18.狙うもの②
怒るアイリスをなだめた私たちは再びリビングへ集まり朝日奈先生がしゃべり始めるのを待つ。
「……………よし、始めるか」
「「は、はい」」
「まずは改めて、疑ってすまなかったな鷹見、それにアイリス」
「いえ、当然の反応だと思います」
「エリが気にしないなら我から言うことはないのだ、どっちかと言うと我を閉じ込めようとしたことについて謝罪してほしいのだ…!」
「あー……そのことについてもすまなかった、お前の実力を確かめておきたくてな」
「実力ぅ…?今関係あるのだ…?」
「精神攻撃に対する防御は色々面倒だからな、特に小鳥遊は」
「リエの防御を我が担当すればいいのか?」
「しばらくはな、だが二人自身の力で対処できるようになってほしい、そこでお前には防御と同時に小鳥遊に軽い精神攻撃をかけ続けてもらいたい」
「……効率の悪い方を選ぶのだな」
私たち二人は先生たちの会話についていくことが出来ずに話が進むのを待っていることしかできない、それに気が付いたアイリスがすぐに説明を始めた。
「えーと…精神攻撃の防御は大きく分けて二つあるのだ、一つはエリのように高い精神力で防御する事、もう一つはスキルで防御する事なのだ」
「確かにスキルで防御するのは効率がいい、逆に精神力を鍛えるのは時間がかかるし小鳥遊のような物理職だとその効果も薄い」
「ぇえ!?じゃあなんで……?」
「結論から言うと防御スキルを取るためと、その効果を最大限引き出すためだ」
「この【精神統一】ってスキルじゃダメなんですか?」
理恵ちゃんがDタブを取り出しスキルの画面に指をさしながら見せる。
「駄目だな、まず効果が薄い、【精神統一】は誰でも取れるが元の精神力を少し強化する程度のものだ、今回の犯人がお前らの同級生レベルだったらこのスキルでも十分だろうが……現役で上級、特級に挑んでる先輩レベルだったらどうするんだ?結局足りない精神力を鍛えるために苦しまなくちゃいけない、だったら今のうちに苦しんで効果の高いスキルの条件を満たす、これが一番いいと私は思うが………まあ、スキルについては私が強制することではないからお前の好きにしろ、魔法職の私に言われても納得できないだろうしな」
「先生のことは尊敬してるし信頼もしてます!戦闘での動き方を教えてくれたのは先生だし、相談もほかの先生より細かく説明してくれるし!だから先生が言うなら私やります!……でも、なんで先生は自分と関係ないスキルも知ってるんですか?」
「今のこの状況もそうだが敵がいつも魔物だとは限らない、そういう時どういうスキルや能力を持っているか想像するための知識があれば対処もできる、と言っても今の時代人から攻撃されることはまずないから今では趣味みたいなものだな」
先生はそう言いながら手帳を取り出しぱらぱらとページをめくり、あるページをこちらへ向けて見せた。
「【不壊の加護】………見るからに私堅いですよ!ってスキルですね!」
「防御のパッシブスキルだ、効果はVIT…生命力の成長率が上がるのと…精神力が生命力と同じ数値になる、つまり、このスキルさえ取れれば生命力を高めるだけで同時に精神力も鍛えることが出来る」
「……な、なんかすごそう!取ります!頑張って取ります!」
「だが……取得できるようになる条件が…『物理前衛型かつ精神力が生命力の半分以上になっていること』なんだよ、しかも他の精神力強化スキルを持ってるとなぜか出てこない…つまりこれから小鳥遊は精神力を40以上上げないといけない」
「?今のステータスから考えればそこまで難しくないような気が………」
「馬鹿を言うな、はっきり言って地獄だぞ?」
そう言って先生はDタブ…ではなく普通のタブレットを取り出し起動する。
「…お前の入学時点での精神力は40……赤子がステータスを発現したと言う話は聞いたことがないからわからないが、仮に0だとしても、お前はこれから今までの人生で味わったすべての精神的苦痛を超えるストレスをはるかに短い期間でうけなければならない、それに小鳥遊は物理型…魔法型なら精神力をあげるのは比較的楽だが………はっきり言ってやり方を間違えれば廃人まっしぐらだ、それでもやるか?」
朝日奈先生から出た言葉を理解し息をのむ。
「そんなの…!」
「待て待て鷹見、廃人にはならないように最低限の保護はする、無理だと思えば今回は私が防御を担当する、本人が大丈夫だと言っても無理は絶対にさせない」
「で、でも………」
「大丈夫エリちゃん!私やるよ!」
「………………わかった…理恵ちゃん、絶対に無理はしないでね…」
「うん!」
「小鳥遊、私からも言っておく、限界になったら……いや、限界になる前に私かアイリスに言え、絶対にだ、いくら私たちが見ていると言っても本人の感覚には到底及ばない、言っておくが最低限の保護って言うのは小鳥遊の心が壊れないようにするだけで精神攻撃の強さを制限するようなものじゃない、壊れた方がましだと思うほどの物になってしまう可能性が捨てきれない、だから絶対に無理はするな、アイリス、辛いとは思うが手加減はしないでくれ」
「わ…わかったのだ……でも、我が無理だと判断したら……」
「そん時はすぐに止めて良い、精神攻撃をかけることに関しちゃアイリスの方が専門だろうからな」
「最初に我を追い詰めておいて何言ってるのだ…?」
どんどん話が進んでいく、理恵ちゃんを傷つける方法が決まっていくことを私は聞いていることしかできない、結果として理恵ちゃんを守る手段になる事は理解している、だからこそ、私が理恵ちゃんを守る手段を持っていないことに怒りが湧いた。
「先生、私は何をしたらいいですか?」
「鷹見の精神力だと生半可な精神攻撃は効かないだろうから特に…と言ってもお前はじっとしてられないんだろうな」
「当たり前です、理恵ちゃんが苦しんでいる時に私一人ただ日常を過ごすことは絶対にしません、何もすることがないと言うなら私が犯人を見つけ出します」
「ま、そう言うだろうな、しかし相手が学園の生徒である可能性が捨てきれない以上鷹見に手を出させるのは教師として許可できない」
「じゃあ私はどうしたら……!」
「鷹見、お前には小鳥遊以上の苦しみが待っている…と言ったらそれを受け入れる覚悟はあるか?」
「当たり前です!」
「ちょっ!ちょっとエリちゃん!?」
慌てた様子で理恵ちゃんが私と先生の間に入り私を説得するべく肩をつかむ。
「私以上の苦しみって!精神力が低い私でも辛い攻撃をさらに強くやられるってことでしょ!?そんなの危ないよ!ダンジョンでのアイリスの精神攻撃だって私の方が先に起きたし…なんか危ない感じがするの!!」
「そこだ小鳥遊、なぜ精神力が高いはずの鷹見が小鳥遊よりも起きるのが遅かったのか……それは素の精神力の問題だ」
「「素の精神力…?」」
二人そろって同じことを朝日奈先生に向かい問いかけると、先生は少し複雑な表情をしながら説明を始める。
「あー、まずこれは確定した情報ってわけじゃない、経験上そうなんじゃないかと思っているだけなんだが……ステータスとは何だと思ってる?」
「え…それは、自分の能力が数値として出ているものなのでは?」
「う、うん!私もそう思います!」
「私の感覚では違う、私はステータスはバフのようなものだと思ってる、身体能力を向上させるだけで、素の身体能力とは別だと……」
「その理屈だとHPがシールドのような役割を果たすと思うのですが…攻撃を受けたらちゃんと傷つきますよ?」
「ああ、だからあくまで補助的な役割なんだろう、生身に攻撃が通りにくくするような役割を持っているのだと思う」
「何の証拠があってそんな事を…」
「一度HPを全損させたことがあってな?」
「は?」「え!?」
「いや、ある特級ダンジョンでな?、だがこうして私は生きてる、つまりHPは私たちの生命そのものではない」
あまりに先生がさも当たり前のように死にかけた経験を話す姿に私たちは驚いたまま動くことが出来ない。
「あー、話がそれたな、つまり精神力がいくら高くても、鷹見自身の精神が不安定だと精神攻撃に掛かりやすい」
「むむむ…難しい話なのだ…」
「私が固有能力でアイリスのステータスを徴収したけど…アイリスちゃんにも素の能力…みたいなものがあるってことですか?」
「そこらへんはアタシにはわからんが、つまり、鷹見にはトラウマに向き合ってもらう…アタシの精神攻撃の中でな」
「わかりました」
「エ、エリ……正直考え直した方がいいのだ……多分地獄じゃすまないのだ……」
「え…?エ、エリちゃん…?やめた方が……」
「ううん、私はやるよ、理恵ちゃんが頑張るなら私はそれ以上に頑張る、苦しむならそれ以上に……そうしなきゃ…だから…」
「私としても安請け合いはしてほしくないんだが……まあ、一度試してみるか…?」
「わかりました、いつでも大丈――――!」
「大丈夫」と言う前に朝日奈先生がこちらに手を向けて…………私の精神は暗闇の中へ落ちていった。
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恵理たちが精神攻撃対策について話し合っていたころ、別の場所では……
「ねぇ……ちょっと…?…………おい、聞いてんのか役立たず」
「…………ちっ…なんだよ姉貴」
「何その態度、だれのおかげで使えるようになったと思ってんの?あんたの弱っちい能力を私の力で強化してあげてるからでしょ?」
「………はぁ…そうですね、で、なんだよ」
「あんた、ちゃんと精神攻撃かけたんでしょうね?全く手ごたえないんだけど?」
「………はじかれた」
「は?はじかれたぁ?あんた…強化してもゴミみたいな能力なの!?あははは!…はぁ、ほんと役立たず、じゃあさっさとダンジョンに行ってレベルでもあげてくれば?少しでも使えるようになるかもよ?あ、その前にお茶淹れてきて、お菓子も、なかったら買ってきて」
「……………」
「早く」
「…………わかったよ」
あ、あれから何か月たったのでしょうか………
かけた時間に見合うようなクォリティではないと思いますが…何とか、書き終わりました…
今月末からモン〇〇ーハ〇ターワ〇〇ズが始まりますからね…おそらくまた何か月も先の更新になるかと思います……




