28話 〜獅子王〜
今回はアスピア視点から始まります。
私はキマイラに勝てなかった。
獅子は私より強かった。
私はおもちゃにされてた。
まるで、ボールのように。
流石の私も悔しかった。
「アスピア!!」
そこにファーシアが……
……妹が割入ってキマイラの動きを止め、私を救出してくれた。
「ごめんアスピア、余計な手を出しちゃって。」
彼女が本気で謝ってくる。
「いや、ファーシアが来なかったら今頃」
死んでたかもしれない。
そう言いたかったのに、喉が閉まって声が出ない。
「毒は大丈夫。天使には抗体があるから。」
声が出ないのも毒を排除しようとしてるからだし。
そう言おうとしても伝えられない。
「安心して、お姉ちゃん。」
……えっ?
今、お姉ちゃんって言った!?
あのファーシアが!?
……じゃないのよ、今は!
「あとは私が戦うから。だから、お姉ちゃんはここで休んでてね。」
そう言う彼女に手を伸ばそうとする。
……動かない。
毒じゃない……キマイラの猫パンチのせいだと思う。
彼女は私を地面に置いて駆け出していく。
……待って!
お願いだから……死なないで!
その願いも、声にならなかった。
ーーファーシア視点ーー
私は獅子の元へ駆ける。
そいつを倒すために。
卵が欲しいから?
このままだと街の人が危ないから?
違う……
私は許せなかった。
アスピアにあんだけの怪我を負わせた獅子も、それを傍観するしかなかった私も。
私の攻撃で体勢を崩してた獅子は持ち直し、私の方に突撃してくる。
私は拳を握りしめる。
私には攻撃手段がこれしかないから。
その時突然、山羊の頭がけたたましく叫びをあげる。
そして、獅子は減速し私を中心に周り出す。
私の拳に警戒したのだろうか。
「だったらっ」
こちらから仕掛けるのみ。
私は地面を蹴り飛ばして、獅子に急接近した。
そして、拳を叩き込む。
だけど、効かない。
皮膚が硬い。
この前曲げた戦車の砲よりよっぽど。
私の攻撃に怯んだ獅子は反撃してくる。
間一髪で避けたけど、爪が私の袖を切り裂き、地面には跡がくっきりと残る。
私は体勢を立て直す。
「どこかに武器は!?」
無意識に叫ぶ。
このまま素手で攻撃してもまともなダメージを入れられない。
だったら、一撃必殺でもあれば……
一本の"槍"に目が止まった。
あれはアスピアが獅子に攻撃するときにも使った……"アンタレスの槍"。
蠍座の核を成す星の名前から取られたその槍ならきっと……
私は槍に向かって走り出す。
当然、獅子からの妨害が入ってくるけどそれもかわす。
そして、それを手に取った。
その瞬間、少し減速した。
そのわずかな隙を狙って蛇が噛みつきにくる。
「甘い!」
私は蛇を切りつけた。
切断とまではいかなくともその尾は損傷する。
動物たちが……キマイラが初めて叫び声を揃えた。
アスピアの時よりもけたたましい。
私が何かする前に、山羊の頭が叫びを止め、ほか2匹を叱咤するように鳴く。
それで冷静になったのか、獅子が反撃してくる。
私は、それを槍で受け流した。
しかし、柄が半分に折れる。
次の攻撃を受け流したりしたら、多分、完全に使えなくなる。
長期戦は無理だ。
敵の攻撃は右に逸れる。
その時、僅かに隙ができる。
「今だ!!」
その隙を狙って、敵に槍を突いた。
その攻撃は、確かに命中した。
槍は皮膚を切り裂き、食い込んだ。
奥で、パキッという音がする。
そして、キマイラは動かなくなる。
私が槍を引き抜いた時、異変が起きた。
キマイラの肉体が光となって蒸発していく。
私は少しの間唖然としていた。
これは……どういうこと……?
「そういえば、アスピアは……お姉ちゃんは!?」
戦うのに夢中になっていて忘れてた。
私は彼女の元に駆け寄っていく。
ここまで見てくださってる方がどれだけいるかわかりませんが告知です。
この"天使にされたと思ったら即堕天!?"のスピンオフというか、別視点から描いた短編を投稿することにしました。
"勇者天使、堕天使に仕事を奪われました"
というタイトルで、ファーシアの存在が狂わせた歯車を描く作品なので、ぜひ見ていってくださると嬉しいです。




