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イチャつく2人に世界樹の福音を  作者: 筆々
1章 こうして彼女は出会った。
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7話 その陽は星の錬金術師を見る

「さて、ちょっと早く来すぎたか」



「……」



 昨日商業科のステラ=アリアハートとアンナ=クリフテンドからの依頼を受けた俺とシャルは、その日の内に学生課に依頼を受ける旨を伝え、翌日1日の校外実習(・・・・)を申請し、商業科のお嬢さん方と待ち合わせ場所を決めて別れた。



 翌日俺たちは指定された時間の少し前に待ち合わせ場所に到着しており、そこでシャルと一緒に最終確認をしようとしていた。



「え~っと、持ち物については特に記載はないが、ウリアン坑道は狭い道もあり、長袖を推奨、それと採石場は広い場所であるが少し暑いために替えの着替えを持ってくることを推奨……本当に丁寧に指示してくれるお嬢さんだな」



 俺が感心していると、シャルが顔を引きつらせており、どうにもステラと会話をしてから顔色が優れない様子だった。



「おいシャル、聞いているか?」



「え? あ、ああ――」



「お前一体どうした、昨日から――というより、ステラ=アリアハートと話してから変だぞ?」



「いや~、その……ソル、お前さんはあれか? あまり名前(・・)には詳しくないのか?」



「名前? 人様の名前なんて一々詮索しないよ」



「……アリアハートくらいは知っておけ。というか俺にとってはそれなりにやり難くて――」



 頭を抱えるシャルだったが、彼の後ろから香ってきた花のような香りに俺は意識を向け、首を倒し横にずらして待ち合わせ時刻ちょうどに現れた2人に目をやる。



アーデルハイド(・・・・・・・)さん、今日は商業科の一依頼人として、護衛の方、よろしくお願いします」



「ひぇっ」



 シャルが体を固めたのだが、ステラもどこか意地の悪そうな言葉を選んでいるのは明白であり、彼女が愉快そうに笑うのを横目に、俺はため息を1つ。



「ステちゃんお知り合い?」



「う~ん、何度かお会いしたことはありますけれど、こうして言葉を交わすのは初めてだったかしら? もっともアーデルハイドさんが僕の顔を知っていたのかはわからないですけれど」



「会ったことがあるのに顔を知らない?」



「母の提案で顔を隠していましたから」



 可憐に笑うステラがアンナを撫で、そっとこちらに視線を向けてきた。

 その視線を受けて俺は歯なの頭を押さえながらシャルの頭にげんこつを落とす。



「いてっ」



「お嬢さん方、1つ尋ねるがこれは商業科の生徒(・・・・・・)からの依頼で間違いはないな?」



「……ええ、間違いないです。僕と、こちらのアンナが商業科の課題として依頼内容を考えて、それを依頼として出したものです」



「そうか。なら俺たち戦闘科の生徒は同じく課題を達成するために、その依頼を受けるだけだ。それで構わないな?」



「ええ――むしろそれ以外にどのような思惑があるのか、わたくしには想像も出来ませんわ。ねっアーデルハイドさん?」



 クスクスと喉を鳴らすステラに俺は再度頭を抱える。

 やはりこのお嬢さん、少し意地が悪い。どう考えてもわかっていてやっており、シャルの反応を少し楽しんでいる。

 悪意はまったくなく、むしろそんな態度でい続けているシャルにも落ち度はある。



「こっちの神官騎士(・・・・)はお調子者だが心は繊細なんだ、名の大きさに怯えて萎縮してしまう。出来ればシャルと呼んでやってくれ」



「あらそうだったのですね。でも確かにアーデルハイド家は代々と『神使の神官騎士(パラディン)』を排出する名家ですものね、家の名に重圧を感じてしまうのはよくわかりますわ。ではシャルさん、わたくしのことはステラと、ね?」



「……は、はい、ステラ、さ、ま――」



 俺はシャルの頭にまたげんこつを落とし、ステラに目をやり、ため息交じりに言葉を溢す。



「食えないお嬢さんだ」



「ステちゃんの意地の悪さは生まれつきだよぅ。ステちゃんのせいでウチが怒られていても後ろでうふふって笑っていて――」



「さっ、そろそろ時間ですし出発しましょう」



 アンナの口を手で塞いだステラが彼女たちが歩んできた方向に手のひらを向けた。

 そちらに目をやると、馬もいないのに荷台が勝手に動いており、俺は首を傾げる。



 いやしかし、あの道具(・・)を俺は知っている。だがシャルの反応からステラは確実に教会関係の人間だ。ならばアンナかとウサギ娘に目をやるのだが、どうにもそんな感じはしない。



「こいつは錬金駆動(・・・・)――」



「はい、僕ステラ=アリアハートは、教会(・・)でも魔導騎士団(・・・・・)にも属することのない、ただの錬金術師(・・・・)です」



 ステラのその言葉に、シャルが大口を開けて絶句していた。

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