表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/90

10

前作で書ききれなかったマミカとチャコットの、攫われてからの事に少し触れております。

その為『死』に繋がる言葉や表現が少々出てきます。

苦手な方は、どうか御注意を……。




(……どう言う意味で聞いてるのかしら…?

 王妃の役目? 存在意義? 条件? 他には……ぁ、もしかして)


「前王妃ミナリーについて…ですか?」


 そう訊ねれば、アーネストから溜息を吐かれた……何故に?


「違う……まぁ、問い方が悪かったね。

 クリスには王位継承の話がある。

 中央もなかなかに苦労してるようでね…クリスを諦めてくれそうにない。となれば婚約者となるエルル…君も無関係ではいられない」


 そう言う意味かと、エリューシアは理解はした。

 しかし状況他はそうかもしれないが、公爵家としてはどう考えているのだろう? 嫡女であるアイシアがキャドミスタに嫁ぐのであれば、公爵家を継ぐのはエリューシアになるのが自然である。

 直接的に聞いた事はないが、クリストファも否はないはずだ。でなければラステリノーア領の運営経営に、あれほど注力はしないだろう。


「反対に…もし王位を継ぐとなった場合、お父様はどうなさるおつもりなのです?

 シアお姉様も嫁ぐとあれば、ラステリノーア公爵家の存続に影響します」

「あぁ……まぁそれは…」


 何か躊躇うような微妙な表情と間に、エリューシアの方が怪訝な顔になった。


「ぁ、いや……その…待て、あれを話せば怒られるか呆れられるんじゃないか?…まぁ、何れ話さねばならないのだが…」


 何やら一人、自分と対話するように小さな声で一頻り呟いてから、アーネストは顔を上げる。

 切り替えるように軽く咳払いをしてから口を開いた。


「まぁ………そう、だね…正直公爵家は途絶えても問題ないんだ。

 元々私自身がスペアで、家の存続を考える立場になかった者だしね」

「………はい?」


 エリューシアからは、思った以上に低く凍った声が発せられる。

 その声にアーネストは苦笑いを浮かべた。

 

「ま、まぁ、それはどうにもならなかった場合で、エルルかシアの子供を養子をとるとか色々方法はあるから、気にしなくて構わないよ。

 それよりもだ。


 もしも……万が一だけど、エルルはこの国の王妃になる事に抵抗はない?」


 アーネストが聞きたかったのはそれだったか…。


 と言うか、まずもってエリューシアに選択肢があるのだろうかと考える。

 こうして確認してくると言う事は、回避が難しいと言う事だろう。


 しかし…何故回避が難しい?

 王家の正当な生き残り『バルクリス』がいるのに何故?


 確かに以前はとんでもない馬鹿王子で、馬鹿リスと呼ばれていた(呼んでいたのはエリューシアだけだったかもしれない事には目を背ける!)。

 しかし傍に置いていた幼馴染の少女……乳母の娘マミカと、側近ハロルドの双子の姉チャコットが行方不明になった一連の件が発端か、今ではかなりマシになったと聞いている。


 既に処刑されたフラネア・ズモンタと、ゲッスイナー男爵の使用人だったコダッツへの取り調べで明らかになった事だが、やはりと言うか…マミカもチャコットも、シモーヌに殺害されていた。

 尤も、フラネアの方からはその件については大した話は得られなかったそうだ。

 それも仕方ないだろう。

 フラネアがシモーヌ達に襲われたのは、マミカもチャコットも殺害された後だから、それ以前の話を詳しく知っているはずもない。だが、コダッツの方からはそれなりに話を聞けたらしい。


 街をうろついていたマミカ…恐らくバルクリスに言われてチャコットの家、メッシング家を訪れた帰り道だろう…その可愛らしい容姿と貴族街の方から歩いてきた事で、シモーヌが目を付けたらしい。

 あっさり拉致監禁、色々と聞き出そうとしたそうだが、泣いて暴れるマミカには手を焼いたようだ。

 それでも男爵令嬢である事は何とか聞き出し、その後…今はない『黒のナイフ』で、シモーヌはマミカの容姿を奪ったと言う話だった。

 どうやらマミカの魔力は、シモーヌよりは高かったみたいで、瞳の色はシモーヌ本来の色のまま…明るいオレンジ色のままになってしまったそうだ。

 マミカの遺体は川に投げ捨てたらしく、捜索はしたものの発見には至らなかったと聞いている。


 その後マミカを探すチャコットも、護衛もなしにスラムに入り込んだ所を拉致。

 早々に居丈高に伯爵令嬢であると言い放つので、身分的にはそちらの方が良かったが、残念ながらチャコットの容姿は、シモーヌのお気に召さなかったようだった。とは言え折角の伯爵家令嬢だ。有効利用しようと、貴族としての振る舞い他、色々と聞き出そうとしたのだが、なかなか言う事を聞かなかったようで殴る蹴ると言った暴行を加えたらしい……酷い話である。

 その内衰弱し、息をするだけになった頃、邪魔に思ったのかシモーヌがその辺にあったナイフでとどめを刺したと言う話だ。

 容姿を奪うつもりはなかったから『その辺にあったナイフ』なのだろう…。


 メッシング伯爵からの手紙に、たった一言『死亡』の文字だけが綴られていたのも納得と言うモノだ。

 チャコットの遺体は、恐らくだが暴力の痕跡も生々しかったはずで……密やかに葬られたのだろう。


 こんな話が何処まで、仮にも王子であるバルクリスに伝わっているかは不明だ。

 血生臭い話になるし、何よりバルクリスの傷を抉るようなモノだから、多分だが殆ど伝えられていない可能性の方が高い。

 しかし、それでもマミカの母親である乳母や、側近であるハロルドや他の者達の様子から察する事が出来た可能性はある。


 こんな重大事件を切っ掛けとしてしか、更生出来なかったのは残念だが、改まらないよりずっとマシなのも事実。

 そう考えれば、クリストファは半分死体であった期間があったし、マシになった王族……しかもホックス元王をはじめとした一連の捕縛にも協力したと聞いている彼を、そのまま王に据えると言う道だってあった…と言うかあるはずだ。


 勿論、何の問題もなくと言う訳にはいかなかっただろうが、それはどの選択をしたとしても多かれ少なかれ噴出する事で、バルクリスを王にという場合だけが特別なのではない。


 その疑問をアーネストにダイレクトアタックさせてみる。

 すると途端に苦虫を噛み潰したような……そう言い現わすのが、心底適切な表情を浮かべた。

 それだけでなく、なかなか話し出そうとしないアーネストに、エリューシアが睥睨し始めた所で、やっと白旗を上げてくれる。


「その……この話はまだ……いや、永久に他言無用、が良いのだろうな…」


 やっと切り出したかと思えば、そんな言葉を紡ぐアーネストに、流石に焦れてキレそうになったが、続く言葉に目を丸くして、首を傾げるしかなかった。


「エルルは覚えてる?

 あの馬鹿……あ~王子が何かの薬を煽って卒倒したという話…。

 あれなんだけどね……毒でも何でもないんだよ…」


 何故そんなに言い渋るのかわからず、エリューシアは眉根を怪訝に寄せる。

 だけど、それとは別でホッとした。

 未だに馬鹿とつけそうになるのはエリューシアだけではなかった事が知れたのは何よりである。


「……………」

「……お父様?」

「……あ~…こんな話を娘にするのか? いや、エルルなら大丈夫…か、いや、だが前世は兎も角、今はまだ年端も行かぬ少女でしか……ぅぅ…」

「一体何がそんなに言い難いのです?」


 淡々としたエリューシアの物言いに、アーネストがガクリと項垂れる。


「……そ、そうだ、ね……。

 うん、エルルなら大丈夫だと信じるよ。


 その…王子が煽り飲んだ薬と言うのは……所謂、断種薬なんだ……」

「…………」

「………………エルル?」

「……はい?

 ……………今一度言って頂いて良いでしょうか?」

「…もう一度言えと………あ~…えっと……断種薬…」




 言い渋ったのも仕方ないだろう。

 『正直スマンかった』とエリューシアは内心でボソリと呟いた。






ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性が高いですし、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、どうぞ宜しくお願い致します。


こちらももし宜しければブックマーク、評価、リアクションや感想等、頂けましたら幸いです。とっても励みになります!

(ブックマーク、評価、リアクションもありがとうございます! ふおおおって叫んで喜んでおります)


もう誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つければちまちま修正加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ