14.解釈違い
理恵視点です。
カーテンから陽の光が漏れ私の瞼に当たる、まぶしさを感じながらも目が覚めてきた私は手を横に伸ばして彼女を探すが手はベットの柔らかさを感じるばかりで彼女のぬくもりを探し当てることはなかった。
「んぅ……そっか…昨日は一人で寝たんだっけ……」
前回抱き着いて寝てしまった私は恥ずかしさからエリちゃんに一緒に寝ようと言うことが出来なかったが、こんなに寂しい気持ちになるなら今日は一緒に寝よう、そう心に誓い体を起こす。
「ん~………今日は報告書を作って……時間があったらエリちゃんと出かけようかな……」
頭を起こすために自分がわくわくするようなことを精一杯考える、その間に着替えをすると寝ぼけたのか高校時代の制服に着替えてしまっていた。
「うわ……何やってるんだろ私、えっと…お気に入りの服は……」
そこで違和感を覚えた、高校時代の制服なんてこっちに持ってきていない、いるわけがない、嫌な思い出の象徴のようなこの服を私は高校を卒業してすぐに燃やして捨てたはず、それによく見れば部屋も実家の私の部屋だ。
「…………精神攻撃かな?」
今考えられるのは3つ、1つはこれはただの悪夢でいまだに割り切れていない私の心が自分を苦しめているだけ、けれどこれはないだろう、高校を卒業してから……エリちゃんと友達になってからは1度も見たことがないこの夢を今更見る理由がない。
もう一つは探索者に攻撃されている可能性、魔法か固有能力で精神攻撃を受けている、この場合目的はエリちゃんの能力だろう、私個人を狙う必要はないし理由もない、唯一体目当てならあるかもしれないがそれでも男だったらエリちゃんの方を選ぶ。
最後はダンジョンで精神攻撃を受けている可能性、正直これが一番可能性が高い、そもそもエリちゃんの能力目的なら夢の舞台は第一学園の方になるはずだ、高校が舞台なのは私の精神を削いでここから出さないため。
「ならやることは一つだね!核を探さないと!」
私がダンジョンで精神攻撃を受けているということはエリちゃんもそうなっているかもしくは一人で戦っているということだ、それに精神攻撃を使ってくる敵は今まで上級中位からしか確認されていない、となると記憶はないが私たちは現在上級を探索していることになるためできるだけ早く起きなければ危険だ。
「核は自分の記憶とは関係がない、もしくは関係があってもとても薄いものの場合が多い……か、稀に違う場合もあるけど取り合えず記憶にないものは全部ぶっ壊そう!」
そうして家の中を探索するが、怪しいものはない。
「はぁ…やっぱり学校に行かなきゃダメかな………」
その時、家のチャイムが鳴り誰かが来たことを知らせる、私は誰が来たのかを察して家を出る準備をした。
「予想はしてたけどまあ来るよね~、私の精神を削るんだったらいなきゃおかしいし」
覚悟を決めて扉を開ける、するとそこにいたのは私が想像していた人ではなく、今一番会いたい、けれどそこにいてほしくはなかった人。
「エリちゃん?」
「理恵ちゃんおはよう、今日も一緒に学校行こ」
なるほど、と私は極力冷静になる事を意識しつつ思考を巡らせる。
自分の思考から外していたもう一つの最悪が目の前にあった、エリちゃんが彼女の役割を担っているのなら彼女にやられたことをエリちゃんから受けなければならないということになる。
「あはは、性格悪いなぁ」
「どうしたの?理恵ちゃん」
「何でもないよ」
十中八九この世界の核はエリちゃんだ、確認する方法は一つ、壊すのみ。
人によってはこういった明晰夢に近い状態だと夢の内容を変化させることが出来る人もいるらしい、それが出来れば変化がないものを壊して終わりだが残念ながら私にそんな特技はない。
壊せばいいだけ、それだけだがこの場合それが一番難しい、ブラフの可能性があるそれは壊せば私の精神が大きく削がれることになり核であってもそうでなくても私にダメージを与える。
「――――、―ぇ、ねぇ、ちゃんと聞いてる?」
「……………………はぁ」
歩き始めてから絶えず話すそれに私は意識を向けないようにしていたがそれも限界だ、そもそもエリちゃんの声を無視すること自体が私にとっては苦行だった。
「………なに?」
「何その態度、やっぱり理恵ちゃんも私を見下してたんだ、みんな私を腫物扱いして………理恵ちゃんも私を利用して周りから点数稼ぎたいだけなの?私に優しくしてればそれだけで聖人扱いだもんね」
「…どの口がそんなこと言えるんだか」ボソッ
「はぁ?………はぁ~、こんなのが私の唯一の友達だなんて、あんたと友達になんてなるんじゃなかッ―――グ…カハッ……やめ……離じで……」
「お前が、その姿で、その声で、その言葉を口にするな、外見がエリちゃんだからって調子に乗るな……!私から友達を、居場所を全部奪ったお前が……!」
「カ……ゴホッ……な、何の話…?」
わかるわけがない、お前なんかに。
「エリちゃんは私のせいで学園に居づらくなりそうになっても気にしないでって言ってくれた、あんなに辛そうな顔してたのに……、私が死にそうなときには一番に駆けつけて助けてくれた、ずっと一緒に居るって言ってくれた、一緒に住んでくれた、一緒に寝てくれた、甘えさせてくれた、もう一度親友を作ってみようって思わせてくれた、そんな人の体で、声で、香りで、温もりで………お前の汚い言葉を吐き出すな!!」
私は手に力をこめると、それとは反対に脱力したそれを道に投げ捨て崩れていく世界を見る。
「はぁ、きっついなぁ……体だけとはいえ親友を殺さないといけないなんて……二度とごめんだよ……」
そう言って私の意識は現実へと浮上していった。
「うぅん……ここは…やっぱりダンジョンか……中級中位でボスと戦ってる最中にいきなりダンジョンが変化して……はっ!エリちゃんは!?」
「……うぅ……理恵ちゃん…なんで……?…………」
「よかった!まだ生きてる!でもこの体に張り巡らされた木の根みたいなのは……エナジードレイン!?とにかく根を!」
ぶちぶちと音を鳴らしながら木の根ははがれていくが、またすぐに根が伸びてエリちゃんを覆ってしまう。
「………!!とにかく今の状態を見なきゃ!」
自分のDタブを取り出し自分とエリちゃんのステータスを確認する、まずはエリちゃんからだ。
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Lv.20
HP503/215(+860)
MP 652/220(+880)
STR 560(140)(×4.0)
DEX 680(170)(×4.0)
VIT 560(140)(×4.0)
AGI 680(170)(×4.0)
INT 1160(290)(×4.0)
MND 1160(290)(×4.0)
SP 70
スキル:【星光魔法Lv2】【闇黒魔法Lv2】【火炎魔法Lv2】【大海魔法Lv2】【大地魔法Lv2】【回復魔法Lv3】【探知魔法】【魔力の泉Lv4】
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大分HPもMPも吸われてるが今すぐに命にかかわることはなさそうだ、ほっとしつつ、ダンジョン探索を始める前に買っていた魔法薬を使いエリちゃんのHPを回復させる、次は私だ。
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Lv.20
HP 568/390(+390)
MP 0/105(+105)
STR 580(290)(×2.0)
DEX 280(140)(×2.0)
VIT 680(340)(×2.0)
AGI 340(170)(×2.0)
INT 260(130)(×2.0)
MND 260(130)(×2.0)
SP 115
固有能力:【力を一つに】
説明:【アクティブ】自分が仲間だと思っている人のステータスを自分に集約する、能力の対象になった者は徴収された分のステータスを一時的に失うが破壊不可能のバリアで守られる
スキル:【挑発】new【上級盾術Lv5】new【上級剣術Lv2】【回復魔法Lv4】new【HP自動回復Lv8】
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どうやら最近とったスキルのおかげで私のHPはさほど減っていないようだ、その証拠にスキルレベルが上がっている。
「とにかく早く助けないと……魔物は……いた…!」
悪魔のような角と尻尾が生えた女の子のような外見をした魔物、夢での精神攻撃をしてきたことから夢魔の一種であることはわかるがサキュバスではないようだ、そもそもサキュバスだったら見せる夢は悪夢ではないはずだし私たちは女だ、サキュバスの食料には適していない。
「……とにかく今はこいつを倒さないと」
精神攻撃をしてくる相手は物理攻撃に弱い傾向にある、たとえ上級レベルでも私のステータスなら十分に相手になるはずだ、幸いその夢魔は寝ているようで目をつぶって動く気配がない。
「そぉ……れっ!!!」
私は大きく剣を振り上げ、夢魔に向かって振り下ろした。
ガキィィィン………
「うわぁ!!!なになに!!??………て、なんだ、もう起きたのか~?」
「はじかれた!?」
「今の我に攻撃は意味ないぞ~?起きたのはしょうがないからもう出ていっていいぞ~……ふぁ~もうひと眠りしよ……」
「え?出て行っていいの?じゃあ…エリちゃんも解放してくれない?」
「ん~?そこに寝てる女のことか~?それは無理だぞ……生まれたてで魔力が足りてないし、おなかもペコペコなんだぞ……」
「そんな!!エリちゃんを返して!!」
「そんなこと言われても、我の魔法は一度発動したら自分で起きるまでは我でも解除できないぞ、そもそも解除する気がない時に使う魔法だし……まあ、起きることを祈るんだな~」
「か……返して……かえして!!!」
また剣を振り下ろす、この魔物に私の攻撃が効かないことはわかっていたが何もせずにエリちゃんを失うわけにはいかない、魔法を使うということは物理攻撃には弱いはずだ、今効いていないのはスキルか魔法で自分を守っているだけのはず、攻撃し続ければいつかは防御が破れるはずだ。
「かえして!」
そこからどれだけ攻撃を続けたのかは覚えていない、数分だった気もするし1時間以上たっていた気もする、私の手から血がしたたり落ちてきたあたりで魔物が大きく動揺し始めた。
「返して!エリちゃんを返して!」
「ちょちょちょっと待て!もう起きたぞ!お前の言っているエリちゃんとやらはもう起きた!それ以上攻撃するのをやめてほしいぞ!!」
「え!?」
私はその言葉を聞いて振り返ろうとしたがそれを改めた、エリちゃんがおきていようと眠ったままだろうと、目の前の敵を倒すのがエリちゃんを助けるのには一番早いことに気が付いたからだ。
「なんで!?もう起きたんだぞ!我にこれ以上お前たちを攻撃する手段は持っていないんだぞ!嫌だぞ!死にたくないんだぞ!生まれたばかりで消えたくないんだぞ~!!!」
正直かわいそうになってきた、と言うより冷静になって考えると魔物がしゃべっているのがまずおかしい、上級以上でもしゃべる魔物がいるなんて聞いたことがない、話してみる価値はあるのかもしれないと考え始めたところで後ろから今一番聞きたかった声が聞こえてきた。
「理恵ちゃん、起きるのが遅くなってごめん……その…そのしゃべる魔物は?」
「ほ、ほら!起きてただろ!?もう攻撃しないでほしいぞ!二人で出て行っていいから!殺さないでほしいぞ!!」
「………エリちゃん…もう起きないかもって…早く助けなきゃって……」
声が聞こえたことで感情が振り切ってしまいエリちゃんに抱き着いてしまう。
「うわわ…理恵ちゃん、心配かけてごめんね」
「……いちゃいちゃするなら早く出て行ってほしいぞ………」
「うるさい、邪魔しないで!」
「理不尽なんだぞ…」
私たちはそれからしばらくお互いを離すことはなかった。




