30話 〜後遺症〜
短編出すタイミングミスった感がすごい。
キマイラに遭遇した次の日、私たちはネロニアさんの街に向かうことに決めた。
まぁ……あの獅子が二度と現れないように警戒を強めてほしいってネロニアさんに言いに行くためだけど。
ここら辺で一番権力が強いの、上級天使なネロニアさんだし。
そして次の日、私は目を覚ました。
ベッドから降りて、ドアノブを捻って外に出ようとしたその時。
「ファーシア〜! 助けて〜! 羽がっ、羽が〜!」
隣の部屋から叫び声が聞こえてくる。
私は急いで向かう。
「ファーシア! 羽が、縮んじゃったの!」
私が部屋に入るなり、アスピアが泣きそうな顔で訴えてきた。
よく見たら白鳥ほどあった翼が雉と同じぐらいの大きさになっていた。
「とりあえず落ち着いてアスピア。ネロニアさんに会いに行くんだから、その時に見てもらおう?」
私は騒いでいる彼女をそう宥めるしかなかった。
「お前ら、一年後にこ」
「お師匠様ァァァァ」
「どうしたアスピア!?」
ネロニアさんの元に着いて早々、アスピアが飛びついていく。
「実は、朝目覚めたらアスピアの羽が縮んでいて……」
私が説明する。
「あぁ……確かにそうだな。直近で何かあったか?」
「昨日、キマイラに襲われて……」
何かトリガーになりそうな出来事は……
「尻尾の蛇に翼を噛まれていました。」
「絶対それじゃないか」
ネロニアさんは手を頭につけて呆れ顔になる。
けど、一瞬ほっとした顔になる。
「なぁアスピア? 天使の翼は天粒でできていると言ったよな?」
アスピアが頷く。
天粒は天使の生命エネルギーみたいなもの……だったよね?
ネロニアさんの元を離れて数日しか経ってないけど、その数日が濃すぎて忘れてた。
「天使が怪我をしたり、毒を喰らったりしたら、体は天粒を消費して治そうとするんだ。」
ネロニアさんがアスピアの頭を撫でる。
「だから……まぁ、一時的に天粒の量が減っているだけで、翼自体はそのうち治るから気にしなくていいぞ。」
その一言にアスピアの顔がパッとする。
「しかし、だ。天粒が元に戻っても翼には後遺症が残るからな。リハビリはしないといけないぞ。」
「そ、そんなぁ……」
アスピアは崩れ落ちた。
とりあえず……お姉ちゃんが無事でよかった。
「それで相談なんですけど。」
「どうしたんだファーシア?」
ネロニアさんがこちらに振り向く。
「キマイラが来ないよう、天使側の警戒を強めることってできないんですか? キマイラって危険生物なんですよね?」
その言葉に彼女は頭を抱える。
何かあるのだろうか?
「いいか、ファーシア? お前が堕天した理由がなにだったか思い出してみろ。」
彼女は人差し指を立てながら言う。
「……冤罪ですね?」
「そうだ、冤罪だな? じゃあ、そんな組織の末端の天使がまともに働いてると思うか?」
「……いや、思えませんね。」
「そう言うことだ。神様連中は割りかしまともなのが多いからいいが、天使は……特に、天の近衛団の目に届かないところはな……」
「天の近衛団? それって一体何ですか?」
そう言うとネロニアさんは首を傾げる。
いや、天使社会について知らないことの方が多いので……
「てっきりお前も会ったことがあったと思っていたんだが……地味に灰色掛かった白い制服の……」
……思い出した。
天界にいた時、私のことを気絶させたり、私のことを鎖で繋いでたりしていたあの人たちか。
……今の言い方は語弊がありそうだな、なんとなく。
つまりは警察的な組織ってことなのかも。
「まぁいい。とりあえず、キマイラを見てる奴らには一応言っておくよ。アテナ様を通して。」
「アテナ様とお話しできるんですかネロニアさん!?」
「あぁ、そうだが? というか、上級天使なら普通、自分の仕える神への連絡手段ぐらいあるぞ?」
……ん? 連絡手段?
天界って電子機器使えないはずじゃ?
「なに想像してるかわからないが、多分全然違うぞ? 普通に文通だ、文通。」
「文通って、天界と星を繋ぐ鳥でもいるんですか?」
伝書鳩とか……
「いや? 普通にアテナ様の配下の天使が飛んで運んでくれるが?」
「その方の労力すごくないですか?」
そんな会話をしていると──
「私のこと置いてけぼりにしないで〜!!」
アスピアがそんなことを言った。
うん……普通に忘れてた。
とりあえず、しばらくはアスピアの翼の回復兼リハビリに力を入れることになりそう……
そんな気がした。




