7.仲間が万能過ぎて自分の存在意義が消えるのはあるある
「ふぅ…やっぱりネッ友作成取扱説明書を読みまくるよりは少しずつ自分で確かめながら頭の中に入れる方が良いな」
結局2ページほど読んで飽きてしまった俺はチャットアプリで「誰か一緒に素材集めしよ」とだけ兄姉に集合をかけて集合場所のギルドに行くためにPossibleの世界にまたログインしてきた
「あ!いた!幼女様だ!」
「え?」
中学生ぐらいの身長の男性アバターのプレイヤーが大きな声で俺を指差してくる。いや、用があるなら聞くけどさ、大声出すのはマナーとしてなってないんじゃないか?例え相手が成人した大人だとしても脳内は育ってない「クソガキ判定」だ
「ほんとだ…!」
「すご~、握手してもらってもいいですか~?」
「はい?ちょっと意味が分からないです」
イカれたメンバーを紹介するぜ!
まずは俺!フェイスペイントもボディペイントも入れたロリっ子!
次にクソガキ!顔に蛇のフェイスペイントを入れた厨二病だ!人ごみの中で大声を出してマナーがなっていないぞ!
そしてその仲間達!クソガキを抜いても4人もいるぞ!全員同じ位置にフェイスペイントを入れている仲良し集団みたいだ!
「ちょっと大声を出すのはマナーとして良くないと思います。色々と言いたいことはあるけど、これだけは本当に今後守ってください。今後苦労するような目に会わないとも限らないので」
「ハハ!涼介ちびっ子に怒られてやんの~!」
「は~い!すみませんでした~!」
「では、これで。楽しいゲームライフを」
涼介は確実にリアルの方の名前だろうな、頭上に表示された【rosuke】とは名前が違う、てか「rosuke」ってなんだ「rosuke」って
ヘラヘラと小馬鹿にしてる感じがクソガキムーブかましまくりだな、これでクソガキを演じているのなら表彰もんだ。こういうめんどくさい対応してくる人は無視するに限る
「ちょっと待ってよ~、まだ初期装備ってことはレベル低いんだろ~?俺達と一緒に行こうよ~。俺達も今日始めたばっかりだしさ~」
俺の頭に腕を置いて着いてきながらなんか言っている。めんどくさいな…あまりギルドから離れたくないんだが…ん?あれは…
「ごめんなさい、フレンドともうパーティを組んでるので」
「どこに居るんだよそのフレンドはよ~」
「ここだよ~」
【富士吉】、長女である。女性アバターでTheお姉さんという感じの魔女の見た目をしている。黒髪ロングにシンプルなピアス、身長は170前後辺りかな?
「【富士吉】、もうログインしてたの?」
「うん、ちょっとやりたいことあって」
「い、良いじゃん?お姉さんも一緒に俺たちとパーティ組まない?」
姉のガチメイクアバターを見ても果敢にナンパを続けたことについては称賛に値する
だが…
「ごめんね〜、この子は私とパーティ組むし、私は夫とパーティ組んでるの〜」
姉の一言で涼介はその場に崩れてしまった
その言葉で崩れ落ちたか青二才よ…世の中そんなに甘くないし、まだまだ成長期なお前にはうちの姉は早過ぎた
「【富士吉】ここに居たの?」
「お、【不断獅】さんだ~。お久」
「本田ちゃんお久」
【富士吉】が姉、【不断獅】が旦那さん。旦那さんの方は別に腐っているわけではなく、姉と関連付けた名前にしたかったらしい。あ~、待て待て。ここにはまだ小さい子がいるんだからキスするのは止めなさい。あぁ…涼介、泣くな。男なら前を向いてクソガキムーブを続けろ
「またね~」
「うちの妻がお世話になりました」
旦那さん…それ以上はやめたってや…
「【rosuke】さん」
「涼介だ!」
「…涼介さん。ふざけた感じじゃなくて真面目に招待してくれたらパーティに入ることも考えたから、もっと真面目にゲームを楽しんでね。ある程度の常識を持ってみんなで遊ぶのがゲームだから。期待してる」
「…」
よし、姉と旦那さんのオーバーキルを何とかカバーできたかな?いやマジであいつは幸運だよ。他のゲームでも採用しているシステムで賛否両論別れるが嬉々としてはしゃぐ者もいるPKシステムがこのゲームには採用されてるからな。半端なやつにあの態度だとリスキルされても誰も助けてはくれないだろう。俺達兄姉弟は変な奴は無視するか俺達に対して精神的に折れることをすると決めている。
今回の姉は精神的に折りに行ったが俺はあいつらがまだ中学生ぐらいの遊び盛りで格好付けたいお年頃なのもわかる。すかさずフォローを入れてしまったがあれで懲りてくれれば問題ない。これでもし懲りてなかったら矯正を促すか泣くほど無視する
「で?今日は何するん?」
「素材集めしたいんやけどさ、何の素材集めようかなって」
「私たちは要らんもんね」
「そうだね、鍛冶師が序盤に必要なものか…」
「大体の人はまず他の職業への道のりで作るものを考えとったけどどうなん?」
「戦闘職は今回は剣を扱う系にしたいんよね、恐らくジャパニーズサムライがあるはず…」
「あ~、刀か。あれ扱い難しいって聞くけど?」
「前やってた過疎ゲーで少し履修したからある程度は行ける。対人以外は、対人以外は」
「そもそも本田は対人苦手じゃん」
「それは言わないお約束」
だって対人戦って人によって戦闘のリズムやらパターンやら全部ばらばらなんだもん…対人に強い人ほど決まったパターンはないしリズムも定期的に変わって戦い辛いったらありゃしない。ちなみに兄姉弟の中では俺が断トツで対人戦に弱い
「なるほど刀か…なら剣士職で和イメージの街、暁のある場所で受けられる特殊職業クエストを受けて武士にならないと刀は装備できないはずだよ?」
「もうジャパニーズサムライはおるんか…!?」
「正直今だと侍や武士になってるのは前線組レベルだね。そもそも現状で最新の街がアカツキだからね」
「へぇ…頑張ってアカツキまで行くか…?」
「まぁ…【本田】なら多分アカツキなら現状でも行けると思うけど…行く?」
「え、そんなに簡単なん?」
「いや、普通にレベル40推奨とかだったはずだけど…」
少し戸惑いながら俺と旦那さんは姉の方を見ると姉はサムズアップをしながら笑顔でただ一言だけ言った
「本田は対魔物最強だから!」
「馬鹿にしないでもらって…体力管理ゴミ、初期装備、レベル7のこの俺のどこに推奨レベル40の前線まで行けるって根拠が?」
「レベル差32のワイバーン倒したんでしょ?行ける行ける」
「ぐぅ…」
「ぐぅの音ギリギリ出てるじゃん」
今のレベルは7、レベル32も開いている相手に勝ったのは確かにそうだから…ギリギリ行けそうな気がせんでもないのがまたなんとも…
「いや、ちゃんとレベリングしてから行く。変に死んでから最初からとかめんどくさいし」
「アカツキは何層目?」
「第6層、一層毎でレベル5幅推奨だから40~45推奨層だね」
「ほへぇ…このゲームはマップが層で別れてんのね」
「いや?二層の場所はあの山の向こうだから戦闘無しでも行こうと思えば行けるよ?」
「は?どういうことやねん」
どうやらこのゲームのエリア移動には二種類の方法があるらしい。
1、マップをひたすら歩いて次のエリアまで行く方法。この方法の最大の利点はボスモンスターを倒さずに次の層まで行けるため最悪モンスターから逃げまくれば行ける。レベル1でもどんなエリアにでも行けるがモンスターから襲われたら瞬殺されるデメリット付き
2、次の層まで転移を可能にする転移陣がボス討伐後に現れるとされるダンジョン攻略。いわばショートカットだがボスモンスターを倒す必要がある為、難易度は必然的に高くなるが段階を踏んで次のエリアに行けるので「次のエリアで敵に攻撃が入らない」などの謂わば「詰み」の状態の回避にもなる。大体のプレイヤーはこのダンジョン攻略のほうを主流としている
「へぇ、ならなんで層って言ってるわけ?」
「前線組…ダンジョンを最初に踏破したパーティが第二層に行ったと思って言ってたらまさかのショートカットなだけでマップ自体は繋がってるって気づかなくて皆にも定着しちゃったの」
「へぇ、その最初の踏破した人達の名前は?」
「確か…【コークイズゴッド】、【マンマミア】、【サンドウィッチ】、【マリーオサントネヨット】、【バラスキー】、【シルフ】の六人」
あ~、うん。なんか半分ぐらい知ってる人な気がするわ。うん
「へ、へぇ…その人達は未だにすごいわけ?」
「「前線組」って言われたりするから強いかどうかは知らないけどプレイスキルは高いんじゃない?」
「はへぇ」
「なんだその間の抜けた返事は」
「ん?」
聞き覚えの無い声、だけどこのツッコミの仕方…三男か?
「【本田】の格上弱個体飛竜討伐でも歌にして歌ってあげようか?」
「やめてもらって…倉理音兎兄ちゃん」
「いや~探した~、俺も連れてって~」
「お、後方支援来たけマジで行けるんじゃない?」
「少しレベリングしてからね」
倉理音兎、三男で大学生。音楽が好きで中学の頃から吹奏楽でクラリネットを引き続けてる。緑主体の軽装備に楽器類を持った後方支援職の吟遊詩人で、バトル中に楽器を弾いたり吹いたりすることでバフやデバフを掛けることができる
「兄ちゃん達今レベルなんぼ?」
「俺は15」
「俺は42」
「私は43」
「え、【倉理音兎】兄ちゃんレベル低くね?」
「ちょっと街中で音楽弾くのが楽しくてね~。まぁ、一人じゃ戦えるような職業でもないし?ノーカンノーカン」
あんた、兄姉弟の中で一番総合的にゲーム上手いでしょうが…まぁ、楽しくやってるからこそうまいのかもしれないしな、深くは気にしないでおこう
「まぁ、レベル上げつつダンジョン攻略と言うことで…出発」
「えいえいお~!」
姉と旦那さんはノリノリで兄ちゃんもずっとニコニコ状態で俺の後ろをついてくる
「え、これさ。【不断獅】さんと【富士吉】姉ちゃんの援護あったら敵即死するくない?」
「大丈夫、俺はタンク職だからヘイトは受け持つし、一応【富士吉】は回復魔法も使えるから死にそうになったら無限に回復できるから」
「あ、一応俺も回復できるよ」
え、なにこれ…最強のお供達?姫プ待ったなしじゃん仲間無双系小説じゃん…
「まぁ…危なそうだったら援護頼むわ~」
パーティ申請とフレンド申請をしてシルバーベル平原を進んでいく
「え、この道で合ってるの?」
「合ってる合ってる、シルバーベル平原を西に進んでシルバーベル大渓谷を抜けたところにあるダンジョンに行けばいいよ」
「おっけー」
一応シルバーベル平原に居るスライムやハニービーも一緒に倒していく
少し予想はしてたけどハラハラドキドキもしないな…スモールレッドワイバーン戦で少しテンションが上がりまくる戦いをしてしまった&頼もしすぎるお供のダブルパンチのせいで欠伸が出る程退屈に感じてしまう
「う~ん…ちょっと相手が弱すぎるな…」
「まぁ、推奨レベルは5までだし?」
「それならダンジョンボスでも退屈説あるよ?」
「え、まじぃ…?もうキングクリムゾンでよくない?」
「ナニソレ」
「時飛ばし、結果だけ残るんだよ。過程は飛ばされるの、全部うろ覚えな内容だけど…、もう第二層に行ったって言う結果だけ残して過程は飛ばそうよ~」
「どうやって飛ばすん…」
「それはもう…お二人に担いで走ってもらって?」
「それでいいならやるけどほんとに問題ない?」
「良いの良いの」
俺は姉に、三男は旦那さんに負ぶってもらって倍以上の速度で平原を走り抜けていく。流石レベル40台、レベチな速度が出てるぜぇ…!
ちなみにダンジョンの中はそんなに広くはない、だけどトラップが多いせいで攻略に時間が掛かるタイプのダンジョンなのだろう。え?トラップはどうしたのかって?そりゃもう…トラップが発動して引っ掛かる前に走り切ってるよね…流石低レベル推奨ダンジョン、罠の発動も少しの間があったぜ…!
ダンジョンボスは人の何倍かのサイズをした狼さんだった、ものすごく素早い動きをしていたが旦那さんのヘイトを自分に集めるスキルのせいで動きは読みやすかった。一撃で首を飛ばして終わった
「はい到着」
「ここがアーウィン?」
「懐かしい感じする~」
三男が竪琴をいじりながら入り口から見えるデカい噴水に小走りで駆け寄っていく
「♪~」
「おぉ、流石って感じやんね」
「ね~、倉理音兎の歌はお姉ちゃん大好き」
「カラオケとか90点台しか見たことないもんね」
三人で三男が歌い終わるのを待っているとどんどん周りにプレイヤーやNPCが集まってきた
「♪~。ありがとうございました~」
歌い終わって満足したのか三男が頭を下げると一気に歓声が湧いた「良かったぞ~!」、「アンコール!アンコール!」、と様々な声を三男にかけていく中どんどん硬貨が兄がいる噴水前に投げて集められていく
「じゃ、またね~」
「また歌いに来てくれ~!」
「気が向いたらね~」
三男は周りの人に手を振りながら俺達の所に戻ってきたと思ったら大きなため息を吐いた
「はぁぁぁぁぁ…!緊張した~」
「凄かったよ、歓声で湧くの初めて見たけど」
「それに琴はあまり得意じゃないんよ…アコギ、クラリネット、ピアノ…欲しいなぁ」
「アコギとかならワンチャン作れそうな感じするけどね?」
「弦が無いんよ…」
「無いなら作ればいいじゃない…?」
恐らくだが弦の詳細さえわかれば生産職系で作れるはずだ。「やりたいと思うことはやれる」と豪語しているゲームだぞ?やれないことはないだろう
「材料さえ揃えてくれれば俺と兄ちゃんの奥さんで試行錯誤できるよ」
「それはいいこと聞いた!」
三男は元気を取り戻してウキウキな顔をしながら次のダンジョンへと向かって足を進めていく。どんだけ音楽が好きやねんとは思うがまぁ、好きなことが悪いわけではない。このまま気分アゲアゲで進んでいこう
「好きこそものの上手なれって言うけどさ、倉理音兎はそれを体現してるよね」
「それ思った~、触れるもの全ての面白い部分を見つけて好きなものにするのなかなかえげつい」
前回予約できてなかったみたいなので今日は2話投稿です(2/2)
富士吉
長女、生まれた順番的には二番目。腐っていると言ってもほんの少し、ガチガチに踏み込んだツワモノではない。小さい頃は口が悪かったが大学に行ってから周りの人に「大丈夫?」と口が悪すぎて病んでいるのかと思われたらしく、口調が優しくなった。たまに兄弟と「手足縛って海に捨てるぞ」ぐらいの冗談を言ったりする
不断獅
長女の旦那さん。仕事が忙しい関係であまりログイン率は高くないが、その分ログインした時の熱の入れようは凄い。漫画やアニメも嗜む程度に見ているようで王道の漫画の話になると兄姉弟と滅茶苦茶熱く語る
倉理音兎
三男、生まれた順番は4番目。書道、音楽、絵、等々の多種多様な趣味を持ち、全てにおいて王様の様に君臨する。決して才能があるわけではなく、その分野においての好きな点を見つけることに置いて右に出る者はいない。好きを突き詰め過ぎて人並み以上になってしまうらしい。「納得のいくまでやったらなんか賞とか取っちゃうよね」と凌に言って鼻をパンチされた幼少期がある。小さい頃は年齢が一番近いせいか凌と毎日のように喧嘩をしては凌が勝手に自滅して泣いていたが、倉理音兎が中学に上がってからはお互いに喧嘩をすることは無くなり、風呂も一緒に入らなくなった。Possibleでは「実はすごい人」として陰で有名人、何が凄いのかはとある仕様の可能性を見出した人ならもしかしたら分かってしまうかも?




