1話 〜まだ、生きてる〜
現在、本作は2日に1話のペースで投稿しています。
天使になって六日がたった。
元人間だった私は、ある理由で堕天された。
そこから、いや、その前からずっと、私の運命の歯車は狂っていた──
私の名前は天咲カケネ。
高校生3年生……なんだけど、どちらかと言ったら、今の私は人質。
私がコンビニで買い物を終え、帰宅しようとしたその時。
「強盗だ! 全員、手をあげて大人しくしろ!」
そう言って、男たちが店内に入ってくる。
その時に鳴ったバンという音が、私に危険を知らせた。
……これは、タチの悪い冗談なんかじゃない──
すぐに警察が来て私たちは解放される……のかと思っていたら、私は頭に銃を突きつけられていた。
それに対して、警察は男たちの「これ以上近づくな!」という静止を無視してこちらに向かってくる。
……お願いだから、来ないで。
そう願っていたのに──
瞬間、耳元で弾ける音。
揺れ、黒に染まっていく視界。
少しずつ熱くなっていく体。
……私、死ぬのだろうか。
焦りのような感情が芽生えて消える。
今度はもがく気力も起きない。
結局、同じだった……
暗い闇の中で、私の意識は遠のいていった──
頬のあたりを、暖かい風が触る。
風は、ほのかに甘い香りを運ぶ。
香水でも、お菓子でもない、不思議な匂い……
それに、腕のあたりを何かがくすぐってくる。
私、生きている?
でも、あの時確実に撃たれたはず......
開くはずもない、そう思っていた目を開く。
桃色の空が目の前に広がる。
……あぁ、そうか。
私は召されたのだろう。
思考が回らないなりに出した結論が、これだった。
私は草原っぱに横たわっていた。
体を持ち上げる。
服は真っ白なワンピースみたいになっている。
どうやら死ぬ前と同じように、体の感覚はあるみたいだ。
「痛っ……」
だって今さっき指切っちゃったもん……
私は立ち上がってみる。
本来重力に抵抗するはずだった体は異様に軽かった。
さて、立ち上がって最初に目についたものは、なんの舗装もない一本の道だった。
右にも、左にも広がっている。
なんとなく……そんな言葉でいいのかわからないけど、私は左に行ってみる。
道中、目につくものは特になかった。
でも、道の果てにはあった。
「あれ……三途の川かな?」
無意識にそう言ってしまう。
だって、透明な川にかかっている石造りの橋が──
まるで、絵本のお話のような空間があったから。
私は目の前の事実を受け入れ、橋を渡ることにした。
きっと、私の死を覆すなんてこと、できないから。
だって……!
私はこれ以上考えるのはやめた。
多分、いや確実に、辛いだけだから。
気づけば橋の真ん中らへんをすぎていた。
それと同時に気づいたこともあった。
私以外、足がない。
さっきからちょこちょこ、頭に輪っかがついている人が歩いていた。
だけど、足がついている人は一人もいなかった。
川を渡り切った。
足元にはふわふわとした雲が広がっている。
足場としては、底が抜けそうでちょっと不安に思えた。
「次の方どうぞ。」
そんな声が聞こえる。
私が前を向くと、一人の女性が木製の扉の前に立っていた。
あの人……もしかして、天使ってやつかな?
翼が生えていて、頭の上には二重に輪っかがついている。
でも、デパートの店員さんみたいな服装だった。
白色だけど……なんか想像と違う。
「次の方、そこのあなたです。受付してください。」
「あっ、はい。わかりました。」
私は彼女の前まで歩く。
「輪っかがないですね……けど、ここまで来れてるなら幽体離脱じゃない…ね。」
そう、目の前の天使が呟く。
……えっ、私、輪っかないの!?
いや、なくてもいいんだけど。
ある意味、楽しみにしてたんだけどなぁ。
「手始めに、履歴書を見させていただきますね。」
……ん?
「履歴書って何ですか?」
思わず首を傾げる。
いや、だって何にもわかんないし。
「持ってないんですか? あっ、事件や事故などで亡くなった時に、遺族の方に証拠品を墓にいれられなかったパターンですね。現代でもたまにあります。」
えっ、そんなパターンあるの?
にしても、遺族…家族かぁ……
なんだかわからないけど、不思議な感情になる。
"ヒェッ"と変に息を吸い込んでしまう。
ダメ。これ以上は、触れちゃダメ。
……思い出したくない。
「では、名前を伺います。」
「えっと、天咲カケネです。」
どこから取り出したのだろう。
目の前の天使はリストのようなものを確認している。
その間沈黙が走る。
というか、最初からそれがあったのなら……
「あれ……? 名前、ありませんよ?」
「えっ、嘘でしょ? 私確かに撃たれて、何も……同じ……」
予想外の出来事に、少しテンパる。
そこで、また違う天使が姿を現す。
門番をしている人よりも、お姉さんって感じ。
「どうしたの? いつもより仕事が遅れてるじゃない。」
「ステラさん、この子、リストに名前がないんです。
それに頭に輪っかもないし、履歴書も持っていないんです。
いままでこんなことありませんでしたよね?」
手渡されたリストを読み上げながら言う。
「えぇ。でも、ここまで来れてるってことは幽体離脱ってこともないわね〜」
その口調にはおっとりという言葉が似合う。
てか、2人とも同じこと言ってるな……
「今確認しましたけど、昨日の分のリストにもありませんでした。こんなこと絶対に…ありえない……」
「そうなの? じゃあ〜」
何やら会議をし始めた。
「はぁっ!? 嘘ですよね!?」
最初の天使が叫ぶ。
「嘘じゃないわよ。現世にも戻れなさそうだし、うちの子にしましょうってことよ。」
丸聞こえだよ?
……いや、うちの子ってどういうこと?
「あら? 聞こえてた? まぁそういうことで、貴方には天使になってもらうわね?」
「ええぇぇぇぇぇ!?!?」
私は、今日一番感情が揺らめいていた。
天使にされるなんて思ってもいなかったし。
「いや…でも、よそ者の私が天使になるのって良くないですよね。天使って神聖な役職……」
「なにか言ったかしら?」
「ナニモイッテナイデス。」
そんな感じで、私に拒否権なんてものがあるわけもなく、天使として働くことになった。
ただし、ここまでの運命の必然性など、誰も気にもしていなかった。
Q:ところで堕天は‥‥
A:カケネ「タイトルコールはまだ!!」
本作は「アイギスニンファエア」と世界観を共有しています。
互いに物語には大きく関わらないので、天使達の観測対象の一つ程度に考えといてください。
時系列的に、こちらの方が108年早いですし。
報告;大幅に修正というかほとんど書き直しました。




