17.狙うもの①
「エリ…!起きるのだ…!」
「……ぅ………アイリス……どうしたの…?もう朝?」
「リエが精神攻撃を受けたのだ…!」
「!!!!、理恵ちゃんは…?まさか……」
「大丈夫なのだ、今は我の力で精神を夢の世界に隔離して守っている状態なのだ、万が一起きたら精神攻撃を受ける可能性があるからリビングで話すのだ」
「わかった」
寝間着のままリビングへ降りソファに腰を下ろす、するとアイリスが申し訳なさそうに話し始めた。
「昨日二人が寝始めた時に外から魔法の気配を感じたのだ、気配の感じから精神攻撃であることはわかったのだがどれほど強い魔法なのかわからなくて……とりあえず狙われてるリエを我の能力で保護したのだ、突然だったから夢の中に隔離するしかなくて……」
「理恵ちゃんが狙われたってことは私の能力がらみかな……」
「本当はすまーとに敵を撃退しようと思ったのだが……いざ人間に攻撃しようとしたらできなくて…ためらってしまったのだ………ごめんなのだ…」
「アイリス…大丈夫、理恵ちゃんを守ってくれてありがとう」
「当たり前なのだ!…それでエリにも攻撃しようとしたけど、ステータスが高すぎて効かなかったようなのだ」
ここまで露骨に私たちを狙ってくる探索者は初めてだ、ダンジョン変異とそこから私たちが出てきたことはすでに学園中に広まっているはず、私たちが消耗していると思って攻撃してきたのだろう。
「問題は誰がやったか……それから理恵ちゃんを守る手段を考えないと…とりあえず先生に相談……」
「リエは我の力で守ってるけどそれじゃだめなのだ?」
「今回だけならそれでも問題ないけど、これから先同じことが起こらない保証はないから、理恵ちゃん……ううん、私たちは精神攻撃に対抗する手段を持たないとこれから先ダンジョンに挑むことも難しくなってくる」
「我はずっと守っていてもいいのだ!時間があれば二人の精神にバリアのような壁を作れば精神攻撃も受けないのだ!」
「今はアイリスより強い精神攻撃使いはいないかもしれないけど、この先そういったバリアを無視する固有持ちや魔物が現れないとは言い切れないから……やっぱり力はつけないと、それに…それだとアイリスだけが疲れちゃうでしょ?」
「そうか……役に立てると思ったのだが…」
「十分力になってくれてるよ」
スマホを開くと午前5時、起きているかはわからないがとりあえず朝日奈先生に電話をかけてみる、数度の呼び出し音の後寝ぼけた声が聞こえてきた。
『あい……こちら朝日奈です………』
「朝日奈先生、朝早くから失礼します、鷹見です」
『んあ…?鷹見……?どうしたんだ…?』
「実は先ほど精神攻撃を受けたので、どうしたらよいか意見をもらいたくて…」
『……………何?今行く!ちょっと待ってろ!それと五十嵐には言ったか?言ってなかったらメールでもいいから連絡しとけ!』
「わかりまし……もう切れてる……」
電話が切れた後続けて五十嵐先生に電話を掛けるが何コールしても出ない、仕方がなくスマホを操作しメール画面を表示させ登録してある【担任】と書かれたアドレスに現在の状況を打ち込み送信すると、ドンドンと扉をたたく音が聞こえた。
「鷹見!来たぞ!大丈夫か!?」
「今開けます」
「わ、我は精神に隠れておくのだ!」
扉を開けると寝間着であろうずいぶんとかわいらしいパジャマを着ながら汗だくになった朝日奈先生が肩を上下に揺らして立っていた。
「大丈夫ですか……?」
「はぁ…はぁ…大丈夫だ…それよりも小鳥遊は?」
「今は眠っています」
「それは、まだ精神攻撃から抜け出せていないってことか?なら私が……」
「いえ、ただ寝ているだけです」
「鷹見を疑ってるわけじゃないが……診せてもらってもいいか?」
「……………はい」
先生を連れて理恵ちゃんの部屋に入る、朝日奈先生が理恵ちゃんを見るのと同時に驚愕したように目を見開き、すぐに険しい顔になってこちらへ問いかける。
「………これは鷹見がやったのか?」
「……………………はい」
そう返事をした瞬間、私の体は部屋の壁に叩きつけられ背中に痛みが走る。
「なんて危険なことをしたんだお前は!!お前は先日の件まで精神攻撃に対する知識も経験も足りなかったはずだ!!ここまで高度な精神防御ッ………失敗したら小鳥遊が夢から帰ってこれなくなる可能性だってあった!!!!」
「…………申し訳ありません……」
「この……!!謝って済む問題じゃない!!自分は優秀だからと調子に乗ったのか!?確かに魔法を扱う才能で言ったらお前は私より上かもしれない!だが才能だけですべての物事がうまくいくと思ったら大間違いだ!!お前は攻撃を受けたと気づいたときに真っ先に私に連絡するべきだった!!お前には心底失望し―――」
「やめるのだ!!エリは悪くないのだ!!」
「なッ!?」
「―ッ!!!アイリス!戻って!!」
「エリは悪くないのだ!!!」
「アイリス!!!早く!!」
「ッ!!」
精神にアイリスが入ったことを確認してから私は朝日奈先生の様子をうかがう、もし先生が激高するようなら先生とも戦わなければいけない可能性もある。
「………………今のは…魔物か…?…だが喋って…形からして夢魔だが鷹見は精神を操られてる感じじゃ……………」
「…………………」
『ごめんなのだ……でもエリがこいつの言葉に傷ついてるのがわかって………』
目くらましに光の魔法を準備しながら先生の様子をうかがう。
「鷹見、今のはなんだ」
「…………………………」
「何もしないから早く答えろ」
「………先日のダンジョンで拾った魔物です、テイムしました」
「はぁ……すぐにばれるような嘘をつくな……夢魔をテイムできるような魔法やスキルは存在しない、固有能力がバフ系である以上それは無理だ」
「…………………」
「ここまで信用されないとさすがに傷つくぞ……さっきの魔物のことは誰にも話さないし、お前の話も全部信用する、だからさっきの奴……アイリスだったか?…の話をしてくれ」
観念してアイリスについて話すことにした、念のためアイリスには精神から出ないよう念を押して朝日奈先生に向き合う。
「それで?その魔物…アイリスはいったいなんだ、なぜ喋る、なぜお前は匿ってる」
「実はダンジョンで変異が起こった時―――――」
「―――――と言うことがあり今は私たちの仲間です」
「……とりあえずアイリスを見せてくれ、お前らが騙されていないか確認する、そいつに悪意がないなら何もしない、悪意がないなら出てこれるだろ?出てこれないなら………無理やりにでも引きずり出すぞ?」
『エリ、我が話すのだ、このまま引きこもっていてもそいつの心証を悪くするだけなのだ』
「………アイリスを意味もなく傷つけたら私は何をするかわかりませんからね」
「わかったわかった……過保護な親でも相手にしてるみたいだ……」
アイリスが出てきて朝日奈先生の前に立つ、その背中は心なしか震えているように見える。
「で、出てきたのだ!わ、我は二人の味方なのだ!騙したりなんかしてないのだ!」
「それはアタシが決める…私の目を見ろ」
「う、うむ……」
二人が目を合わせると朝日奈先生の左目が一瞬金色に光り、すぐに元に戻った。
「なるほど、悪い奴じゃなさそうだな、予想はしていたが小鳥遊に精神防御を掛けたのもお前か、悪かったな疑ったりして」
「ぅえ?もういいのだ…?もっと怖い事されるかと思ってたのだ」
「………まあいい、これからの事について話すぞ、まずは小鳥遊を夢の世界から解放してやれ、解放したらすぐ私が精神防御をかける、私の精神防御が信用できないならその夢m……アイリスに私を攻撃させろ、それを防御出来たら信じてくれるだろ?」
「それじゃあ……アイリスお願いできる?」
「その必要はないのだ、見てるだけで分かる……精神に全くスキがないのだ……攻撃を仕掛けても効かない……いや、これは跳ね返されて逆にこちらが危ないのだ」
「お?そこまで気が付いたか、まあ、実際に跳ね返すつもりはなかったが……特級か…?いや、もしかしたらそれ以上………これはあとだ、まずは小鳥遊だな」
先生が目配せをすると、それを受けたアイリスが理恵ちゃんの精神に入る、先生が理恵ちゃんの頭に手をのせるとすぐに理恵ちゃんが目を覚まし、こちらを見て微笑む。
「おはよ、エリちゃん」
「おはよう、理恵ちゃん」
「ふぅ、ごめんね心配かけて!大体のことはアイリスちゃんから聞いたから!先生もありがとうございます!」
「あぁ、ま、生徒を守るのは私たちの仕事だからな」
『あ、危なかったのだ、そのままリエの精神に居たら閉じ込められてたのだ……』
「あれ、アイリスなんで私の中に……」
私の問いに答えず外に出てきたアイリスは先生の前まで行くと服をつかみ揺らそうとしながら怒り始めた。
「なんてことするのだ!せめてやるならやるって言ってほしかったのだ!危うくリエの精神に閉じ込められて出れなくなってたところなのだ!」
「逃げれると思ってたからな、特に言わなくてもいいかなって」
「言ってほしいのだ!そう思ってても言ってほしいのだ!二人の精神がつながってなかったら危なかったのだ!!」
「まあまあ、それじゃ、対策について話し合おうか」
3週間以上かかって申し訳ありませんでした。
細かい言い訳(?)は活動報告に書いてあります。
今後も2週間以内の更新を目指しつつゆったり更新していきます。




