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タイトル改変しました。

『悪役聖女降臨』にするか『聖女降臨』にするか悩みましたが、『悪役令嬢』が居るなら『悪役聖女』が居たって良いじゃな~い?と(笑)



 家門のついていない質素な馬車…とは言え、見る者が見れば明らかに最上級の馬車だとわかる。

 それに乗ってリムジールが訪れたのは、自領から見て南方向にある隣領の小さな村。


 見回せば貧相な作物が植えられた畑に、家と呼ぶのも烏滸がましい程のボロ小屋が数軒見えるだけの、本当に小さな村なのに、道を行き交う人の姿は思ったより多い。

 そして不思議な程、行き交う人々はリムジールが乗る上等な馬車を一瞥もしない。馬車だけでなく、それを牽く馬だって最上級で、その辺の駄馬とは比べ物にならないのに、だ。

 王都であれば誰もが貴族のお忍びだと、ちらりと見てはあからさまに見ないふりをしたりするのだが、そんな素振りさえ一切見えない。

 田舎過ぎて馬車の良し悪しもわからないのだろうと、リムジールは特に気にするでもなく、小窓にかかったカーテンを少しずらして外を観察する。


「(あぁ、ほんにありがたい。

 膝が痛くてかなわなんだが、あの方のおかげでこのとおりだよ)」

「(まったくだ。

 俺もずっと腹がしくしく痛んでたんだが、綺麗さっぱり消えちまった)」


 小窓から、行き交う人々の会話が聞こえる。


「(王家の黄金が消えたって言うし、この国もどうなる事かと思ってたんだが、神様っていらっしゃるんだな)」

「(あぁ、この国は安泰だよ。

 精霊の黄金が消えても、癒しの花乙女があらわれたんだからなぁ)」

「(ありゃ聖女様だよ)」


 リムジールは小窓から少し離れて座り直すと、腕を組んで考え込み始めた。

 昨夜訪れたガロメン侯爵の話を聞いて、まずは自分の目で見てからとこんな辺鄙な場所までやってきたが、彼の話は本当かもしれないと、一人小さく頷いた。


「花乙女…それに聖女…か………


 ふむ、此処はもう良い、馬車を出せ。

 近くの神殿へ向かってくれ」


 返事はないが馬車がゆっくりと動き出したので、ちゃんと伝わっているのだろう。神殿からは転移紋を使って王都に戻れば良い。

 戻ったらまずガロメン侯爵に使いを出さねばと、リムジールは背凭れに身体を預けるようにして、今後の事を考えていた。







 エリューシアとクリストファは呼び出しを受けて、本棟に置かれたアーネストの執務室前までやって来ると、静かに扉をノックした。


 ―――コンコンコン


 少しだけ間をおいて、妙に鼻にかかったような返事が聞こえた。

 思わずエリューシアとクリストファは、お互い顔を見合わせて首を捻るが、とりあえず返事があったのだからと扉を開けた。


 直ぐそこのソファに、目元と鼻先を赤くしたアーネストと、とても嬉しそうに笑うセシリアが並んで座っていた。

 目が合うと、何とも微妙な表情でアーネストは顔を背けるが、セシリアはそんな事を意にも介さず、満面の笑みで対面の席へ促す。


「座って座って」


 あまりに対照的な2人の様子に、エリューシアもクリストファも、どうすれば良いのかと戸惑い、足が止まってしまった。


「もう、そんな所に立ってないで」


 促されるまま、だけど躊躇いがちに対面に並んで腰を下ろす。

 それを確認したセシリアは、隣でそっぽを向いているアーネストに顔を向けた。


「ほら、旦那様!

 もう……いい加減無駄な抵抗は止めてくださいな」

「……ぅ…」

「まだごねる気なら「ぁ、ぁあああ~~わ、わかったッ!」……」


 どことなくムスッとしたアーネストが、テーブルに一枚の誓書を広げる。


「……クリス…これは仮だからな? 1度でも泣かせたら即刻破棄だからな!」

「旦那様!」


 アーネストとセシリアのやり取りを余所に、エリューシアとクリストファの視線は、テーブルの誓書に固定されたままだ。


「……ぁ、本当に…?」

「エル!」


 今にも抱き合わんばかりの2人に、アーネストの凍てついた視線が飛ばされる。


「「………」」

「……節度は保つように…。

 婚約したからと言って、それがゴールではないのだからな?

 良いかな? クリスは「旦那様!!」っ……」


 セシリアが目を吊り上げる様子に、アーネストもガクリと肩を落として、とうとう誓書に最後のサインをした。

 途端に誓書はふわりと光を放つ。

 エリューシアとクリストファの婚約誓書には魔法契約が用いられているのだ。


「おめでとう、今夜は御馳走にして貰いましょう♪」

「……ぅぅ……く、くそ……さ、酒だ……」


 酒だと喚いて拗ねるアーネストを宥めるセシリアだったが、何か思い出したようにクリストファに視線を移した。


「あ、そうそう、クリスにも手紙が届いてるわ。

 ……えっと…あぁ、これだわ、はい」


 セシリアから渡された手紙にはベルモール家の紋が押されている。


「これは……」


 受け取ったクリストファは、怪訝な表情で首を捻った。


「どうしたの?」


 エリューシアも表情を改めて問いかける。


「…ぁぁ、ぃゃ……封蝋の色が……」

「あら、何時もと違う色ね」

「……ぅん、これは御祖母様からじゃない…かも…」


 この呟きにアーネストも真顔になっった。


「ベルモール公爵当主からと言う事なのかい?」

「……わかりませんが、少なくとも御祖母様ではないと思います…」


 これまでベルモール家からの手紙は全て彼の祖母であり、前公爵夫人シャネッタ・フォン・ベルモールからの物だった。

 勿論養子縁組をした義父母と折り合いが悪い訳ではないのだが、あまり筆まめなタイプではないらしく、いつもはシャネッタの手紙に追記してくるだけなのだ。

 それなのに…と、クリストファは眉根を寄せた。


「気になるわね…。

 あぁ、誓書はもう提出するだけだから、部屋へ戻って手紙を見てきてたら?」

「そうだな……何となくだが、早く目を通した方が良い気がする」


 セシリアの言葉にアーネストも同意した。

 エリューシアも否はない様で、隣でクリストファをせっついているが、それにクリストファは一度視線を床に落としてから、首を横に振った。


「その……此処で見ても構いませんか?

 義家から手紙が来るなんて初めての事で……」

「あぁ、勿論。

 クリスが嫌でないなら私達も此処に居よう」

「えぇ、そうね。

 開いてみれば、案外どうって事ない内容かもしれないし…」


 そう言いながらも、セシリアの表情も暗いままだ。

 クリストファは開く前に、今一度全員を見回し、エリューシアに視線を止めてから深呼吸をする。

 そして意を決したように手紙の封を切った。






ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性が高いですし、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、どうぞ宜しくお願い致します。


こちらももし宜しければブックマーク、評価、リアクションや感想等、頂けましたら幸いです。とっても励みになります!

(ブックマーク、評価、リアクションもありがとうございます! ふおおおって叫んで喜んでおります)


もう誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つければちまちま修正加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>

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