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アゲハ蝶ですが、あえてあまり使われていない鳳蝶と言う表記の方を採用しました。字面的にこっちに惹かれてしまうのです(笑)
古い言い回しとか、漢字表記が好きなので……すみません><
不思議な言い方が気になって問いかけてみれば、その姉の婚約者もまだ決まっていないのだそうだ。
特異な血を外に際限なく出す訳にいかず、また下手な相手を内に入れる事も難しいと言う事実は、最早呪いのようにも感じる。
しかし彼等は、それでもその血の特異性を残してきたし、これからも残して行こうとしている。
当事者であるコンスタンスと、その兄であるメネライトと言う人物も、彼等の姉君も受け入れているのだから、エリューシアに何か言えるはずもない。
出来る事等多くはないが、せめて血の秘密を知らされた以上、最大限の助けとなるよう心掛けるだけだ。
と、話はかなり脱線してしまったが、とりあえずコンスタンスがクリストファの代わりを務めると言う事で、一旦話は落ち着いた。
どのみち時間の余裕もない。
衣装に関しては、クリストファの身長には届かないと言う事、何よりクリストファの為に仕立てられた衣装に、当の本人より先に身代わりが袖を通すのは、コンスタンスが遠慮したいと言い出した。
身長も然る事乍ら、細かな手直しは必須なので、クリストファの衣装ではなく、コンスタンスが兄の衣装を拝借してくると言う事に決まる。
「それでなのですけど、そのクリストファ様の肖像画等はございます?
ギリアン様から聞いた話では、そのお顔立ち他さっぱりなのですけど…」
『深く輝く金色の髪に、琥珀の様な黄金色の宝石眼を持つ氷麗の天使』とだけ説明されたらしい。
……間違ってはいない。しかし、それでは間違っていないと言うだけで、想像さえ出来ないのは当たり前だ。
とは言え、当然その場にそんなモノがあるはずもなく、クリストファの下へ赴く事となる。
ギリアンはクリストファの事が心配なのだろうし、まだ見知らぬ他人でしかないコンスタンスをクリストファの部屋へ案内は出来ずとも、王都の邸にいけば姿絵くらいはある。
そうと決まれば話は早い。3人はそのまま塔の外へ移動した。
ギリアンの部屋から直接飛ぶ事も可能だっただろうが、塔にも防衛機構は働いている。直接転移を選択した場合、それがどう作用するか未知数だった為、一旦塔の外へ移動してからの転移となったのだ。
王都の邸へ飛び、クリストファの部屋を教えれば、ギリアンは『わかった』とだけ言い残して、そそくさと背を向けて歩き去った。
それを見送ってからエリューシアは、自室へコンスタンスを連れ戻る。
部屋に飾ってあった絵を見せれば、コンスタンスはそれをじっと見つめ、暫くすると左手を緩く握りしめる。
拳のまま一振りしゆっくりと開けば、其処には1頭の蝶がいた。
前世のモルフォ蝶のように、青く煌めく大きな翅が美しい。
形は鳳蝶のような形で、後翅の長い尾状突起がとても優美だ。
ちなみにモルフォ蝶の翅は、青い色をしている訳ではない。
構造色と言う現象で青く見えているにすぎず、光と鱗粉が織りなす幻想とも言える。
「名前はミメティスと言いますの。
可愛くて綺麗でしょう?
それに大人しくって、とっても良い子なのです」
コンスタンスが愛おし気に触角を撫でると、それに呼応するように翅をはためかせた。
「さぁ、ミメティス、さっき見た姿は覚えたでしょう?
よろしくね」
コンスタンスがそう言った直ぐ、彼女の周りに、淡くて青い光の粒が舞い始め、見る間に埋め尽くされた。
呆然と見つめる中、暫くして光の粒が消え去ると、さっきまでコンスタンスが立っていた場所に、ドレス姿のクリストファが立っていた。
黄金色の髪に、黄金色の瞳……宝石眼は再現出来なかったようだが、顔だけならクリストファと瓜二つと言って良い。
「如何でしょう?」
発する声はコンスタンスのモノで、激しい違和感に囚われる。
しかし、エリューシアの思考は別の方向を向いていた。
(やば……ジールって心底美少年だと思ってたけど、女の子でも通るって思ってたけど……ドレス…似合いすぎ……)
絶対自分よりも似合うだろうと密に考えていると、コンスタンス(顔はクリストファだが……)が怪訝な顔をする。
「エリューシア様?」
ハッと顔を上げれば、美少女なクリストファと目が合う。
コンスタンスだと分かってはいるが、どうにも脳がバグってしまって仕方ない。
「ぁ…ごめんなさい。
その……見事過ぎて吃驚してしまったわ」
「合格ですか?
良かったですわ!
ミメティス、聞きまして? 私達やりましたわ!
……ただ…身体の方まで擬態も可能ではあるのですけど、そうなると御顔の方の再現度が落ちてしまうのです…。
私の鍛錬不足ですわ。
でも、頑張って鍛錬しますので、今回はお許しください」
クリストファの顔のままカーテシーをされても、言い表せない不可思議感だけが溢れてしまうので、慌てて止めた。
「じゅ、十分よ!
本当にありがとう」
だがクリスト…じゃない、コンスタンスの表情は冴えない。
「ですが……やはり宝石眼は再現できませんのね…困りましたわ」
萎れて表情を曇らせる様子に、エリューシアは微かに微笑んで首を振った。
「それは多分大丈夫。
クリス様が精霊の力を得て宝石眼となったと知る人は、中央では殆ど居ないはずなの。
領地の方だと通いの御医師様なんかも知ってしまっているけれど、口外される事はないし、彼方ではクリス様、人前に出る時は何時も変装してたのよ。
だから多分…調査されても漏れる事はないと思うわ」
エリューシアとしては、念の為と髪を染め、エリューシア特製の変装グッズを手放さない様子に、自分の不貞を疑われる事が嫌だったのは本当だが、何より自分自身がクリストファの姿をずっと見ていたかったのだ。
だって変装をすると言う事は、『領政に携わる時』と言う事だったので、その時は傍に居られないと言う事に他ならなかった。
独占欲や嫉妬等と言う感情に縁があるとは思ってなかったが、自分でもどうにも出来ず困っている。
流石に最近は諦め半分だが、領に居た頃は自分への嫌悪感も募るばかりだった。
だが結果的に、クリストファの用心深さに現在進行形で救われている。
それを逆手に取るのだ。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
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もう誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つければちまちま修正加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>