15.ダンジョンの異変
遅くなって申し訳ありません。できるだけ2週間以内に更新できるよう頑張ります。
「……………」
「……………」
「………お前らいつまでいちゃいちゃしてるのだ!早く出て行ってほしいぞ!お前らがここに居続けるとほかの探索者が入ってこれないんだぞ!?」
そうは言っても理恵ちゃんが手を放してくれないから離れられない、手を離すには惜しすぎるため自分から離すつもりもないが。
それからしばらくして理恵ちゃんは満足したのか私から手を離した、ようやく終わったハグに魔物はあからさまにほっとした様子でこちらに話しかけてきた。
「や、やっと終わったのだ?ならもう帰るんだぞ!」
「その前に、あなたはなんでしゃべれるの?しゃべる魔物なんて聞いたことがないけど」
「答えないと攻撃するよ~?」
理恵ちゃんがすでにぼろぼろになっている剣を左右に振り魔物を脅す。
「そ、そんなこと言われてもしゃべれる理由なんて知らないのだ!生まれた時からしゃべれるぞ!」
「じゃあ、あなたについて教えて?それからダンジョンや魔物について何か知っていることは?」
「ッ!!我は……人間の脅威になるべくして作られた存在なんだ…」
「脅威って…漫画やゲームに出てくる魔王みたいな?」
「その認識で間違ってないぞ、ダンジョンのことは……わからない……お前たちは今いる世界がどういうものなのか理解できるのか?うまく説明できないけどそう言うことだ」
「そう………でも脅威になると言われてなおさら見逃すことが出来なくなったね」
「そんな………我…死にたくない………グス……」
「やりづらいよ~!なんかかわいそうで助けたくなっちゃうよ…」
この場合どうすればいいのだろう、【魔物は倒さなければいけない】小さいころから親から言われてきたことだ、テレビでも魔物を倒す探索者は英雄扱い、しかし、目の前のこの魔物を倒すことは心の中に大きなしこりを残すような気がして決断出来ない。
「人は襲わないって約束できるなら見逃してあげられるけど……」
「それは……無理だ…我が強くなるためには人間から力を集めないといけない………」
「嘘は言わないんだね……殺されるかもしれないのにどうしてそこまで…」
「我だって…本当は人間を傷つけたくない……だけど強くならないと存在を消されちゃう……」
「傷つけたくないって……はっきり言うけど、私にはこの場を逃れるための嘘に思えて…」
「エリちゃん、この子の言ってることは本当だと思うよ」
「……どうして?」
正直に言えば私も信じたい気持ちが大きく、半分すがるように理恵ちゃんに問いかけた。
「この娘の精神攻撃、抜け出すのがいくら何でも簡単だったと思わない?精神力が高いエリちゃんが抜け出せるのはわかるけど私は精神攻撃を防げるほど精神力は高くないよ、あからさまな核があったから破壊できただけ」
「それって……」
「うん、この娘相手の実力で確実に生きて帰れるように精神攻撃を調節してたんだよ、エナジードレインしなきゃ強くなれないから攻撃しただけで…きっと言ってることは本当だよ」
「…………………」
「我は…失敗作なのだ…心を持って生まれてしまった我は…そのせいでほかの魔物のように人間に攻撃することがとてもつらいのだ…」
そこまで話すと魔物はまたポロポロと泣き出してしまった。
この娘を助けるとして、どうすればいいのか…そういえば魔物をテイムできるようなスキルはないのだろうかとDタブを起動する。
「何してるんだ…?」
「スキルであなたをどうにかできないなって」
「無駄だ……我はこのダンジョンに縛られてるんだ……スキルなんかでどうこうできることでは…」
「…そんな…じゃあどうしたら…」
「………………もういい…」
「え?」
「もういいって言ったんだ!こんな人間もろくに殺せない魔物なんてお前らに見逃してもらってもすぐに倒されるにきまってる!それなら……いっそ今ここで倒してもらった方が人間を傷つけることもない…!」
「………………何とかできないの?」
「エリちゃん………」
「……人間の力ではどうにもできない…どうせ倒されるなら…敵意を持って倒されるよりもお前らに倒された方が…だから…」
その瞬間、目の前で涙を流す魔物と一人で努力するしかなかった私の姿が重なった、私にステータスがなければ彼女と同じように逃げることもできずに絶望するしかなかっただろうかと考え私は心を決める。
「私は………あなたを助けたい……!」
「ッ!!そんな気休めいらない!お前らのスキルではどうしようもないと言ったはずだぞ!」
それでも私は彼女を助けたい、自分勝手な思いだと理解しているが彼女を見捨てることはあの時一人きりだった自分を見捨てるようでできなかった。
「何かあるはず……何か……」
「私はあたりに何かないか調べてくるね!」
「……これ以上希望を与えないでほしい…後が辛くなるだけだし…」
いくら取得可能なスキルを確認してもこの娘を解放できるようなスキルはない、しいて言えば【魔物使役】と言うスキルがあったがこれは弱い魔物にしか聞かないらしい、それにこれは支配するのがダンジョンか私かに変わるだけで解放することにはならないだろう。
「………」
「エリちゃん、周りにはこの娘を何とかできるようなものはなかったよ」
「そんな簡単に解放されるなら自分でやってる……」
あと残っているのは固有能力による解放、そういった能力を持っている人がいればもしかしたら……
「あなたを解放できるような固有能力があれば………」
「それならエリちゃんのは?ステータスを上げれば精神力なんかで支配に対抗できないかな」
「…多分無理だと思う、それにその娘のステータスはすでに変化しているはず」
「…確かにかなりステータスが上がっているのだ、でもいくらステータスを上げたところで……やっぱり我が死んで消えなければこの支配はきっと解けないのだ」
「う~ん、逆にステータスを消したりしたらどうかな?」
「そんなこと出来るわけないのだ、でも………できたとしたら………可能性はあるかもしれないのだ、」
ステータスを消すという言葉に私は振り返る、理恵ちゃんはこちらにウインクをして私が聞きたいことを理解したのかそれに答えた。
「私の固有能力ならできるかも!」
「!!!!!」
「そ、そんな固有能力があるのか…?」
「それじゃあ…エリちゃん、この夢魔ちゃんに能力を使ってもいい?」
「え?もちろんいいけど……なんで聞くの?」
「エリちゃん前に自分以外の人を能力の対象にしなければいいって言ってたでしょ?黙って使ったらエリちゃんに悪いかなって」
「そんなこと気にしないのに…でもありがと、うれしい……」
「えへへ……っと…それじゃあ、夢魔ちゃん、あなたに能力を使うけどいい?」
「…かまわん、だが約束してほしい、それが失敗したらお前らの手で私を葬ると……」
「……わかった」
「じゃあいくよ?」
理恵ちゃんが体に力を入れ能力を発動する、力が抜ける感覚を覚えると同時に体が透明な膜に覆われた、それは隣にいた夢魔も同じようで体を見下ろして驚いている。
「こ、これは……!」
「どう?夢魔ちゃん」
「き、切れた……ダンジョンとのつながりが……は、はは…いや!喜んでいる場合じゃない!早くここから出るのだ!」
そう言い切る前にダンジョンが揺れ始め空間が歪んでいく。
「ダンジョンはごまかせても我の創造主は騙せないのだ!我が生きていることはバレていると思った方がいいのだ!早くここから出ないと…ほかの魔王候補が送られてくるのだ!!」
「エリちゃん!ポータルが出てる!早く入ろう!!」
「わかった、あなたも……でも、あなたが地上に出たらパニックになりそうだね…」
「それなら問題ない、お前らの精神に入り込むから他人からは感知されない!………もちろんお前らが許してくれるならだけど……」
「早く入って…!」
「エリちゃん!夢魔ちゃん!なんかポータルが歪んでるんだけど!早くしないと壊れそうだよ!!!」
『は、入ったぞ!』
急いでポータルに入る、体が浮遊感に包まれ転送されるその瞬間に見たのはまるで溶岩が血管に流れているかのように全身が赤黒く発光している大きな獣だった。
ダンジョンから帰ると学園は混乱に包まれていた、教職員や探索者が忙しそうに行き来しており遠くからは怒号のような声も聞こえてくる。
「鷹見!小鳥遊!無事に戻ってこれたか!」
「朝日奈先生、私たちが探索していたダンジョンにて異変を確認しました」
「ああ知ってるよ、そのことで今学園全体がパニック状態さ」
「先生…中級中位で何が起こったの?」
「ダンジョンが変異した……と言っても探索してたお前らはそんなことはわかっているだろうが……本当によく戻ってきた………」
「私たちはボスと戦ってるときに変異したからあんまり……」
「そうか……それはよかった………」
『ふ~ん……これが教師ってやつか………』「ッ!!!!」
「…どうした鷹見?」
「いえ、何でもないです……ちょっとダンジョンでの傷が……」
「すまん、ケガをしていたのか…回復魔法をかけてやろうか?」
「いえ、失念していただけで自分で治せる程度なので大丈夫です」
「そうか……まあ、ダンジョンの変異についてはお前らにも聞きたいことはあるが今は休め、最低でも2日は休めるように上のやつらは説得しておくよ」
その後、1週間の休みののちダンジョン内であったことを朝日奈先生と五十嵐先生に報告することになったと連絡をもらい、夢魔との話し合いと現状についての相談を行うことにした。
「それで…ダンジョンの支配はどう?あれからなんともない?」
「うむ、ステータスも戻ったがダンジョンからのつながりは完全に断たれたようだ」
「ほんと!?よかった~!これで夢魔ちゃんも自由だね」
「………結局あなたの創造主っていったい…?」
「…そのことなんだが、我にもうまく説明できるかわからない、解っていることはこの宇宙でも上位の存在であるということ、ダンジョンを作った存在であるということだけだ」
「………えっと…ごめんね、関係ないんだけどあなた最初としゃべり方違くない…?」
「本当に関係ないな……あれは…自分を偉大な存在だと思い込ませるためにやってただけで……本来のしゃべり方じゃ……」
「え~?その堅苦しいのが本来のしゃべり方なの?前の方が可愛かったのに!」
下を向いた夢魔がもごもごと何かを口にしている。
「…ど、どうしたの?ごめん、気に障った?」
「……いや大丈夫だ…えっ…と…これはただ気安く離すのに慣れてないだけでだな…」
「本来のしゃべり方は違うの?」
「……笑わないか?」
「「笑わない(よ!)」」
「じゃ、今度からは素のしゃべり方にするのだ!」
「前のしゃべり方とそこまで変わらないと思うけど……」
「そう…だね…?」
「そんなことはないのだ!前のは王様のように威厳のあるしゃべり方なのだ!」
違いはよく分からなかったが本人がしゃべりやすいというならこのままでいいのだろう。
「それで、あなたの名前は?いつまでも夢魔ちゃんって呼ぶのも…」
「そうだね!教えて教えて!」
「我は名前なんてないぞ?種族名ならナイトメアなのだ!」
「ん~…ナイトメアちゃんって呼ぶのもな~、メアちゃんとか?」
「我は二人に名前を付けてほしいのだ!」
「いいよ~!じゃあエリちゃん!夢魔ちゃんのネーミング会議を始めます!」
どこから持ってきたのか手で持てる程度のホワイトボードを取り出して手渡してくる。
「え!?は、はい!」
「では私から!サキちゃん!」
「もしかしてサキュバスからとったのだ…?別の種族だしあいつらのノリ嫌いだから勘弁してほしいのだ……」
「(魔物にノリとかあるんだ……)」
「あるぞ、ある程度知能を持っている奴ならテレパシーみたいなので会話できるのだ、あいつら猥談しかしないから嫌いなのだ…」
「………心を読んだの?」
「……?そりゃ精神がつながってるからわかるのだ?」
「そっか……えっと、じゃあ私の番だね、………レンちゃんなんてどうかな」
「ちなみに由来は?」
「蓮の花からとったの、色によって違うけど花言葉が清らかな心だから、貴方に合ってるかなって」
夢魔の方を見ると顔を赤くしてぶんぶんと手を振って抗議していた。
「は!恥ずかしいのだ!真正面から清らかとか言われると鳥肌が立つのだ!」
「そっか……ざんねん……」
「私の番だね!エリちゃんの花から名前を付けるという発想を参考にして、アイリスちゃんなんてどう?花言葉は純粋とか信念って書いてあったよ!」
「(ほかにも【あなたを大切にします】って意味もあったような…だったら確かにピッタリかも)」
「………恥ずかしいけど…アイリスがいいのだ…!」
「え?そんなに恥ずかしい花言葉じゃないような………」
「お前ら我が心読めること忘れてるだろ!今しがた考えたことを思い出すのだ!」
「………ああ…ごめんね、こんなこと考えられたら断れないよね」
「……まあ意味も響きも気に入ったからありがたく受け取るのだ!我の名前はこれからはアイリスなのだ!」
こうして私たちに新しい仲間が加わった。




