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近親相姦を想起させるような部分が出てきます。
忌避される方は御注意ください。
ネタばれになりますが、一応今回は(笑)近親相姦ではありません。そう見えると言うだけです。
ですがデリケートな事象ですので、忌避される方もいらっしゃるかと思い、前もって…の注意喚起でございます<(_ _)>
昔懐かしと言った風情の蛇腹扉エレベーターに乗り込めば、何もせずともゆっくりと動き出す。
来訪者がボタンを押したりする必要はなく、塔の方で目的地は設定済みなのだ。
箱がゆっくりと動きを止め、蛇腹扉が開かれると、節電でもしているのか?と問いたくなる程薄暗い廊下が続く。
前回訪れた時もそうだったが、職員が籠る部屋以外は基本的に暗い様なのだ。
歩を進め並ぶ扉に目を凝らしていると、少し先の扉がほんのりと明るい。
スポットライトの様な設備は見当たらず、どう言った原理でそんな現象が起こっているのか不明だが、わかり易くて良いと言う事で思考は放棄する。
扉の前で立ち止まりノックをしようとしたが、それより早く扉が開いた。
「すまん、ちょっと今、手が離せないんだ。
その辺にでも座って待っててくれ」
目的のギリアンが扉に背を向ける形で、大きな作業机に齧りついている。
魔具か何かを弄っているのだろう。彼にとって魔具が最優先なのは、学生の頃から変わっていない。
くすりと苦笑が零れるが、こうなった彼を止める術をエリューシアは知らないので、大人しく待とうと部屋の内部へ視線を滑らせた。
すると何故だろう……想定外の人物と目が合った。
座っていたソファから立ち上がり、カーテシーをする……コンスタンスだ。
「エリューシア様……んふ♪ 私の御主人様♪
お待ちしておりました」
初見時のクールで儚げな印象は吹き飛んでしまい……いや、美少女なのは相変わらずなのだが、そこはかとないヤンデレ臭が漂っているように感じてしまう。
「ご……御機嫌よ、う…」
前世の友人にヤンデレ属性のオタ友人は居たが、わかり合えない一線と言うモノがあり、少々身構えてしまうのだ。
そんなエリューシアに、相変わらず背を向けたままのギリアンが声を掛けてくる。
「もうチョイで終わる。
とりまコンスタンスと詰めといてくれ」
言葉の意味がわからず首を捻ってしまうが、すかざずコンスタンスが話しかけてきた。
「エリューシア様、此方へ♪」
一々語尾が嬉しそうに跳ね上がっている。
よくわからないまま、エリューシアはコンスタンスの誘導に従い、丁度対面になる位置に腰を下ろした。
「それでエスコートの件でしたよね?
あれですか? 元王弟殿下のパーティー」
「ぇ? ……えぇ…」
ギリアンに頼みに来たのだが、何故かコンスタンスと話をする形になっている事に、エリューシアは地味な居心地の悪さを感じる。
「開催までの時間が少ないですけど、お衣装の方はどうなってます?」
エリューシアの様子に気付いていないのか、コンスタンスが一人話しを進めていて、ついて行ききれない。
「おい、それじゃ伝わらないと思うぞ」
やっと魔具の修理か何かが終わったのだろう。
ギリアンがお茶の入ったカップを手に、近づいてきた。
「あら…」
「『あら』じゃねぇ……ったく…」
ギリアンはエリューシアの前にカップの一つを置き、自分も端の方に腰を下ろすと、持っていた残りのカップを傾けた。
「お前なぁ……エルル嬢に自分がどう認識されてるのかわかってないだろ…
あくまでソナンドレの『令嬢』…養女な『令嬢』って認識なの、わかる?」
「あら……そうでしたわ」
「『そうでしたわ』……じゃ、ねぇよ……はぁ」
必ず声真似を入れるのは何故だろう……と、既に思考逃避しかけているエリューシアだった。
「すまんな。
えっとエスコートの件だけど、先に確認したい。
クリスはどうした?
エルル嬢的にも状勢的にも、クリスがエスコートっていうのが順当…つっか、それ一択だろ?
まぁ、2人が揃って初御披露目となると、周りの度肝を抜くのは間違いないだろうけどさ、そろそろ頃合い……なんじゃねぇの?」
エリューシアは目を伏せがちに、コンスタンスの方を気にしながら唇を噛んだ。
確かにギリアンには現状を話しても良いだろう。
彼はゲームと違って、一貫してクリストファサイドに立ち続け、クリストファが精霊の力を得て宝石眼となった事も知っている。
しかしコンスタンスは……確かに以前会った時、自分を召し抱えて欲しいとは言われた。しかしそれに対しての返事は明確にしておらず、保留のままとなっていたはずで、エリューシアは困惑してしまう。
ぶっちゃけ、現時点の認識としては『部外者』……と言えるのだ。
そんなエリューシアの様子に、ギリアンも気付いたらしい。
「あ~すまん。
すっかりコンスタンスはエルル嬢の……って認識だったわ。
んじゃそっちの話から先にしとくか…」
ギリアンの話によると、ソナンドレ一門がエリューシアに仕える方向で、既に動いており、後はエリューシアからのGOを待つばかりなのだそうだ。
ラステリノーア公爵家ではなく、エリューシア個人にとした方が、すんなりと通るだろうとの判断らしいが、どこをどうしたら家より個人の方がすんなりいくと思ったのか、小一時間以上問い詰めたい。
とは言え、形だけだが公爵家の方にも声は掛けてあるのだそうだ。
それに対する返答は『エリューシアに任せる』だったそうで………聞いていたなら話はしておいて欲しかったと、切実に思ったエリューシアは決して悪くないだろう。
アーネストは勿論、セシリアもハスレーも何も言っていなかった。
尤も、色々な事がありすぎて、そんな些末な話を、記憶している余裕はなかっただけかもしれない。
メフレリエとして、それは構わないのかと問えば、問題ないと返って来た。
宮廷魔法士の一門として、何故か王派閥寄りに見られてしまい、それに辟易していたそうで、距離を取りたいメフレリエとしても渡りに船なのだそうだ。
まぁ、エリューシア個人でコンスタンスを召し抱えるくらい、どうと言う事はないのだが、先に外堀を埋められた感が拭えず、そこにだけはもにょってしまう。
しかし、ここでエリューシア一人ごねた所で仕方がない。
結局、ちょっぴりささくれを残す形とはなったが、どうやらコンスタンスも、アッシュやジョイ同様、エリューシア付きとなる事が決まった……いや、決まっていたようだ。
「それで…なんだが…」
ギリアンが歯切れ悪く語尾を濁す。
不思議に思って目を瞬かせると、ギリアンは目線でコンスタンスを促した。
「んふ♪
では私からお話ししますね。
えっとぉ……私、養女じゃないです」
『え?』と朧く暇も貰えないまま、コンスタンスは続ける。
「私コンスタンスはソナンドレ家の養女ではなく、嫡出子です。
ですが生まれもっての能力と特徴の為、いずれソナンドレの後継と表向き娶わせないといけなかったので、養子と言う形に、そして女児と言う事にされました」
エリューシアは、思いもよらなかった話に、固まるしかない。
「ソナンドレが影としての御役を賜ったのは、時折生まれる特殊な個体に因るのです。
特殊な個体は性別を持っていません。
男性でもなく女性でもない。
そして色も持たずに生まれてくるのです」
そう言ってコンスタンスは、自分の髪を一房引っ張った。
「そして必ず蟲使いの能力を持って生まれます」
ちらりとコンスタンスがエリューシアを流し見る。
その様はどこからどう見ても、儚げな美少女にしか見えない。
「虫って擬態するんです」
あぁ…とエリューシアは、前世で見た本やテレビ番組を思い出していた。
見るからに枯葉な蝶や、蘭の花にしか見えない蟷螂……確かに擬態能力を持った種はそこそこ居たように思う。
とは言え、それは昆虫に限った話ではなく、海の生物や他にもそういう能力を持った存在は確認されていた。
しかし、これはエリューシアが聞いて良い話だったのだろうか?
オルガの家であるバーネット家にも、魔石の扱いに関する秘蔵能力があると考えているが、それはエリューシアにも明らかにされていない。
そして今聞かされた話は、ソナンドレ家における秘蔵能力に他ならないと思うのだが……。
その疑問を素直にぶつけてみれば、ソナンドレ家に伝わるその能力は、使う側……つまり主人が把握していないと話にならないのだそうだ。
言われてみれば納得である。
勿論誰にでも話して良い訳ではなく、外部に対しては主人と定めた相手だけらしい。
だが、どうにも気になってしまった事がある。
(……その……つまり…実の兄弟(いや、兄妹なのか!?)だよね…?
それって……いや、うん…別に本人達が納得してるなら良い……良い…の?
ん~~私個人としては…そう、本人たちが良いなら良いのよ。外野がとやかく言う事でもないと思ってるし……。
私だってもし自分が同性じゃなかったらヤバかったかも…だしね?……いやまぁ、遺伝の問題、倫理的な問題、色々あるのはわかってるから、思う事も止めておけと、自分でも突っ込んじゃう所ではあるのだけど…えぇ。
でもさぁ、問題云々以前に、前世世界では実際にあった事だし、なんなら親子でさえそういうのが是とされた時代だってあった訳だし………ねぇ?…)
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
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もう誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つければちまちま修正加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>