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大会前の乱闘


王様が代替わりするときに、開催されるこのバトルロワイヤルに参加できるのは、18歳以上の騎士より階級が上の人や他の大会で優秀な成績を収めた人たちだ。

バトルロワイヤルのルールは、簡単だ。

対戦相手を行動不能にすればいい。

バトルロワイヤルの会場である闘技場では、人を含む全ての生き物が死なない。闘技場の外に出れば元通りに生き返るのだ。

魔物か、ニンゲンのどっちかを倒せばいい。

けど魔物は死ににくいから、結果、人間がよく死ぬ。

魔物、人間同士で戦うことが当たり前だ。

ある程度人数が搾られでくるとバトルロワイヤルから、トーナメント制に、切り替わる。

相手より先に二勝すれば勝ちだ。

それは、この世界を作った神々が残した巨大な遺物の建造物があるこの国でしかできないことだ。

「お嬢様、闘技場では、くれぐれも猫をかぶってくださいね」

母のパートナーであるケットシーのティグルがわたしに顔を近づける。

母はおっとりした少し気の抜けた人であった結果、パートナーであるティグルはしっかりした性格になった。

ティグルは虎柄のとんがった耳をピコピコと動かす。

フリルがついたエプロンを着た大きなネコに側からは見えるだろう。

この世界では、当たり前のことだ。

「ジェム、お嬢を頼みますよ。あと、人化する時は必ず、自分を包めるくらいの大きな布も作り忘れないこと」

父のパートナーで蛇の魔物のソーンはわたしの肩に乗るジェムに念を押していた。

ソーンはより人間に近いシルエットをしている。

ビシッとした執事の格好をしている。

「旦那様と奥様が二人揃って風邪引かなければ、ここにいられたのに」

大会前日、ワタクシの両親は運悪く揃って風邪を引いた。

その結果止まっていたホテルで二人は休むことになり、二人のパートナー越しにわたしの負ける第一試合を見ることになった。

短い間しか滞在しないから調子に乗って、色々歩き回っていた結果そうなった。

その時のわたしは、初めて殺される恐怖に怯えている中でだ。

「とりあえず、頑張って戦っているふりをしよう」

そう思って、その日のためにしたてた薄桃色の体の動かしやすいドレスを着て、会場に出て、バトルをして、負けて退場する予定だった。


「この会場を我々クニィトォーリィは占拠した。」

ワタクシは黒ずくめマスクをしたの見えないガラの悪い人に羽交締めにされ、更にその仲間にナイフを突き付けられていた。

奴らが使った魔法の鎖で魔物が拘束されている。

なんで第一試合開始直前にテロが起きるんだよ。

前世、若死にしてしまったこと以上に最悪なイベントだ。

どうも、この闘技場にいる王様候補の人たちの命を使って、脅しているようだ。

なんでも、この闘技場の不死システムを破壊するとかなんとか言ってる。

さらに、魔物と契約することはよくないことだから、魔物と契約しない国を作るとかなんか長い演説を始めている。

長いし、飽きる誰か。暴れてくれないかなと思った。

しばらくすると、他の王様候補者たちが暴れ始めた。

そこから、乱闘開始だ。

ワタクシも好きをついて、スライムになって抵抗した。

さっきまで捕まえていた私が突然、黒い液体になって、テロリストさんたちは叫び驚いた。

その隙に、わたしは彼らの首を刃物のように伸ばした体で溶かし切る。これは正当防衛。これは正当防衛。

そして、ジェムの動きを、謎の力で封じていた鎖を切る。

『ジェム、さっき見せた。要領で他の子の鎖も切ってきて』

テレパスをつかい、ジェムに伝える。

『はーい』

ジェムは這いずり回るスライムの姿から透明感のある白い服を着た金髪タレ目の美少女に変わる。

そして、その乱闘状態の中を駆け抜け、鎖を切っていく。

怪しげな魔法で応戦していたテロリストたちも、パートナーと力を合わせて戦う人たちにおされ、『しばらく』息の根を止められていった。

ワタクシはこれ以上戦うのが嫌で、鎖を切ったあとは、隅っこでじっとしていた。

乱戦も静かになり、これで終わりかと思った矢先。


息を止めたと思った敵が起き上がり、ナイフで、王様候補ランキング一位のガブリエルを背後から刺そうとした。

無意識のうちに何も考えることもせずに、ワタクシは、ガブリエルとその敵の間に入り、刺そうとしたナイフを溶かしていた。

シュウっと煙を立てて、ナイフと刺そうとしていたテロリストの手を溶かす。

テロリストは痛みに悶えて声を上げる。

「うるさい」

ガブリエルのドラゴン化した鋭い手の爪で、テロリストは首を切られた。

「ありがとう。君のパートナーはどこかなお礼言わないと」

そう言って、ガブリエルは地面に伸びているわたくしを掬い上げる。

「やっと、見つけた。返して、この子はジェムの」

半透明な美少女姿でジェムが駆け寄ってくる。

「このスライムは、ジェムというんだね。君はかの有名なスライム令嬢アグネス・ガレットか。金髪にタレ目。事前に聞いていた情報とは全く違う。アグネスはブルネットの髪だ。」

訝しげな目でジェムを見て距離を取る。

「ちがう。ジェムがスライムで、アグネスはジェムの。かえして。」

ジェムが一歩近づくと、ガブリエルは五歩さがる。

このままでは埒が開かない。

ワタクシはガブリエルの手から出て、ジェムに張り付く。

『ジェム、服に化けて』

テレパスでお願いする。

わたくしは、テロリストから、逃げる時に服をとかしてしまった。

だから、今人に戻れば、裸だった。

ジェムが戻ってきてよかった。

『はーい』

ジェムはさっき来ていた服に化ける。

質感も透明ではなく不透明になり、ただのドレスとしか言いようのない形になる。

わたくしはその服の中に体を滑り込ませて、人の形に戻る。

「ガブリエル様、お騒がせしました。ワタクシのスライム最近話し始めたばっかりで、混乱させて、申し訳ございません」

なんとか、猫を被り謝る。

「大丈夫だ。それよりも、あなたとのバトルが楽しみですね。俺が勝ったら、結婚して」

突然、なんの脈絡もなく結婚を申し込まれた。

「俺と戦う前に他と負けて、君を倒した人に勝ったら、俺の勝ち判定だから。じゃあ、俺は会場の片付けと立て直し手伝ってくるから、またね」

そう言って、是非を言わさぬまま去っていった。

その後、わたくしは、ティグルとソーンに迎えられて、会場を後にして、ホテルに帰った。

バトルロワイヤルは中止にならず一週間遅れて、第一試合からやり直しで行われることになった。

ホテルに帰ってすぐ私は寝た。

大暴れした反動だ。

起きて、ホテルの部屋のリビングに言ったら、頬を赤くしてテンションが高めの両親がいた。

「アグちゃん、あなたいつの間に、ガブリエルくんのこと口説いていたの?」

お母様は嬉しそうな声ではにかんで聞いてきた。

お父様の手にあるのは求婚状。

あの求婚、まじだったの。

ガブリエルがワタクシの泊まるホテルに来て、ワタクシの両親を懐柔していたようです。

なんでも、寝ている間に反動で疲れているワタクシにお見舞いという形だったようだ。

この世界のバトルロワイヤルでは、よく何位以上になったら、特典がもらえたり、願いが叶えられることが当たり前だ。

結婚の申し込みもよくある。

だけど、それは身分差もしくは様々な障害がある中、結ばれない深い愛のあるカップルがよくやることだ。

ガブリエルとは、昨日が初対面なんですけど。

結婚は嫌だったけど、全く知らない人との結婚なんてもっと嫌。絶対に勝ってやる。


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