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【完結済】悪役令嬢の妹様 徒然綴り~悪役聖女降臨~  作者:


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やっと出番です(笑)

思わず『出番ないままラストまで待機になるか…』等と思った事は、クリストファには内緒と言う事で…



 陽炎の様な、ノイズの様な……その歪んだ銀幕(スクリーン)の合間から、エリューシアに向かって伸びてきた手。

 思わず身を引き、貯めた魔力を解き放とうとした瞬間、その手がエリューシアを抱き締めた。


「エル!」


 金色……合わせられた視線は宝石のような煌めきを放つ金色で、今日は朝から会う事が出来なかった相手。

 彼の声が聞こえると同時に、コンスタンスに迫っていたヴェルメが、何故か吹き飛ばされている。

 幾つもの花塊が、飛ばされてきたヴェルメとぶつかり、衝撃で残骸がハラハラと床に落ちる……花開いた人間達の成れの果て…。


 そんな映像がクリストファの肩越しに見える。

 其処(そこ)から少し視線を動かせば、朦朧とするコンスタンスを抱き止めたネルファの姿が見えた。


 エリューシアは改めて自分を抱く人物に顔を向けた。


「……ジール…?」

「無事で良かった」


 呆気に取られていると、クリストファはエリューシアを抱く腕の力を強める。

 だがエリューシアの意識は強められた力ではなく、髪に向けられていた。


「……その…髪…」


 クリストファの髪色は金色で、それ自体に変化はない。

 しかしこれまでは至って普通の……この国で金髪を普通と言うのも語弊があるが、少なくとも人間としておかしな所はなかった。

 しかし、これはどうした事だろう。


 クリストファの髪がエリューシア同様、淡く光を放っている。


「これは…何故……もしかして、さっきヴェルメが吹き飛んだのは…」


 呆然と呟くエリューシアの視界に、クリストファの微笑みと共に、懐かしい桜色が飛び込んできた。

 ずっとエリューシアの傍に居た精霊…フィンランディアの光。


「ぇ…ぁ……どう言う事…?」

「説明は後にしよう。

 まずはアレをどうにかしないと」


 クリストファの視線の先には、ヴェルメがやっと身を起こす姿があった。


「エル……。

 僕にはアレを屠る力はない。

 僕がアレの気を引くから、その間に……お願いして良い?」

「気を引くって…ジール、貴方こそやっと起き上がれただけだったのに、そんな無茶しないで!」

「大丈夫。

 それも後で話すから、今はアレをなんとかしよう」


 こんな場なのに、エリューシアに向けられるクリストファの視線は、どこまでも優しく甘い。

 『氷麗の天使』の面影は欠片も感じられず、面映ゆさに頬が熱くなるのを止められないまま、エリューシアは思わず目を泳がせた。


 自身の笑み一つで翻弄されるエリューシアに気付いていないのか、クリストファの意識は既に敵に向けられている。視線を固定した状態で、腰辺りから涼やかな金属音が小さく響いた。

 帯刀していた剣をゆっくりと引き抜いのだ。


 貴族令息が持つような、儀礼的な物ではなく、ギルド員として動いていた時に使用していたものの方を持ってきたようだ。

 どこまでも実用的で、武骨なフォルムのそれに施された装飾等、柄に嵌め込まれた魔石が唯一と言って良いだろう。

 尤もそれさえも、剣の強度を高める為に嵌め込まれた物で、決してただの飾りではない。


 ―――――ジャマ ダナ


「「!?」」


 念話での会話が可能とは聞いていたが、実際に敵の声が直接脳内に響くと言う経験は初めてで、エリューシアもクリストファも、目を見開いた。まさかヴェルメが話しかけてくるとは、夢にも思っていなかったのだ。

 ヴェルメの花芯に埋没した眼球達は、ちらとコンスタンスとネルファに向けられたが、直ぐにエリューシアとクリストファの方へ戻される。


 ―――――ソノヒカリ…テキ

 ―――――ツギノカラダ、ミツケタノニ

 ―――――マエノヤツヨリ、イイヤドヲミツケタノニ

 ―――――セイレイハ、ジャマダ


「……いいやど…って……コンスタンスに乗り移るつもりだったの!?」


 ―――――マエノハ、ヨワイシ、ヤクタタズ

 ―――――ケハイヲ、ケスニハ、チョウドヨカッタガ、ソレダケダ

 ―――――オレノウツワニ、ソノシロイヤツ、フサワシイ


 確かにコンスタンスの魔力はそこそこ高い。

 その上走査(スキャン)等の希少な魔法の使い手だ。だからこそ、次の標的にされたのだろう。

 しかもヴェルメは、宿主となったものが持つ能力を補強する。

 操蟲の能力を更に増強されるなんて、あまり想像したくない状況だ。


 だが、それと同じくらい、ヴェルメにとって聖女が、ただの仮宿でしかなかったと言う事実が、エリューシアの感情を軋ませた。


 ヴェルメ自身が言っていたように、アヤコが持つ聖女としての力…聖力が、例え弱々しい物であっても、自身の気配を消すのに有効だったのだろう。

 それに聖女の力が攻撃向きでない事も、乗り換えるに至った経緯に関係しているかもしれない。


 しかし、何をどう言い繕った所で、ヴェルメが多くの命を集め、自身の強化する為だけにアヤコを利用したと言う事に変わりはない。


 長い…永い…気の遠くなるような孤独を、たった一人で耐えた挙句落ちた世界で、まだ高校生でしかない年若いアヤコを、そんな風に扱った事が許せない。

 勿論選択したのはアヤコ自身で、許されない事をしでかした事は間違いないし、ヴェルメは付け入ったに過ぎないのだろう。


 だが、ヴェルメが悪意をもって近づかなければ、アヤコはそんな選択をしなかったかもしれないと思うとやりきれなかった。


 エリューシアは怒りに沸騰しそうになるのを抑え込みながら、クリストファに頷き掛ける。

 そして力を再び練り上げた。


 エリューシアが身構えた事を確認して、クリストファはその刀身をヴァルメに向け直す。

 それと同時に床を蹴った。

 一直線に突き込めば、ヴェルメは回避するや否や、その触腕での攻撃に転じる。


 粘液を撒き散らしながら、太い蔓を何度も振り下ろして叩きつける。

 クリストファはそれを上手く躱しながら、徐々に後退し始めた。


 ―――――コザカシイ

 ―――――ダガ、オマエノセイレイノチカラは、マガイモノカ?


 ヴェルメの言葉通り、クリストファを守る――恐らく精霊防御と精霊カウンターと思われるが、徐々に弱まり、今にも突破されそうだ。

 クリストファも、剣で受け止める度に、微かに表情が歪み始めている。

 ヴェルメは強化されていて、強さも以前に聞いた通りでないのは確かだ。


 ―――――ハハ、イイゾ

 ―――――ハジカレルコトナク、ソロソロトドキソウダナ

 ―――――イツマデ、ニゲヲウツツモリダ?

 ―――――ソレデハ、オレヲタオスナド、デキナイゾ


 振り下ろされる蔓を躱し、時には剣で受け止め薙ぎ払う。

 その間も、クリストファはじりじりと後退を続ける。


 そしてクリストファの纏う光に亀裂が走ったその瞬間、彼はその手を伸ばしてヴェルメに触れた。

 視界が一転する。


 その刹那、エリューシアの指先から細く細く研ぎ澄まされた一筋の光が放たれ、クリストファによって位置を入れ替えられたヴェルメの身体を撃ち抜いた。


 そう、クリストファは圧されて、後退を続けていたばかりではない。

 確かにエリューシアに比べて貧弱な防御は、今にも砕かれそうだった事は事実だが、それ以上に力を集めて集中しているエリューシアの射線に、ヴェルメを引き摺りだす事が目的だった。






ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性が高いですし、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、どうぞ宜しくお願い致します。


こちらももし宜しければブックマーク、評価、リアクションや感想等、頂けましたら幸いです。とっても励みになります!

(ブックマーク、評価、リアクションもありがとうございます! ふおおおって叫んで喜んでおります)


もう誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つければちまちま修正加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>

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