3.友達ってすごい
「それでは皆さん固有能力の名前を決められたようなので、これから学園への登録を行っていただきます」
「私たちだけですか?」
「固有能力を持っている皆さんは他の生徒と違ってすぐにダンジョンへ入ることになるかもしれません、要は学園の名のもとにダンジョン探索する許可を出すための登録なのでクラスではあなた達7人だけですね」
審問した生徒の疑問に帰ってきた返答でさらなる疑問が湧いてくる、それは他の生徒も同じようだった。
「先生!?僕たちは訓練なしでダンジョンに挑まなくてはいけないのですか!?」
「そうではありません、もちろん他生徒と同じように訓練や座学に参加することは出来ます、しかし、自分の固有能力がどんなものなのか使ってみないとこれからどう成長していけば良いかが決め辛いでしょう?」
「な、なるほど、つまりはダンジョン内での試し撃ちのためなのですね」
「そうですね、もちろん探索もできますがその際は以前言ったように引率者が付くことになります」
この説明でほとんどの生徒は納得したのかほっとした表情を浮かべている。
「それでは、一人ずつ隣の部屋へ来てください、登録を行います」
一人ひとり私たちが相談に使った部屋に入り登録を行う、5人が終えて各々教室で過ごす中、私の名前が呼ばれた。
「鷹見さん、入ってください」
「先生?まだ理恵ちゃんが入っているのでは?」
「その小鳥遊さんのことでお話があります」
「???はい…」
部屋に入ると、理恵ちゃんが椅子に座って気まずそうにしている
。
「エリちゃん……ゴメンね…」
「どうしたんですか…?」
「まずはこれを見てください、小鳥遊さんに許可はとっています」
先生はそう言うと理恵ちゃんの前に置いてあったDタブをこちらに向けた。
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Lv.1
HP 220/200(+20)
MP 11/10(+1)
STR 110(100)(×1.1)
DEX 55(50)(×1.1)
VIT 165(150)(×1.1)
AGI 88(80)(×1.1)
INT 44(40)(×1.1)
MND 44(40)(×1.1)
SP 120
固有能力:【力を一つに】
説明:■■■
スキル:
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「【×1.1】と書かれていますよね?これはバフ系のスキルを使ったときに変化する数値なのですが…」
「ごめんねエリちゃん………私、能力の対象がエリちゃんだと思ってて、それで……それで………」
理恵ちゃんが言いずらそうにうつむく。
「鷹見さん、よく聞いてください、普通バフをかけることが出来るのはDタブを使ってパーティーを組んだ人だけです、そして効果も本来1つのステータスのみか良くて2つです、しかも何分経っても切れる様子がない、永続バフの場合、パーティーを組むとき確実に…」
「ほかの生徒から問い詰められるということですね」
「その先がさらに問題ですね、こんなスキルは存在しません、固有能力だとすぐにばれます、そして誰がその能力を持っているかも……」
ここでもまた能力に群がる人たちを相手にしなければいけないのだろうか、友達や恋人なんて私には……そう考えたその時。
「う”う”……ごめ”んな”ざい………エ”リち”ゃん……私のぜいで……」
はっとした、ここにいるではないか、まっすぐに私を見てくれて、破格の能力でしかも自分が対象になっていると知っても、能力ではなく私を見てくれて、自分は何も悪くないのに自分のせいだと泣いてくれている友達が。
「私、気にしません!私の力が理恵ちゃんの力になるならその程度の迷惑喜んでお受けします!」
「エ”リち”ゃん…でも”……」
「いいの、理恵ちゃん、私理恵ちゃんと友達になれただけで本当にうれしくて……私友達いなかったから……だからこれからもよろしくね」
「グス…エリちゃん……」
「あ、私敬語はずれて…!」
「ありがとう!エリちゃん大好き!!!」
「だ、大好き!?」
心を許した相手から好きだと言われることがこんなに満たされる事だなんて、これが友達が出来るということ……なんて刺激的な感覚なんだろう。
「あなた達がそれでいいなら先生からは何も言いませんが……くれぐれも気を付けてくださいよ?では鷹見さんの登録に移りましょうか」
「はい、あ、理恵ちゃんもいて?、さっきステータス見ちゃったから、私のも見てほしいの」
「えへへ、気にしなくてもいいのに…」
「はぁ、仲が良くて何よりです、固有能力はDタブ所有者以外には見えないので、その辺は二人きりの時にお願いしますね、では見せてください」
「どうぞ」
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Lv.1
HP 144/120(+24)
MP 36/30(+6)
STR 60(50)(×1.2)
DEX 96(80)(×1.2)
VIT 60(50)(×1.2)
AGI 96(80)(×1.2)
INT 120(100)(×1.2)
MND 120(100)(×1.2)
SP 200
固有能力:【思いは人を強くする】
説明:【パッシブ】自身が向ける感情とその強さで自身とその相手の能力を変動させる
スキル:
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「ふむ……小鳥遊さんよりバフが強いですね、能力的には自分がメインなのでしょうか……と、そんなことより登録ですね」
そう言うと先生は事前に用意していたであろうパソコンに何かを入力していく。
「スキルポイントが200…ステータスもほぼすべて平均より高い…どうやら相当な努力家のようですね、」
「努力だけで変わるんですか?」
「はい、スキルポイントやステータスはトレーニングや勉強でも上がりますよ、ステータスに関しては上がる数値は微々たるものですが…それがここまで高いということはとてつもない努力を積み上げてきた証です」
「エリちゃんすごい!私スキルポイント120しかなかった…」
「120でも十分に高すぎます、普通は50もいかないですよ?」
その後、登録は無事に終わり探索について軽い説明を受けた後、その日は自由に帰宅して良いことになった。
「エリちゃんはもうダンジョン探索始めるの?」
「うん、私片親だから、早くお金を稼いで楽させてあげたいんだ」
「そっか~、頑張ってね!協力してほしいことがあったら言って!私じゃあんまり役に立たないかもしれないけど…」
「そんなことないよ、理恵ちゃんはいてくれるだけで私の力になってくれてるんだよ……の、能力的にもね…!」
「あはは!、それを言ったらエリちゃんもいるだけで私を助けてくれてるね!能力的にも!」
でも、とエリちゃんは少し暗い表情になり続ける。
「私エリちゃんとはしばらく探索はしない方がいいんだって…その方が私のステータスからエリちゃんにつながることも少ないだろうって…あと、固有能力的にいろんな人と戦闘を経験した方がいいって先生が…」
「そっか……早く一緒に探索できるといいね」
「うん!先生から許可が出たら真っ先に教えに行くよ!約束!」
そう言って理恵ちゃんは私の手を両手で握り満面の笑みを見せた。
「う、うん、約束ね」
ああ、なんて愛おしいのだろう、高校の時、クラスメイトは友達とハグまでしていた、あんなことをしたら死んでしまう自信がある……でも、だからこそみんな友達とスキンシップをするのだろう、みんなこの気持ちの虜になっているのだ。
「どうしたの?エリちゃん顔赤いよ?」
理恵ちゃんが私の額に手を当てている、愛しさが爆発してしまいそうな心をどうにか押さえつけて理恵ちゃんに返答することが出来た。
「だ、大丈夫、それより早く寮に帰ろ」
「うん!明日からお互い初のダンジョン探索だね!引率の人もいるらしいけどお互い頑張ろうね!」
「うん」
理恵ちゃんと話しながら部屋に帰り、探索の準備をしながら明日のことについて考える。
探索を行うのは先のことだと思っていたからこれはうれしい誤算だ、早く探索に慣れればそれだけ早くお金を稼ぐことが出来るようになる。
一人になるとだんだんと恐怖心が湧いてきた、ステータスがあるとはいえ、それを過信することは出来ない、ニュースでも毎週のように探索者が命を落とすニュースが報道されている。
明日は引率の人もいるから大丈夫、そう言い聞かせながら私は準備に没頭するのだった。
ちなみにすべてにおいて平均的な人間がいたとしたらこんな感じになります
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Lv.1
HP 100/100
MP 10/10
STR 50(50)(×1.0)
DEX 50(50)(×1.0)
VIT 50(50)(×1.0)
AGI 50(50)(×1.0)
INT 50(50)(×1.0)
MND 50(50)(×1.0)
SP 20
固有能力:
スキル:
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