2-6話 星は風を見つけたい
「ここが風の逸れ道か。初めて来たな」
「あまり魔物のいない場所ですから、戦闘科だと馴染みがないですよね」
休日になり、僕たちは予定通り風の逸れ道――学園のある王都から錬金駆動で1時間とちょっとのところにある高台。
いついかなる時も風が吹いており、雨雲もこの高台だけは避けていく。
世界を歩む風のちょっとした寄り道。
そんな風が吹く場所がこの場所である。
さっき言ったように魔物の数が少なく、ピクニックに丁度良い場所ではあるけれど、僕としては中々に面白い効果のあるものが多く、錬金術師としてはいつ来ても飽きない場所だ。
「さて、それじゃあ準備を――」
ソルさんが辺りを見渡しながら、指示を出そうとするが、錬金駆動から出てきたアンナとシャルさんを見て苦笑いを浮かべた。
「それでねそれでね、そのクレープって言うのは――」
「アンナちゃんアンナちゃん、わかった、わかったから」
「アンナは朝からその話ばかりだな」
「相当気に入ったみたいです。この間から下校の度にクレープをねだるようになってしまって」
「美味いのか?」
「甘いものが好きなら……しょっぱいクレープもありますが」
「クレープは甘くてなんぼだよぅ!」
「と、しょっぱいクレープ否定の過激派になってしまいました」
がうがうするアンナをソルさんが抱き上げて高い高いとなだめているのを見ていると、突風が吹き、僕たちは目を覆った。
「すごい風だな。ここには何を取りに来たんだ?」
「え~っとですね――」
僕は辺りを見渡し、そこら中に落ちている石を1つ手に取った。
そしてその石を手のひらに置くと、アンナとソルさん、シャルさんが石を覗き込むように僕の手を囲んで顔を下げた。
その瞬間、意思からふわっと風が吹き、全員の前髪が上がった。
「この石から風が吹いているのか?」
「はい、これは欠片なのですが、元々は世界樹にあった石を加工して石碑を作り、その石碑から風が吹いている。なんて言われていますね。時間が経って風化して崩れた石がそこら中に落ちているのですが、僕的には大きな――風板、つまり欠片ではなく、ある程度原型の残っているのが欲しくて」
「なるほど。ステラ、ここにはあまり魔物はいないんだったな」
「はい、普通の魔物にとって風が常に吹いているこの場所はおちおち昼寝も出来ない環境なようで、あまり近づく子はいないですね。ただそれが心地よいと思う子もいるのか、全くいないというわけではありませんけれど」
「うん、それなら――アンナ、お前は前線でもそれなりに戦えるな?」
「うん、ドリルちゃんと持ってきたよぅ」
「それなら二手に分かれるか。シャル、アンナの面倒みられるか?」
「……騒がしウサギか。ちょっと自信ないけど――アンナちゃん、俺の指示ちゃんと聞けるね?」
「ウサギの耳は何者の声も聞き逃さない! 任せろドリルぅ!」
「……うん、うん。頑張る、か」
シャルさんが頭を抱えているけれど、まああの子の手綱を握るのはまず無理だろう。
適当にやりたいようにやらせて、くたびれたところを捕まえるしかない。
意気揚々とドリルを掲げるアンナを横目に、ソルさんがそっと僕に手を差し出した。
「それじゃあ、俺たちはこっちを」
「――はい、それではよろしくお願いします」
ソルさんの手を取り、段差を超えて僕とソルさんは2人揃って風の逸れ道の探索を始めた。




