子供
歩き出して二十分ぐらいだろうか。駅が見えてきた。さらに進んでいると、出店が見えてきた。
「おっ!出店あんじゃん!ちょっと寄ってこうぜ!」
立ち寄ること自体問題はない。ただ、一つ問題があるとすれば…
「ちゃんと自分の金で買えよ。」
「おう!分かってるって!」
「ほんとかな…」
「ほんとほんと、お金あるから!行こうぜ!」
もうちょい確かめたい所だが、今回は我慢しておこう。なぜかって?それは、もう事件が起きてしまったからだった。
「おい!山谷!前!」
「?」
山谷はすぐさま振り返る。だが山谷の視界にソレは入らなかった。
「うわっ、イッテーな」
子供だろうか。前を見らずに全力ダッシュしてきた。
(何だこのクソガキは。)
山谷は思ったことを口に出す前に考えられる人だ。
「ああ…ごっごめんなさい…」
その子供は自分がぶつかったのが軍人だとわかり、怯え出していた。
「どうしたんだい?そんなに急いで。」
「じ…実は…」
その子供は怯えている様だが、事情を話そうとしてくれた。すぐに止められたが。
「見つけたぞ!」
身長は180を余裕で変えられるぐらいの、僕らよりも二回りぐらい大きそうな男が現れた。
(一体何なんだ?)
男はこちらに近づいてきた。そして俺たちの前に立ち、一つ敬礼をした。その後は俺たちの方を向くことはなく、一直線に子供に向かっていった。
「いでっ!」
男は子供の髪をちぎれんばかりの勢いで引っ張った。事情も知らない。何が起きているかもわからない。だが、黙って見ていられない男がここにいた。
「すいません。その子供離してもらえませんか。」
俺は道路の真ん中に立ち、男の進路を妨害した。
「あぁ?軍人だからって調子のんなよ。」
(こ、こいつ…感覚でわかる。俺より圧倒的に強い。でも…この子供を見捨てられない!)
俺は今だに子供の髪を引っ張り続けている男の手を掴んだ。
「離してください!」
「チッ、」
そう言って男は子供から手を離した。そのまま諦めたかの様に振り返り、歩き出した。
俺は男がさっていったのを確認してから、子供に話を聞いた。
「何があったんだい?」
この子供から話を聞き出すのは難しかった。まだ、さっきの恐怖が染み付いており、なかなか会話が進まない。
(いや、待てよ。あいつに怒鳴られただけでここまで恐怖するか?)
この子供は、両手は震え続けており、唇も震え、息も荒い。顔色もよろしくなく、極め付けに、目線が定まっていない。一体どれほど恐ろしかったのだろうか。その中で聞き出せた情報は以下の通りだ。
曰く、この子供は商品を盗んだ
曰く、お金が足りなくて、盗むしかなかった。
曰く、さっきの男はその店の店長らしい。
主にこの三つしか情報がなかった。だが、俺にはこの事件の真犯人が分かっていた。この子供に商品を盗まなければならない状況を作り、この子供にここまでの恐怖を与えさせた犯人を。
次回「正義」
「世の中にはな、自分のことしか考えてない奴もいるんだよ。」