで来たと思うんだけど、全然見つからない。
というか、巣の近くまで来たのにアスピアの羽の一枚も見つからない。
あの巨大ダチョウの羽なら落ちてるのにな……
「ウァ……ウァァァァ!!」
背後からけたたましい鳴き声がする。
後ろを振り返ってみたら、あのモアがいる……
「ウァァ!!」
目の前のダチョウは再び鳴き上げ、こちらに突進してくる。
私は全力でかわした。
その瞬間、バキッという擬音じゃ表せない轟音が森の中に響いた。
私は振り返らず逃げることにした。
ダチョウが再び突進してきてる……音がする。
多分、陸路じゃ追いつかれる。
そう思って、空に逃げた瞬間。
「バギャ!!」
私がついさっきまでいた地点の木々が根ごと薙ぎ倒されていた。
「やばすぎるでしょ……」
気づいたら、そんな言葉が口から漏れていた。
結局、これ以上探しても意味がなさそうだと思って街に帰ることにした。
そうして、教会の扉を開けた瞬間──
「あっ、ファーシア! どこ行ってたの? もうご飯できてるけど?」
アスピアがこちらに駆け寄りながら言う。
「アスピア!? いつから家にいたの!?」
「えっ、1時くらい。」
私が教会を出てすぐ帰ってきてたのね……
まぁ、お姉ちゃんが行方不明になってたわけじゃなくてよかった。
私は昼ごはんを食べながら話すことにした。
アスピアを呼びに平原まで行ってたこと。
その過程でモアに襲われたこと。
「私なら教会の裏にいたのにね。」
「だって、アスピアが指定するの大体平原とか街の外じゃん!」
「いや、流石に危険なとこには行かないわよ。」
……それもそうか。
私は紅茶を飲みながら聞いていた。
そういえば……
「そういえば、アスピアってなんの修行してたの?」
「……気になる?」
「うん。」
私が言うなり彼女は席を立つ。
「後で裏口に来て。お姉ちゃん、かっこいいとこ見せるから。」
とか言いつつ、お皿を片付けてないけど?
「アスピア、お皿」
「じゃ、先言ってるね!」
あっ、逃げた。
「ファーシア様、食器はいいのでアスピア様の元に向かってあげてください。」
「……いいの?」
「私はこれでも、お二人にお仕えするシスターなので。」
なんか本当に、マリアさんにはお世話になりっぱなしな気がする……
「わかりました。今度お返ししますね?」
「いえ、お二人の元気な姿を見られるだけで尊いので……」
あっ、そういえばマリアさんはオタク気質あったんだった。
「あっ、もう来たのねファーシア。」
私が何か言う前にアスピアは弓を構えた。
ギチギチと弓幹は鳴り、弦はピンと張られている。
そして矢が放たれる。
一瞬、違和感が流れる。
矢はストンと的に刺さる。
……何、今の?
アスピア本人じゃない、何かの空気が違かった気がする──
「─シア! ファーシア! せっかく打ったのに何ぼーっとしてるの!?」
私はハッとした。
気がつけばアスピアが目の前まできてた。
「ごめん、ちょっと考え事してた。」
「全く、次はちゃんと見ててよね。」
いや、最初も普通に見てたけどね?
彼女が弓を構える。
再び矢が放たれる。
その直前、アスピアの手に沿って虹色の何かが"流れた"のが見えた。
それは薄いオーロラの膜のようで、私は一瞬、綺麗だとも思ったけど、何故だか背筋がぞくりとした。
そして、それは矢が的に当たると同時に消えていった。
「ふふん、どう? すごいでしょ! お姉ちゃん、やる時はやる天使な」
「今のどうやったの!?」
「今のって?」
アスピアは首を傾げた。
あれっ、もしかして本人も自覚なし?
「的を射る前になんか手の付近に流れてたじゃん、なんかこう、もわっと……」
「何それ……ファーシア、歩き回って疲れてるんじゃないの?」
「いや、本当だって!」
……もしかしたら、何かのヒントになるかもしれない。
想像するって意味はわからなかったけど、さっき流れてたものを理解できたらその意味もわかるかも……
「お姉ちゃん!!」
「ひゃい!?」
「弓、教えてね!」
「わ、わかった! お姉ちゃんに任せて!」
あれ……そういえば私、めっちゃ弓が下手だったような気が……
「よし、じゃあ早速行くわよ!」
「うん!」
私たちの言葉に応じたように、的をくくりつけた木から実が落ちた。
27話のクレセントモアは卵を守ってたため大きな動きができなかったけど、今回の個体はそういうデバフがないので強いです……




