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イチャつく2人に世界樹の福音を  作者: 筆々
1章 こうして彼女は出会った。
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12話 太陽は明るく人を照らす

 採石を終えた俺たちは坑道を戻り、入り口付近の錬金駆動を停めていた開けた場所で食事の準備をしていた。

 ステラ手製の弁当と言う話だが、坑道ではそれなりの魔物を退治しており、腹も空いている。正直に言うと先ほどから彼女の弁当を楽しみにしている。



 しかし、当のステラはアンナが鑑定した鉱石を1つ1つ真剣な眼差しで見ており、俺は昼食の準備をする手を止めて彼女に目をやる。

 すると同じように準備をしているアンナがコソと話してくれた。



「ああ、ステちゃんはウチの鑑定眼とは違う目を持っているからぁ」



「違う目? というか錬金術師なら鑑定眼は必須じゃないか?」



「う~ん、ウチもよく知らないんだけれどぅ、ウチが使う鑑定眼は品質や効果を見るものであって、ステちゃんの見たいものじゃないみたいなんだよぅ」



 品質と効果以外に何を見る必要があるのだろうか? 俺は首を傾げてステラを見つめる。

 彼女は何事かを呟いており、アンナと顔を見合わせる。



「それにステちゃん、ウチが全く知らない呪文? を唱えるから知りようがないんだよぅ」



「呪文?」



 俺は耳を澄ませ、ステラの言葉に耳を傾ける。



「相変わらず原子の配列がめちゃくちゃだ、これじゃあ鉱物とは呼ばれないんじゃ――いやでもここは別の世界だし、あたしの知識は役に立たない。でもこの鉱石なんでリチウムが入っているんだろう。これだけを取り出せればそれなりのことは出来るけれど、でもやるのなら隔離かなぁいやいや、と言うか結構危険だよね。これだけで下手したら街一個吹っ飛ぶしでも使えるものは使いたい。と言うかこれで電池出来ないかな、そうすれば小型の駆動系が作れるしもしもの時の――」



「ね?」



「……ああ、何を言っているのかさっぱりだな」



「ステちゃん曰く、必要なのは含有物で、それをいかに取り出せるだってさぁ」



「錬金術は奥が深いんだな」



「実際ステちゃんの錬金術はすっごいんだよぅ。錬金術の基本の1つである爆弾のレシピをサラッと書き換えて、既存の爆弾の数十倍の威力の物を作って、速攻で危険指定アイテム(・・・・・・・・)に認定されちゃったもん」



「危険指定された? いやそれは……」



「うん、ステちゃんは家柄が大きいから何とかレシピの提供だけで、それ以上のお咎めはなかったんだけれど、そのレシピ、未だに誰も解析できていないんだよねぇ。未知の素材が使われているとかでステちゃん以外作れないんだよぅ」



 すると隣で聞いていたシャルが手を上げた。



「いや作れないって、ステラ嬢にその未知の素材を聞けばいいだけだろう?」



「だからそれがわかんないんだって。ステちゃん曰く鉱石に入っていたって言うけれど、王宮お抱えの錬金術師ですら、そんなものの取り出し方は知らないって」



「どういうことだ?」



「なんかね、爆弾の物質が酸素と結合だかどうとかで、試しに鉱物の中のまぐね何ちゃらをどうとかしてみたとか、ステちゃんはウチらが知らない物の成分を知っているみたいで、知らないからそれを誰も取り出せないんだよぅ」



 鑑定眼でも見られない成分をステラは理解して、それを錬金術で使うということだろうか。

 そもそも坑道を護衛中にも使っていたアイテムもつくりや効果が見たことのないものだった。だいぶ優れた錬金術師と言うことなのだろう。



「ちなみに、ステラの階位は?」



「わかんない。教えてくれないんだよぅ。大したことないからって」



「大したことないわけないだろう」



「うん、そうなんだけれど、一応危険指定爆弾を作った後、学園と王宮で再度ステちゃんの階位を調べたらしいんだけれど、一般の生徒と特に変わらなかったって」



「ふむ、謎だな。しかし本当にステラは凄いんだな」



「ソルさんや、それだけですか? 反応薄くない?」



「いや実際すごいだろ。それに今日1日一緒に行動して、ステラはその力を悪用するような奴じゃないって言うのはわかったし、きっと錬金術師として大きなことを成す。もちろんいい意味でな、王宮もそれを期待して自由にさせているんだろう」



「……俺さ、ソルのそうやって無条件に信じて期待してくれるとこ、結構好きだぜ」



「う~ん? シャルは名に恥じないように頑張っているし、ステラも人のために頑張れる奴だってわかるからな、無条件じゃない」



 シャルが照れたように頭を掻いたが、そんなにおかしなことを言っただろうかと首を傾げる。



 しかし随分と長話をしてしまった。俺の腹も限界だ。

 俺は自分の手を叩き、ステラに向かって声を上げる。



「ステラ、集中しているところ悪いがそろそろ飯にしよう」



「……あ、はいっ」



 鉱石を置いて振り返ったステラだったが、今一瞬、耳が赤くなっていたような……気のせいだろうか。

 と、俺は頭を切り替え、昼食の準備を急ぐのだった。

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