16.休みの日は何をしよう
1週間の休みが始まり早々に暇になった私たちは座学でも受けようかと朝日奈先生に連絡したところ
「何のための休みだ……いいから体だけじゃなく心も休めろ、どうしても暇なら二人で遊びにでも行ったらいいじゃないか、金も貯まってきてるだろ?武器とか買ってる様子ないし」
と言われてしまい、現在チームハウス内で何をするかの話し合いが行われている。
「う~ん、今のところ買いたいものもないし、見たい映画もないし……エリちゃんは買いたいものとか行きたい場所とかある?」
「私は理恵ちゃんと一緒ならどこでも……って言葉が聞きたいわけじゃないよね、…………今まで私暇さえあれば勉強とか運動してたから、休みの日に何すればいいかわからない…アイリスは?」
「我はそもそも外に出るなら精神に入らなきゃいけないからどこでもいいのだ!外のことについて知ってることも少ないしな!」
「「「………………」」」
「とりあえず、今日はゆっくり家ですごそっか!」
「そうだね」
「わかったのだ!それなら我はエリの魔法の練習を見学するのだ!」
………今更驚かないが思考がほとんど読まれている、ゆっくりするのも落ち着かないからスキルレベルでもあげようと考えていたのだが理恵ちゃんに知られれば……。
「え?エリちゃん魔法の練習するの?お休みもらったんだから休まなきゃ…でもどうしてもやりたいなら私も協力するよ!魔法からの防御も練習したかったし!」
「う、ううん大丈夫、私も休むから……」
「やらないのだ?……我は通常の属性魔法が使えないから見てみたかったのに…それならみんなで一緒にげーむ?って言うのがやってみたいのだ!」
「家にあるパソコンは2台だから…ゲーム機かパソコン買いに行かなきゃね、どうする?今から買いに行く?」
「ぱそこんとかげーむきとか買われても我は操作できる自信がないのだ!二人がゲームしてるのを見て勉強するのだ!」
「う~ん……見てて楽しいゲームかぁ……RPGとかかなぁ」
「ちなみにアイリスはどんなゲームがいいの?」
アイリスはしばらく顎に手を当てたまま考えてから答えを出した。
「女の子同士で恋愛してるゲームが見てみたいのだ!」
「「……………え?」」
「我は二人のことをもっと知りたいのだ!だから女の子同士で恋愛してるゲームが見たいのだ!」
「えっと?何で私たちのことを知りたくて百合ゲーム?」
「あ、あ……ぇ…?女の子同士…?私たち…?」
「エリはわかったようだな!そう!二人は仲がいいからゆりげーむ?をすれば二人のことを知れるはずなのだ!」
「ア、アイリス…私たちは付き合ってるわけじゃなくてね…?」
「そんなに仲良さそうに見える?えへへ……」
結局無難なRPGをプレイすることになったがアイリスは楽しんでくれた。
一日ずっと3人でゆっくりしていたが夕暮れ時にもなるとやることがなくなり、惰性でテレビを見ているだけになってしまった。
「…………普段テレビなんて見ないから面白い番組もわからないね…」
「そうだね……えーと、番組表は………今は特に面白そうなのはないね!」
「退屈なのだ……またゲームする方が面白いと思うのだ!」
「ゲームばっかりだと飽きちゃうよ?面白いと思ってる段階でやめないとモチベーションが下がっちゃうし……」
「あれ、このニュース、概要に第一学園について書いてあるけど……」
「ほんと!?じゃあこのニュース見よっか!」
「にゅーす?なんか詰まんなそうな響きなのだ」
リモコンを操作しチャンネルを変更する、どうやら始まったばかりのようで男女二人のアナウンサーがニュースの概要について話している。
『………現在、桜東迷宮攻略第一学園で発生したダンジョンの変異現象について探索者による調査が行われることとなり現在数多くの特級ダンジョンを攻略している【死者の鼓動】が依頼を受け探索に向かっています』
『【死者の鼓動】と言えば最近メンバーの方が一人、探索中に命を落としてしまったことで一時期探索者引退の噂もありましたね、以前のチーム名は捨てて心機一転、仲間は自分たちの中で生きているぞというメッセージが聞こえてきそうなチーム名です』
『第一学園が所有しているダンジョン、中級中位で起きた変異現象は大規模なものだとの予想がされていますが、調査のため入った教員の話によると「プレッシャーが上位の比ではない、特級、それも攻略前から名前がついてしまうほど大規模なダンジョンへと変化している可能性がある」と述べており、現在も探索者へ調査の協力を呼び掛けています』
『攻略前のダンジョンに名前が付くとなると、あの悪名高いダンジョン【異世界】以来初ですか……』
いつの間にかテレビから流れる内容に見入っていた、変異自体は知っていったし、アイリスがいたことで上級以上ではあることはわかっていたが、特級、それも正真正銘のネームドダンジョンになっていることを知り、今になって私の足は震えていた。
「わ、私たちとんでもないところにいたんだね……」
「うん……生きて出られてよかった…もし脱出が遅れてたら…」
「まあ、我らは等しく肉塊にでもなっていただろうな、あれは我より数段上の存在なのだ」
「それに、まさか【死者の鼓動】が依頼を受けるなんて…」
「私は第一学園に入る前はダンジョンにはあまり興味がなかったから知らないんだけど…そのチームって有名なの?」
「ぇえ!?エリちゃん知らないの!?有名なのに…」
「えっと……?」
待ってましたと言わんばかりに理恵ちゃんが目を輝かせてこちらを見る。
「【死者の鼓動】は5年前から活動してる探索者チームでもともとは【龍の心臓】ってパーティー名だったよ、由来は有名になったきっかけの探索でドラゴンを倒したからだって言われてるんだ~!名前が付いている特級ダンジョンの内4割も彼らが名前を付けてるの!しかも!ほかのチームが攻略できなかったダンジョンを率先して攻略してるから勇者チームって呼ばれることも多いね!」
「ああ、よく聞く勇者チームって【死者の鼓動】のことだったんだ」
「うん!一部嫌いな人はいるみたいだけど……」
「ああ、よくたたいてる人はいるね」
「ほとんど言いがかりなんだけどね!依頼をほとんど受けないで未踏破ダンジョンにばかり行くからよく『他人のために動いていないから勇者じゃない』とか、『国の依頼でしか動かない』とか言われているけど、ダンジョン攻略自体人のためになる事だし国の依頼も断ってるからそんなことないのに!」
「すごい人達なんだね、それならあのダンジョンも大丈夫かな」
「そうだね!って言いたいけど…【異世界】と同じ規模だったら難しいかもね…」
【異世界】…10年以上前に現れた世界で初めて攻略前に名前が付けられたダンジョン、いまだに入って戻ってきた人が少なく、戻ってくるとしてもほとんど瀕死の状態で1週間もしないうちに全員亡くなっているあの……
「「………」」
「空気が重いのだ…!やっぱりてれびは辞めてげーむにするのだ!その方が楽しいのだ!」
「そ、そうだね!…って、もうこんな時間!ゲームはご飯食べてからしよっか!」
「アイリスは食べたいもの……そもそも人間の食べ物で大丈夫なの?」
「問題ないのだ!けど……できれば二人のHPかMPも貰いたいのだ…そしたら我も強くなるし二人の力になれるのだ、も、もちろん嫌なら大丈夫なのだ!」
「う~ん……じゃあ、私からHP、エリちゃんからMPを少しずつあげよっか」
「自然回復スキルもあるからそれが良いと思うよ」
「いいのだ!?ありがたいけど…騙されてるとは思わないのだ…?」
「そう言ってる時点で騙す気なんてないじゃん!」
「私の勝手で助けたんだからアイリスに騙されるなら私の自業自得、理恵ちゃんには申し訳ないけど……」
「私も協力したんだから”私たちの勝手”で助けたの!申し訳なく思う必要なんてないよ!」
「ありがとうなのだ……こんなあったかい気持ちは初めてなのだ…!」
アイリスを抱きよせるとそこに理恵ちゃんも加わる、アイリスは微笑みながら瞳を潤ませ手を私たちにまわす。
「本当に…本当にありがとうなのだ……我を助けてくれて……ありがとうなのだ…!」
その後、夕食にハンバーグを作り3人で食べたあとにゲームをした、思いのほかRPGにはまったようで後半は自分で操作したいと言うので二人で説明しながらなんとか操作を覚えたようだ。
「ふあ……あぁ…アイリスちゃん…私もう眠くなっちゃった…続きは明日にしよ~……」
「わかったのだ、HPとMPは眠ってるときにもらうけどいいのだ?」
「うん…、いいよ~……」
「それはいいけど私と理恵ちゃんの体を行ったり来たりて疲れない?」
「二人の精神は繋がってるからどっちかの精神に入ればどっちも貰えるのだ」
「行ったり来たりって……エリちゃん別々に寝るの?………一緒にねたい……」
「え?繋がってる?一緒に寝たい?え?ちょっと情報量が………」
「その辺の説明は明日するのだ」
「ん~、じゃあ…早くベッドに入ろ…?早くエリちゃんと寝たい………」
「わ、分かったから抱き着かないで……」
「ねむい~運んで~」
理恵ちゃんを持ち上げると部屋にあるベッドまで運び寝かせる、幸いお風呂後には寝間着に着替えていたのでそのまま私もベッドに入ると思いのほか疲れが残っているのか布団を被るとすぐに意識が薄れていく。
『む?これは……心配だからちょっと手伝うとするのだ』
頭の中でつぶやく声は脳に処理されることはなく私は夢の中へ落ちて行った。
チームとかパーティーとかややこしいですが、
チーム:探索者の集まり、基本2~10人
パーティー:探索に行く際のメンバー、制限はないが4,5人のパーティーが多い
と言う認識で書いています。
ギルド、レイドの概念もありますがここでは省いておきます。




