定員オーバー
「お願いします、どうしてもそっちに行きたいんです!」
「そうは言われましても、定員オーバーなんですよ」
人の魂を次の世界へと転生させる転生の間にて、転生を司る女神の困ったような声とそれでもと必死に頼み込む魂の声が響いていた。
魂は彼が現世にいたときに大流行していたゲームの名前を挙げ、それに近い世界へと転生させて欲しいと言っているのだ。しかしそのゲームが大流行しているせいでその世界への転生希望者の数が非常に多く、そこへの転生は現在断っているのだ。
だが魂は諦め悪く頼み込んでいる。
あまりにもこの魂がしつこいために転生作業が滞り始めていることに気が付いた女神はため息を吐くとこう言った。
「普段とは違う形での転生になります。そのせいで所謂転生特典といったものもありません。それでも良いならあの世界に転生出来ます」
「はいっ! それでも構いません!」
この魂はゲームの主人公のようになりたいわけではなく、冒険者のように世界を探索したいわけでもなかった。ただ彼はゲームの世界の絵画や音楽が大好きだったのだ。それを生で味わえいたい、そのためにはあの世界に転生したい。そう考えていたのだ。
魂が普段とは違う転生に了承したので女神はそれではと転生の準備を始める。
「それでは良い生を味わってください」
そうして魂は彼が大好きだったゲームによく似た世界へと首尾よく転生することができた。
人に退治されるべき魔物のうちの一匹として。
彼がこの世界の人が作り上げた芸術を楽しむのは、なかなかに難しそうである。
お読みいただきありがとうございます
面白ければ評価や感想をお願いします